2003年6月28日
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全学労連ニュース今号の内容

 全国の仲間が結集 あらゆるところに要請行動 6.13全学労連緊急中央行動報告

 《6/13 全学労連国庫緊急行動報告》

 補助金4兆円削減方針決定で義務教育費国庫負担制度はどうなるか?

 「戦争への途をあくまで拒否しよう」

全国の仲間が結集

あらゆるところに要請行動

6.13全学労連緊急中央行動報告

 「学校事務職員の国庫負担はずし問題」が風雲急を告げている。

 6月中にまとめられるという所謂「骨太の方針 第3弾」に向け、続けられている「三位一体の見直し」議論は、権益の対立でにっちもさっちもいかなくなりつつあるのだが、義務教育国庫負担金は依然として補助金削減の最大メニューにあがっている。そして、義教金全体が議論されている最中に、事務・栄養職だけを取り上げた国庫はずしの策動が大きくなってきた。文科省も「大変危ない」と危機感を露にしている。

 全学労連は5月中に、各省庁および各団体に「国庫負担制度堅持の要請」を行ったが、今回の危機的な状況を前に、全国の仲間に緊急の中央行動を呼びかけ、「国庫負担はずし阻止」行動を行った。

 

 6月13日は緊急の呼びかけにも関わらず、北海道から沖縄まで60名を越える仲間が結集した。当日の午前中に国会議員会館に行き、地元選出国会議員への要請行動などを行った参加者たちも、続々会場のたんぽぽ舎に集まった。会場は予定を越える参加者で埋まり、急遽椅子を揃えての開会となった。

 まず、詳しい経過報告と、当日午前中に入手した「確度のある情報」(入手の経路は明らかにしない)の分析を行い、参加者全員を班編制し要請行動に散った。

 それぞれの班は10名を越えるグループとなり、各要請先で精力的に行動した。

 (要請先及び班ごとの行動報告は別項で)

 

 今回の行動には、呼びかけてからたった1週間しかないにも関わらず、予想を超える仲間が全国から結集した。また、一日の要請行動としては考えられる限りの場所に行き、各所で予定を越える時間の要請行動をやりぬいた。この全学労連の行動力は、今後の幅広い取り組みにつなげていきたい。

 

 権益争いで決着が付かず、仮に「骨太方針」では国庫負担問題の細かい整理が行われなくとも、「概算要求」「予算編成」「政府予算」と時期ごとに話題になり、その度に事務職員が俎上に上がるだろう。06年まで闘いが続くことも考えられる。

 全学労連は、今回示した行動力をあらゆる場面で展開していく。

 

《6/13 全学労連国庫緊急行動報告》

A班:毎年国庫請願の紹介議員になっていただいている方々を含め、国会議員への要請を議員会館で行った。がくろう神奈川の参加者は、小泉首相の部屋で事務職員の現状を強く訴えた。福島瑞穂議員を含め数名の議員には直接要請をすることができ、我々の現状をさすがに良く理解されていて、快く話を聞いてもらえた。

 

B班:全国町村議長会、全国町村会と地方分権改革推進会議へ要請行動を行った。全国町村議長会では「例年通り、国庫負担堅持を考えているが、(給与費等を)地方へということならば税源移譲など、財源一体での移譲でしか受け入れられない」と、安易な負担転嫁を強く批判していた。

 

C班:地方6団体のうち全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会の4団体に要請を行なった。全国知事会では一室用意してもらって副部長氏に要請内容をじっくり聞いてもらうことができた。全国市譲会議長会でも2人の職員に立ち話であったが話を聞いてもらえた。「数日前全教の方もみえました」とのこと。

 

D班:文部科学省、財務省、総務省へ要請を行った。

(1)文部科学省

「事務職員は学校における基幹職員であり、文科省としては義教金制度の中にしっかりと位置付けていくことに変わりはない。様々な団体に応援してもらっている。(全学労連も頑張ってください)」と当局。

 全学労連としては、義教金制度そのものが見直される状況において、事務・栄養職員切り捨先駆けとした制度再編(教員部分のみを、しかもより成績主義を徹底させ、臨時労働者を大幅に導入した形での)に反対していくことを表明。

