2003年5月31日
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全学労連ニュース今号の内容

 学校事務職員の切り捨てを許すな

 学校行革ショートレポート

 全学労連 5.9行動報告

 東京の自己申告書と業績評価制度

学校事務職員の切り捨てを許すな

○この国の戦争を認めない

 イラク戦争のテレビ報道で、捕虜になったアメリカ兵の親が画面に登場した。映されていたのは、戸惑いの表情とともに、貧しさが如実の親たちの姿であった。利権を奪おうと豊かなアメリカ人が、貧しいアメリカ人にもっと悲惨なイラク人を叩き潰させたのが、イラク戦争だった。

 今、この国も戦争をする国に変わろうとしている。「有事立法」という名の戦争をするためだけの法律ができる。これは、他人を殺すことを、この国の人々がしなければならない法律なのである。つまり、わたしが他人を殺す法律である。

 わたしたちはこの国の戦争に参加しない。認めない。

○官僚の利権争いの場としての「構造改革」

 小泉政権の看板としての「構造改革」は色褪せ、本当の地の「官僚の利権争いの場」が露になってきた。小泉がいくら「三位一体」と言っても、利権にかかわる官僚たちは聞く耳を持たない。結局権力の大きさで決まっていくのだろうか。

 今は、「補助金削減」が先頭になりはじめた。財務省官僚は「税源移譲」に反発し、総務省は「交付税改革」を認めない。他の省庁の権益である補助金削減を先にとする財務総務連合が力を表してきた。

○危険な文部科学省の動向

 昨年末(02,12,18)の三大臣合意は、義務教育国庫負担金削減に道筋を付けた。今年度は「共済長期」、来年度は「退職金」とした。が、これで済むはずがない。財務総務連合は一層の国庫負担金削減を狙い、文科省の「提案」を待っている。(「政令市への国庫負担金」などは両省の関心の外である。)すでに、文科省自身も中教審に「義務教育国庫負担制度のあり方」を諮問した。

 文科省の最大の利権は「教育の統制」である。大学から幼稚園までの学校を支配し、教育内容を統制し、教員を支配下に置くことが彼らの権力の源である。それを手放すことはしない。義務教育の支配のために「国庫負担制度」を維持したい文科省は、教員統制ができる形での存続を計ろうとするだろう。すでに文科省は「国庫負担金の定額化」等と言いはじめている。まだ中身は何も明らかにはなっていないが、「評価制度」や「教職員の非常勤化」を一方で提案しているのだから、それは「合理化しやすい国庫負担制度」という代物でしかなく、むしろ平教員や事務職、栄養職の合理化と教育管理統制を狙っているのだろう。

○生贄としての事務職員を拒否する

 文科省官僚は、自らの権益を守るために、事務、栄養を生贄に出すかもしれない。下っぱ教員も同じ生贄になるかもしれない。それを阻止する取り組みを早急に強力に押し進めよう。

 今が踏ん張り所である。これからの事務職員の存在を決める闘いに全力で取り組もう。

 全学労連はすでにいくつかの具体的行動を始めている。今後はこれまで以上の態勢を提起し、その先頭で闘い抜く覚悟である。

 全国の学校事務職員の皆さん、ともに最後まで闘おう。

【議長 菅原】

緊急アピール

全国の仲間の力で国庫負担を堅持しよう!

 義務教育費国庫負担問題をめぐる動きが急を告げています。

 5月7日、地方分権改革推進会議は、昨年10月30日提出の「事務・事業の在り方に関する意見」の実施状況をとりまとめ、その中で今後特に重点的に推進すべき項目の一つに、学校事務職員・栄養職員給与費の一般財源化を挙げています。

 小泉首相が掲げる「三位一体改革」は、税源移譲に難色の財務省、補助金負担金を一般財源に切り替えて権限強化を図る総務省、所管の補助金を手放すまいとする各省庁、更に経済財政諮問会議、地方分権改革推進会議、地方制度調査会等がからんで、まさに「三すくみ」状態に陥っています。小泉首相は、4月1日、経済財政諮間会議で税源移譲を「突破口」にと発言、しかし塩川財務相の猛反発を受けるや、5月8日の同会議では補助金削減優先へと軌道修正を行ないました。しかし「補助金削減は各省と自民党族議員の抵抗が最も強い分野で、改革が再び迷走する可能性もある」(5/9「朝日」)状況です。

