2000年5月31日
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全学労連ニュース今号の内容

 本格的な学校行革はこれからだ

 2000年度 全学労連 運動方針大綱

 目前に迫った“二重の合理化” 管理強化と人員削減、そして学校は…

本格的な学校行革はこれからだ

全学労連議長 菅原  孝

 4月1日、しがない地方都市でも「学校管理規則」が改定され、「校長が諮問しなければならなかった職員会議」が単なる「職員会議を置く」と替えられた。しかし、それは学校の「自主性・自立性」を盛んに唱える文部省の言いつけに忠実な教育委員会の姿が如実に現れただけで、現実の学校や教育を抱える問題への取り組みとはなっていない。

 一方、総選挙を目前にして政治家たちは「教育」を語りはじめた。何やら大層な名前の「教育改革国民会議」は、言葉の本来の意味の「教育改革」など出来ぬと悟った政治家が「忠君愛国」を言いたいが為なのだろうし、そうであれば最悪の「教育改革」が始まろうとしていると言える。

 4月1日、介護保険制度が始まった。これまで「福祉」の根本的な部分は全国一律の制度だったが、流行の地方分権で今回の介護保険は市町村ごとの格差を本格的に導入した。中央政府の財政負担を限定的なものにし、地方住民と受益者の負担とし、市町村ごとに格差の付いたサービスを制度の根本に据えたのである。

 この手法は「教育改革」でも使われるだろう。財政再建は教育予算の増加を不可能にしているのだが、10年後に迫る団塊公務員の一斉定年退職と校舎の一斉改築時期の到来は教育費の住民負担の増加でしか対応できない。そして勿論、「学校行革」をともなってである。

 我々は「教育改革は学校行革として進行する」と指摘してきた。その指摘はますます確信をもって言える。文部省は「君が代・日の丸」でその最大の役目である教育の国家統制を維持する自信を持ったことだろう。そして、残された諸問題の解決は学校で働く者と地方住民に押し付けていくのである。

 既に各地方で臨時的採用の学校職員の数が増え、標準法の定数内でも臨時職員化が進行していることが報告されている。また、子どもの数の減少を理由に学校の統廃合の勢いが増している。しかし、「学校事務の共同実施」等の姑息な部分どころではない「義務教育国庫負担はずし」を超える本格的な「学校行革」はこれからなのである。

 全学労連は、3月全国代表者会を開催し「2000年度運動方針大綱」を全国のたたかう仲間とともに確認し、これからの取り組みへの決意を固めた。学校事務労働者として、学校で働く多くの仲間とともに「学校行革」に真っ向から立ち向かっていく。

2000年度 全学労連 運動方針大綱

◎ はじめに

 21世紀に向けて、競争主義の更なる強化と資本の生き残りをかけた再編攻撃が強められてきています。昨年の夏には、その態勢を支えるために「日の丸・君が代」の法制化をはじめ、数多くの法改悪・制定が自・自・公連立政権(小渕内閣)のもと数の力で押し切るかたちで強行されました。

 また、財政危機は国・地方自治体ともに一層深刻な状況になっています。このような中で、「地方分権」「行財政改革」「規制緩和」の動きは国・地方を問わず、民間企業におけるリストラ合理化、また系列資本を超えた合併などすでに民間で進行している企業再編と同じ手法をもって支配構造の改革として公務員労働者に対しても合理化攻撃を強めてきています。「教育再編」=学校行革や「公務員制度改革」などもこれらの動きと一連のものとしてとらえていかなければなりません。

 私たち全学労連は、このような再編に反対します。引き続き、差別分断・管理強化・賃金抑制に反対し学校事務労働者の結集軸としての役割を担いつつ運動を展開します。そして、学校事務労働運動のネットワークを築いていくことを目指すとともに、多くの闘う労働者(労働組合)・市民(市民団体)との連携についても大切にしていきます。

1.国庫負担はずし阻止・反中教審・学校行革反対のたたかい

(1)国庫問題

 99年度も前年度と同様の状況の中(第6次定数改善計画の二年間延長)で大蔵省の大きな動きもなく、これまで築き上げてきた闘いをやりきり国庫負担はずし阻止の構図を維持することができました。16度目の勝利です。

 しかし、2002年度に向けて教育改革=再編の動きが本格化し、法律・規則・制度の改定が目論まれています。「学校行革」(学校事務の共同実施・定数弾力化)が大蔵省に国庫負担はずしの新たな口実を与えることも考えられます。自治省も財政負担の問題さえクリアーすれば、地方分権推進の立場を鮮明にしてくるでしょう。

 特に、文部省においては「教育改革」の予算をいかに捻出するのかが問われ、大きな課題となっている状況です。現在の国家財政の状況を考えると「国庫問題」再燃なしと言い切ることはできません。

