2002年1月10日
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全学労連ニュース今号の内容

 12.7 全国総決起集会

 「改革」の名の下に、何が行われようとしているのか―12.7三省要請行動報告

 総決起集会 参加者報告

 21世紀を生き延びるために

 育休法改定!果たしてその実は!?

 国庫・国会請願署名今年も採択

12.7 全国総決起集会

 全学労連と東学主催の「国庫負担はずし阻止!学校行革反対!賃金削減攻撃粉砕!全国総決起集会」が12月7日、東京永田町の星陵会館で開催された。

 今年は全学労連・東学の組合員と全学労組等の支援を受け全国から総勢130名の仲間が結集した。

 全学労連菅原議長、東学要田執行委員長の挨拶のあと、情勢報告。「国庫問題に関しては、時期的に法改正を伴う制度の変更が無理なので来年度は守れるだろう。が、経済財政諮問会議、あるいは地方分権改革推進会議等、省庁を越えたレベルでの議論や公務員制度改革といった小泉「構造改革」の真っ只中、来年以降、更なる厳しさは必至。」と、今後の国庫への闘いを再構築していく必要が指摘された。また、支援共闘団体の挨拶の中で、「不適格教員」排除問題や、民間での更なる合理化、リストラ、さらには日の丸君が代処分と現在の学校、社会での労働者全体の問題の報告を受け参加者も決意を新たにした。集会宣言とアフガン攻撃反対・日本参戦抗議の特別アピールを確認し、終了予定時間を超える熱い集会は幕を閉じた。その後、官庁街へデモ行進。参加者は文科省、財務省へ怒り声をシュプレヒコールでぶつけた。

 

「改革」の名の下に、何が行われようとしているのか

―12.7三省要請行動報告に代えて―

全学労連事務局   羽成 純

はじめに

 全学労連と東学は全国集会・デモに先立って三省行動を展開した。「『地方財政対策』は例年12月中旬に出される。時期的に事務・栄養職員の国庫負担を外せる段階ではない」という総務省担当者の言葉が示すように、来年度については国庫負担外しがないことは確認された。しかし、小泉政権による「構造改革」の下、この間の経済財政諮問会議、地方分権改革推進会議の動きと絡み合った三省の発言は、義務教育費国庫負担制度自体の変容を含む学校行革攻撃の本格的開始を痛感させるものであった。

三省の発言は何を意味するのか

 今回の要請において各省担当者が語った言葉を拾ってみる。

≪文部科学省≫
「文科省としては厳しい財政状況の中で何故学校の定数改善なのか、『教育改革』の実は上がっているのかを財務省に示さなくてはならない」、「都道府県から政令市に教職員給与の1/2負担を移し、任命権者と給与負担者を一致させるということについては検討を開始したところだ(注1)。
≪財務省≫
「第7次教職員定数改善計画がスタートしたからといって、単年度毎の見直しをやめるということにはならない」、「国がどの範囲を負担していくのかという議論をやめるということはない。教壇に立たない職員の人件費まで国が面倒を見ることは適当なのかについても引き続き議論していく(注2)。財務省としての軸はぶれていない」。
≪総務省≫
「地方分権と地方財政の抑制という大枠で動いている。市町村合併もその観点から推進している」、「政令市への教職員給与負担の移行が、国庫負担率の変更や市町村合併による政令市見直しと連動していくのか否かについてはわからない」。

 「教育改革国民会議」がそうであったように、極めて恣意的な「〜会議」「〜審議会」における議論や意見があたかも客観性をもつかのように扱われ、世論操作がなされやがて政策化されていく。労働運動等の圧倒的な衰退と代議制政治の空洞化を背景にしたこんな民主主義のひとかけらも存在しないやり方を私たちは断じて認めることはできない。

「教育」や「地方分権」という言葉で語られるものの内実を暴露−批判し反撃していこう!

 12月20日、財務省は’02年度予算原案を内示した(24日閣議決定)。「第7次教職員定数改善計画」は2年目に入る。

 「一部教科で少人数指導を可能にするため今年度から始まった小中学校の教員定数の増員も当初計画通り5,380人分認められた」(「朝日'01.12.21」)。

 「事務処理の効率化・集中化」を掲げ、「共同実施」などを進めようとする事務職員の7次加配が決して定数改善とはいえない代物であることは、全学労連がこの間明らかにしてきたことであるが、教員においても同様であることが次第にはっきりしつつある。文科省は来年度からの新教育課程で、「少人数指導」(という名の能力別授業)をやるため加配教員(臨時労働者導入を前提)の担当時間で不足する分をいわゆる教員の「空き時間」をなくして対応しようとしている(千葉学校労働者合同組合ニュース『学校合同』No.63 '01.12.3付「空き時間がなくなる!週5日制で減った授業時数を他の日に貼りつける!!」より)(注3)。

