2003年2月26日
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全学労連ニュース今号の内容

 1.29教委連合会(・文科省)折衝報告に代えて

 結成20周年記念集会から・・群学労

 共済掛金の総報酬制が始まる

 シリーズ 人事評価を考える しゃにむに4月実施へ―神奈川の新人事評価制度

1.29教委連合会(・文科省)折衝報告に代えて

事務局 羽成純

 ’03年度予算案が確定したのを受けて都道府県教委連合会(及び文科省)との折衝を持った。以下、連合会折衝で示された見解を中心に紹介し、それに対する若干の感想を述べたい。

(1)’03年度予算において義教金削減が2,184億円となり、削減対象経費から文科省の削減案にはあった退職手当が外されたことについて

 文科省の提起した4年で5,000億円という計画は一端なくなったと考えている(※)。文科省以外の省庁の扱う分野の予算の見直しとのバランス、或いは教育におけるナショナルミニマムを保障していく最も良い方法は何なのか、またその中身をどう考えるのかといった点について論議していく必要がある。

※ 線の部分に該当する文科省の見解は以下の通り

4年で5,000億円削減ということについては変更はないと考えている。初年度削減が1.219億円から2,184億円に前倒しされたという理解だ。

(2) 地方への負担転嫁について

 実質的な地方負担はなかったと考えている。不満はあるが義教金制度堅持という意味では今回の決着は一定評価している。地方財政対策の財源不足額(2344億円×1/2×1/4)の返済はいつになるのかわからない。国全体の予算が借金で成り立っているのだから、全部借金(隠れ借金)だ(!)。国債から義教金をもってきただけ。地方特例交付金は不交付団体である東京にも交付される。東京の1/2部分が各地方に割り振られたということだ。いずれにしても、仮に交付税化した場合に新たな交付税算定の指標がきめ細かく示されねば、ぐしゃぐしゃになるだけだ。

(3) 義教金制度を2006年度には全廃するという方向性について

 全国知事会の1/3は一般財源化OKと言っている。しかし、教委連合会の場合は多少の温度差はあっても、全員反対で対応している。今後文科省は慎重に対応していくことになろう。共済費、退職手当は人件費ではないという理屈を文科省は作った。その上で教員の人件費を守るというところへ文科省は行くだろう。

《若干の感想》

 教委連合会の発言「すべて借金だ(!)」は言い得て妙というべきであろう。際限なく膨れ上がっていく借金財政によって成り立っている国家予算と、この構造の中にいやおうなく取り込まれていく地方(自治体)の姿を私たちは改めて直視すべきときだ。他の省庁がさほどの動きを示さない中で義教金の5,000億円削減案を安易に提起した文科省は、昨年全国一斉に配布した「心のノート」について、早々と今度は会計検査院に使用状況などを調査させている。一体何に金を使っているのだと言いたい。

 国家主義的教育が行き着く先は、アメリカブッシュ政権によるイラク攻撃の目論見に対して「どこまでもついていきます」と言わんばかりの奴隷的根性に侵された首相小泉のような国民作りでしかない。戦争国家体制に向けた軍事費等の拡大は当然のこととして、手を付けず、労働―教育―福祉等の分野においては、自明であるかの如く市場原理を貫徹させていこうとする。軍事と政治―経済を貫いたグローバル化を批判する世界の人々の声はイラク攻撃反対の行動の広がりの中にはっきりと看て取れる。グローバリズムに従属したナショナリズムに決して囚れない国境を越えた想像力によって労働者―市民の連帯を展望しつつ、私たちの足下で引き起こされている教育と労働をめぐる様々な課題に力を合わせて立ち向かっていきたいと切に思う。イラク民衆の運命をアメリカとこれに付き従う国々が握るという理不尽への怒りを共有しつつ。

 

結成20周年記念集会から・・・

群学労

 記念集会をもつ前に何かやるべきことがあるんじゃないの・・・という声が聞こえてきそうな群学労の現状ではあるものの、とにかく83年1月18日結成から20年という大きな節目を迎えたということで、2月15日に記念の集会をもった。