 地方分権改革推進会議では、地方交付税の抜本改革も検討していますが、税源移譲を先送りにした改革案に対し自治体から強い反発の声があがっています。せめぎあいのなかで「早くも『補助金の数兆円削減が落としどころ』との声が漏れる」(5/10「日経」)事態になっています。この「落としどころ」の補助金削減の一項に事務・栄養の人件費が入れ込まれる危険性が少なからずあります。事務・栄養の国庫負担外しの目論見に、新たに「地方分権」の装いを施し、経済財政諮問会議で民間議員をそそのかして必置規制見直しを提言させ、地方分権改革推進会議の意見書に継続検討課題として明記させた財務省の企みは、今回の一般財源化提案によって総仕上げの段階に入ったというべきでしょう。義務教育費国庫負担金見直しを迫られ、5千億円を差し出した文部科学省が、更に追い詰められて、義教金の「根幹を堅持する」としつつ、事務・栄養を「枝葉」として差し出す恐れは十分にあります。一般財源化されれば、定数等労働条件の悪化は火を見るより明らかです。

 全学労連では、こうした事態を受け、緊急に経済財政諮問会議、地方分権改革推進会議、全国都道府県教育長協議会に対し要請書を送付しました。各組合は、地方議会への陳情・請願、首長等への要請行動に例年以上の力を注いでいます。全国の仲間の力で国庫負担を堅持しましょう。

学校行革ショートレポート

全学労連学校行革対策部 佐野 均

その1 全国都道府県教育長協議会

学校事務・栄養職員定数の非常勤職員への換算を要望?!

 昨年11月22日に全国都道府県教育長協議会は、文部科学省に対して「公立学校教員の給与制度に関する要望」を提出している。来年度からの国立大学の法人化にともなって、公立学校教員給与がこれまで準拠していた国の教育職給料表が無くなり、各都道府県で教員給与を決めることになるので、そのための法整備を求めたものだ。しかし、その終わり近くの部分に

「現行制度では換算できる教職員定数は教頭及び教諭等の定数のみであるが、養護教諭、学校栄養職員お呼び事務職員の定数についても非常勤職員への換算を可能とする制度の整備を検討されるよう要望します。」

とある。これでは学校事務・栄養職員の非常勤職員化を促すばかりでなく、少数職種分の給与費財源を教員分へ振り替える事を可能とすることになる。学校事務の「共同実施」や電子自治体化構想が進む中で、この要望は我々の雇用を不安定なものにしていく道として極めて危険といわざるを得ない。一方で義務教育費国庫負担制度の堅持を言いながらこのような要望を出すということからは、財源だけを確保して教員以外は切り捨て・合理化の対象としたいという本音が見える。

 全学労連は全国都道府県教育長連合会に対して、この部分の要望を取り下げると共にその意図と経緯を明らかにして、今後このような要望をしないよう要請書を提出した。単に国庫負担制度を守ればいいというものでは無い。問題はその中身であるという事を忘れてはならない。

その2 義務教育費国庫負担金は削ることに意味があるのか?

削減してもそのまま財源不足額として残る

 昨年12月の今年度予算編成の過程で、経済財政諮問会議などの強い意向を受けて補助負担金が全体で約5,600億円削減され、このうち義務教育費国庫負担金は共済長期給付と公務災害補償基金負担金分の2,184億円だった。総務省の地方財政計画によると、このことによる地方の財源不足額は全体で2,344億円であるのに対して、そのうちの義務教育費国庫負担金分は削減された2,184億円がそのまま財源不足額として残ったとのことである。すなわち他の事業は補助負担金を削減しても事業自体の整理・縮小で財源不足はある程度解消できる (もっともこの“不足額”というのも総務省が机上で試算したもので問題はあるのだが…「全学労連」No.253参照)が、義務教育費国庫負担制度の対象事業はほとんどが義務的経費で、その削減はそのまま地方の負担として残されるという事を意味する。これでは何のための削減か疑問が残る。地方が「負担転嫁反対」という所以である。だから「三位一体改革」だということなのだろうが、これも目下迷走中である(次項参照)。「改革」のアリバイ作りのための生贄にされてはたまらない。

 今回の場合はその補填のための財源措置がされ、とりあえずの地方の負担は8分の1に抑えられたが、結局のところ支出総額が変わるものではなく、全て国民の負担であることに変わりは無い。制度の本来の趣旨を問うことなく、一連の「構造改革」論議で額が多いというだけで削減の対象とされ、制度の見直しをせまるというのは本末転倒であると言わざるを得ない。