 三省の動きに警戒しつつ、引き続き大蔵省に「国庫負担はずし」断念を迫る闘いを継続していきます。

(2)反中教審・学校行革反対

 この二年近く、全学労連は教育再編=学校行革の動きに警鐘を鳴らし続け、その流れに便乗した諸団体、とりわけ全事研(全国公立小中学校事務研究会)の学校事務職員制度論議と動きに批判的に対処してきました。

 また、パンフレット「学校行革をブッ飛ばせ!!」の発行や横浜で開催した夏の全交流での論議を通して、学校行革の意味するところを明瞭にしてきました。そして12月3日の全国全国総決起集会において「学校の管理強化に反対し、学校職員定数の改善を求める」団体署名を短期間にもかかわらず95団体の署名を集約して文部大臣に提出したのをはじめ全国教育委員会連合会等の関係団体に対しても要請等の取り組みを行ってきました。

 文部省の「学校事務共同実施」研究、「教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議」や「学校管理規則」改定等の動向に警戒を強めながら「学校事務の共同実施」「定数の弾力化」に反対していきます。

 そして、学校行革(教育再編=教育改革)反対の闘いを学校労働者を組織する他団体(全学労組など)との連帯・共闘を追求しつつ、より広範な闘いへとするために、私たちは主体的にその一翼を担っていきます。

※ 上記(1)(2)について、別途提起【2000年度国庫・反学校行革闘争方針(案)】に基づき全力で取り組みます。

2.賃金闘争

 長引く不況の中、賃金抑制・リストラ合理化等、労働者への攻撃は一段と厳しくなっています。反リストラ・反失業・雇用確保が大きな課題となっています。

 私たち公務員労働者についても厳しい状況が続いています。昨年のマイナス人勧や神奈川・愛知・大阪などの賃金・ボーナスの不払い(賃金カット)、昇給停止など、「不況」「政策破綻」「財政危機」のつけが労働者にまわされてきています。

 私たちは、各組合・団体との支援・連携を強め賃金抑制攻撃に反対する取り組みを進めて行きます。

 また、賃金削減攻撃が強まる一方で、高級官僚の優遇や能力主義・業績主義による差別賃金体制については、拡大・強化が図られてきています。

 大阪府(知事部局)においても「新評価制度」導入(本年4月実施)が提案され、将来賃金への反映も検討するとしています。まさに、東京都の賃金状況が具体的に全国へ波及しつつあると言えます。

 民間における雇用形態の多様化・賃金システム改悪=安上がりの労働力を求める動き、とも連動した公務員制度における臨時・非常勤職員を活用していこうとする流れ(99年4月の地方公務員制度調査会報告「地方自治・新時代の地方公務員制度ー地方公務員制度改革の方向ー」)も視野にいれつつ賃金闘争のあり方を検討することと闘いの再構築が求められています。

 当面、現在愛学労が全国に先駆けて進めている賃金不払いに対する裁判闘争を全国の仲間とともに支援していきます。また、引き続き超勤問題・勤務時間の厳正化攻撃・昇任選考による賃金体系の複線化の拡大・臨時・非常勤職員の賃金(労働条件を含む)等の賃金問題に取り組みます。そのために各県毎の調査と情報交換も行っていきます。

 また、早期6級到達要求を基本に要求事項を検討しつつ賃金要求にかかる文部省交渉を継続していきます。

3.反コンピュータ合理化について

 全学労連は結成以来、一貫して「反コンピュータ闘争」の旗を掲げシステムの導入を阻止することを基本に取り組んできました。そして、多くの成果をあげてきました。

 しかし現状では、各自治体において全庁的システムとして導入される中で、学校現場だけをシステムから除外させることが困難になるなど、「地方行革」の進行、時代状況の変化に伴い新たな展開が求められています。 地方行革攻撃、また「学校行革」反対の闘いと併せて、コンピュータ利用・システム導入についてトータルに見ていくことによって、その問題点を明らかにしていく必要があります。 また、コンピュータ労働による労働災害でガイドラインの見直しを迫られる状況等、労働安全衛生問題での取り組みも必要になっています。

 各県も具体の課題に取り組みつつ「反コンピュータ闘争」について検討を行っていきます。

 また、「住民基本台帳法」が改悪されコンピュータによる住民管理が一層強化されようとしています。こうした動きに対する取り組みとともに個人情報保護や行政の情報公開等についての研究を進めていきます。

4.全国学校事務労働者交流集会について

 第29回全国学校事務労働者交流集会を福島(福島市)において開催します。すでに、会場に飯坂温泉「あづま荘」を全館確保して、福事労において全交流実行委員会が発足し8月4日〜5日の開催に向けて準備が進められています。

