2002年2月10日
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全学労連ニュース今号の内容

 根津公子さん―石川中、多摩中での闘い

 学校行革ショートレポート

根津公子さん―石川中、多摩中での闘い

がくろう神奈川 京極紀子

 1/12、東京・多摩市役所の隣のホールで「根津さん処分をとめよう!」緊急集会が開かれた。現在進行形でかけられている根津さんへの攻撃をはね返していこう!というみんなの思いで会場はいっぱいになった。根津さん問題とは何かを考えてみる。

改「正」地教行法1月施行

 教育改革関連法の一貫として改「正」地教行法がこの1月から施行。いわゆる指導力不足「等」教員として指導性や適格性に欠ける教員を他の職種へ配置換えできる法律。判断基準はあいまいであり、本当の狙いは、当局が「不適格」と認定すれば、免職が可能なシステムを制度化したことだ。

 東京都では、国に先がけ独自の「要綱」を作り、当局に都合の悪い教員を「研修」名目で研修センター等へ隔離する攻撃が始まっている(東京都学校ユニオンの増田さんに対する都研修所送りは「要綱」にも基づかないヒドイ攻撃だ)。

 多摩市多摩中学校の家庭科教員根津公子さんは今、その攻撃に立たされているといえるだろう。

石川中裁判―公教育とは何かを問う闘い

 根津さんは前任の八王子石川中で、99年2月、中三の生徒たちへの家庭科の最後の授業で、職員会議の討議を無視し、上からの命令に従い一方的に「日の丸・君が代」を強制してくる校長の姿は、「オウム」の中でのマインドコントロールされた命令―服従の形と同様ではないか、とするプリントの内容等が問題にされ、「公務員として適性を欠く行為」として市教委より文書訓告処分を受けた。

 根津さんが言いたかったことは「自分の頭で考え、判断する力を持った人になってほしい」ということ。彼女は処分を不服として裁判に訴え争っている。「国旗・国家」法後、初の処分撤回を求める裁判であり、公教育とは何か、国は教室にどこまで踏み込めるかを問う裁判でもあるのだ。

 職場や地域に広がりをもつ根津さんへのいやがらせとして都教委は2年前、彼女を多摩中へ強制異動させた。多摩中の校長には、根津さんを現場から追い出すための使命が最初から与えられていたのだと思う。

「指導力不足等」教員 申請へ―できあがているシナリオ

 そして2年。今回の攻撃は去年の3月の卒業式を背景に3年生3学期「従軍慰安婦」の授業が発端だ。突然の授業監視の始まり。4月になって匿名の市民からの「一通の苦情の手紙」を根拠として市教委による事情聴取、長期の授業監視、デマ情報をもとにした保護者会でのつるし上げ、校長による「職務命令」の乱発(「ピースリボンの着用を禁ずる」なんて職務命令も!)…etc。所属する多摩教組の団交申し入れは拒否、組合がまいた事情説明の地域ビラも問題にされた。

 8月、市の「子ども議会」の中で多摩中の生徒が「『国旗・国家』についてをした教師がいる。国の象徴を汚す教師の授業は受けたくない」と発言。その発言は地元のケーブルテレビでくり返し放映された。

 9月になって校長から「指導力不足等」教員の申請が出され、市教委から都教委へ。全ては一つの筋書きとしてできあがっていたかにみえる。

息苦しい「学校」に自由の風を!根津さんの処分をとめよう!

