2005年6月11日
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全学労連ニュース今号の内容

 今年の義務教育費国庫負担金をめぐる動きについて

 5.13 全学労連 中央行動

 人事院に行ってきました

 教育基本法の改悪をとめよう!

今年の義務教育費国庫負担金をめぐる動きについて

―焦点は地方行革と地方財政計画見直しへ―

全学労連事務局 学校行革対策部 佐野 均

 昨年の政府・与党合意を受けて義務教育費国庫負担金の取り扱いをめぐる論議の場は中教審特別部会に移った。三位一体改革を進める経済財政諮問会議でも、補助負担金削減の議論のうちの大きな部分を占める義務教育費国庫負担金に関しては、とりあえず表面上はこの秋までその動向を見守るということになる。ではその論議に期待して結論を待っていていいのだろうか。その間隙を突いて浮上しているのが地方行革と地方財政計画に関する議論である。議論の方向はかなり危ない。とても他力本願に構えていられる状況ではなさそうだ。以下そうした動きをまとめてみる。

☆とりあえず地方を尊重?

 もともと三位一体改革の中で地方交付税改革は三位のうちの一つであり、地方交付税算定の基となっている地方財政計画は当然議論の俎上に上るべきものである。ところが昨年度予算でいきなり約3兆円もの地方交付税が削減された事から地方が猛反発し、地方6団体は税源移譲を強く迫るとともに独自の国庫補助負担金削減案をまとめ、これを尊重することと国と地方の協議の場を設けることを政府に認めさせた。こうした地方の勢いに圧倒されたためか、年末の予算編成まで地方交付税改革を焦点化するどころではなく、国庫補助負担金削減と税源移譲を地方案の数字へつじつま合わせすることに明け暮れた(この辺りの経緯と解説は「全学労連」N0.273参照)。そして今年度予算においては地方交付税は16兆9,000億円と昨年度より100億円程度増額されている。その前に約3兆円削減されている訳だからたいした事は無いといえばその通りだが、削減の勢いにブレーキがかかった事は確かである。

 何度も指摘している事だが、三位一体改革の背景には、これを財政赤字解消の手段としたい財務省と「地方分権」と称して自らの権限拡大を狙う総務省の暗闘がある。昨年の決着は、丸投げと先送りで「地方案の尊重」しか言わなかった総理の下で、総務省が地方の力を利用してポイントを稼いだと見る事が出来る。しかし財務省もこのまま黙ってはいない。経済財政諮問会議の有識者議員を使って全く別な角度から反撃に転じた。

☆財務省の反撃

 年明け早々の1月20日の会議で4人の有識者議員名で「17年の諮問会議の進め方」という文書を提出する。そこでは05・06年度を重点強化期間と強調し、特に今年は(1)郵政民営化(2)行政改革の強化(3)社会保障の見直しの3つの課題に取り組みを強化すべきとしている。このうち(2)行政改革の手段として「国及び地方公務員の総人件費削減」を上げている。それだけならば別に今更珍しくも無いが、竹中担当大臣の後押しやらマスコミで大々的にキャンペーンされた大阪市の「不正」給与問題の追い風もあり、議論の方向は公務員一般から地方公務員の人件費抑制に移っていく。国よりも地方のほうが一般会計に占める人件費の割合が高く、地方の官民格差は依然として大きいし大阪市のような不正はほんの氷山の一角というわけだ。この事によって、地方行革―地方の歳出削減―地方交付税総額の抑制という方向に再び論議の舵を切りたいという財務省の意図は明らかであろう。同時に財務大臣と有識者議員は、地方財政計画に対しても計画と決算の金額の乖離や積算の不透明度などの問題点をあげて、地方債のあり方も含め縮減の方向で見直しを迫っていく。

 麻生総務大臣は、地方のラスパイレス指数は既に低い所で74.9になる所もあり全体で100を切っている(=国より低い)とか、外国に比べて日本の公務員の割合は高くないとか、行政から独立した人勧制度があってそう簡単にはいかないとかの反論を試みるが、それも空しく小泉首相が固執する郵政民営化とセットで出された方向で議論は進んでいく。