 全学労組への参加申し入れや、市民にも呼びかける等、広く「学校」全体の問題を論議できる内容の集会にしたいとの福事労の意向も含め、学校行革反対の闘いとも結合した交流集会にしていきたいと考えています。

 今年も多数の参加で元気を持ち帰れる全交流にしましょう。

5.行革との闘い、諸課題について

(1) 1府12省庁とする中央省庁の再編は行われたものの、大蔵省問題を含め、各省庁の 「権益」や従来の体質には手をつけず、末端部分の統廃合や民営化・民間委託によるリストラ合理化・人員削減を中心とするものになっています。

 また、昨年4月の地方公務員制度調査会報告は、労働法制改悪=「規制緩和」の流れとも相まって、従来本務採用を基本としてきた公務員制度を臨時・派遣労働を認め雇用の多様化を進める内容となっています。いま、国・地方を問わず行革の波は「規制緩和」「地方分権」「財政再建」の動きの中で制度改変を伴って押し寄せてきています。

 私たちは、学校行革反対の闘いとともに、労働分野をはじめ様々な分野で叫ばれている「規制緩和」に反対する動きとも連帯しながら、民営化・民間委託化反対等の取り組みが必要になっています。

(2) 当面、第6次定数改善の完全実施・全校配置実現に取り組むとともに、引き続き、学校事務職員の複数配置基準の大幅引き下げ、全校複数配置の実現を目指していきます。

 また、複数配置について図書館職員に限定するような配置には反対します。学校外勤務や配置のブロック化を求める動きに警戒を強め、定数削減・職階制強化・市町村費学校職員等の削減に反対して必要な取り組みを行います。

 「教職員配置の在り方に関する調査協力者会議」や「標準定数法(第6条)」改定の動向に警戒を強めながら、定数削減・職階制の強化につながる「学校事務の共同実施」・「定数の弾力化」に反対する取り組みを強化します。(反学校行革闘争)

(3) 92年3月、文部省の「小学校ならびに中学校施設整備指針」が策定され、事務室の整備について示されています。

 学校現場において私たちの働く場所の確保と整備は重要です。事務室設置の取り組みを強化します。

(4) 多くの法改悪とともに昨年夏、「日の丸・君が代」の法制化が強行されました。これによって「日の丸・君が代」の強制が更に強権的になっています。

 すでに、横浜市においては「卒業式・入学式等における国旗・国歌に対する対応シート」を配布し、教職員の対応をチェックするよう校長に指示をする事態が起こっています。

 文部省の実施状況調査など、強制を助長する動きに必要な対応をするとともに、学校行事での「日の丸・君が代」の押しつけに反対します。また、この問題での交流を深めます。

(5) 諸課題の解決を目指して、文部省交渉を強化します。とりわけ、定期交渉・賃金交渉だけでなく、課題に応じてその都度交渉を申し入れていきます。また、共済組合や福利厚生団体等についても必要に応じて交渉・申入れ等の取り組みを行います。

(6) 賃金・労働条件の各県状況・問題点について研究を深めます。

(7) 全国学校労働者組合連絡会(全学労組)の交流集会への参加をはじめ相互の交流を図っていきます。

6.各地の闘いへの支援・連帯について

 兵庫・大阪・愛知・沖縄の各学労の闘いへの全国の仲間の支援は、多くの成果と学校事務労働運動に貴重な財産をつくってきました。各地の闘争に対し、要請に応じ可能な限りの支援・連帯を行います。

 また、昨年 改悪・制定が強行された「新ガイドライン関連法(周辺事態法)」・「労働者派遣法」・「組織的犯罪対策法(盗聴法)」等、反基地・反安保の闘い、労働法制改悪反対・(労働組合・市民団体)弾圧法反対等の課題についても各学労の協力を得つつ全国課題として主体的な取り組みを目指します。

7.組織強化・拡大について

 全学労連を全国の仲間に強くアピールするために、学校事務労働者を結ぶ情宣の配布網の一層の拡大を目指していきます。また、学労結成の展望が当面ない地方の仲間とも、オブザーバー加入・情報交換会なども通じて連絡を密にしていくとともにオルグ活動を行います。独自組合結成の動きに支援・協力していきます。

 「学校行革」反対の闘いを機に各組合・団体の学習会への講師派遣(旅費)等の財政措置を行いました。各学労においてもこれらを生かし組織の強化・拡大に取り組みます。そして、「財政」「事務局体制」「全国展開」の面での検討を行い全学労連の組織的飛躍を目指します。当面、事務局体制の強化を図っていきます。

8.労働戦線について

 「全的統一」という名で行われた労働戦線の分裂を批判してきた立場から、多くの問題を持つ「連合路線」には反合理化の視点を堅持しつつ具体的課題を通じて反対していきます。

