2005年6月30日
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全学労連ニュース今号の内容

 地域、世代、成績で「切り取り」次第の公務員給与
 われわれの賃金を人勧で決められてたまるか

 今年の国庫陳情・要請行動  採択通知第1号届いてホッ

地域、世代、成績で「切り取り」次第の公務員給与

われわれの賃金を人勧で決められてたまるか

 8月の勧告を前にして、人事院は5月18日に「給与構造の基本的見直し(措置案)」を明らかにした。前号で「とんでもない勧告を出しそうだ」ということから人事院と交渉を行ってきたことを報じたが、「とんでもない内容」が具体的になりつつある。

地域と世代による賃金格差を目論む人事院

 措置案によれば、「公務員の俸給水準を民間賃金の低い地域の水準のベースに引き下げる」ということから、基本給を5%引き下げ、さらに「民間水準を上回る傾向が見られはじめる30歳代半ばの職員が適用されている号俸以上の号俸」については更に2%程度引下げとしている。また「調整手当を廃止し、民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し、地域手当を支給」とし、その支給区分は人口5万人以上の市を単位に「3%、6%、10%、12%、15%、18%」の6段階に設定するとしている。俸給表は5(7)%引下げられ、都会には地域手当を支給するとはいうものの、現行の給与水準は確実に割り込むことが予想される。また、人口5万人以上の市を単位にとすることによる地域手当の細分化は、同一都道府県内の賃金差別や、勤務地域と居住地域の矛盾を現出させることになる。

地域格差

 人事院は北海道・東北は民間よりも公務員給与の方が5%高いと一方的に言っているが、各道県人事委員会は毎年、給与報告の中で公民格差を出し、勧告の中でその差を埋めることを求めている。人事院の言うことが正しいとすれば、各地の人事委員会の公民格差はでたらめだったとでも言うのだろうか。

 更に、「年功的な給与制度を見直し、各職務の級における職務・職責の違いを明確化するため」に枠外昇給を廃止し、「枠外在職者は全て最高号俸に」引き下げることまで言及している。俸給表切下げとあわせて考えると、毎月3万円以上の減額になってしまう。

行(1)7-52の場合の試算

  7-52 434,100 → 7-22(最高号給)427,100 → 7%カット397,200

    月収減 434,100円 − 397,200円 = △36,900円

    年収減  36,900円 × 16.4月 = △605,160円

    退職手当減(勧奨・定年、35年)

      36,900円 × 59.28 = △2,187,432円

成績主義・実績主義の強化を目論む人事院

 また、昇給、勤勉手当、昇格に勤務成績・勤務実績をより反映させることを給与制度見直しの柱の一つとしている。

 昇給については「特別昇給と普通昇給を一本化」「昇給時期を全府省統一の年1回、1月1日に統一」「職員を初任層、中間層および管理職層に区分し、当該職員層に応じて勤務成績に応じた昇給号俸数及び「特に良好」以上の分布率を設定」等としている。現行の1号俸は4分割され、その上で職員層ごとに昇給号数の分布割合が定められ、査定によって昇給が左右されることになる。昇給号数の分布割合は次図のとおりだが、初任層よりも上位の職層に行くほど「標準以上」の割合が低下し、それ以外の評価割合が高まると思われる。更に、「その他(要努力、標準未満)」の割合まで「設定」しようとしているのは重大だ。もっとも、最高号給者に到達した者や55歳以上の昇給停止になった者にとっては無関係な話だが。

号給4分割

 勤勉手当については「勤務実績を支給額により反映し得るよう、『標準』の成績区分の成績率を引き下げることにより得た原資によって、『特に優秀』及び『優秀』の成績区分の人員分布率を拡大」としている。現行100分の70を100分の65に引下げ、それによって生じた100分の5を原資に標準超え者に再配分する。「査定昇給」に加えたこの勤勉手当制度改悪によって、給与への実績反映の仕組みが拡大していく。

 昇格については「勤務評定記録書等とともに昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定結果を活用」「昇格前1年間における勤務成績が『不良』又は『要努力』に該当していないこと」としている。昇格にあたっても現行以上に成績主義を反映させ、都道府県によっては同一職名で「ワタリ」的運用が行われている昇格についても査定が導入される可能性がある。

05人勧を警戒し、反撃を準備しよう

 現行の昇給・昇格制度とこの「措置案」が構想する給与制度と、技術的に見てあまりにもかけ離れているので、具体的にどのように導入させていくのか、もう一つ見えづらい部分がある。まともにこの「措置案」を導入しようとすれば、昇給にあたっての経過月数の取り扱いや昇任を伴わない昇格の取り扱いなど、技術的な連続性を考えると、これまでの「経緯」を考えず、目をつむってバッサリやるしかないか、というところに行き着く。しかし、現実には様々な運用が既得権として存在していることから、その完全な実現性は怪しいし、地方へどれだけ波及するかは疑問がある。

 そんな中で確実に言えることは、05人勧で給料表が5(7)%カットされ、それに伴い地域手当が新設されることだ。全国レベルでいえば、「地域」と「世代」という二つの切り口で給与水準の切り下げを行い、「地域」については再配分(都会を優遇)していく。こうした「都会優遇」のやり方は、地方レベルでも十分考えられ、現行の水準を維持できるかどうかということが焦点化しそうだ。

