2001年6月2日
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全学労連ニュース今号の内容

 第七次「改善」計画による事務職員配置の実態―都道府県間の定数格差拡大と不安定雇用職員の増大

 第7次定数改善 〜福島版

 共同実施・7次定数で大阪府と第2回交渉

 「学校行革」への共同の反撃を!−5.11三省要請行動報告

 第30回全国学校事務労働者交流集会(全交流・大阪)

第七次「改善」計画による事務職員配置の実態

―都道府県間の定数格差拡大と不安定雇用職員の増大―

全学労連学校行革対策部 佐野 均

 第七次定数計画が開始された。学校事務職員については「きめ細かな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部門の強化対応を行う学校への加配」と表現され、5年間で726名、初年度145名を増員する計画であった。しかし、その基準は学級数や児童生徒数のような客観的なものではなく、「きめ細かな…」とか「事務部門の強化対応…」などと言う抽象的なものでしかなく、全学労連は文部科学省(以下、文科省と略)の“お手盛り”構造を作っただけだと批判してきた。果たして計画初年度の実態はどうであったのか。

☆加配ゼロは8都県

 第七次計画による加配は全国で133名、当初計画を12名下回っている。一昨年前から行われている「共同実施研究加配」は昨年度より1県3名減の21県36名で、両者を足すと今年度169名の「加配」が行われたことになる。県ごとに見ると、最も多いのは宮崎県で、研究加配とあわせて19名が加配されている。これに対して全く加配が無かったのが、東京都を始めとして8都県に及ぶ。

 この差はどこからくるというのか?定数の増加を望むのは何処も同じであろう。文科省は、その8都県が「事務部門の強化対応」をしなかったというのだろうか。そこの行政が怠慢であり、教育の水準も劣るというのか。そうだとすれば、そういう県こそ加配して支援すべきなのではないだろうか…。

☆やっぱり“お手盛り”ダ!!

 加配するにしても、実際の対応はチグハグである。全学労連の調査では、北海道・埼玉・愛知・大阪・沖縄で申請人数を値切られている。中でも大阪は24名申請して僅か4名の加配、沖縄は5名申請したのに第七次加配分は無しで、要求もしていない共同実施研究加配が1名押し付けられている。

 当初地方からの加配要求総数が、約300名になるという情報があった。今年度計画が145名ということからすれば、当然減らされるのはやむをえないと一応納得できる。しかし、兵庫などは当初申請をしていなかったにも関わらず、今年2月中旬にもなって文科省から“申請を要請”(?!)され、一気に宮崎の19名に次ぐ全国2位の加配数を受けることになった。これはいったいどう説明がつくのか。兵庫が「事務部門の対応強化」をしていると文科省に高く評価されていたからだろうか。それとも単なる土壇場での数合わせか…。

 

加配のありようはその県に対する文科省の査定が反映するとするならば、大阪などはよほど文科省の評価が悪いことになる。しかもそれが何故なのか明らかにされることは無い。これを“恣意的な定数改善”、“お手盛り”と呼ばず何と呼ぶのか。この調子で計画が進められれば、都道府県間の定数格差が拡大するばかりであろう。

☆申請理由の表と裏の間に…

 文科省に出された申請の理由を見ると、意外なほど共同実施を前面に立てたものは少なく、コンピュータに関連したものが目立っている。しかし、よくよく見ると、事務処理の「効率化・集中化」、学校間の「連携協力」等とセットで出されているケースもあり、将来的に共同実施に結びつく可能性は高いといえよう。むしろストレートに共同実施が言われるよりも、実態が先行する分だけ危険性が高まったとも考えられる。

 文科省はコンピュータ関連だけではせいぜい一、二年しか持たないと、圧力をかけたらしいが、もっと露骨に共同実施を理由として欲しかったのだろうか。

 また、表向きのもっともらしい理由付けとは裏腹に、実際は過員対策や複数配置校を増やす為に加配定数を使っているケースもあり、今後の文科省の締め付けを警戒する必要があるが、むしろこの方が地方の欲求を素直に反映していると言える。元々客観基準の無い加配というやり方じたいが無理なのだ。

☆本当に改善か?