 旧総務庁・旧自治省・旧郵政省がまとめられて出来た総務省の麻生大臣としては、国も地方も含めた公務員の問題を一手に所管しているわけで、三位一体改革を推進する経済財政諮問会議の委員である立場上公務員の総人件費削減という課題に対する方策を出すことになならざるを得ない。さんざん有識者議員から祭り上げられ促された挙句、3月29日に都道府県と政令指定都市に通知され、合わせて市区町村にも周知させるよう指示しているのが「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(以下「新指針」と略記)である。

 念のため指摘しておくが、総務省は何年も前から地方公務員の給与抑制措置を促進する通知を出したりその集計をすること等を積極的にやっており、地方への権力の証左としてもともと公務員の総人件費抑制に決して消極的なわけではない。地方交付税総額抑制の口実に使われる事がわかっていながら、財務省や有識者議員につつかれて出させられるのは不本意であるだろうが、ここで出された「新指針」は、総務省がかねてより検討していたものが出されたに過ぎないということを忘れてはならない。

☆「三位一体」の合理化策

 「新指針」は前置きの文章で、

「これまでも、地方公共団体においては「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」(平成9年11月14日付け自治事務次官通知)等に基づき積極的に行政改革に取り組み、地方公務員の総数は平成7年以降純減し(10年間の累積で198,895 人の純減)、国家公務員と比較した給与水準(ラスパイレス指数)も100を切ったところである(平成16年4月1日現在で全国平均97.9)。また、行政評価の取組、情報公開条例等や個人情報保護条例等の制定事務・事業の民間委託等も着実に進展してきており、給与・旅費等に関する事務の集中化・アウトソーシングといった新たな取組や指定管理者制度の活用も見られるようになっている。」(下線は引用者)

とこれまでの「成果」を誇っている。まるで自分たちの「指導」により「成果」が上がったかの物言いだが、波線で示した通り、地方公務員の総数が減り始めたのは前の「指針」が出る以前から始まっているのはどうした事か。

 また、、二重線を引いた「情報公開条例等や個人情報保護条例等の制定」はそれに続く「事務・事業の民間委託」や「給与・旅費等に関する事務の集中化・アウトソーシング」と関連付けて述べられる性格のものだということだ。どういうことかというと、公務員法には守秘義務規定があり、当然それを破れば行政処分の対象になる。従来民営化や民間委託が一般行政よりも現業部門中心で進められてきたのは、こうした情報管理上の壁が民間との間にあったからだ。4月から施行された個人情報保護法は、民間業者にも情報の取り扱いの義務を課した上で罰則規定を定めている。別な見方をすれば、公務員の情報管理上の壁はこのことによってかなり薄くなり、業務の民間委託や民営化をやりやすくする環境がさらに整ったということだ。

 このことは本文のほうでもう少し詳しく述べられている。「行政改革推進上の主要事項」のうち「行政の担うべき役割の重点化」の第一番目に「民間委託等の推進」があげられ、

給与・旅費の計算、財務会計、人事管理事務等の総務事務や定型的業務を含めた事務・事業全般にわたり、民間委託等の推進の観点からの総点検を実施すること。・・・略・・・その際、企画と実施の切り分けや複数の組織にまたがる共通の事務の集約化、他団体との事務の共同実施、委託実施期間の複数年度化などの様々な手法による委託の可能性の検証を行うこと。」(下線は引用者)

 ここで言う「給与・旅費の計算、財務会計、人事管理事務等の総務事務や定型的業務を含めた事務」というのは、まさに学校事務にあてはまるではないか。さらに「事務の共同実施」は、最近学校事務職員を巻き込んでいるそれの意味ではないとしても、その発想において全く共通している。決して偶然言葉が一致したわけではない。学校事務の共同実施を推進する諸君は、その延長上に職や制度の「発展」ではなく、解体・委託・民営化こそがあるという事にいい加減気付くべきであろう。