 財務省が’84年以来一貫して示し続けてきている「教壇に立つ、立たない」ことをもって学校で働く人間を差別していく論理を持ち出すまでもなく、政府―文科省が揚げる「教育改革」の内実は、学校労働者への重層的な差別と一体的な子どもたちへの能力主義教育の徹底以外の何者でもない。更に言えば、政令市への教職員給与負担移行が、仮に文科省が言うとおり行われたとしても、そこに出現するのは「日の丸・君が代チェックシート」で全国にその名を知られた横浜市(教委)のような権力的政令市でしかない。「地方分権」は結局、国―地方を貫く権力構造の再編なのだ。

 アメリカ合衆国中枢へのテロ、いわゆる「9.11事件」とその後の世界が示している閉塞状況。戦争国家体制を強めつつあるこの国で語られる「教育改革」「地方分権改革」という虚ろな言葉はこの状況と対応している。私たちはどのような現実と対峙しているのかを見据えつつ「学校行革」と闘っていきたいと思う。

注1注2 いずれも地方分権改革推進会議ヒヤリングにおける文科省、財務省の発言(資料)の繰り返しに過ぎない。付け加えれば経済財政諮問会議の中で「国の地方に対する関与の廃止事例」として学校事務職員等の必置規制が唐突に指摘され('01.11.2付 牛尾治朗他「21世紀型地方行財政制度の確立に向けて−地方でできることは地方へ−」)、そのことを含めた検討について、地方分権改革推進会議で言及されている('01.12.12付 中間論点整理)。

注3 「障害」をもった子どもたちを、より緻密に隔離し振り分けていこうとする文科省が狙う「学校教育法施行令」改悪は、「少人数指導」と密接不可分なものだ。能力を原理とした教育は遂に普通学級で「障害」児が学ぶことを違法とみなすところに行き着こうとしている。どの子も普通学級で共に生きていくことを目指してきた運動も正念場を迎えている。

 

総決起集会 参加者報告

福島県学校事務労働組合  Kさん

 今年もまた、この季節を迎えた。今回の中央行動へは組合員19名が参加している。参加者は各自の交通手段・経路で都内、星陵会館へ向かい会場で合流した。会場には、すでに全国の仲間達が集合していたのだが、何故か私たち「福事労」の組合旗を見つけることができなかった。(後に聞けば、高速バス使用の参加組は、バスが予定時間より大幅に遅れて到着とのこと。)

 全学労連と東京都学校事務職員労働組合が主催の総決起集会。今年のスローガンは、「国庫負担はずし阻止!学校行革反対!賃金削減攻撃粉砕!」であった。共闘関係にある団体からのあいさつ、各地からの報告とそれに聞き入る会場の仲間たちの真剣な表情を見て、私たちをとりまく状況の厳しさを再認識することになった。中でも「国立」のその後は、これからの学校職場を先取りしているかのように感じながらも、それでもなお、声をあげ闘い続ける人たちがいることを知り、勇気をもらった。

 季節を感じさせる風の中、いつもより短いコースのデモ行進。官庁街を行く人々は、きっと、このような光景は見慣れているのだろうなあと考えながら隊列に参加していた。今年は新たに「行革」(反対)!「合理化」(粉砕)!のかけあいのシュプレヒコールもあった。文部科学省前、財務省前でのシュプレヒコールはデモ隊の怒りから力強いものとなった。今年で18度目の国庫負担問題。当初の財政当局による予算編成の観点から、小泉政権が押し進める「構造改革」という大きな流れの中で「地方分権」・「規制緩和」という新たな観点から議論が開始されている。全学労連がいう「新たな局面」に危機感、警戒感をもちながら、国庫負担堅持の運動を再度構築していかなければならない。

―追伸―

 来年度より運用が開始される再任用制度について、福島では、学校事務職員は「当面」常時勤務のみの任用。職務の級は5級として、この秋県教委と整理した。職務に級についても「当面」であり、流動的な側面をもっている。組織内においては、この「常時勤務のみの任用」とする整理についてまだまだ議論していかなければならない。

 

21世紀を生き延びるために

全学労連議長  菅原 孝

戒厳令の時代を生き延びるために

 中国の近くで、日本の海上保安庁が「不審船」を沈めた。ひょっとしたら保安庁の船が沈んでいたかもしれない。情報を握った自衛隊は、保安庁に領海外まで追いかけさせ、戦争一歩前まで事態を進めさせた。そして、ガイドライン、盗聴法、日の丸君が代法を成立させ、昨年はアフガン参戦まで進めた政府は、今回の事件を契機に「有事立法」を、つまり「戒厳令」「非常事態宣言」を目指した動きを始めたのだ。

