2004年12月17日
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全学労連ニュース今号の内容

 12.3 全国総決起集会

 三位一体改革 義務教育費国庫負担金をめぐる決着について

 教育基本法「改正」反対運動のために

 教育基本法の改悪をとめよう!11.6全国集会 参加記

国庫負担はずし阻止!学校行革反対!賃金削減攻撃粉砕!教育基本法改悪反対!

12.3 全国総決起集会

 緊迫する国庫情勢の中、全学労連は12月3日、全国総決起集会を港区の専売会館で開催した。折しも、1週間まえ、経済財政諮問会議での結論「来年度義教金4,250億削減・更に次年度4,250億円あわせて06年度までに8,500億円削減の上、税源移譲予定交付金を措置」の文字が新聞紙面をにぎわせていたこともあり、全国から110余名が結集した。

 冒頭、議長挨拶では「名指しで『事務職員削減』とはならなかったものの、その結論は中教審に委ねられている。まだまだ油断できない」とこれからの更なるたたかいを示した。さらに、情勢報告へと続き、この間の情勢について「公共事業の無駄を省くなどという本来の三位一体改革とはかけ離れた点で、議論が進んでいる」「義教金は額こそ大きいが、他の補助金・負担金に比べて地方への縛りは薄い」と“地方の意見”をタテにありとあらゆる補助金を集め、交付金化をたくらむ総務省を非難した。これらを受けての討論では、「各地で既に進行しつつある『ポスト国庫状況(合理化・効率化)』をひとつずつつぶしていく事が重要。その取り組みを通して、恵まれた労働条件の確保、さらにはたたかい方を次の世代に伝えていくべきである」という意見も出された。青森からは「共同実施」の現実。また今まさに行われようとしている「教育基本法『改正』反対」への取り組みの重要性など、今後の学校のあり方を左右する問題点が報告された。そして各県の国庫闘争報告、さらには連帯挨拶で「有期雇用者の増加」「中堅層での年収減」「日雇労働者の越冬闘争」など現代社会・労働者が抱える様々な問題が報告され、参加者一同決意を新たにした。そして集会宣言を採択し、集会は幕を閉じた。

 その後デモに移り、教基法改悪反対、イラク戦争反対などのシュプレヒコールを12月の東京に轟かせ、国庫問題の怒りを財務省・総務省にぶつけた。

 

三位一体改革 義務教育費国庫負担金をめぐる決着について

確かに、学校事務職員分は残ったが…

全学労連事務局 学校行革対策部 佐野 均

☆騙されてはいけない

 11月26日に政府・与党は、「三位一体の改革について」と題する合意文書を作成し、同日の経済財政諮問会議で細田官房長官により報告された。これは6月の「骨太方針2004」で今年秋に「三位一体改革の全体像」を示すと表明したことによるものだ。それをざっと見ただけでは、

となっており、6月の「骨太方針2004」で示された3兆円の税源移譲も、昨年の「骨太方針2003」で示された06年度までの4兆円の補助負担金削減も既に今年度で1兆円削減されているから計画通りに進む…、かのように見える。

 しかし「3兆円程度」とか「概ね3兆円規模」とかの曖昧な表現が目立つのでよく見るとそれぞれ別紙でもう少し具体的に示されている。それによると補助負担金の各省庁別削減金額の合計は、2兆8380億円程度であって3兆円に及ばない。それでもまあ削減される補助負担金の具体的な名称は列挙されている。税源移譲については、「8割方について次のとおりとする」とあり合計では2兆4160億円であり、これも3兆円に及ばない。すなわち、補助負担金削減も税源移譲も「3兆円」と言うのは目標額を繰り返しただけであって、実際の数字は目標額に達していないということだ。まあ概ね達成していることだしいいじゃないかという見方も有るかとは思うが、結果論であるにしてもわざわざ曖昧な表現を使うあたりに、関係各方面へ配慮し「改革」の進展を殊更にアピールせざるを得ない“彼らの都合”を読み取るべきであろう。