 「新指針」は民間委託の推進だけでなく、定員管理や給与の適正化、電子自治体の推進等で徹底した地方行革を求める。要するに人員を減らし、給与を減らし、コンピュータ合理化を徹底するという「三位一体」の合理化策だ。総務省は指針を示すだけでは飽き足らず、ご丁寧にも「改革の進捗状況について、必要に応じ、地方公共団体の行政運営に資するよう助言等を行う」とか「毎年度フォローアップを実施し、その結果を広く国民に公表するものであること」と駄目を押す。要するに、総務省の言うとおりにやらないと承知しないぞ、世間の晒し者にするぞと脅しているわけだ。口では「地方分権の推進」などと言ってもこの程度なのだ。

 こうした動きに連動するかのように人事院は国家公務員の給与5%削減と地域給の導入や査定昇給制度を検討しているという。人事院の動きが地方に波及し、「新指針」に弾みがつくのは明らかであろう。全学労連は5月13日に初の人事院交渉を設定し、資料の提供と共に給与水準の引き下げをしないよう求める要望書を提出した(記事別掲)。

☆対立が激化する中での中教審の論議の行方

 総務省は地方への支配の強化による権限拡大を狙い、財務省や有識者議員は徹底した地方行革で地方の歳出削減を図るとともに地方財政計画の制度的見直しを行い、地方交付税総額の削減に道を開きたいと考えている。同じく「新指針」と地方財政計画を巡ってそれぞれの思惑が交差する。そして6月にまとめられる「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(骨太の方針第5弾)に向けて、地方も巻き込みつつ駆け引きは一段と激しくなっていく。

 4月には地方六団体と麻生総務大臣との会合と、昨年末から中断していた「国と地方の協議の場」が相次いで開催された。地方六団体は、

(1)税源移譲の確実な実施と移譲の工程を早期に示し、個人住民税の10%比例税率化で実施

(2)国の財政再建のための地方への負担転嫁ではなく、先送りされた国庫補助負担金分の早期税源移譲と地方の改革案で示した補助負担金の廃止・一般財源化の実現

(3)地方交付税総額の確実に確保し、財源の不足は地方交付税の法定率分の引き上げで対応する

(4)2007年度以降も第2期改革として引き続き基幹税により8兆円の税源移譲を進める

(5)「国と地方の協議の場」の定期的開催と制度化をし、義務教育費国庫負担金・生活保護費負担金等の個別的事項も最終的にはここで協議・決定する

(6)「基本方針2005」は地方の要請内容を反映したものとする

等を求めている。(1)〜(3)は三位一体改革に対応した地方の主張の繰り返し。(4)で昨年末の決着で終わらせないぞと釘を刺し、(5)で今後の足がかりの念押しと共に、先延ばしした課題の最終決着まで関与する決意表明をし、(6)で当面の関与のあり方を要求する、といったところか。

 このうち(5)については一言触れねばならない。中教審への論議に委ねられたかに見える義務教育費国庫負担問題であるが、昨年の政府・与党合意では

「(1)義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。

こうした問題については、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得る。

(2)中央教育審議会の結論が出るまでの平成17年度予算については、暫定措置を講ずる。」(下線は引用者)

とされている。この後半の「暫定措置」としては、今年度は地方の提案した2年間で中学校給与費分8,500億円という内の金額のみを「尊重」して、その半分の4,250億円を削減するというまさに数字合わせとしか言いようがないことになったのは周知の通りである。前半を見ると、中教審で検討されるべき問題は「地方案を活かす方策」と「教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方」の2点である。先の地方六団体の言う(5)の要求はこの事を踏まえ、文部科学大臣の諮問機関である中教審が地方案を単に切り捨てて終わらせないよう牽制しているものに他ならない。

 全学労連と5月に折衝した総務省地方財政局の文教予算担当課長補佐も、中教審の検討課題には地方案を活かす方策も含まれており、それ抜きで結論を出すのは許されないという事と、最終決定は中教審がするものではないという事を繰り返し強調していた。

 文部科学省は中教審での議論に持ち込んだ事で安堵しているかどうか知らないが、こうした総務省や地方団体の動きを見ていると、中教審への包囲網が出来つつあり、それほど簡単に終わりそうもないようだ。中教審は単に文部科学大臣の諮問機関に過ぎない。

 5月25日からは「義務教育に係る費用負担の在り方」についての議論が地方団体側の主張から始まっている。10月末といわれる中教審の結論まで激しい攻防は続くにしてもどの程度結論が重視されるかは別問題だ。それでもとりあえず6月末に出る予定の中間報告に注目する必要はある。

☆伏兵登場?