 見逃してならないのは、もっともらしい理由付けをされた加配で実際配置されたのは、殆どが臨時的任用の職員であるということだ。採用する地方の立場からすれば、それも無理も無い。文科省の曖昧な“お手盛り”基準では、いつまで定数が確保できるかどうか不安で、とても本採用をする気にはなれまい。

 すなわち低賃金で不安定な雇用の学校事務職員の比率が増えたということだ。それは教員の加配に関しても同じことが言える。いかに国庫負担するとはいえ、安上がりで済ませる結果になっているのは明らかだ。しかも「事務部門の強化対応」などと綺麗事を言っても、事務職員間に任用上の差別・分断を、制度的には“強化”どころか空洞化を持ち込んでいるだけである。果たしてこれは学校事務職員制度にとって改善なのだろうか。このまま進めば、国庫が外される日もそう遠くないかもしれない。

☆配置基準の明確化と本採用化を求めよう

 根本的な問題点は、抽象的な「基準」による加配と言うやり方にある。文科省は地方に対する権限を保持したいのだろうが、改善にもならない政策で大きな顔をされてはたまらない。

 我々が求めるのは、学校事務労働者と学校全体の改善となる定数政策である。日教組事務職員部も全事研も「処遇改善」を言うならば、一部の人間の地位向上ばかり求めていないで、学校事務職員制度総体が地盤沈下しかねない「改善」をこそ問題にすべきではないだろうか。

 

第7次定数改善各県状況

第7次定数改善 〜福島版〜

 「きめ細かな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部内の強化対応を行う学校」という代名詞を持つ学校が県内で2校出現した。(小中各1名、計2名)

 県教委は第7次定数改善の5年間に、7教育事務所の小中学校に各1名ずつ、計14名の改善を計画している。

 その方針を4つ列記しているが、

 第1が文部科学省のいう「きめ細かな――」「単に事務処理の平均化として使用しない」「5年間で14名」「複数校には配置しない」となっている。

 2つの学校からあがってきた申請の作文を眺めた時、その稚拙さにあきれるばかりである。

 要するに、支援とは印刷担当、メールの送受信、ホームページの管理・維持・変更(情報化に対応して)、各学年の予算執行(予算の効率的運用)、各学年の事務処理担当(事務処理の効率化)と、仕事と言えば仕事、そこまで改善という名目を当てるかと感心することしきりである。

 学校事務とは何か、この申請を一読したある事務職員曰く「この仕事を続けるのが嫌になった」さもありなん。

 改善のための方便だからと言うのでは益々納得できないのだが――。

 県教委は、具体的な尺度を設けて評価するとしている。楽しみではある。

 

第7次定数改善各県状況

共同実施・7次定数で大阪府と第2回交渉

教育不在 金と数の管理のみ!

 阪学労は、昨年大阪府教委の共同実施研究加配・7次定数に関わる文部省要求前に交渉を行なったが、今回、文部科学省からの加配内示があったのを受けて、第2回交渉を行なった。

 府教委は3月8日、文部科学省から電話で(例年は文書で内示)「内内示」と言う形で連絡を受け、3月12日の府下市町村人事担当者会議の際、当該市へ個別に内示したことを明らかにした。その内容は、地域的なまた他の職種とのバランスを考慮し、小学校2名、中学校2名を配置し、共同実施の研究加配は継続して配置していることを明らかにした。

 阪学労は、7次定数改善計画の「加配方式」の持つ問題点を示し、府教委の姿勢を追及した。

 それは、

 等々である。

 府教委は、加配定数配置の恣意的人事を否定しつつも、文部科学省から下りてきた定数の配置先は、府教委の判断であることを強調。各都道府県への加配定数配置が文部科学省の権限であるように、府教委も「権限」をちらつかせた。