(2)財務省

「経済財政諮問会議で『骨太の方針 第3弾』が出されていくが、6月末まで事態は流動的である。現時点ではっきり言えることはない。教職員給与の定額化、政令市への移管、定数の非常勤でカウントすることなど文科省の提示待ち(5月9日と変わらず)」と当局。

 全学労連としては地方への財源移譲が十分になされない中で、事務・栄養職員が切り捨てられていく(一般財源化、非常勤導入…)ことを危惧している。

(3)総務省

「一般財源化は、決して総務省が地方を統制していくことではない。各自治体の主体性で、より充実した教育を実現していく条件作りを私たちは目指している。各自治体間の較差については総務省が調整の役割を果たしていく。」と当局。

 全学労連としては国家財政の危機を地方自治体にも背負わせるという要請がまずあって、その後付として「地方分権」が主張されていると捉えざるを得ない。各自治体の本当の意味での主体性が保障されることにはつながらないと考えている。教育を進める上での一定の水準(人件費等)を確保していく手だてとして、当面現在の義教金制度を維持していくことが必要だと考えている。

 

E班:敵の本丸、経済財政諮問会議へ要請した。場所は内閣府内。警備ばかり厳重であったという印象だが、事務局へ要請書を手渡した。全国都道府県教育委員会連合会、全国都市教育長会、全国町村教育長会、全国市町村教育委員会連合会へも要請した。「この大変な事態、趣旨も十分理解できる。お互いにがんばりましょう。」と語った。

 

 「地方分権」論が、いよいよ財源問題を含めて具体的に論じられる段階に入った。長野県知事などが発言していること(教員の給料を大幅にダウンさせてでも35人学級を実現していくことを地方自治体に任せる云々)に私たち自身がどう答えていくのかという問いを持ちつつ、なお公教育の国家主義的再編(としての「政府の地方分権」)に改めて反対していく運動を構築していくことが迫られているだろう。義教金制度が国家による「教育の保障=教育の統制」の二重性を持っていることへの批判的観点を深めつつ、運動を進めて行かねばならないだろう。

学校事務・栄養職員に対する
義務教育費国庫負担制度の堅持を求める緊急決議

 1985年度予算編成で当時の大蔵省が学校事務・栄養職員の国庫負担制度適用除外を言い出して以来、我々はこれに反対してきた。我々をはじめ、全国の学校事務職員の思いを込めて提出された学校事務・栄養職員に対する国庫負担制度の堅持の請願は、国権の最高機関である国会においても毎年採択されてきた。さらに全国各地での取り組みにより、地方の議会や首長や教育関係諸団体から同趣旨の意見書が毎年数多く出されてきた。こうした20年近くにもわたる全国の学校事務労働者による真摯な取り組みの成果は、極めて重く受け止められるべきものと考える。

 しかし最近、こうした事実の重みをまったく無視し「構造改革」の名のもとに「改革」をアピールするために、中身の無い制度いじりが強引に進められようとしている。地方分権改革推進会議や経済財政諮問会議では、学校現場の実態を踏まえない財源論のみの議論から義務教育費国庫負担制度の見直しが進められている。とりわけ学校事務・栄養職員については、他方で義務教育費国庫負担金全体の一般財源化が議論されているにも関わらず、この二職種のみを取り上げた削減の議論が同時に出されるという矛盾した状態となっている。事務・栄養職員など学校における少数職種に対するこのような措置は、「改革」のための生贄としてその職種をささげることに他ならない。その結果は定数削減や職自体の廃止につながり、更にその残された負担は他ならぬ学校現場や地方自治体が負うことになり、現場労働者の更なる過重労働をもたらす。

 今の情勢を深刻に受け止め、本日全国から結集した我々は、我々の未来のために、義務教育費国庫負担制度からの学校事務・栄養職員適用除外を阻止するため、「改革」の生贄となることを拒否して、今まで以上の力を込めて闘い抜いていく。

 以上決議する。

2003年6月13日

全国学校事務労働組合連絡会議6.13緊急集会

補助金4兆円削減方針決定で義務教育費国庫負担制度はどうなるか?

全学労連学校行革対策部 佐野 均

☆本当に先送りか?