☆今年の政府・与党合意が意味する事

 “彼らの都合”はさておき、さらに問題なのは、補助負担金削減は05・06年度の2年間であるのに対して、税源移譲の2兆4160億円には04年度に所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額6560億円が含められている。もっと細かく見ると、この04年に措置された額にはさらにその前年に削減された義務教育費国庫負担金の共済長期給付と公務災害補償基金負担金分約2200億円も含まれている。つまり「税源移譲」とされている額は、実は03から06年度4年間の分ということだ。ここに時間的なゴマカシがある。補助負担金削減と同じく05・06年度だけで比べるならば、2兆4160億円から6560億円を差し引いた1兆7600億円となり、目標額3兆円からさらに離れていく。

 では「3兆円」の謳い文句に対して、税源移譲額は1兆7600億円だけなのかと言うとこれも違う。この中には05・06年度で削減されるとされる義務教育費国庫負担金8500億円が「税源移譲予定特例交付金」として含まれている。「税源移譲予定特例交付金」というのは昨年から登場したものだが、あくまでも総務省が配分する交付金であって、財源は国税だ。「税源移譲」は予定に過ぎず、そのめどもはっきりしないまま空手形に終わる可能性もある。すなわち文科省の国庫負担金が総務省の負担金になった。国から地方ではなく、国税のまま文科省から総務省に“権限委譲”されたものだ。これで「税源委譲」と言うのは詭弁というものだろう。ということはさらに8500億円を引かねばならない。そうすると9100億円である。これに今年度の実質税源移譲額2000億円を足しても1兆1100億円である。これが04〜06年度の税源移譲の実態である。

 これに対して補助負担金の削減はどうか。今年度で1兆円が削減された。そして先に紹介したように政府与党の合意文書にある2兆8380億円を足すと3兆8380億円となる。こちらは06年度までに4兆円の目標にかなり近い。

 地方交付税は04年度で約3兆円が削減された。このことで地方六団体は怒って結束し、独自の補助金削減案をまとめ、政府との協議の場を設置させ地方案の実現を迫るに到ったわけだが、そのことに気を使ったためか、05から06年度については必要な一般財源の総額を確保という努力を抽象的に述べるに留まった。10月に谷垣財務大臣が示した7〜8兆円の地方交付税削減案も完全に姿を消した。しかし既に削減されている3兆円が元に戻るというわけではない。

 要するに政府・与党は、「三位一体改革」と言いながら、1兆円ちょっとの税源移譲に対して4兆円近い補助負担金と3兆円の地方交付税の削減という「全体像」に合意したということである。税源移譲を加えたとしても、地方収入増は地方収入減の1/3以下にすぎない(P6表参照)。

☆「三位一体改革」の破綻

 何度も指摘していることだが、補助負担金を削減したらそれに見合うだけの税源移譲と地方交付税措置があってはじめて「国と地方の関係見直し」といえるのだ。この間ずっと財務省は税源の維持に、各省庁と族議員は補助金の維持に、総務省は地方交付税の維持に固執したまま「改革」の言葉だけが躍ってきた。妥協の産物であるとしても、これでは国のツケ回し、地方への負担転嫁ではないか。これまでの単に当事者間の利害の不一致ということだけでなく、数値的な面からも「三位一体改革」は破綻しているというべきだろう。

 「三位一体改革」の一方の当事者であるべき地方団体であるが、新聞によると全国知事会の梶原会長はこの結末について「60点」と評したという。「地方一揆」だとか「受託事務返上」とか大騒ぎした割にはやけに甘い採点であることだ。今回の結末を報じた新聞論調では、全国紙より負担転嫁される側である地方紙のほうが厳しい評価を下しているようだが、梶原会長の採点は別にしても、肝心の地方団体がこんな「全体像」の提示に納得して腰砕けになるようでは、最初からゴネ得を狙っていたようで「地方の時代」もまだまだ遠い事のようだ。

 もう一方の「改革者」として登場した小泉総理は、肝心の議論の大詰めを前に、政権維持のためにこの問題を政局にしないよう配慮し、丸投げと先送りを繰り返した。政府・与党合意が確定した11月26日の経済財政諮問会議の終わりに彼は「私の出番無くまとめてくれて、ありがとうございました。」と発言している。無責任で中身が無く数字合わせだけの代物でも「改革」をしたつもりでいるらしい。「三位一体改革」は主体的な面でも破綻している。

