2003年1月25日
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全学労連ニュース今号の内容

 来年度政府予算案を読む

 賃金の掠め取りを許さない!断固として、措置要求提出!

 虎の威を借る…全事研神谷会長の佐賀での熱弁

来年度政府予算案を読む

給与費の国庫負担は残った、しかし…

全学労連事務局 佐野 均

☆“痛み”を伴い、借金減らず…

 昨年末12月25日に2003年度政府予算案が決定された。歳入・歳出全体では前年比0.7%増となっているが、税収・その他の収入は10〜20%近く減少して公債金だけが21.5%伸びている。これに対して歳出の国債費の伸び率は0.8%のみで、予算額にして約16兆7,980億円。これは歳入の公債金36兆4,450億円より20兆円近く少ない。すなわち多く借りて返すのは少しだけという事で、要するに国の借金依存体質がより進んだということだ。

 一般会計の経費別歳出では、国債費や社会保障関係費・地方交付税交付金・地方特例交付金などが増えている以外は減少している経費が目立っている。小泉政権の緊縮財政の成果と言いたいところなのだろうが、その中身を見ると、いわゆる構造改革で生活保護や失業対策のための社会保障関係費が膨らんだり、義務教育費国庫負担金をはじめとする補助金・負担金の削減による地方への負担転嫁の穴埋めとしての地方交付税や特例交付金が増えている。いわば構造改革の“痛み”のツケがこれらの部分の増加として現れているわけで、歳出全体では0.7%増えているのだ。もちろんこれが“痛み”を癒すセイフティネットとして充分機能しているかどうかは極めて疑わしい。しかも先に述べたように国予算全体の借金は増加している。そして“痛み”だけが残される。

 借金依存から脱却するためならば、無駄な公共事業は止めなければならないのはもちろんである。忘れてはならないのは、他と比べてわずか30億円(0.1%)の小幅しか減らされず、毎年額にして5兆円近くを食いつぶしている防衛関係費こそが最悪の公共事業だということだ。有りもしない「脅威」を煽りたて、アメリカの尻馬に乗ってイージス艦を派遣したり、有事法制の制定を図ったりして、戦争ごっこの気分に浸り自己満足している場合ではない。雇用不安や景気の悪化で、民衆ばかりが痛い思いをするのは許されることではない。

☆義務教育費国庫負担制度全廃へ一歩進んだ?

 文部科学省は昨年8月末に、義務教育費国庫負担金のうち、退職手当や共済長期給付等の給与費以外の分を、4年間で合計5千億円削減し一般財源化する計画案を公表していた。道路公団や郵政事業公社が、みずからの権益を守るため、それぞれの族議員を動員して全力で抵抗していた時期である。それと同じように“抵抗勢力”と見られるのが嫌だったのか、それともいつも子どもに言っている責任上から真面目に締め切りを守ったに過ぎないのか良く判らないが、とにかく唯一「宿題」を提出して周囲から賞賛を受けるはずであった。

 しかしこの案は、地方分権改革推進会議や経済財政諮問会議の場で、格好の攻撃材料となってしまう。地方分権改革のためにこんなものでは不充分というわけだ。苦労してやった「宿題」も落第点をつけられてしまった。情勢判断が甘かったのか、真面目にやったのに踏んだり蹴ったりである。何しろこれ以外には叩くべき具体的な案が、何処からも出されていないのだから、「改革」をアピールしたい側はことさらに騒いで見せる必要がある。

 結局のところ義務教育費国庫負担金は、来年度予算では共済長期給付と公務災害補償基金負担金の2,184億円(来年度所要見込)分を一般財源化することとなった。当初の文部科学省の計画は、来年度は他の国庫負担の対象経費も含め1,219億円(来年度要求額ベース)分、以後毎年同程度の額を一般財源化し4年間で5千億円とするものであった。ところが予算編成の折衝の過程で、対象経費も変わり金額も単年度で倍近く増えている。このことは何を意味するのか。