 先に財務大臣と有識者議員が、総務省の地方財政計画に対して地方債のあり方も含め縮減の方向で見直しを迫っていることを指摘したが、この論議に新たな乱入者が現れる。経済同友会は4月18日「地方財政改革の提言 ―地方交付税削減を改革の第一歩に―」(以下「提言」と略記)という文書を出した。副題から明らかなように、三位一体改革をめぐる議論の中では交付税改革先行論に属するもので、税源移譲先行論を唱える総務省や地方団体とは正反対の主張である。

 「提言」によると、経済同友会は2002年にも、「税源移譲、財政調整、国庫支出金の改革に歳出削減を含めた“四位一体”の改革を同時進行で実施する」という提言を行ったが、現実の改革の歩みは極めて遅く、改革の加速の視点から新たに提言をまとめたという。そしていかにも交付税改革先行論らしく地方交付税制度について大半を割いて論じ、国の責任でその削減をすることを主張する。曰く、

個々の地方自治体の歳出額は、地方自治体が自ら算定するのではなく、国(総務省)がモデル計算で決定する。・・・略・・・歳出のモデル計算方法は、経常経費については、客観的な測定単位に単位費用、補正係数を掛けて項目ごとに算出し、合計する。測定単位は客観的であるが、単位費用や補正係数は可変であり、事実上、国(総務省)の判断でどのようにも決められる。
・・・ルール通りの運用がなされる限り、地方交付税のために国の赤字が発生することはない。ところが現実には、国費からの特例加算により、法定率分を超える地方交付税を支給する事が常態化している。・・・略・・・こうした加算は、好況時、多額の地方交付税を与えられて拡大した地方歳出が、景気後退期にも縮小できないことから生じている。・・・略・・・事実上、赤字国債で資金調達して地方財政への補填を行っている状態である。
地方交付税の交付名目と現実の使途とは著しく乖離しており、・・・略・・・地方交付税は使途を限定せず、自治体の裁量で他の行政需要に用いることが可能だが、このような実態とかけ離れた行政需要見積りが、赤字国債を発行してまで国が補償すべきものとは言いがたい。制度の趣旨からの逸脱は明らかである。」等々。

 「改革」が遅いからといって国の主導で地方交付税削減を先行させた場合、現行制度での主要な収入源を奪われることになる地方は破綻するしかなく、それこそ一揆でも起こすしかないのではないかという疑問が残るが、結論部分が正しいかどうかは別にしてこうした指摘は、総務省にとって地方交付税制度が他の省庁の補助金と同じように権力の源泉であるということを理解するうえで大変興味深い。

 「提言」が出て間もない4月27日に地方六団体は反論を出す。「全くの事実誤認」「地方自治を破壊するもの」「本末転倒の議論」「無責任なつまみ食い」などの激しい表現が地方側の怒りを表している。地方六団体は地方分権推進連盟と共に6月1日に東京で、特別来賓7名、一般来賓として119名の衆参両院国会議員と代理者109名、民間分権推進団体関係者80名、主催者側として地方公共団体の首長及び議長等約8,000人を集め、「分権改革日本」全国大会を開催し、地方案に沿った3兆円規模の税源移譲の実現や2007年度以降の第2期改革を「骨太方針2005」に明記すること等を求めた決議を採択している。

☆元気が一番

 見てきたとおり、様々な思惑をはらんで諸勢力の動きが活発化してきている。その中で義務教育費国庫負担制度はどうなっていくのか全く予断を許さない状況である。ただ、これまで何度も繰り返し言っている事だが、制度が残ってメデタシとは言えない状況に既になっているという事は明らかであろう。仮に制度が残されても、我々の職と生活をかけた取り組みが無いところには容赦なく人員や給与水準の切り下げ、果ては職そのもののスクラップ化の攻撃が襲いかかることは間違いない。自らの未来は自ら切り開かねばならない。中教審の論議に希望を繋ぐというのは最低の選択である。