その3 塩ジイがキレた、「三位一体改革」は迷走

税源移譲先行から再び補助金削減先行論へ…

 5月8日に財政諮問会議は、補助負担金の削減と地方への税源移譲と地方交付税改革を同時に進めるいわゆる「三位一体改革」について、二つの協議の場の設置を決めた。すなわち、税源移譲と交付税改革については官房副長官と内閣府・総務・財務の三省事務次官をメンバーとしたもの、また補助負担金削減についてはそのメンバーに所管省庁事務次官を加えたものである。

 これに先立って4月には、なかなか進まない改革論議にあせった竹中担当大臣が、諮問会議後の記者会見で、税源移譲先行を強調することで突破口を開こうとし、新聞も「税源移譲先行」と書きたてたのに対して、「(竹中担当大臣は)嘘ばっかり言ってる」と塩川財務大臣が激しく反発したという“事件”があった。

 経済財政諮問会議内では、税源を握る財務省と地方交付税を握る総務省が、自らの省益を守るために互いに牽制しあっている。4月の会議では、3月に全国地知事会等の地方六団体から税源移譲を求める意見が出されたことを背景に、片山総務大臣が攻勢に出て塩川財務大臣は不利な立場にたたされた。そこへ諮問会議の議長である小泉総理が税源移譲を突破口とする旨の発言を行なう。その後いくつか議論のやり取りがあり三位一体のその他も同時にやっていく必要も確認されたが、総理の発言とその後の議論について竹中大臣のまとめが曖昧で、参加者がそれぞれ都合よく解釈して会議を終わらせたのがこの“事件”の元になった。

 「三位一体改革」の中で、財務・総務両省の顔を立てて会議内でとりあえず一致できるのは、その場に利害関係者のいない補助負担金削減である。“事件”の収拾を図るために決められたのが先に述べた二つの協議の場の設置で、端的に言って内部調整と外部調整の場を分けたということだ。会議後の記者会見では、「それだけでは非常に成果に乏しい」という感想が記者から出されたり、竹中大臣が「(税源移譲を)突破口(にする)とは…先行させるという意味ではない…」と意味不明な答弁をしたりしている。確かに1年も前から「三位一体」と言ってきて、しかもこの6月には具体的な改革スケジュールを打ち出すことだけは決めていながら何を今更という気がするが、ともかく税源移譲先行論を緩和する効果はあったようで、新聞が今度は「補助金削減を優先」と書き出した。5月7日に地方分権改革推進会議が、国庫補助負担金の削減について重点的に推進すべき11項目を表明した(次項参照)こともこの後押しとなった。

 しかし当然ながら各省庁や地方はこれにいっせいに反発する。地方制度調査会や全国地知事会等の地方六団体では税源移譲を求める意見が重ねて出されている。6月に地方分権改革推進会議が出す文書の素案が事実上税源移譲先送りであることにも強い批判が出されており、片山総務大臣が地方からの強い圧力でまた税源移譲論のトーンを上げると、再び塩ジイがキレることになりかねない。地方分権改革推進会議内でも、意見が対立して、西室議長に対して強い批判が出されている。前途は依然不透明なままだ。

 こうしたことは1年前から何度も繰り返されている。全学労連が「三位一体の蹴鞠遊び」と呼ぶ所以である。小泉首相の進軍ラッパだけが空しく響く。それにしても以前から疑問を感じているのだが、小泉首相自らが議長を務める経済財政諮問会議って、いったい誰が諮問し誰に答申するんだろう?これって自作自演というかマッチポンプというか…。

その4 地方分権改革推進会議、

補助負担金削減の重点11項目を発表

文科省は学校教育制度の在り方を中教審に諮問

 5月7日、地方分権改革推進会議は国庫補助負担金の削減について重点的に推進すべき11項目を表明した。そのうち教育・文化に関わるものは、義務教育費国庫負担制度・教員給与の一律優遇の見直し・学級編成基準の設定権限等の県から市への権限委譲の3項目である。さらに義務教育費国庫負担制度では、「対象経費の見直し、定額化・交付金化、全額一般財源化、事務・栄養職員の一般財源化等」が挙げられている。これは以前から検討事項にされていたものではあるが、事務・栄養職員についてはこれまで「国の関与の見直し」とされていたものが露骨に「一般財源化」とされていることが目新しいと言えば言える。

 「全額一般財源化」としながら同時に「事務・栄養職員」だけを取り出しているのは、明らかに矛盾している。各方面からの批判にさらされて自信の無さの表れか、それともこれだけは絶対やるぞという決意の表明なのか、いずれにしても我々の国庫負担が危ういということに変わりは無い。