 今集会のメインは、全学労連・菅原議長、がくろう神奈川・大宮委員長、埼玉学労協・佐野代表より講演をいただくことであった。先ず委員長の足立より、「20年間、小さいながらもよく頑張ってきたという思いがあるものの、運動的には極めて厳しい状況がある。今日の集会がそこを打開する手がかりになれれば」とのあいさつから始まった。

 続いて講演会に入った。テ−マは「学労運動の現状と展望」ということで、3名の方からそれぞれの立場よりお話をいただいた。

 菅原議長からは全学労連の組織問題と課題について話され、そして「少数派であっても、運動の中身こそが大事であり、それに応じて組織の在り方も柔軟性が求められている」「組織であっても個人的な思いを大切にしたいという学労的生き方、自分がどう生きていくのか、最後はそこではないか」とのアドバイスを。

 大宮委員長は、神奈川における学労運動の変遷と、諸課題への取り組み状況が話され、そして、「若い人の組合加入が難しい中で組合員の年齢構成もあがってきて、ある意味先が読める状況にもなってきているが、私達は学労を創ってきた責任がある。そこだけは常に意識し続けねばならない」との指摘が。

 佐野代表からは、埼玉での学労体験をとおして、「文句ばかりで何もしていないのでは、組織に入っている意味がない。組織はなにかをやるための道具」「問題意識を持ちながら、出来ないことは出来ないが、出来ることは確実にやっていくこと」「常に、社会から、仕事から、自分からを基点に、教育労働者でも行政労働者でもない、学校労働者として生きていくことが重要」との示唆を。

 3名よりのお話は、全てが私達にとって重く厳しいものであったが、その分組合員一人一人にとって今後を考える大きな手がかりとなるものであった。その後の話し合いも、真剣な中にも和やかに進み、充実した時間であったが、その中での組合員の一言「ささやかな問題でも、声を出していくことが大切」がとても印象に残っている。

 集会のあとは天下の名湯、伊香保温泉に場所を移しての交流会となった。ゆっくりと湯に浸かり、差し入れの地酒をいただきながら深夜まで語り合った。

 講師のみなさんにはご多忙の中、本当にお世話になりありがとうございました。

 

共済掛金の総報酬制が始まる

 小泉の「構造改革の痛み」が露になってきている。新聞紙上では4月からの「医寮費本人3割負担」が話題になっているが、もうひとつ4月からは社会保険料の「総報酬制」が始まろうとしている。民間の社会保険制度も、公務員の共済制度も既に法改正等は完了しており、4月から一斉に「総報酬制」での保険料徴収が始まる。

 そもそも総報酬制とは、「月収に係る保険料の抑制を図るとともに、同一の年収であっても、ボーナスが年収に占める割合の違いにより保険料負担額に差異が生じ、不公平であるとの理由によるものである。」とし、毎月の賃金からだけでなく、ボーナスからもキッチリ社会保険料を徴収しようとするものである。

 公立学校共済組合も4月からの総報酬制の実施に向け、準備を進めている。今までに判明したことをまとめてみる。

(1) 掛金率はどのぐらいになるか。

掛金率現行‰改定‰
短期給料43.2533.95
ボーナス27.15
福祉給料2.201.65
ボーナス1.30
介護給料3.602.90
ボーナス2.30
長期給料103.5081.00
ボーナス5.0064.80
給料152.55119.50
ボーナス5.0095.55

(2) モデルで年間掛金を比較する。

・給料月額400,000円、ボーナス年間4.65月分(職務加算10%)とすると、

    [年収は、400,000×(12+4.65×1.1)=6,846,000]

現行制度の掛金年間合計

    400,000×(152.55/1000)×12+400,000×1.1×4.65×(5/1000)=742,470

新制度の掛金年間合計

    400,000×(119.50/1000)×12+400,000×1.1×4.65×(95.55/1000)=769,095

で、結局26,625円の値上げとなる。

(3) 今後の値上げの布石

 社会保険制度の財政的な行き詰まりは、危機に瀕している。その解決を政府は迫られているのだが、その答えは次のようなものである。

a 支給額の引下げ・健康保険:本人負担3割
・年金:支給開始年齢引上げ
・年金:支給額の物価スライド引下げ
b 増税・消費税値上げ
c 掛金値上げ・今回短期掛金の値上げ
・介護保険料値上げ