 というわけで、全学労連は今年度も元気に取り組んでいる。全国の仲間も頑張ろう。

 

5.13 全学労連 中央行動

 前述の通り、義務教育費国庫負担制度の行方が、いまだ先が見えていない5月中旬の13日、全学労連は文科省、財務省、総務省へ義教金に関する要請行動を行った。またそれにあわせて、地方六団体へも要請書(別掲)を提出した。

 各省の担当者は「中教審の審議待ちだ。」と口を揃えて言う。しかし、文科省だけは「きっと、(文科省にとって)いい方向で進んでいく」と、いまだ希望的観測を捨てていない。この自信は“文科大臣の諮問機関である中教審である”という甘えからなのであろうか。前記事にあるとおり、あくまで“答申”であって“結論”ではないのに…。この間に、他の省は着々と濠を固めていく…。

 一方、地方団体は「地方の意見が反映されていない結論などありえない。」といまだに、義教金制度「解体」から地方への税源移譲へ熱意を燃やしている。都道府県、大都市ではそのことにより財源が潤うかもしれないが、小規模の町や村ではどうだろうか。国の補助金であった図書購入費増大にもかかわらず、学校図書館蔵書数が一向に増えていなかった市町村、学校などもあったと聞く。

 全学労連は義教金制度に関して、さらには学校・職場環境の改善へ向け、今後も中央省庁との折衝を重ねていく。

2005年5月13日

(地方六団体会長宛)様

全国学校事務労働組合連絡会議 議長 菅原 孝

要 請 書

1.要請の要旨

 地方の財政力を抜本的に強化すると共に義務教育費国庫負担制度を維持するよう関係機関に働さかけていただきたい。

2.要請の理由

 昨年8月24日、地方6団体が政府に提出した「国庫補助負担金等に関する改革案」の中に、移譲対象補助金として中学校教職員給与費相当分の義務教育費国庫負担金8,500億円が盛り込まれました。同案は、第2期改革期には小学校分についても廃止するとしているので、最終的に義務教育費国庫負担制度の全面廃止を求めるものになっています。

 義務教育費国庫負担制度をめぐっては、1985年度予算編成にあたって大蔵省(当時)が 「教壇に立たない職員まで国庫負担する必要はない」として、学校事務職員・栄養職員の人件費を適用除外する方針を打ち出し、以来20年以上にわたって攻防が繰り返されてきました。大蔵省・財務省の意図が阻まれてきたのは、教育条件の劣化を懸念する教育・自治体関係者の大きな反対の声があったからでした。

 いわゆる三位一体改革の経過の中で、地方6団体の側が義務教育費国庫負担金の全廃を提起したことに、学校関係者は大きな衝撃を受けました。きちんとした税源移譲を実現し地方の財政基盤を確立する、国の不必要な関与を排し、自主的な行財政運営を進めたいとする動機からの主張ですが、なぜ義務教育費国庫負担金なのか、理解に窮します。

 「総額裁量制」導入の影響もあり、全国的に臨時的任用職員・非常勤講師等の身分不安定で安上がりな非正規教職員が増加しています。少数職種である学校事務職員については、全国的に定数充足率が低下しています。教育条件整備という地味な仕事に携わる事務職員の定数を、住民受けする教員定数に流用しているためではないかと思われます。このことによる学校の機能低下が強く懸念されます。国庫負担制度が廃止されれば、こうした傾向に益々拍車がかかることは必至です。

 ここにきて、いわゆる三位一体改革の実態が、地方への負担転嫁による国の財政再建策にすぎないと指摘する声が強くなっています。昨年度、地方交付税・臨時財政対策債2兆9千億円が一挙に削減され、予算編成に苦慮する自治体が続出しました。税源移譲が先送りされる一方、財務省等は地方交付税のありかたを、ほとんど言い掛りに近い口調で攻撃し、一層の削減を図ろうとしています。この4月7日、経済財政諮問会議に民間4議員が提出した「『国と地方』の改革に向けて」では、市町村大合併を受け、「総務省は、新たな不交付団体拡大の目標と工程を明示する」よう求めています。「地域の多様性を尊重せず、自立と尊厳の精神を否定するような市町村合併の推進」(全国町村会)、それが今度は地方交付税削減に結び付けられようとしているのです。