 文部科学省は5月15日中教審に対して「今後の初等中等教育改革の推進方策について」を諮問している。その検討事項の一つに「義務教育など学校教育に関わる諸制度の在り方について」とあり、その中で「国と地方との適切な役割分担、費用分担の観点から、義務教育費国庫負担制度の意義役割を踏まえつつ、義務教育費に関わる経費負担の在り方について、ご検討いただきたい」と述べている。

 文科省は「改革」の波に乗って「教育改革」を演出し、カッコ良く自らの省益を図ろうとした。ところが、「構造改革」という大波に翻弄され、大事な国庫負担制度を奪われ溺れてしまいかねない状況に追い込まれている。藁をもつかむ思いかどうか知らないが、中教審に諮問して答申を出させることで、「制度の意義役割」をアピールしようという事なのだろう。自らまいた種とはいえ、文科省には我々の労働条件を守るためにも全力で抵抗してもらおう。間違っても事務・栄養を生贄として差し出させないよう、我々も頑張らねばならない。

その5 厳しい情勢の中、全学労連はより精力的に行動開始

 さまざまな動きが錯綜する中で、全学労連は情報収集と情勢分析を進めているが、もとより研究団体ではなく労働組合なので、それに留まることなく運動に結び付けていかねばならない。5月9日には文科・財務・総務の三省と国会議員に対する折衝と要請活動を行なった。また5月26日には全国都道府県教育長協議会に対して、事務・栄養職員定数の非常勤職員換算の要望を国へしないよう求める要請書を、さらに経済財政諮問会議と地方分権改革推進会議には、義務教育費国庫負担制度を堅持することとその一般財源化による地方への負担転嫁をしないよう求める要望書をそれぞれ提出した。

 今後7月と10月初旬に文科省との交渉、7月30〜31日には横浜で全国学校事務労働者交流集会、年末の予算編成に向けて事務・栄養職員の国庫負担制度堅持の国会請願署名活動、12月には全国総決起集会と文科・財務両省へのデモを行なうことが既に決定している。この他必要に応じて折衝や要請行動を随時行なっていく。全学労連構成組合もそれぞれの地域において、創意工夫をこらした取り組みを展開する。

 全国の仲間へは、これまで以上にリアルな情報発信と呼びかけを行なっていくつもりである。ぜひこれに応えて、自らの労働条件を自らの手で守るために、ともに戦っていこう。

 

全学労連 5.9行動報告

事務局 羽成 純

 全学労連は5月9日、文科省に対して義務教育費国庫負担制度等に関連した要望書を提出した。又、教育基本法改悪へ向けた動きが強まる中で、法改悪に向けた作業を中止するよう申し入れた(要望書・申し入れ書の抜粋別掲)。更に文科省の他にも都道府県教委連合会、財務省、総務省に対する折衝行動も併せて行なった。以下簡単に報告したい。

(1)文科省への要望書・申し入れ書について

 教育基本法改悪に向けた中教審答申が3月20日、奇しくも米英軍によるイラク侵略が開始されたまさにその日に行なわれた。政治・経済を貫くグローバリゼーションは、戦争国家体制作りに向けた国家主義強化の教育政策と一体のものであることをこれほど象徴的に示す事実もない。「地方分権」の名の下に義務教育費国庫負担制度そのものが大きく改編されていこうとしている中、私たちは、学校(事務)労働者への攻撃が、日常的な管理―評価システムや賃金・定数等の合理化を通じた国家への統合支配を狙うものであることを見抜き、これに抗していかねばならないと思う。

 公教育が国家による「未来形の労働政策」なのだとすれば、私たち自身が直面している現実は、子どもたちにとってもまた同じように立ちはだかっているものであろう。

 文科省への要望書―申し入れ書提出を改めて時代状況の中に位置付けながら、今後の交渉につなげていきたいと考える。

(2)都道府県教育委員会連合会

 ’04/4実施が目論まれている国立大学の独立行政法人化をにらんだ連合会の様々な動きについて、とりわけ、事務・栄養職員の非常勤職員を義教金制度の枠内で活用(換算)できるよう教育長協議会が文科省に要望している事実について問い質した。

 「地方分権」は結局のところ。財源の裏付けのないところでは各自治体(教育委員会)の合理化努力しかない。全学労連としては今回の折衝を踏まえ、5月26日付で教育長協議会が文科省に提出した要望書(「公立学校教員の給与制度に関する要望」'02.11.22)について、「養護教諭・学校栄養職員及び事務職員の定数を非常勤職員への換算可能とする要望」を取り下げるよう要請書を提出した。