 もともと「三位一体改革」の論議は、市場原理の弱肉強食が貫徹する社会を目指す新自由主義政策に基づき小さな政府を作るために国と地方の役割分担を変えるという構造改革のために始められたものだ。その事は、弱者の団結により強者に対抗して相互扶助社会を作っていこうとする労働組合の論理とは対照的な“あちら側"の論議だということだ。我々にとっては、論議の行く末に〈何か〉を期待するのはお門違いというものだし、論議の結果が我々の労働条件を切り下げることにならないよう警戒はするが、それが破綻したからといって、我々が失望しなければならない義理は無い。今回の決着を見るに付け、この事は今一度確認しておいたほうが良いと思う。

☆義務教育費国庫負担金は…

 今回の決着は、これまでのように各方面の対立と調整により積み上げられてきた数字ではなく、「地方案の尊重」と目標額への数字合わせの結果であるがゆえにこれまでの削減のパターンとは大きく異なっている。今年の論議の初めから焦点化され、新聞で「三位一体改革」の記事が載ると必ずといって良いほど取り上げられていた義務教育費国庫負担金は、

  1.  義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について幅広く検討する。
     こうした問題については平成17年度秋までに中央教育審議会において結論を得る。
  2.  中央教育審議会の結論が出るまでの平成17年度予算については、暫定措置を講ずる。

とされ、2年間で8500億円、来年度は暫定措置として4250億円を削減し、削減相当分は、またまた得意技の「税源移譲予定特例交付金」で措置する事となった。

 小泉総理は、夏以降自民党や各省庁に対して地方案を尊重するように繰り返し指示していた。この8500億円というのは、地方六団体が補助金削減案に盛り込んだ義務教育費国庫負担金の中学校教職員給与費分8500億円削減と金額だけは一致している。しかしその中身には触れておらず、中教審で「費用負担についての地方案を活かす方策を検討する」とあるだけだ。しかも安易にも来年度で単純に半額の4250億円を削減するというのだから、丸投げした結果とは言え、まったくたいした「地方案の尊重」である。

 ではこれもまた得意技の先送りかと思うと、来年度予算編成作業が始まっている中では先送りというわけにもいかない。とすると義務教育費国庫負担金から削減される4250億円は具体的にはどう捻出されるのかが気になる。これについては日頃は対立している文部科学・財務・総務三省の各担当者が一様に口を揃える。曰く、「天から降ってきた数字」「政治決着」「積み上げでなく金額が決まるのは予算の常識外」…等々。それでも、中身はともかく金額ははっきりしているので予算編成は出来、中身は担当の文科省が考える事、というのが各省の結論のようだ。

 文科省としては、いろいろ注文をつけられながらも自らの土俵である中教審での議論に持ち込めたことで、ここから巻き返しを図って8500億円を元に戻したいところだ。そのためにもあまり先走るような事はできないだろう。

 全学労連が12月3日に文科省の担当に聞いたところ、暫定措置である以上現行の項目のどれかを削るという訳にはいかず、現在の義務教育費国庫負担金2兆5千億円から4250億円を単純に引いた金額で国庫負担分予算を組み、財務省に査定させるしか無いとのことだ。すなわち一定割合を一律に掛けるのか、項目別に掛けて全体で合わせるのかよく判らないが、少なくとも例えば昨年の総務省案のように事務職員分の1200億円と加配教員分1900億円など、個別の項目を積み上げていって4250億円を捻出するといったやり方は今回は無いという事だ。つまり皮肉にも「天から降ってきた数字」であったことが幸いして、事務職員分を生贄として差し出すといった我々にとって最悪のシナリオは避けられたといえる。

☆何度も言うが、喜んでいる場合ではない…

 最悪のシナリオではないにしても、学校事務職員の国庫負担制度が残ったからメデタシ、メデタシ、という訳にはいかないのがこの数年の国庫問題の新たな展開の深刻なところだ。それにはいくつかの論点があるが、とりあえず3点だけ指摘しておく。