 シナリオ通りにいけば、根津さんはとっくに都教研送りだ。何とか今のところ阻止出来ている。

 職場でも学区の地域でも孤立無援、日々人権を侵害される状況の中で、根津さんはよくもちこたえていると思う。

 根津さんには強さの「素」―多分、子どもたちの「生」へ向けた希望のようなものがあって、それがまわりの人を引きつけ、市民、教員の仲間たちが闘いを支えている。

 1/12の集会には200人以上が集まり、賛同者の数はそれ以上に。賛同人のひとりでもある作家の小森陽一さんは講演の中で、「根津さんへの攻撃は学校から民主主義が一掃されていく、その象徴である」と語った。川田龍平さんは会場から一参加者として発言、「人権アクティビストの立場から根津さんを支援していきたい」といった。

 「学者・文化人のアピール」も出され、根津さんの闘いは、教育の自由、私たちの民主主義を守る、獲得する闘いなのだという視点が広く共有化されてきている。

 しかし―「指導力不足等」という判定はいつ出されてもおかしくはなく、「職務命令違反」での処分の動きもある。

 良心的な教員たちが追い込まれていけば、「不良」事務職員を自認する私たち学労のメンバーも又一層追い込まれていく。自分たちの働く場、子どもたちの生きている空間としての「学校」をこれ以上悲惨なものにしないために、根津さんの闘いを私たちも全力で支援しよう!

※多摩・八王子各々の市民の会が校長、市・都教委への抗議や申し入れ、教育委員会議への請願などその活動は精力的だ。

 

学校行革ショートレポート

全学労連学校行革対策部 佐野 均

その壱 国庫負担問題の新たな、かつ一層深刻な動き

 地方分権改革推進会議は、昨年12月12日に「中間論点整理」を発表した。それによると、教育・文化の項目で、現行の義務教育費国庫負担制度を必要不可欠とする文部科学省の立場を認めつつも、制度見直しの方向を示唆している。

 具体的には学校事務職員・栄養職員の必置規制を無くし、人員削減合理化するために国庫負担制度を見直すのだということを、次のように述べている。

 「・・・昨今の栄養事情の顕著な改善に拘らず学校に栄養職員を配置し、あるいは事務の合理化が叫ばれる中で事務職員の配置を義務付けていること等については、国が一律の基準で義務付けるのではなく、そうした職員の配置の必要性等は各自治体の裁量に委ねるという観点からの検討が必要と考えられる。」(地方分権改革推進会議「中間論点整理」21ページ)

 同じような論調として、昨年11月経済財政諮問会議では、国の地方に対する関与の廃止事例として、学校事務職員・児童養護施設給食調理員・栄養職員の必置規制が挙げられている。

 両者は決して偶然の一致ではない。国庫負担問題は、すでに文教政策内部の議論でもなく、財務省と文部科学省の間の財源負担をめぐる争いでもなく、「規制緩和」・「地方分権」・「公務員制度改革」など、「構造改革」とかいう国の基本政策と連動して焦点化されている。ストレートに人員削減合理化を目的としていることが、我々にとってさらに深刻であり、問題のまったく新たな局面の到来を示している。

その弐 政令指定都市は教職員給与を自己負担、文部科学省が表明

 文部科学省は地方分権改革推進会議に「教育・文化の分野における当面の対応策等」と題した具体的見直し案を表明した。その中で「・・・事務処理の合理化、効率化を図る観点から、任命権者と給与負担者を一致させることとし、政令指定都市については教職員給与を県負担から自己負担とすることについて検討を行う。」と述べ、給与負担制度変更の方向を打ち出している。

 文部科学省にしてみれば、地方の教育行政を支配統括するのに有効な国庫負担制度を変えられことは省益に反する。地方分権の流れそのものには逆らえないので、何とか給与負担制度の変更だけに留めれば、国庫負担金自体は行き先が一部替わるだけなので文部科学省の省益は守られる。そのために代案を出したのであろう。

 省益はともかく、都道府県教委連合会によると、定数枠にとらわれず自らの裁量で職員配置をしたいという意見も地方の一部にあるという。この案の検討の過程で職種別定数の枠を外すという議論が再び復活しないか。人件費国庫負担金の残りの2分の1を負担することとなる政令指定都市が、その財源をどこに求めるのか。「定数の弾力的運用」や配置基準の曖昧な第七次定数計画が進められ、臨時・非常勤職員が増加している学校現場で不安定な雇用の一層の促進につながらないか等々、問題は多い。