(3)財務省・総務省―義教金制度をめぐって―

 「教職員給与の定額化については文科省の提示待ちだ」(財務省)。「すべてはこれからの論議の中で考える。政令市化は税源移管等関連作業が容易ではない」(総務省)。

 国―地方を貫く財政危機下、「定額化」も「一般財源化」もさほどの違いはないと言うべきであろう。仮に税源移譲がなされたとしても構造的な借金財政(アメリカ合州国の戦費を事実上支えていくことを含んだ!)のもとでは数字合わせ以上のものではない。

 

 教員賃金の全面見直しと連動しつつ、またしても職間差別を利用した「事務・栄養の一般財源化」(地方分権改革推進会議提言―'03,5,7)が取り沙汰されている。正規―臨時労働者間の分断も一層拡大されようとしている。義教金制度の再編の大きなうねりの中で差別故により国家主義的教育を支える労働者に自らを形成していく日教組事務職員部―全事研の道とは異なった私たちの進むべき方向をしっかりと見定めていきたいと切に思う。

 

―シリーズ― 人事評価を考える

全国の合い言葉は「東京のようにならないように」
―東京の自己申告書と業績評価制度

投稿 学校事務ユニオン東京

 東京では70年に知事部局と学校の任用一本化が行われ、行政系の人事給与制度は全て同一である。その結果東京の賃金水準は全国で最悪である。85年に人事任用制度の大改悪があった。その翌年の86年に自己申告制度と業績評価制度が導入された。二つの制度は別々のものとして運用されていた。業績評価は昇任(特に主任短期や係長選考)に使用されていたが、93年特別昇格、94年特別昇給に適用され、経験年数や年齢を考慮した民生的な昇給・昇格は否定されて行った。こうして全国でも最悪の賃金水準の体系が出来上がった。

 業績評価はこの他永年勤続表彰、海外研修、一般交流、昇任時異動、再雇用、再任用に使われている。評価はA・B・C・D・Eの5段階である。校長が第1次評価者として絶対評価を行い、地教委の人事担当者が絶対評価、地教委の教育長が相対評価を行う。都教委は調整者としで評価を行う。校長がAを付けたとしても地教委段階で相対的にD・Eになることはある。主任選考を受けず業績評価を出していない者や主任になっていても業績評価で5級に昇格せずにいる者が、4級に滞留している。これが東京の賃金水準であり、かなり多くの者がここにいる。

 94年、異動調書が自己申告書と一本化された。この時自己申告書を提出しなかった者も異動のため異動希望欄だけ記入して提出するようになり、これで自己自己申告書も提出率が98%に達した。02年、4枚の自己申告書になり、その1枚が異動シートとなる。以前のように分離されたが、都教委は「異動シートを出さない者は異動については白紙委任したものとみなす。」と言っている。特に異動の対象になる3年以上の在職者は狙われる。

 都は2回にわたり成績主義白書を出している。96年には目標管理の手法を導入し、自己申告書の記入・提出が職務として強要された。提出しないことは「職務に対する姿勢が問われる」ので評価は下がる。そして自己申告書と業績評価のリンクが始まった。02年、4月1日に目標・成果シートで目標を設定し(チャレンジ目標というのまである)、12月1日に成果の確認をし、自己採点シートで成果や採点をして提出する。これが業績評価に反映される。パソコンによる記入と係長級の業績評価の本人開示が始められた。平の職員には18年経っても「当分の間開示しない」が適用されている。02年の確定闘争のなかで業績評価の絶対評価がD・Eの者の定期昇給を三月延伸することが強行された。04年度の定昇から適用されるが03年の業績評価が使われる。自己採点シートに自ら進んでD・Eを付ける者はいない。誰のシートを見てもAとBしかついていない、そんなくだらない制度を元に賃金が決められていくなんて、「おいおい冗談だろ?」の世界である。

 85年の人事任用改悪で当局も都労連も「誰でも6級」まで到達すると言っていたが、真っ赤な嘘であった。自己申告と業績評価で仕事のやり方までがんじがらめにされ、それが直接的に賃金に跳ね返る。労働強化と管理強化、おまけに賃金抑制でも、都は「給与に見合った仕事をしろ」と言う。それが東京の実態である。全国の読者の皆さん、「東京のようにならないように!」労働運動を原則的に進めて行ってください。


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