 そして、「総報酬制」は必要に迫られる保険料値上げを安易に行なえるように手法のひとつであろう。

 つまり、わが共済組合で、給料40万円の者から年聞10万円の長期掛金の値上げをするためには、現行制度では、毎月8,333円の負担増になるが、新方式では毎月分は6,217円に抑えられえる。(勿論差額はボーナス時の負担が増えることになる)

 ということで、毎月の負担感を誤魔化す効果を狙っているのだ。

(4) 「1.25」の怪

 共済給付金には「1.25」がしばしば登場する。これは何のことかというと「手当率」なのである。共済組合は毎月の賃金を給料月額の1.25倍と想定して、あらゆる計算の根拠としている。

 例えば「総報酬制導入前後で、負担に変化が生じないようにする。」とする共済では長期の新掛金の算出では次の算定式を示している。

1×103.5‰+1.25×0.3×5.0‰=(1.25+1.25×0.3)×総報酬制に対する掛金率

注 103.5‰は現行掛金率

  1.25は「手当率」

  0.3は期末手当の月給に対する割合

この方程式を解くと

1×0.1035+1.25×0.3×0.005 = 0.105375 = 総報酬制に対する掛金率
1.25+1.25×0.3 1.625

総報酬制に対する掛金率≒64.8‰であり、

毎月の掛金率は64.8‰×1.25=81‰となる。

 

―シリーズ― 人事評価を考える

しゃにむに4月実施へ―神奈川の新人事評価制度

がくろう神奈川

 神奈川県では、新たな人事評価制度導入をめぐって、当局―組合の攻防が大詰を迎えている。

 ざっと経過を紹介すると、2000年6月に県教育長の諮問を受けていわゆる「学識経験者」等による「教職員人事制度研究会」が発足し、2001年9月に報告書「教職員の人事評価のあり方について―人材育成及び能力開発を目指して―」をまとめた。「いじめ、不登校などの教育課題が山積」している、その解消のために「開かれた学校づくり」『特色ある学校づくり」が必要で、「人事管理の仕組みの見直しが急務」とする報告書の内容は、政治・経済の失敗によってもたらされたマイナス現象をすべて教育のせいにする、教育基本法改悪に向けた中教審の中間報告と軌を一にしている。

 報告に先立ち県教委は、4月25目、市町村教委教育長・事務局職員・教育機関職員、教育庁職員・教育機関職員から委嘱・任命したメンバーによる、管理部長を座長とする「教職員人事制度検討委員会」を設置し、報告書をもとに新たな人事評価制度について2003年度導入を目途に検討を進めた。そして今年度60校を対象にわずか半年間の試行を強行、その結果を受けてこの1月31日の第10回検討委員会で最終報告をまとめ、実施を促している。県教委は年度内の規則改正、4月実施にむけ作業を急いでいる。初めに導入ありきのなりふり構わない拙速さだ。

 新人事評価制度の特徴は、

  1. 目標管理手法、
  2. 複数の評価者による5段階絶対評価、
  3. 「能力」「実績」「意欲」を評価項目とする、

である。制度の安定を見計らって将来は給与等処遇への活用も謳われている。がくろう神奈川はこれを労働者を丸ごと管理統合しようとする試みに他ならないと捉え、真っ向から反対してきた。県教委は「管理運営事項」をたてに交渉ではないとしつつ、「協議」には応じている。この間の交渉で(1)自己観察書への記入は強制ではなく、職務命令を発する性格のものではない、(2)記入しないことによる評価への影響はない、ことを確認してきている。

 報告書では、事務職員に職層(「能力開発期」「能力活用期」「調整能力発揮期」)に応じた行動例が初めて提示され、また、教組の求めに応じて3段階の「自己評価」が導入されるなど、まだまだ解明すべき問題が残っている。がくろう神奈川は引き続き厳しく追及していく。


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