 骨太方針第5弾に向けて「2千億円の人件費削減」が取りざたされているが、それに引きつけて言えば、人件費全体を圧縮し、これまでよりも少なくなったパイを均等に切り分けるのではなく、ある時は「地域」「世代」、またある時は「勤務成績」という弱肉強食のナイフで切り取っていこうとしているのだ。

 労働基本権剥奪の代償としての人勧制度は、民間賃金と公務員賃金を比較して、それに格差があれば給与改善を勧告するというのがその趣旨だった。その比較は「総体」としてのものであり、決して個別化されるものではなかった。それが弱肉強食という個別化の論理で行われていくとあっては、もはや労働基本権剥奪の代償とはとてもいえないところにきている。

 予想される05人勧に際し、各地の人事委員会はこれまでの勧告を踏まえてどう対応するのか、また確定期には現行制度・既得権との整合性をどうつけるのか、ということが具体的に問われてくる。05人勧を警戒し、反撃を準備しよう。

(本稿の図は5月24日の経済財政諮問会議に総務省が提出した参考資料から抜粋)

 

今年の国庫陳情・要請行動

採択通知第1号届いてホッ

がくろう神奈川 池上 仁

▲どんな風にやっているかというと▼

 文字通り山場を迎えた国庫問題、がくろう神奈川では今年も6月議会に向けた陳情・要請行動を行なった。県下37市町村の約半数の議会は郵送での陳情を認めているが、直接持参しないと受け付けてもらえない議会、組合の支部のある地域の議会には組合員が足を運ぶ。議会日程、議長名等を確認し、陳情書と補足資料とを用意して年休をとって出かけていく。議会陳情とあわせて、市町村長・教育長への要請も行なう。

 20年来続けていることとて、「今年も来ましたね」といった感じで丁寧に対応してくれるところがほとんど。タイミングがいいと、教育長や議長と直接面談できることもある。今年もある町では助役と町の財政事情について話ができた。陳情を扱う議会常任委員会の正副委員長同席で趣旨説明を行なうことを慣例としている市もある。先日は、ある市の議会事務局から国に送付する意見書の雛型を送れとの要請があり、あわてて作文して送った。

▲陳情書作成に一苦労▼

 陳情・要請行動自体はマニュアルもできていて、いわば手慣れたもの(とはいっても、国庫をめぐる状況等説明しなくてはならないから、少なからず緊張する)だが、今年は陳情文の内容をどうするかに苦慮した。昨年まではずっと「学校事務職員・栄養職員の国庫負担適用除外に反対」でやってきた。陳情理由の国庫をめぐる状況の部分を若干手直しすればそのまま使えた。しかし昨夏、「三位一体改革」の流れの中で、地方6団体が義務教育費国庫負担制度全廃を提案している以上、今年はそうはいかない。全国レベルの組織合意に反する義教金制度の維持を訴える陳情が果たして受け容れられるものだろうか…

 そこで、全国知事会、市長会、町村会の三位一体関係資料をホームページから入手して研究した。そこで改めて分かったのは、今後の財政運営に対して地方が強い危機感を抱いていることだった。特に全国町村会の「町村自治の発展を支える財政制度の構築こ向けて〜地方交付税制度のあり方について〜」(2OO4年12月)は、「強力に推進」されている市町村合併に対して、「地域の多様性を尊重せず、自立と尊厳の精神を否定する」ものと厳しく批判し、地方財政の赤字累積についても、経済対策のために国が公共事業を消化するべく地方を誘導してきた側面を指摘し、「減税を続けながら膨大な収支ギャップを放置するモラル・ハザードを起こしている」国の責任を指摘している。私たちの行なってきた三位一体改革批判と多くの点で重なる内容であった。

 また全国市長会の資料では、全国の財政担当者の間に、「三位一体改革の先が見えない」「単に国の財政再建のためだけのものであってはならない」等の批判の声が強いことが示されていた。地方交付税削減の動きに危機感を募らすのは両団体とも同じ。

 折から、経済財政諮問会議では地方交付税見直しの論議が始まり、4人の民間議員から「不交付団体拡大の目標と工程を明示する」よう求める意見書も出された。

 こうしたことを受けて、今年の陳情書のタイトルは「地方の財政力を強化し、義務教育費国庫負担制度を維持する」とした。陳情理由には全国町村会文書の引用も交え、「仮に義務教育費国庫負担金が廃止され、それに見合う税源移譲が実現したとしても、地方交付税に大鉈が振るわれるのであれば、地方の財源は縮小し、学校教育に振り向けられる予算も削減されざるをえません。地方の自由度が増すといっても、それは教育予算を減らす自由にすぎません」と訴えた。

▲審査結果第1号届く▼

 これから各議会からの陳情審査結果の通知が届きはじめる。先日第1号が届いて、結果は「採択」。ひょっとすると全敗もありうる(例年は3分の2の市町村で採択、残りは「机上配付」がほとんどで、「不採択」はまれ)、と予測していたのでホッと胸をなでおろした。予断は許さないが、地方6団体内での足並みの乱れを指摘する報道(6月1日付け『日経』)もあり、国庫闘争にもまだまだ工夫の余地がありそうだ。


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