2005年7月29日
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全学労連ニュース今号の内容

 義務教育費国庫負担金に関する7.1交渉・折衝について

 ―少年写真新聞社に申し入れ―「社員いじめ」問題の早期解決を

義務教育費国庫負担金に関する

7.1交渉・折衝について

全学労連事務局 学校行革対策部 佐野 均

 経済財政諮問会議が「骨太方針2005」を出し、中間報告のまとめ作業に入った中教審特別部会では義務教育費国庫負担金の一般財源化を主張する地方六団体委員との間に激しいやり取りがされている。各地方団体や教育団体は、8月の来年度予算概算要求を前に国への要望事項を取りまとめている。そんな中、全学労連は関東圏のほか福島・愛知・大阪からの総勢14名の参加で、恒例の文部科学省との交渉にあわせて7月1日に総務省と全国都道府県教育委員会連合会とも折衝を行った。

☆国庫負担金総額さえ守れれば、なりふり構わぬ文科省

 当然のことながら、文科省は義務教育費国庫負担金は義務教育制度の根幹であるからこれを堅持すると言う。さらに、事務・栄養などの職種切り分けによる削減は、従来からもまた今の一般財源化への圧力の下であっても今後も考えないとも言う。この言葉をそのまま受け止めれば頼もしい限りだが、現実はなかなか厳しい。

 全学労連の調査によると、教職員定数に対する実数の全国合計は、2003年度で事務職員は528人不足(充足率98.46%)であるのに校長教諭等は8624人多い(充足率101.47%)。これが2004年度では事務職員709人不足(充足率97.94%)に対して校長教諭等は8270人多い(充足率101.41%)となる。全体数の違いはあるとしても、充足率を見ればその差が広がっているのは明らかだろう。第七次計画の定数加配の事務職員分が教員分に回されていることは既に何度も述べたとおりである。総額裁量制の導入によって事務職員分の国庫負担金を教員分に回す傾向は今後ますます強まると思われる。

 このことを指摘して定数標準法の水準を守るよう求めると、総額裁量制が無ければ義務教育費国庫負担制度自体が維持できないとの回答が返ってきた。本末転倒な論理ではないか。文科省は国庫負担金の「総額」さえ確保すれば各県へ金を振り分ける省益は守られるから、事務職員などの少数職種が実際どうなろうと、今の情勢では下手に口を出して地方団体や総務省から反発を食うよりはマシとの判断をしているのだろう。事務職員は国庫負担金の算出基礎上で存在してさえいれば良い、その意味において「職種切り分け」は考えない。つまり文科省の「国庫負担制度堅持」というのは「国庫負担金総額堅持」ということなのだ。学校事務職員は文科省の安全弁として省益の存在しているのだろうか。我々が国庫負担制度を守れと言うのは、この制度によって定数や給与費が確保され、ひいては我々の労働条件の維持に有効に働くからに他ならない。何も文科省の省益を守るために自らの職を危機に晒さねばならない義理は無い。

☆悪魔の囁きで説得する総務省

 総務省は、これまでの国の関与を減らし地方の自由度を増やすという論では不十分と考えたかどうかは知らないが、制度維持論者の言う一般財源化されると財源保証が無くなり予算が削減されるという意見を否定しようという動きに出てきた。義務教育費国庫負担金の削減が問題になった20年前に最初に外された旅費と教材費に関して、一般財源化後の地方交付税上の額と実績額との比較資料を提示し、一般財源化されても地方財政計画による基準財政需要額の引き上げで旅費も教材費も水準の向上に寄与してきたし、そのための努力もしていると主張する。文科省が中教審で出している資料は基準財政需要額を100とした場合の比率だからすごく減っているように見えるが、実額ベースで見ればそんなに低下していないし、むしろ増える場合もあると一般財源化=水準低下論に反論する。

 それに対するこちらからの反論として、基準財政需要額に算定されているにも関わらず市町村費事務職員の引き上げが進んでいる実態を指摘すると、それは定数標準法がある場合と一緒に比べてはいけない、高校は国庫負担が無くても定数標準法でうまくいっているとあっさりと言ってのける。さらには標準法で不安ならば「定数基準法」にすれば良いとまで言う。そして義務教育費国庫負担金はずっと削減されてきているが、地方財政計画で基準財政需要額はそのつど増やされてきた、どちらが安定的な制度かよく考えた方がいいとまで言い切る。それなら、基準法化の動きが出たら総務省は賛成するのかと問うと、それは総務省が決める事ではないと逃げたが、先述したように文科省がなりふり構わぬ状態になった今では、まるでこっちの水は甘いぞといわんばかりの悪魔の囁きである。