 第一に、今年度予算で退職手当と児童手当分の2300億円が削減され、さらに05・06年度で8500億円ということは、この3年間で1兆800億円が、「税源移譲予定特例交付金」にされることになる。昨年義務教育費国庫負担金は総額で2兆8000億円あったのだからその4割弱が3年間で失われることになる。しかも先に述べたように国税のまま総務省の交付金となる。文科省の官僚は、このままなし崩し的に総務省に奪われていくことに大変な危機感を覚えているようだ。文科省としては中教審の論議を経て8500億円については元に戻したいところであろうが、新たに地方のメンバーが中教審に入ることになったようで、これまでのように文科省の思惑通りに議論が進むかどうかわからない。こう見ると総務省と文科省の官僚の権力争いの中で、義務教育費国庫負担制度はかなり追い込まれており、今回の決着はあくまでも「暫定」に過ぎない。

 第二に、今後の議論は中教審に委ねられる事になった訳だが、そのことにより翻弄される学校現場で働く我々の側は、文科省を応援すべきなのだろうか。「三位一体改革」の中で義務教育費国庫負担制度の見直しが焦点化されると、文科省はもとより組合も含め教育関係団体は軒並み「制度堅持」を主張して、地方六団体と交錯しながらも活発に活動している。しかし一様に見えるこの動きの中には、まったく異なる二つの要素が錯綜していることを見なければならない。

 ひとつは、憲法で保障された教育を受ける権利を全国どこでも等しく実現するための条件整備を国が責任を持つということで、その手段としての義務教育費国庫負担制度は、先に見たように破綻した「三位一体改革」の中では尚更必要である。特に学校事務職員のような少数職種の制度維持のためには重要である。この事と地方の仕事としての教育行政とは別次元の問題だろう。いかに地方自治の理念があり、教育政策に充分な予算をかける準備が地方の側にあったとしても、この国の責任が無くなる訳ではない。

 しかしその一方で、自民党の文教族議員や文科省の官僚は、教育の国家統制・支配介入の手段としてこの制度をとらえその必要性を主張する。その延長上には教育基本法や憲法の改悪が目論まれている。新聞報道されたように中山文部科学大臣は、「教科書から強制連行とか従軍慰安婦等の記述が減って良かった」と公言してはばからない人物である。また地方六団体の補助金削減案に義務教育費国庫負担金を盛り込むことに反対した石原東京都知事が、東京都の学校現場にいかに酷い処分を乱用しているかを忘れてはならない。残念ながら今回の結末はこうした勢力によるところが大きい。だからこそ教育基本法の改悪を目論む中教審の論議に委ねられたのだ。

 こうした二つの要素のせめぎ合いの中で今後の展開がある以上、たとえ義務教育費国庫負担制度が「堅持」されたとしても、それが我々の望む形になるという補償は無い。それはひとえに国家の支配介入に反対する戦いとの結合にかかっている。

 第三に、国庫負担制度は確かに残ったが、総額裁量制が導入された今となっては、定数法に定められた数は国庫負担金の単なる算出基礎に過ぎなくなっている。学校事務職員の定数も同様で、実際の事務職員定数を決める根拠としての役割は既に終わっている。それを決めるのは各都道府県の「裁量」なのだ。総額裁量制導入以前から文科省の教育改革の中で規制が緩和され、少数職種分を教員分に回したり非正規雇用職員を配置し定数崩しをしたりするケースが増え始めている。総額裁量制はこの傾向をさらに加速するものだ。全学労連の調査によると、昨年定数割れをしているのは事務職員が32都道府県、教員では7県で、逆に実数が定数を上回っているのは事務職員13県、教員40都道府県であった。典型的なのは東京都で、事務職員の定数充足率は92.03%で全国最下位なのに対し教員は107.26%で全国1位であった。教員に比べて事務職員の定数割れが目立っている。今年になると事務職員で実数が定数を上回ったのは8県に減っている。事務職員分の定数計画や研究加配も文科省に言わせれば、定数割れをしたまま加配を要求するというのはあり得ないということで、このままではいつまで続くか怪しいものだ。

 文科省にしてみれば、今のところ学校事務職員分は確保している訳で、その限りでは国庫負担金の目減りはない。あとは各都道府県が実際にどういう配置をしようと知った事ではないが、総務省との対抗上「基幹的職員」と位置付けておこうということか。