 政府は、底無しの不況と史上最大の失業者を前に、「希望」を失った人々の眼を外に向けさせようとする欲望から逃れられるだろうか。「教え子を戦場に送らない」どころではない。日本は21世紀に「戦争の国」になったのであり、日本国民は「戦争をする国民」になったのである。

 学校はすでに「戒厳令状態」になっている。式で立たなかっただけの職員に処分がだされ、公安警察のでっち上げ逮捕、起訴が起きている。このような「思想信条の自由」が気散らかされている学校の状態が、社会に広げられていく。

 わたしたちが21世紀を生き延びるためには、戦争に参加しないためには、職場で地域で、長い地道な「戒厳令状態」に抗する取り組みを続けよう。

敗者が生き延びるために

 小泉「構造改革」は、「徹底した規制緩和」が大きな柱になっており、そこには競争で勝ち残る者の思想しかない。敗れたものにも自己責任を負わせ、勝ち残るものにだけ富が分配されていく。

 返すことなど不可能にまで膨れ上がった借金を抱えた政府は、財政の守備範囲を切り詰め、分配構造を変えざるをえなくし、「大きな権力を持った小さな政府」に姿を変えるだろう。その結果もまた、地方へのツケ回しと国民負担の増大であり、敗者の生存を脅かすことになる。

 「共同実施」に浮かれる人々がどう足掻いても、小泉「構造改革」は、学校事務職員を勝者にしてはくれない。そうであればこそ、私たちは圧倒的多数の敗者の仲間たちとともに「構造改革」への反旗を振りかざし続けなれぱならない。

公務員制度、国庫負担制度改悪の中を生き延びるために

 昨年末、政府が出した「公務員制度改革大綱」は、これまで少なくとも言っていた「国民のための公務員」から、「国家権力中枢の公務員」と「労働者の権利を奪われた奴隷的公務員」にしてしまうものだし、ついでに「奴隷の賃金を奪い取り、権力中枢の公務員に分配する」と言ったにすぎない。

 また、この10年間財政上の問題とされてきた「国庫負担はずし」が、「地方分権」や「規制緩和」の分野で議論されてきている。財務省の差し金で動きはじめているのだろうが、新たな段階に入ってきたのだ。

 まさに、踏んだり蹴ったの時代になっている。私たちはこれまでの学校事務労働運動を踏まえ、さらに多くの「学校事務職員の怒り」を結集させていくが求められいる。全学労連は、その怒りの結集軸として役割を果たすために、2002年をたたかい抜く。

 

育休法改定!果たしてその実は!?

全学労連事務局  松下由香

 11月30日、地方公務員の育児休業に関する法律の改正案が可決した。  期限付採用の職員も取得できるようにするとか、育児休業手当金の率を上げるなどの修正案も出されていたが、結局、今回決まったのは、3歳まで取得できることと、育休補充職員は、1年を超える採用ができる任期付採用(この職員に関しては、試験とか、選考とかで採用をするようになるらしい。)という形態が増えることだけである。ちなみに、取得できる回数については、今後弾力的に考えていく。ということである。(なお、経済的援助のあり方について引き続き検討をすることなど、いちおう付帯決議もなされた。)

 さて、3歳になるまで育休を取得したとすると、1歳を超えれば手当金は出ない。共済組合の掛金は払わなければならない。そう考えると、なかなか3歳までというのは浸透しないのではないだろうか?

 ところで、育休が3歳まで取得できるようになって、果たして子供は増えるのだろうか?

 この改正によって増えるのは、子供ではなく3歳まで取得することによる経済的な負担と、臨時的任用職員。それに伴う私たち事務職員の業務なのではないかと思われてならない。

 なお、この件に関する会議録を読むと結構面白い。

 「日本は、高齢化社会で困っている。高齢化社会をやめるためには、少子化をやめればいい。」「民間で、育児休業手当金は1歳までしか支給していないから、公務員だけ支給年齢を上げるわけにはいかない。でも育休は、公務員が率先して3歳まで取得しなければ。」などの発言の数々に失笑してしまった。興味のある方は、参議院のHPを覗いてほしい。

 

国庫・国会請願署名今年も採択

 全学労連の国庫負担堅持国会請願署名に多数の皆様のご協力をいただき有り難うございました。請願署名は、衆議院 中川智子・辻元清美両議員、参議院 島袋宗康・大脇雅子両議員にそれぞれ紹介議員になっていただき、国会に提出しました。12月10日、両院共に請願が採択され、内閣に送付されました。全学労連に集う各組合が今年も取り組んだ各県市町村議会への陳情行動→内閣総理大臣・財務大臣・文部科学大臣・総務大臣への意見書送付と相俟って、国庫闘争18度目の勝利に大きく貢献しました。

 署名にご協力くださった皆さん、そして紹介議員の労をとっていただいた4名の議員の皆さんに心から感謝いたします。


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