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学習資料 放射線とはなにか |
学習資料
放射線被曝を避けるために
放射線とは何か
sugawara
原子爆弾ができる前まで、人類が手にできる熱エネルギーは、物を燃やしてできるものでした。現在でもほとんどの熱は物を燃やしてつくります。
ガスレンジ、自動車、ロケット、爆弾などは全て物質の結合から出るエネルギーです。姿形は変化しますが、物質はそのままです。
原子爆弾と原子力発電で使うエネルギーは、物を燃やして取り出すこととはまったく違います。原子の原子核を分裂させて、エネルギーを取り出すのです。燃焼から出るエネルギーとは桁違いに大きいです。
原子爆弾の威力の大きさを示す単位に、1メガトンとか1キロトンといいますが、これは、原子爆弾の威力をTNT(トリニトロトルエン)火薬の量で換算したものです。最近はスーツケースに入る原爆があるそうですが、それが1キロトン以上あるらしい。つまりTNT火薬1000トン(10トンダンプ100台分の火薬)と同じ威力があるということです。それぐらい核分裂のエネルギーはすさまじいのです。
原子力発電所は、原子爆弾が一瞬にエネルギーを放出させて使うのではなく、徐々にエネルギーを取り出しているのです。だけど、核分裂のエネルギーであることは同じです。
ウランの核分裂が確認されたのは、1938年です。(その7年後にはヒロシマなのです。)原子核が分裂すると、たとえばヒロシマ原爆で使われたウランは分裂して、たとえばストロンチウムとセシウムに分かれてしまったのです。
@ すべてのものは原子でできています。原子は真ん中の原子核と周りの電子になっています。その原子核には陽子と中性子がギュウギュウ集まっています。酸素は、原子番号8、原子量16です。陽子の数は原子番号と同じなので8個、中性子は原子量から陽子を引いた数で、酸素は中性子も8個です。(ちょっと正しくないが、簡単にした。)
ところが、周期律表を見ると、多くの原子の原子量は小数点以下の数字が付いています。これは、それぞれの原子の中性子の数に異なるものがあるからです。同じ原子で中性子の異なるのを同位体といいます。そのうち放射線を出すのを、放射性同位体といいます。
A 原子番号が大きい原子は軽いものと比較すると中性子の割合がおおいのです。原子番号92のウランは原子量238(中性子146)のものが大半で、235(中性子143)がほんの少しあります。(分裂するのは235のほう、238原子炉の中でプルトニウムになってしまう。)
ですから、ウランが分裂してできる核分裂生成物も中性子の割合が多いものになってしまうのです。そしてそれらは安定的な原子より中性子が多いので不安定であり、放射線を出す能力を持っているのです。
B 原子番号55のセシウムは原子量133です。問題の放射性セシウムは137。中性子4個多いので不安定なのです。
このセシウム137はβ崩壊します。(ようやく放射線のはなしです。)セシウム137の原子核には陽子が55個と中性子が82個あります。β崩壊とは1個の中性子が陽子と電子に姿をかえることです。
電子は原子核から飛び出し、原子からも飛び出していきます。この原子から飛び出してしまうほどエネルギーの強い電子線をβ線といいます。
そして、原子核は陽子が1個増えますから、電子番号56のバリウムになってしまうのです。なんとセシウムがバリウムになってしまうのです。
β崩壊でできたバリウムはとてもエネルギーが高く、γ線線を出して、落ち着いたバリウムになります。
C ここで放射線のことをまとめて説明します。
放射線には、α線、β線、γ線、中性子線の4種類あります。
α線はベクレルが発見したウランやキューリー夫人の見つけたラジウムがα崩壊するとき出る、ヘリウム原子核(陽子2個と中性子2個)です。とても大きなエネルギーを持っていますが、電気的にも質量的にもすぐ何かにぶつかってしまい、物質を通り抜けることはできません。なお、α崩壊すると陽子が2個減るので、原子番号も2減ります。