 新聞報道によると、退職手当と児童手当分は引き続き検討し、再来年度予算編成までに結論を出すことを確認したという。だとすると4年計画が2年計画になったということだろうか。またこれに止まらず2006年度までに国庫負担金全額の一般財源化について検討するともいう。これは公務員制度改革と時期が一致する。

 要するに当初の5千億円の4年計画では、額も少ないし時間がかかり過ぎる。公務員制度改革に合わせて義務教育費国庫負担制度そのものを廃止するために、文科省がに差し出したものはさっさと削減して、さらに次を狙おうということなのだろう。

 いちおう来年度の教職員定数は、第七次計画通り5,380人分の措置が予算化されている。しかし国庫負担制度全体の危機にあって、少人数学級を「地方の裁量」というと聞こえは良いが、早い話が地方の負担で勝手にやりなさいというのがやっとという無責任さでは、いつ計画が消えるか判らない。もっとも加配方式などという計画なら無くても良いのかも知れないが…。

 合わせて指摘しておくが、来年度国庫補助負担金の削減額は全体で5,600億円程度になる。義務教育費国庫負担金の削減額はこの半分近くを占める。残りは公共事業関係などであるが、狙い撃ちされたとはいえ、単独の費目としてはずばぬけた金額である。

☆行き着くところは国民への負担転嫁

 地方財政収支見通しによると、この5,600億円の国庫補助負担金削減の影響で生じる地方の財源不足額は2,344億円になるという。これを地方特例交付金と地方交付税で1/2ずつ財源措置する。更にこの地方交付税分は交付税特別会計の借り入れで賄い、3/4は国負担分とし、残りの1/4は地方負担分とするという。すなわち地方の負担は財源不足額の1/8、金額で293億円に抑えられる計算となる。これは、税源委譲の無い補助負担金削減は地方への負担転嫁だと批判する総務省や地方6団体の主張に配慮した結果なのだろう。しかしこのことをもって地方負担が単純に1/8になったというのは大間違いである。

 第1に、このやり方により、冒頭で述べたように地方交付税や地方特例交付金の歳出額が増え、歳出全体の増加の一因になり、借金体質の進行につながっている。そのツケはやがて地方にも降りかかることになる。

 第2に、注意しなければならないが、2,344億円は地方の財源不足額であって、国から地方に来なくなる金額すなわち補助負担金の削減額は、あくまでも5,600億円なのだ。もちろん補助負担金の中には不要なものもあるだろうが、削減された補助負担金で必要なものは地方の財源で賄うほか無い。

 たとえば独自財源が多かったり歳出削減の努力により比較的財政が豊かだった自治体で、それまで独自の施策に使うことができた財源を、削減された補助負担金の穴埋めに回さねばならなくなる。しかしこの場合は財源不足として扱われない。財源不足額は、総務省が設定した基準財政需要額が基準財政収入額を上回った場合の差額である。つまり、机上の収支額であって、自治体の現実の財政努力を反映した収支ではない。

 このような財源不足額の7/8しか国は負担しない。しかもそれは地方特例交付金と地方交付税で措置するので、不交付団体にはいかない。たとえば東京都などでは、国負担分が無く全額地方負担と同じことになる。

 第3に、財源不足額の1/2の地方交付税分は、交付税特別会計の借り入れで賄うことになっているが、これはいわゆる“隠れ借金”と呼ばれるもので、国債とは別に借金が増えているということに他ならない。そのツケは結局国民が負うことになる。

☆浅い底が見えた「三位一体改革」

 来年度予算は、小泉政権により「国・地方の三位一体改革の芽出し」と位置付けられ、国庫補助負担金・地方交付税・税源委譲を三位一体で見直すための重要な第一歩となるはずのものである。しかし既に見てきたように、それは借金体質の進行と地方への負担転嫁ばかりが目立つものである。丸投げ先送りの小泉構造改革の底は、思ったよりそんなに深くは無いものだということだ。