その参 公務員制度改革は、国も地方も同時実施

 昨年12月25日に「公務員制度改革大綱」が発表された。結局一時話題になった労働基本権制約の撤廃は見送られたまま、一般職に能力等級制度・業績評価制度を取り入れた。ところが上級幹部職員にはこれを適用せず、別の任用・給与制度を適用するとしている。また民間からの人材確保と称して、民間企業の従業員としての地位の併有が出来るよう制度を変えると言う。これでは批判されている官僚主義や官民の癒着を解消できるかきわめて疑わしい。「大綱」などとたいそうな名前が泣くと思うのだが、石原行革担当大臣は記者会見で「50年ぶりの大改革」と持ち上げ、2006年度の実施を目指してがんばりたいと大見得を切っている。

 直接には国家公務員制度についてのものだが、大綱の最後に地方公務員制度についても「国家公務員法改正と同時期に地方公務員法の所要の改正を行う」と述べ。国家公務員制度の改革スケジュールに準じて速やかに所要の改革を実施するとしている。

その四 文部科学省の来年度予算を読む

 2002年度政府予算案が策定された。小泉政権の歳出削減で焦点化されている公共投資関係費は、前年当初と比べ1兆1133億4400万円(前年比10.7%)の減となった。一般会計の文教関係費は124億円(前年比0.2%)減である。

 国庫負担制度は維持され、第七次定数計画2年目へ向け来年度5380人の増員計画になっている。2001年度は同数の増員計画にもかかわらず、義務教育費国庫負担金自体は80億5200万円(前年比0.3%)の減で、教職員定数の自然減が増員分を上回っているということを示していたが、今回は411億4500万円(前年比1.4%)増加している。

 昨年は「指導力不足教員」への対応などに予算がつけられたが、今回は新規に「優秀な教員の表彰制度等に関する調査研究」等に50億6300万円が計上されている。上げたり下げたり忙しいことだ。教育改革国民会議で議論となっていた「奉仕活動」は「奉仕活動等の推進体制の整備」として8億4900万円が、新教育課程で学力低下への懸念が出されていることに対応して全国47地域の小中学校を「学力向上フロンティアスクール」に指定する事業に5億8200万円が、いずれも新規事業として予算化されている。

その伍 共同実施は学校事務職員制度の墓穴

 文部科学省は第七次定数計画2年目に向けて作業を進めている。昨年11月には各都道府県から定数配置予定数が出され、その数に基いて文部科学省が実際の定数配置を査定する。

 事務職員の加配に関しては、あいも変わらず学校事務の共同実施を推進している。それを目指して全県で取り組むところも出ているようだ。しかし中身も何も曖昧なまま「共同実施」という言葉だけが踊っていると言うのが実態ではないか。各学校にいる事務職員間の連絡や協力関係だけなら、実態としてはこれまでもあったわけだし、正しくそう呼べばよい。言葉を新しくしたから新しいことをやっていると思うのは幻想と言うものだ。

 それどころか先に述べたように「構造改革」により学校事務職員制度の根幹が崩されかねない。文部科学省は意図的に制度崩壊後の受け皿として共同実施を推進しているのではないかと勘繰りたくもなる。学校事務職員の必置規制がなくなれば人員削減合理化に頭を悩ます各自治体は、学校から事務職員を切り離す方策として大喜びで共同実施に飛びつくであろう。

 そのお先棒を担いで一生懸命「これからの学校事務職員のあるべき姿」とかで共同実施の研究にいそしんでいる学校事務職員は、真面目なのだろうが自らの墓穴を必至で掘っているという皮肉な役割を演じていることに早く気付くべきであろう。

全学労連へのカンパに感謝します

 昨年末も全国の仲間からたくさんカンパをいただきました。ありがとうございます。

 苦しい財政事情の中、事務局一同感謝に堪えません。大切に使わさせていただきます。全学労連は今年も、皆さんのご支援が無駄にならぬよう頑張っていきます。


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