 これにさらに追い討ちをかけるのが、一部学校事務職員自身が文科省の尻馬に乗って推進する学校事務の共同実施だ。これは電子自治体化や出先機関の縮小・削減を推進する事務部門の合理化の流れにまんまと乗る事になる。処遇改善など論外で学校事務職員制度の発展など夢のまた夢となる。学校事務も合理化可能となれば、総額裁量制の下で存在しない学校事務職員分の国庫負担金が、「裁量」により教員のために使われるなどという冗談のような事が起こりかねない。

 これではもう学校事務職員は国庫外しをされたも同然ではないか。まったく喜んでいる場合ではない。

☆全学労連的国庫闘争を闘おう

 全学労連は20年前当時の大蔵省が、教壇に立たない者の義務教育費国庫負担制度からの適用除外を言い出して以来、これを学校における少数職種に対する合理化攻撃ととらえ、「基幹的職員」とか、「教育のため」とか、「地方自治のため」とかの他所から与えられた理由付けに拠るのでなく、自らの労働条件を自ら守るために反合理化闘争として取り組みをしてきた。これまで述べてきたように、義務教育費国庫負担制度がなし崩し的にその意味を解体されつつある状況の中にあって、改めてこの原点を確認する必要がある。

 国庫闘争はそれだけが単独であるのではない。我々を取り巻く様々な問題、総額裁量制・共同実施・電子自治体化・定数問題・民間委託・教育基本法改悪…等、総じて学校行革への取り組みとの結合があって初めて全学労連らしい運動となる。その意味で来年の中教審の結論がどうであろうとも我々の取り組みはまだまだ続いていく。

〔2004年12月13日記〕

04から06の「三位一体改革」の実像

(単位:円)

  項目 内容 金額 小計 合計
地方収入減 地方交付税 04の削減 3兆 3兆 6兆8380億
05・06は現状維持? 0 0
補助負担金 04の削減 1兆 3兆8380億
05・06での削減予定 2兆8380億
地方収入増 税源移譲予定特例交付金
(義務教育費国庫負担金)
04分 2300億 1兆800億 2兆1900億
05・06分予定 8500億
税源移譲 04分 2000億 1兆1100億
05・06分予定 9100億

国会請願署名 採択される

ご協力ありがとうございました

 皆様にご協力いただいた、全学労連の「義務教育費国庫負担制度の維持に関する請願書」は、今年も衆・参両院で採択されました。総署名数は16000近くも…、ありがとうございました。全学労連のほかにも国庫がらみの請願は多数提出されていますが、両院ともに採択されたものは全学労連のものだけです。全学労連の義教金国会請願は採択されつづけています。これも、皆様のおかげです。また、紹介議員になっていただいた国会議員の皆様、ありがとうございました。

 これからも、全学労連は頑張ってまいります。よろしくお願いします。

カンパのお願い

 寒さも日に日に厳しくなりつつあります。いかがお過ごしでしょうか。

 さて、いまだ先が見えてこない不況の真っ只中、大変心苦しいにですが、カンパのご協力をお願いします。

 全学労連はこの夏過ぎから「毎月行動」とし、丸の内、または霞ヶ関、とりわけ文科省・総務省、さらには地方六団体と毎月のように折衝や要望をかさねてきました。今後も精力的な活動を続けてゆくためには皆様の力強いご支援が必要です。皆様に生きの良い情報をお届けするために…、また、国庫負担外しを阻止するために、ますます頑張る全学労連に、ご支援下さるようお願いいたします。

教育基本法「改正」反対運動のために

全学労連 事務局 羽成純

▲はじめに

 イラクへの自衛隊派兵の延長が強行される中、9条を中心とした改憲の攻撃と連動する教基法「改正」への動きも又強められている。グローバル化が進展する世界において、国家戦略としての「行革」―「教育改革」攻撃の大きな節目に今私たちは立たされている。学校事務労働者に対する国庫負担外し攻撃が現在義教金制度そのものの廃止をにらんだ新たな段階を迎えていることも、この状況と不可分である。