 結局、文科省は叩かれながらも、少なくとも来年度に関しては給与費の国庫負担と定数標準法と第七次定数計画を死守した。

 財務省は、税源委譲論議を先延ばしした上で、単年度での義務教育費国庫負担金の削減額を上積みさせることに成功した。

 総務省は、義務教育費国庫負担金全体の一般財源化に2006年度という目途を付け、地方交付税と地方特例交付金による財源措置を獲得し、地方自治体へのとりあえずの面目を保つと同時に他省の所管する補助負担金を自らの所管内へ取り込むことを一歩進めることができた。

 そして“三位一体の蹴鞠遊び”はまだまだ続く。我々にとっては、メデタシ、メデタシとはいかない。将来への不安材料がまた増えた予算である。

賃金の掠め取りを許さない!断固として、措置要求提出!

 02年度の賃金が確定しつつある。各自治体の財政危機を理由にした賃金削減攻撃が続くなか、今度は「マイナス給料表」「支払った賃金の3月期末手当からの掠め取り」が行われようとしている。断じて許すことはできない。とくに既に支給された昨年4月以降の賃金をほぼ1年後の3月の期末手当から掠め取ることは、これまでの労働法制、原則からしても認められない。

 私たちはあらゆる手段でこの暴挙に立ち向かっていく。その一つとして「措置要求」を提出した。まず愛学労が先陣を切り、その提起を受けた、がくろう神奈川、福事労の仲間と続いた。

 もちろんこれで反撃が十分とはいえないが、賃金、勤務時間などの労働条件への労働法制を無視した攻撃に対して、あらゆる戦法を駆使したたたかいを準備していきたい。

 左記は、今回の措置要求の例である。(提出を計画している方は連絡ください。)

措置要求書

2002年12月 日

☆☆県人事委員会委員長様

要求者  ○○○ ○○

 地方公務員法第46条の規定に基づき、下記のとおり勤務条件に関する措置の要求をします。

1 要求者の職、氏名、生年月日及び所属

   ○○○ ○○

2 要求事項

(1) ☆☆県人事委員会は2002年××月××日に行った「職員の給与等に関する報告及び意見」を撤回すること。

(2) ☆☆県(教育委員会)は、マイナスの給与改定を実施しないこと。2003年1月以降においては、本日現在の給与条例に基づく給与を要求者に支払うこと。

(3) ☆☆県(教育委員会)は3月期末手当から「平成14年4月からの年間給与で実質的な均衡を図るための所与の調整措置」を行わないこと。2003年3月14日以降においては「平成14年4月からの年間給与で実質的な均衡を図るため」に行われた「所与の調整」分給与を要求者に支払うこと。

3 要求の具体的事由

(1) 略

(2) 公務員も労働者であり、民間労働者と同じく争議権、協約締結権、団結権が保障されるべきところ、団結権しか認められず、その代償として人勧制度を始めとする様々な規程が存在しているのであるが、その基本は「勤務条件の改善…職員の利益の保護」(国公法3条2項)である。

  民間労働者の場合、労働条件の一方的な引き下げに対しては団体交渉やストライキ等によって対抗する術が保障されているし、「就業規則の一方的不利益変更禁止の原則」が確立されている。しかし、公務員にはこのような対抗手段が保障されていないし、「不利益変更禁止の原則」も明確な形で整備されていない。

  したがって、人事委員会制度が、労働基本権剥奪の代償であるなら、「勤務条件の改善…職員の利益の保護」に反するような勧告をすることは、人事委員会自らの存在を否定するものと言う他はなく、このことから、今回の給料表引き下げ勧告は、無効である。

(2) 略

(2) 最高裁判決(みちのく銀行事件・平成12年9月7日・判例時報1275号75)

(3) 今回の人事委員会に出したマイナス勧告についてみれば、「給与の減額を職員に法的に受認させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な理由」は見いだすことはできず、勤務条件条例主義で給与条例が改正されたとしても違法性を免れることはできない。

(3) 略

(2) 「調整」される金額は、4月から12月までの間の給料・扶養手当とそれらのはね返りを再計算して既支給額との差額とされているが、この金額は一人ひとりの給料月額や扶養の実態によって異なるものであり、いくら当局が「調整」という言葉を使おうと不利益の遡及に他ならない。