 経済財政諮問会議は6月18日に、補助負担金を2006年度までに4兆円削減し、それにともない国から地方への税源移譲は義務的経費が全額、それ以外の経費は8割とすることを、いわゆる「骨太の方針 第3弾」に盛り込むことを決定した。おまけとして、この問題をめぐり総務省と財務省の対立が解消しないので、小泉総理が「政治決断」し各省庁もこれに従うという、総理の指導力もなかなかのものだという三文芝居の演出がついた。

 新聞各紙は、数値目標のみで具体策が無く、年末の予算編成へ問題が先送りされただけだと報じている。これに先立って6月12日にも補助金削減先送りの報道があった。このような新聞報道を見る限りでは、義務教育費国庫負担金の削減は当面回避されたかのようだ。果たして本当にそうなのか?

☆より深刻な事態に

 4兆円という削減の数字が出たということは、それを目指して具体化がされるということだ。具体策が無いというが、これまでの議論の過程で浮上したものが削減のメニューとして検討されていくだろう事は間違いない。すなわち、何度も一般財源化に向け検討を行なうとされ、昨年末の「3大臣合意」でも確認され、補助負担金では一番大口の2兆8千億円にのぼる義務教育費国庫負担金が標的にならないはずはない。

 そういう目で6月18日付の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(原案)」を読んでみると、別紙2として「国庫補助負担金等整理合理化方針」があり、その中に「義務教育費国庫負担制度、教員給与の一律優遇の見直し」という項目がある。内容を要約すると、

  1.  来年度に改革(例えば定額化・交付金化)のための具体的措置を講ずるべく検討
  2.  中教審の検討も踏まえつつ平成18年度末までに全額の一般財源化について検討
  3.  学校栄養・事務職員は標準法を通じた国の関与の見直しと国庫負担制度の見直しの中で、地域や学校の実情に応じた配置が可能となる方向で検討
  4.  退職手当・児童手当の国庫負担金の取り扱いは来年度予算編成までに結論を得る。
  5.  教員給与は国立学校準拠制廃止と公務員制度改革に合わせて、一律処遇から能力等に応じた処遇システムへの転換に向け検討

ということだ。

 内容自体は重大ではあるが、昨年末に既に出されているものが繰り返されているに過ぎない。検討事項ばかりなので直ちにそうなるという事でもない。しかしこれまでのように様々な会議の資料や覚書の類ではなく「骨太の方針 第3弾」に盛り込まれたということは大きな意味を持つ。特に(3)のように職種を名指しとあっては学校事務職員制度の危機的状況はさらに深刻なものになったと言わざるを得ない。

☆削減すること自体意味がない

 今年度予算で削減された義務教育費国庫負担金は共済長期給付と公務災害補償基金負担金分の2,184億円だった。総務省の地方財政計画によると、削減された分がそのまま財源不足額として残り、地方交付税や地方特例交付金で穴埋めする結果となっている。すなわち財務省所管の補助負担金は、総務省所管の地方交付税や地方特例交付金に形を変えて支出されただけである。この例からわかる事は、残された給与費は当然のこと、義務教育費国庫負担金は全てが義務的経費であって、削減してもどこかで負担する必要があるということだ。まして削減する補助負担金のうち義務的経費は全額を税源移譲するという今回の方針では、「歳出削減」は見せかけだけで負担の主体が変わるだけのことだ。地方に無駄な公共事業を強制する補助金行政は批判されるべきではあるが、金額の大きさにもかかわらず義務教育費国庫負担金の削減では、本来の目的である財政再建は決して実現しないだろう。

☆「政治決断」の生贄を拒否しよう

 このような「政治決断」にもし意味があるとすれば、秋の総裁選を控えた小泉首相の「構造改革」は進んでいるというフィクションのためのアリバイ工作と、財務省の補助負担金を無くし自らの管轄下に置くことで省益を図ろうとする総務省の陰謀くらいであろう。そのための生贄に学校事務・栄養職員がされるとするならば、我々はもっと怒らねばならない。

 すでに経済財政諮問会議や各省庁でも異論が出始めていて、24日の閣議決定も遅れるという観測も出始めている。新聞報道のように「具体策がない」からではなくて具体策として提示されているからこそ、8月末の概算要求から年末の予算編成に向けて例年以上の取り組みが必要となろう。全国の学校事務労働者の皆さん全力でガンバロウ。