 「オール与党化」の流れの中「野党」として、自立した学校事務労働運動の創造・構築を目指します。また、職場・地域に根ざし自立した運動を進める多方面の労働者との連帯を大切にします。

全学労連2000年度活動計画(全交流まで)

4月 22日(土) 第1回事務局会議
5月 14日(日) 第2回事務局会議
15日(月) 中央省庁折衝
6月 3日(土) 第3回事務局会議
7月 1日(土) 第4回事務局会議
7月 中旬 文部省交渉
8月 3日(木) 全国代表者会議(福島県福島市飯坂温泉 あづま荘)

目前に迫った“二重の合理化”

管理強化と人員削減、そして学校は…

全学労連学校行革対策委員会

地方の合理化を促進?

 第六次定数改善計画が今年度で終了する。その後については、中教審により、改革のメニューは提示されているものの、とりあえず文部省が独自で進行出来ているのは、さほど金のかからない省令レベルで対処できるものだけである。第七次「計画」と呼べるかどうかも怪しいが、その財源的な保証は何も無く、その中身は「弾力的運用」とか「職種枠の見直し」などという何ら具体性の無いものしか示されていない。具体的な教職員定数のあり方を(たぶん?)論議していた協力者会議は、半年近くも議事録を公開せず、密室に封印したまま5月19日に報告の発表をした。すなわち、文部省にとって「教育改革」の広報の段階は既に終ったということだ。

 その中身は、今までのような定数改善は、国には金が無いから都道府県が金を出すならやっても良いし、常勤職員を非常勤職員に置き換える等の工夫も「弾力的」にやらせてやるというものだ。地方に合理化努力を求めている。“ありがたい”と言うべきなのだろうか?

 さらに、職種別定数枠を定めた定数標準法第六条の「弾力的」見直しが中教審答申で述べられていた事を忘れてはならない。これが現実のもとなれば、文部省は地方に、教員を増やしたければ、事務職員等の合理化をやれと言っているに等しい。しかも国庫負担金総枠の権益はしっかり確保したままなのだ。

最悪のシナリオ?

 学校管理規則の改定や主任制の強化が進められる一方で、他方では「世界一の借金」を抱えながらも「財政再建より景気回復」の基調で来た政策が、景気回復の兆しを感じる中で、再び財政再建基調にシフトする可能性が増えてきた。この状況は、学校労働者にとって最悪のシナリオとなりかねない危険性を秘めている。すなわち、制度面と財政面での、言い換えれば管理強化と人員削減という、“二重の合理化”攻撃が同時に襲って来るということである。

 もはや国庫闘争の時のように、“悪玉大蔵”に対する文部省の「活躍」という幻想すら抱かせる構図ではない。文部官僚にとっても今年度は、関係省庁との自らの生き残りをかけた闘争の年であり、彼らの「活躍」の場は学校行革の貫徹にこそあるのだから。

直ちに地方から声を

 こうした状況に対して我々は、「より良い」改革のメニュー提示のための努力よりも、二重の合理化によってもたらされる学校労働者の不利益からの防衛のための闘いと、それを許容する雇用者ヘの責任追及に、より多くの力を注がねばならないだろう。「当局」も消して一枚岩ではない。全学労連は全力をあげて、状況を分析し、各省間・国ー地方間の利害対立に楔を打ち込み、学校行革をぶっ飛ばす取り組みを進めていく。

 全国の仲間に訴える。当面8月末の概算要求前に、地方からの声を上げさせることが重要である。共に闘おう。

第29回全国学校事務労働者交流集会
第9回福島県学校事務交流集会

テーマ  学校社会に風穴を(仮)
日にち  2000年8月4日(金)〜5日(土)
場所  公立学校共済組合飯坂保養所「あづま荘」
時程
 【第1日目】 10:00〜 福事労分科会
  (1)福事労8年のあゆみ
  (2)全交流講座(分科会レクチャー)
  福事労劇団の公演も検討中
13:00〜 全体会
  ・基調報告
分科会
  第1分科会 「学校行革に立ち向かう」
  第2分科会 「職場・権利、各地の実態」
  第3分科会 「変わろう女性 変えよう職場!」
18:00〜 懇親会
20:00〜 ナイト・トーキング
  アルコールなしの座談会(アルコール座談会も有り)
 【第2日目】 9:00〜 分科会まとめ
11:00〜 全体会
  ・分科会報告・まとめ
14:00〜 講演会「演題 未定」

●参加費 2,000円 ●宿泊費 6,000円程度(1泊2食) ●懇親会費 3,000円(予定) ◆託児施設あり(2日間開設) ◆こどもツアー計画中


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