(5) 「調整」は不利益の遡及処理にすぎないのだから、それを3月期末手当で行うことは給与の全額払いの原則に反している。

 

虎の威を借る…

全事研神谷会長の佐賀での熱弁

池上 仁(がくろう神奈川)

無批判なスポークスマン

文科のスポークスマン

 横浜出身の全事研会長神谷氏が、2002年11月15日、佐賀県公立小中学校事務研究大会で行った講演の記録が手に入った。実に自信満々、確信に溢れたご高説で、さすがア・・・と感心する。その自信の源はどうやら文部科学省との蜜月を謳歌していることにあるようだ。臨時教育審議会で当時の会長が発言する機会を得、「それ以降、文部省の中で一目置かれる団体として認知をされてきた」、第7次定数計画についても「全事研と皆さんご存知の文科省・財務課の勝山課長補佐と下打ち合せをしまして」云々。「一目置かれ」ているかどうかは知らないが、使い途のある団体として「認知」されていることは、この講演録に目を通すとなるほど納得できる。

三位一体蹴鞠遊び

 国庫問題では総務省を槍玉に挙げながら、「文部科学省は<略>制度の根幹については死守守していきます」と文科省スポークスマン気取り、もろもろの「教育改革」についても文科省の代弁に終始し、06年公務員制度改革については「適材適所、能力主義、信賞必罰と『頑張れば頑張っただけいい給料をあげますよ』という仕組みに変わるわけであります」とさらりと言ってのける。

 「これからは限りなく事務職員の世界も二極化していくでしょう。頑張る人と頑張らない人」という学者の話を引いて繰り出す脅迫的言辞の数々。曰く「公務員としてのキャリアアップと職務職階制ということを我々の中に入れていかないとみな初級でよくなることになりかねない」「例えば、事務長を増やせと、『事務長職でまた違う別の配当枠を作れ』ということをしない限り、第8次の定数改善は厳しいかなと」「『職位に応じた権限』をこれから取っておかないと、大きな台風には太刀打ちできない」「職務標準も持っている県と持っていない県では、大きな改革の波の中では、生き残る県、生き残れない県というふうに出てくるんだろう」等々。

4こま漫画

お膝元横浜では、今

 中で「地域住民の代表というのはやはりマスコミなんだなというのを、つくづく横浜の事務職員は実感をしている…」と語っているが、これは昨秋地元紙による学校の「不正経理」批判の一大キャンペーンが張られ、教育長以下教委・学校職員の処分に至った経過を指している。事務職員も2人処分されたが、内1人は昨年度まで横浜の研究会から全事研理事に派遣され、今は共同実施を推進している第7次加配校在籍の人物。横浜市教組事務職員部(現日教組事務職員部長を出している)はどさくさまぎれに「横浜市立学校の健全な運営のために(提言)」なる文書を市教委に提出し(11月11日)、前渡金管理者に事務職員を位置付けろだの、予算の適正執行を確保するために共同実施を推進しろだのほざいているのだから、ただただ呆れるばかりだ。

 神奈川県には市町村費事務職員はほとんどいない。横浜市もゼロ。神谷氏が講演でもちあげている「特色づくり予算」導入が予算執行を煩雑化させ、市教委の一部「崩壊」状態を思わせるいい加減さに振り回され、大半単数配置の事務職員は多忙化を強いられている。児童数800人以上、就学援助受給者が3ケタという悪条件で一人仕事に追われている事務職員もいる。他方、市教委は第7次加配を来年度は4人増の12人申請している。教組事務職員部と研究会は役員人事を含め双生児の関係で、高みの見物を装う市教委と連携して、加配校の選定等で暗躍している(処分を受けた学校だけでなく、加配校・連携校には事務職員部・研究会役員OB等が配置されている)。そのくせ共同実施の実態はせいぜいがミニ事務研といったところで、当事者からも不満の声が漏れ聞こえる。

 これが、ため息をつきたくなる「共同実施の震源地」横浜の実態だ。


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