 仮に義務教育費国庫負担金が廃止され、それに見合う税源移譲が実現したとしても、地方交付税に大鉈が振るわれるのであれば、地方の財源は縮小し、学校教育に振り向けられる予算も削減されざるをえません。地方へのこれ以上の負担転嫁を許さず、地方財政を確立することと、義務教育費国庫負担金の存続は決して矛盾するものではありません。

 

人事院に行ってきました

賃金格差拡大を許すな

 人勧制度反対を掲げてきた全学労連ですが、人事院が今年「とんでもない勧告」をだしそうだということで、急遽要望書を提出し交渉にいってきた。

 人事院の日頃の交渉相手は、連合と全労連のそれぞれの公務員労働組合の全国連合である。全学労連という地方公務員の少数職種の労働組合との交渉は極めて珍しいのだが、希少価値を認めてくれたのか交渉が実現した。

 昨年来人事院は「給与構造の基本的な見直し」と称して「大賃金合理化構想」を打ち上げている。その内容は以下の通り

  1. 給料水準の引き上げ
    1. 東北北海道の官民格差にあわせて給料表の5%引き下げ
    2. 民間賃金の高い地域に地域手当支給
  2. 給料表構造の見直し
    1. 1級と2級、4級と5級の統合など給料表構成の再編
    2. 昇給カーブのフラット化
      • 4級以上の最高号俸の水準を最大7%程度引き下げ
      • 4級以上の各級で初号から最大7号俸の号俸カット
  3. 勤務実績の給料への反映
    1. 勤務実績に基づく昇給制度の導入
      • 昇給幅の細分化
      • 枠外昇給制度の廃止
    2. 勤勉手当に実績反映の拡大
    3. 昇給規準の見直し
  4. その他
    1. 専門スタッフ職給料表の新設
    2. 本府省手当の新設

 この「賃金大合理化構想」は全国の学校事務労働者の賃金を直撃する。大都市圏以外の賃金水準は引き下げられるし、行(一)給料表のすみっこをワタっていく私たちの賃金上昇はすぐにフラットのところに到達してしまう。

 今回の人事院との交渉では、学校事務労働者の賃金実態、労働現場の様子等を話しながら「賃金大合理化」の中止を求めた。

 交渉相手の、総務課職員(交渉窓口)は、愛想よく対応しながらも、次のように答えた。

「4つの構想のうち、国会やその他からの質問が一番多いのが、1の水準引き下げのことである。3の評価の問題は総務省の試行も関与している。」
「専門スタッフとは、法律作成のスペシャリストのような人たちである。」

と今年の勧告の目玉は『地域給料』の導入であることを明かした。

 私たちはこれから学校事務労働者の賃金引き下げを止めさせる取り組みを始める。人事院には、更に要求行動を強化していく。今後8月の人事院の勧告、秋の各地人事委員会の勧告、そして冬までの確定交渉のそれぞれの時期に、必要な取り組みを粘り強く続けよう。

 

教育基本法の改悪をとめよう!

―5.7 全国集会―

 5月7日に開催された「教基法改悪反対集会」。全学労連も賛同団体として参加した。福島を始め、東京、神奈川、埼玉など全学労連構成団体からも多数の組合員が東京・代々木公園に結集した。

 「三位一体の改革」「改憲」の動きにあわせ、着々と忍び寄る「教育基本法改悪」に全学労連は反対の姿勢を貫く。

夏期のボーナスカンパにご協力をお願いします。

 ますます緊張感を増す「義教金」問題。中教審義務教育特別部会での「事務の共同実施」「事務長制導入」論と私たち学校事務労働者にとって、大変厳しい状況が目前に迫りつつあります。さらには全国へと広がりを見せつつある「新たな人事制度」など学校職員間の競争を煽り、学んでいる児童生徒にとって良からぬ影響も懸念されます。

 全学労連は皆様のご支援、ご協力をお願いします。


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