 戦後の憲法―教基法体制の下で累積されてきた否定的現実によってきたるところを明らかにしつつ、教基法「改正」に反対していく私たちの根拠、論理を見定めていく必要があると思う。以下、岡村達雄さんが教基法「改正」にかかわって提起してきた論点を手がかりに考えてみたい。

▲「教育目的の法定」をめぐって

 かつて岡村さんは「自由と共生の現在をめぐって」(『学校という交差点』1994所収)の中でこう語った。「教育される側にとって考えれば、問題は目的の是非や善悪なのではなく、目的設定の行為や思想そのものが本質的に強制的なものであり、自由に生きようとするものの意志と生き方に対立し、決定的に相入れないという点なのだ。ここには教育の善性イデオロギーをもうひとつ徹底して批判していくべき深められた思索が必要になっている」。岡村さんは、教育目的論に対するこのような批判を前提にした上で、戦後教育が国家による教育目的の法定(教基法第1条)という憲法原理、近代原則からの逸脱(それは教基法第10条の規定する「不当な支配」にあたる)によって開始され、「戦後の日本の教育政策は、まさにこうした『不当な支配』を『正当な支配』に置き換えていく法的仕掛けのもとで展開されてきた」と述べる(岡村『教育基本法「改正」とは何か―自由と国家をめぐって '04/5』。更に「戦後教育は第1条による『呪縛』への自覚の欠如、言いかえれば価値主体の間での相互批判がなされる『共同的空間』を『国家』に預けてしまった」とし、教育目的の法定が「戦後公教育の現実において、公権力が戦後の早い時期から教育・学習内容、教育価値などに関与していくイデオロギー的基盤を用意していった」と指摘する(同)。一方で象徴天皇制という形で天皇制の延命を認め、他方で「教育目的や理念の『法定』を民主化に向かう国、日本への啓蒙的配慮と眼ざしのもとに承認した」占領権力の存在、そして、ファシズムが占領権力の「民主主義」に粉砕されてゆく中ですんなりと心の切替えが出来た人々…。かつて、「軍国少女」だった北村小夜さんは、「従っているふりをする人々が多ければ戦争ができる。敗戦後、多くの人々が私は戦争に従っているふりをしていただけだと言って平和や民主主義を唱えだした」と語った('03.12.20 神奈川における学習会での発言)。

 ベルリンの壁の崩壊―冷戦の終焉以後の混迷、とりわけ9.11事件以後のアメリカのなりふりかまわぬ暴力的世界支配。これにつき従うこの国の現実は再び「従っているふりをする」多くの人々が戦争体制を支えつつある状況を示しているのではないか。岡村さんは言う。「今回の『改正』『改悪』への反対論は日本近代国家の成立以来、とくに戦後の教育目的の『法定』がもたらした歴史的負性(国民国家による思想的、精神的、心理的およびイデオロギー的呪縛)に対し、どのような態度をとろうとしているのか。少なくとも現行法を守るべき価値として擁護するということでは今日的課題から見て決定的に不十分」であると(岡村、同)。問題は「国民国家における公教育の特殊歴史的概念である国民教育の現実をどのように変えていくのか、その法政的枠組みである『憲法・教基法制』を批判し、それに代わりうるあり方をどのように構想するのか」ということであり、「グローバル化の進展する事態」において、「対抗的なグローバリゼーションにおける教育構想はいかに可能か、そのように問うことにおいてだ」と(岡村 同)。

▲私たちの運動経験に即して

 公教育を教育と統治して語られる教育の善性イデオロギー=教育幻想によって支えられている差別的な公教育の現実。それは、私たちの学校事務労働運動の出発の時から立ちはだかっていたものだ。学校事務職員も又教員と同様に価値としての教育を担う労働者である(べき)という観念。「われわれにとって極めて看過することの出来ないことは、それが、「イデオロギー的色彩をって我々学校事務労働者としての全存在を規制してきたときである」(室伏健二「自立への旅だち」『岐路に立つ学校事務』1974)。このことを明確に拒否して、学校事務労働者の運動が開始されていったことを今改めて想起することは決して無駄ではないと思う。