 また、就学援助加配については「国庫負担の関係で言えば、就援で取っても7次で取っても同じ」とか、「標準定数法は国庫負担の物差しで、実際の配置が基準を下回ってもペナルティーはない」などと、極めて問題のある発言を行なった。財政難を理由に、就援加配事務職員給与の府負担分の予算が捻出できないとして、標準定数法を下回る配置しかしていない府教委は、ペナルティーがないことを自らの非を正当化する根拠にしている。

 義務教育平等の条件としてある、市町村立学校給与負担法・義務教育費国庫負担法の理念を逸脱している、と言わざるを得ない。

 定数と財源の管理にしか目の行かない府教委は、教育の理念を忘れた単なる「企業経営者」に成り下がった。

共同実施研究加配・7次定数加配をめぐる経緯−大阪−

「学校行革」への共同の反撃を!

−5.11三省要請行動報告に代えて−

全学労連事務局 羽成 純

 全学労連は5月11日、文部科学省・財務省・総務省への要請行動を展開した(これと併せて国会議員への要請も行った)。以下、三省要請の簡単な報告をしたい。

「学校行革」攻撃に対抗する私たちの意志を伝える

《対文部科学省要請》

 別掲要望書(抜粋)を提出するとともに、7月初旬の本交渉に向け折衝していくことを確認した。学校事務の共同実施と連動した恣意的な加配による「定数改善」(その実態の一端は本誌No.235掲載の神奈川からの報告などを参照)は職階制強化につながることを指摘し、抜本的な定数改善を改めて要求した。臨時労働者の本格的な導入(義務標準法の改定もその一環)は、更なる学校労働者間の差別分断支配につながること、このことと「不適格教員」「問題を起こす子ども」の排除、「奉仕活動義務化」などを狙ういわゆる「教育改革」関連法案−「日の丸・君が代」強制による処分体制とは密接不可分であることを指摘、これらに断固反対していくことを表明して行動を終えた。

「構造改革」という名の制度改悪を許さない!

《対財務省・総務省要請》

 財務省は依然として「実際の教育に携わらない事務・栄養士の人件費は義務教育費国庫負担制度になじまない」と露骨な職階差別の論理を繰り返しつつ、小泉政権による「聖域なき構造改革」を強調した。

 総務省は地方財政計画によって国庫の「ウラ負担」はしていくと、おざなりな回答のみ。

 財政危機を口実とした「構造改革」の一環として既に地方交付税交付金削減−基準財政需要額の一兆円削減が財務省によって提起されている(’01.5.28衆院)。より一層の市場原理(実は政策主体の責任を放棄した無責任原理)の導入は必至である。それがもたらすのは、雇用、医療、福祉、教育などの基本的制度の破壊である。改憲、靖国参拝を公言し軍拡−戦争国家への道を突き進もうとする現政権への批判、国−地方を貫く「行革」への反対を明確にしつつ、義務教育費国庫負担制度からの事務・栄養士人件費の適用除外反対を両者に訴え要請行動を終えた。

《付記》

イラスト

 千葉学校合同の渡壁書記長が5月8日、校長によって刑事告発され逮捕された。勾留期限ぎりぎりの5月30日に起訴された。理由は校長に対する「傷害容疑」だが、本人が否認しているにもかかわらず、千葉県教委は「信用失墜行為」を理由に「懲戒免職処分」を強行した(5月31日)。この仕組まれた弾圧は、管理教育、「日の丸・君が代」強制などに反対してきた渡壁さんに対する政治的・思想的弾圧であり、「不適格教員」排除を狙う地教行法改悪の先取り攻撃としてある。「学校行革」反対の闘いにはっきりと位置付け、全学労組とも連携しつつ共に渡壁さんへの弾圧を許さず、処分を撤回させる取り組みに連なっていきたいと思う。

 