☆余談ですが…

 全事研の神谷会長は6月12日に全国の全事研支部に向けて「義務教育費国庫負担制度堅持」と発信している。情勢についての認識は見解の相違なので特に言うことはないが、「再び来年も今回のような厳しいバトルが予想されます」などと来年に先送りするような能天気な認識をもっともらしく吹聴されるのは迷惑というものだ。

 神谷会長に対して全国の支部から「本当に大丈夫なのか」と問い合わせが殺到しているらしい。普通に考えれば問い合わせたくなるのも無理はない。

【6月24日記】

全学労連ハガキ行動

 全学労連では、右文面のような要求ハガキを小泉首相に送っている。

 今まさに「骨太の方針」へ名前が挙がった“事務職員国庫外し”に皆で立ち向かっていこう。

《送付先》

  100-0014

   千代田区永田町2−3−1  首相官邸

   内閣総理大臣   小泉 純一郎 様

 私たちは旧大蔵省・財務省の20年にわたる「義務教育国庫負担はずし」に反対してきました。

 しかし今なかなか進まない「構造改革」を前にし、形だけの「改革」を見せようと、学校事務職員を、その生贄にし、義務教育国庫負担金の削減が急浮上しています。

 義務教育国庫負担制度から除外されれば、学校事務職員は学校からいなくなるのは目に見えています。

 私たちは、学校事務職員の義務教育国庫負担制度からの除外をしないよう要求します。

「戦争への途をあくまで拒否しよう」

 5月15日、衆議院で90%の賛成、6月6日、参議院では80数%の賛成で「有事関連三法案」が可決された。

 5月23日、陸海空港湾20労組等の呼び掛けで開催された明治公園の集会には3万人が結集、6月3〜6日には緊急国会抗議行動が行なわれるなど、各地であげられた強い反対の声を嘲うかのように、翼賛国会とも言える状況のなかで成立してしまった。

戦争は非現実ではない

 1年半にわたって有事法制を阻止してきた全国の粘り強い闘いが、最終局面で敗れた背景には、昨秋来の異常とも言える反北朝鮮キャンペーンがある。日朝首脳会談での「拉致」告白・謝罪以降、メディアは北朝鮮叩きに熱を挙げている。これでもかこれでもかとセンセーショナルな見出しと映像が踊る。これによってつくりだされた人々の漠とした恐怖感が、日本を戦争への途へと踏み出させる有事法制をいとも容易に成立させるのに大きく影響しているだろう。

 イラクヘの侵略戦争のとりあえずの「勝利」を経て(しかし、今なお連日のように米軍兵士の戦死が報じられている)、「無条件に核をはじめとする大量破壊兵器の廃棄を迫る米国と、不可侵条約による体制保障を要求する北朝鮮の両国は、スローモーションのように正面衝突のコースを歩みつつあり、偶発的な事件をきっかけに最悪の事態に突入しかねない」(姜尚中)。有事法制成立はさらにこの危険を促進することになる。

修正で性格は変わらない

 民主党が賛成に回る理由とした修正合意は、「基本的人権に関する規定は最大限に尊重されなければならない」を付け加えたこと等だ。憲法99条の憲法尊重擁護の義務を負うはずの小泉首相自ら、「自衛隊は軍隊だ」と言ってのけ、その軽佻浮薄をマスコミが批判しないこの日本で、このような付け加えが有効であると考える人物がいるとすれば、よほどの間抜けということになろう。

 リアルで冷静な外交を放棄し、「悪の枢軸」転覆のための予防的先制攻撃を辞さない米国の戦略を積極的に補完する途を突き進む小泉内閣は、有事法制に続き、国会会期を延長し、「イラク復興特別措置法」の採択を狙っている。

闘いはこれから

 成立したとはいえ、法案はプログラム法案にすぎず、これから米軍支援法、自衛隊法の改定、「国民保護」法など50以上の法案を審議しなければならない。これらへの反対の闘いを持続しつつ、有事法制を発動させない闘い、廃案にする闘いを改めて構築することが求められている。闘いは「戦争への協力を断じて拒否するという一層重要な段階に入りつつあ」る〈STOP!有事法制6.10集会「決議」〉。


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