 「教壇に立たない職員の給料まで国が面倒みることはない」という政府―大蔵省の差別的な言葉によって開始された国庫負担外し攻撃は今、義教金制度そのものの廃止攻撃という段階に立ち至っている。教基法―公教育を守るべき価値として擁護する立場から、教基法改悪反対―義教金制度堅持を掲げてきた日教組は翼賛的な国民教育運動に呑みこまれていこうとしている。では、私たちはどのような論理に依拠して教基法「改正」に反対―義教金制度廃止反対を主張していくのか。それは教基法、義教金制度によっても確実に支えられてきた戦後の公教育の否定的現実をしっかりと見据えつつ、なお国民統合を一層強化するものとしての教基法「改正」に反対していくこと、新自由主義的『教育改革』を押し進めるものとしての義教金制度廃止に反対していくことなのだと思う。

 北村小夜さんは近著『能力主義と教育基本法「改正」―非才、無才、そして障害者の立場から考える』('04/8)の中で、教基法第3条が孕む能力主義的思想を批判しているが、北村さんが提起するような教基法への批判を回避した教基法改悪反対論が、能力主義を自明の前提にする新自由主義的な「教育改革」や労働政策を押し進めていく力には到底ならないことはあまりにも明らかだ。

▲おわりに

 12.3全国集会で神奈川県共闘のSさんが語ったように年収700万円の労働者と時給700円の労働者が同じように働かされている現実はどう考えてもおかしい。自らの差別への怒りをいやおうなく自分たちも又差別する側に組み込まれていく現実(それはグローバル化の中で国境の内外を貫いてあらゆる領域に及んでいる)への想像力に結びつけていけるか。国庫負担外し阻止の闘いを積み上げてきた経験は学校の内と外を横断する正規―臨時的労働者を包括した労働運動への展望につなげていけるか。教基法「改正」反対―義教金制度廃止反対をトータルに闘っていく道筋、言い換えれば自分たちのいる場所から、教基法「改正」反対運動に連なっていく道筋は、そのような労働運動の模索の中からより具体性をもって見えてくるのではないか。

 

教育基本法の改悪をとめよう!

11.6全国集会 参加記

埼玉学校労働者協議会 N

 11月6日「教育の日」、昨年12.23の集会に引き続き東京・日比谷野外音楽堂を5500人で埋めつくした大集会が行われた。開演の30分ほど前に会場入口に到着したが、もうすでに会場はいっぱいだった。参加は、様々な市民団体、教職員団体、学生や個人でこの「教育基本法の改悪をとめよう」とのことに賛同できればだれでも参加できる広範な集会である。いつもは同じ会場にいないでしょうという団体同士も隣同士に参加といった感じであった。

 リレートークでは都教委はじめ各地の「日の丸・君が代」の強制、ジェンダーフリー攻撃、大学問題、図書館・公民館問題、マイノリティー教育権問題などなどのアピールがあり、みんな話し足りないという雰囲気であった。また、全学労連にいつも支援してくれるアイム89のメンバーもアピールを行っていた。呼びかけ人の小森陽一さん、大内裕和さん、三宅晶子さん、高橋哲哉さんからは「愛国心」、新自由主義的「教育改革」、10条「教育は不当な支配に服することなく」の改悪の危険性、運動の広がりなど熱のはいった訴えがあった。また、社会党党首・福島瑞穂さん、民主党・生方幸夫議員の応援発言あり、ザ・ニュースペーパーのコントありと会場は大いに盛り上がった。最後に、「教育基本法の改悪は、…『平等と平和』から、『差別と戦争』へと大きく転換させるものにほかなりません。」でしめくくられたアピール文で参加者の思いを確認した。

 集会後、銀座のど真ん中をにぎやかにデモ・パレードし、人々にアピールしていった。

 

追加報告

 埼玉県では上田知事が「新しい歴史教科書をつくる会」の前副会長・高橋史朗氏を埼玉県教育委員に選任しようとしているというショッキングな動きがあります。“自らつくった教科書を自ら採択する”ような不当極まりない利益誘導が公然と行われようとしています。断固として選任を阻止する、その闘いを…。

〜 かつて子どもだった人に 

今の子どもたちに 

そして未来の子どもたちへ 

 

戦争しない国で生きたい

子どもは「お国」のためにあるんじゃない! 〜


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