 総務省は一貫して、一般財源化により政策決定権を国から地方に移すと繰り返して言うが、義務教育費国庫負担金が学校事務職員などの少数職種の配置基準維持にこれまで果たしてきた役割は全く無視している。さらにそれが「三位一体改革」や「地方分権改革」に合致しているかというと必ずしもそうではない。「三位一体改革」の内、補助金削減と税源移譲についても厳密に言えばいろいろあるがとりあえず良しとしても、地方交付税についてはそのまま維持すると言っているに等しい。税源移譲は人口の格差により地域により税収に差が出るから地方交付税の財源調整機能は必要と言い、補助金を削減し一般財源化=地方交付税で措置すると言う。昨年度地方交付税を削減したら「地方一揆」という表現が出るほどの地方から反発があって国と地方の協議の場を設ける事になった。言い換えれば、それなら最初から「三位一体改革」なんてあり得なかったということだろう。税源移譲先行論は、財政赤字解消を最優先する財務省への対抗上ならともかく、ここ数年義務教育費国庫負担金の中で削減され税源移譲されたとされる退職手当などがすべて「税源移譲予定交付金」という怪しげな名称に変わり、しかもそれは相変わらず国税から総務省の交付金に姿を変えて支出されている事からしてほんとに地方に移譲されるのかどうも胡散臭い。これら全てが地方財政を取り仕切る総務省の関与を強化する方向になっている。総務省は地方分権どころか、自らの権限拡大により他の補助金分配官庁に変わって地方への支配強化をねらっているのに過ぎないのではないだろうか。

☆制度堅持を言えなくなった都道府県教委連合会

 都道府県教育委員会連合会は毎年7月に総会を開いて国への要望事項に「義務教育費国庫負担制度の堅持」を必ず盛り込んできていた。昨年は「知事会はともかく、教育関係団体はこの件(義務教育費国庫負担制度問題)については制度堅持で一枚岩」と言っていたのだが、今年は少し違うようだ。

 例年のように7月21日に総会で国への要望書を決定する予定というところまでは一緒なのだが、内容は必要な「財源保証」を求めると変わるとのこと。その背景は、昨年の地方六団体の補助金削減案がまとまった事で、知事部局に反して「制度堅持」と言う事ができない各都道府県教育委員会の事情があるので、国庫負担金のままでも一般財源化でもどちらも含む「財源保証」という表現に変えたと言う。確かに都道府県教委レベルで知事部局との関係上動きが鈍くなったところが増えてきている。

☆雑感として・・・

 ついに都道府県教委もここまできたかと思いつつ、一方で義務教育学校の設置者である市町村のレベルでは「制度堅持」の意思表示や議会での請願採択がされているところがあり、地方六団体といえども一枚岩ではない事をうかがわせる。今のところまだ問題にはなっていないが、義務教育費国庫負担制度が無くなれば、地方財政法9条の但し書きおよび10条の根拠は失われ、地方公共団体事務の経費負担の原則により都道府県費負担を定めた給与負担法は極めて不安定な制度となり、最終的には教職員給与費は設置者である市町村の負担になるという、全学労連が20年前に描いた予想図が現実になる可能性を市町村団体も感じ始めたのかもしれない。今後の展開を左右するとしたら、市町村への取り組みは重要なポイントとなるだろう。

 中教審の議論では教職員の人事権を市町村教委へ移すという議論も出始めている。「地方分権」の論理ならば、人事権のみならず、国庫負担されないとするなら給与負担は当然設置者がすべきものだろう。この間の議論はこの点を曖昧にしてひたすら「地方」への「分権」を論じてきた。その行き着く先が本当に現実的なものかどうかしっかりと見極めて制度改革は進めてほしいものだ。少なくとも国の省庁間での権限委譲=権力争いであってはなるまい。

 

―少年写真新聞社に申し入れ―「社員いじめ」問題の早期解決を

 7月1日、全学労連事務局は、議長ほかのメンバーで少年写真新聞社を訪問し、「社員いじめ」問題を早期に解決するよう申し入れを行いました。

 この件は、以前から「少年写真新聞社は労働組合を敵視しているらしい」「組合員をいじめているようだ」「いじめにあった組合員が休職に追い込まれたようだ」「内部がゴタついているような会社の商品を買うのは気が進まない」などの問い合わせや発言が出ていたところです。

 そこで、事務局で協議し、組合的立場から、また、商品購入者としての立場からも、そのようなことがいつまでも続くことは問題であるとの考えから、このたびの申し入れ行動をとったところです。

 会社側は、「役員が不在」とのことで、「申し入れの趣旨は社長に伝える。」となったに留まりました。

 会社側はこちらの指摘するようなことは事実と認めるものの、収束に向かっているとの認識でいるようですが、私たち購買者(学校)が了解できるような段階には至っていないようです。今後の経過をしっかりと見守りたいと思います。

 各学校でも、営業の社員の訪問や電話があった時には、早期に円満解決をするよう働きかけて下さい。


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