α崩壊は原子番号の大きい重い物質で起こります。今回の原発事故で漏れ出た物質では、ウランやプルトニウムが体に入るとそこで大変力のあるα線を出しましから、細胞を壊してしまうのです。
石川町にラドン温泉があります。ラドンはα崩壊して、時々α線を出しています。
β線は先ほど説明したように、β崩壊で出る電子線です。−の電気を持ち、質量も0ではないので、α線ほどではありませんが、何かに当たると透過できません。それでもストロンチウムから出るβ線は水中を10p透過するそうです。
ほとんどの場合、崩壊後の物質のエネルギーがたかいので、その後γ線を出します。
しかし、ストロンチウムはβ線だけでγ線を出しません。ですから体内に入ったストロンチウムを計測することができないのです。ホールボデイカウンターは体から出てくるγ線を計るだけです。排泄物を調査するしかなさそうです。
γ線は物質ではありませんし、電気もありません。電磁波(電波、光と同じ仲間)です。ですから透過力が強く、人の体を突き抜けます。レントゲン、CTスキャンも仲間です。
今計っている空間線量はγ線を計測しています。
最後の放射線は中性子線です。これはまさに中性子が飛んでくる。1999年のJOCの臨界事故では、ウランの核分裂連鎖反応が何の防護もしていない水槽で起こり、数時間続いたため、作業をした人が死に、近所の住人が被曝したのでした。中性子ですから、遠くまで届きます。中性子線と聞いたら臨界している。一目散に離れるしかありません。
ベクレル(Bq)
1秒間に原子核が崩壊してだす放射線の量です。放射性物質それぞれに計測します。
例えば、ホウレンソウ 1キログラム当たり500ベクレルとすると、そのホウレンソウが1秒当たり500回ベータ崩壊していて、500個のβ線をだし、さらにγ線をだすのです。
シーベルト(Sv)
人体への被曝の大きさを表す単位です。(これも元はシーベルトさんから)
放射線の種類、エネルギーの大きさごとに係数を決め、めんどくさい計算をしています。そのシーベルトを積算し、人体への影響がどのくらいになるかを判断することができます。
E 放射線は危険です。大量に浴びれば即死です。JOC事故で中性子を大量に浴びた労働者は、体の細胞が壊されました。体が再生できなくなり、死亡しました。
今問題なのは低線量被曝の問題です。低い線量でも長い期間、また体内に放射性物質を取り込んでしまった体内被曝の場合、たとえそれが少量でも被害を及ぼしかねません。放射線は体を作っている物質の結合(化学結合)を切ってしまいます。特に影響を受けるのが遺伝子です。つまり、人間の細胞の再生や増殖に影響を与えることになります。
では、どのくらいの放射線を浴びると危険なのか、例の山下は「100ミリでも大丈夫」と言ってましたが、どんな少量の放射線でも影響がゼロとは思えません。これを「閾値はない」と言います。できるだけ被曝を少なくすることが大事でしょう。
また、放射線が細胞の再生や増殖に影響を与えると書きましたが、当然細胞の増殖が活発なときに放射線被爆することは危険です。ですから妊婦、幼児、子供はさらに注意すべきです。
50歳以上は「直ちに影響がない」でしょうから、フクシマ産農産物に手を貸しましょう。
核種 | 核分裂収率(%) | 半減期 | |
85Kr | クリプトン−85 | 0.3 | 10.8年 |
89Sr | ストロンチウム−89 | 4.8 | 51日 |
90Sr | ストロンチウム−90 | 5.8 | 28年 |
95Zr | ジルコニウム−95 | 6.2 | 65.5日 |
131I | ヨウ素−131 | 3.1 | 8.05日 |
133Xe | キセノン−133 | 6.6 | 5.27日 |
135Xe | キセノン−135 | 6.3 | 9.1日 |
137Cs | セシウム−137 | 6.2 | 30年 |
144Cs | セシウム−144 | 6.0 | 285日 |
147Pm | プロメチウム−147 | 2 | 2.64年 |
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