全国学校事務労働組合連絡会議

第30回全国学校事務労働者交流集会(全交流・大阪)

●「学校行革」には負けへんで●

 

8月3日(金)〜4日(土)

会場:大阪市「シャトーテル大手前」(大阪城の横)

主催:全国学校事務労働組合連絡会議

参加費:2,000円

 この夏、大阪が熱い。

 全国から学校事務職員が集うからです。

 4月に第7次定数改善計画の初年度として全国で130余名の加配が行われました。併行して前年度から引き続き共同実施研究加配も継続中です。

 一方、「教育再編」によって学校が揺れています。

 臨時職員など多種多様に職員構成が変化、また勤務成績評価など管理強化も進んでいるのです。

 また、コンピュータ化の進行や県・市町村からの業務の委譲などにより、仕事が増加・変化しています。

 これらの出来事を持ち寄り、明日から1人の学校事務労働者として心豊かに生きるための知恵を出し合う場:それが「全交流・大阪」です。

[集会要綱]

<第1日目>

全体会

●来賓あいさつ

酒井雅親さん(元「都学労」書記長)

学校事務職員の組合「都学労」を旗揚げした時の中心メンバーの酒井さんは、今年4月、定年退職されました。当時の熱い思いと後輩に送るメッセージが語られるはずです。

●特別報告

教員を中心とした、全国17の独立組合で構成する全国学校労働者組合連絡会(全学労組)から、「教育再編」の波に立ち向かっている現場を語る。

●基調報告

全学労連事務局からの報告。

学校と学校事務職員を取り巻く状況とそれに対処するための手だて、知恵を提起。

懇親会

なつかしい顔、初めて会う人。一堂に会して語り合う楽しいひととき。各県の近況も聞けてより身近になれる場。食い倒れの場とも?

<第2日目>

分科会

第1分科会『第7次定数の実際と「共同実施」』

・レポート「大阪の実態」他1県・「全国実態」(全学労連事務局)

第2分科会『日常業務はどうなるの』

・レポート「給与旅費のコンピュータ化」(愛知)・「報告事務のペーパーレス化」(神奈川)・「“特色づくり推進費”騒動」(神奈川)

第3分科会『進む管理強化を点検する』

・レポート「日の丸・君が代、勤務時間」(神奈川)・「文部科学省の服務調査顛末」(北学労)・「教育再編と格闘中」(全学労組)

第4分科会『が変わる』

・レポート「再任用各地の実際」(全学労連事務局)・「職場から見る問題点」(福島)

まとめの会・各分科会の討議報告とまとめ

紙上レポート・加盟組合の「年間ニュース集」

[時程](予定)

8月3日(金)

10:00〜受付 10:30〜全体会・分科会 18:00〜20:00懇親会

8月4日(土)

9:00〜12:30分科会 14:00〜15:00まとめの会

[申込み手続き等]

●連絡先

横浜市立梅林小学校    池上 仁

電話:045−773−0341(職場) FAX:045−312−4423(全学労連)

※宿泊希望も同様に

●資料のみの購入の場合

・郵便振替にて下記口座へ

全学労連 口座番号 00160-6-34582

横浜市西区平沼1−4−8椎野ビル3F(「全交流資料購入」と明記)

・2,000円(送料込)

●宿泊希望者

上記連絡時に申し出てください。6月30日締め切り

●情報(ホームページ)

homepage2.nifty.com/gakuro/ 一度アクセスしてくださいネ。

イラスト・このままでいいの

【編集後記のようなモノ】

"情報"とは怖いモノで、一人歩きをしてしまう。同じ所から同時に発信された"情報"でも人の受け取り方が全く違う場合がある。それを受けた時の人の気持ち、スタンスの違い、ニュアンス・語尾の勘違い…。それをまた次の人に同じように"伝言ゲーム"をしていく…。

"情報化"と言われる昨今。何が"真実"なのかを見極め、的確に判断し、慎重に扱う事が、また重要になっている。(よ)


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