2005年11月20日
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全学労連ニュース今号の内容

 中教審は国庫「維持」の答申決定、焦点は11月中の政治決着に・・・

中教審は国庫「維持」の答申決定、焦点は11月中の政治決着に・・・

11.2要請行動と今後の展開について

全学労連事務局 学校行革対策部 佐野 均

☆予想通り…

 昨年の政府与党合意を受け、半年以上にわたり中教審で議論されてきた義務教育国庫負担制度の扱いについて、10月26日に中教審は制度を維持するとの答申を決定した。当初の予想通り地方六団体側三委員は政府与党合意の「費用負担についての地方案を活かす方策」という部分に、他の中教審委員達は同じ政府与党合意の「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する」という部分にそれぞれ固執して、予想通り最後まで歩み寄ることなく、予想通りの答申が出た。元々が昨年の政治決着の産物であるから何の意外性も無い。それは地方六団体の側にとっても同じだったようで、中教審総会では異例の多数決を迫り、結論が出るや否や間髪をいれずに答申と中教審の不公正さを非難し地方の意見どおり「税源移譲・一般財源化」の決定を政府に求める声明を発表した。地方六団体側としては政府与党合意の「中央教育審議会において結論を得る」という部分を薄めて政治決着に持ち込むために中教審の「異常さ」を演出する必要があった。別に中教審を擁護する義理は無いが、地方側のかなり強引な横槍の入れ方という感は否めない。10月31日に内閣改造が行われると、新内閣に対して小泉総理の強いリーダーシップで地方案に沿った「改革」を求める声明を発表している。そして舞台は予想通り政治決着の場へ移った。

☆地方の温度差

 全学労連はこうした情勢を見て11月2日に地方六団体や市町村教育委員会連合会・都道府県教育委員会連合会及び文部科学・総務・財務の三省、合計11団体に対して義務教育費国庫負担制度の堅持を求める要請行動を行った。各団体に対して、「三位一体改革」は結局地方への負担転嫁になっており既に破綻している事、地方分権推進問題が財源問題に矮小化されている事、地方が必ずしも一般財源化でまとまっていない事、制度が無くなると県費負担制度も極めて不安定なものになり学校設置者である市区町村の負担が増大する事を訴え、義務教育費国庫負担制度の堅持を強く求めた。

 地方の各団体は一定理解を示しつつ、地方六団体の枠組みでの取り組みを重視する姿勢を示した。しかし都道府県と市町村では明らかに温度差があった。その事は、地方六団体の方針にも関わらず国庫負担制度の維持を求める意見書の市町村からの提出の多さにも符合している。都道府県は国庫負担分の税源移譲も地方交付税での補填もあり財源は自分のところに来るという、市町村は教職員人件費の負担は都道府県がするということを前提としている。どちらもそこまで「改革」されるということは想定外のようであるが、小中学校の設置者である市町村には財政規模の大きさに応じて負担転嫁に対する不安が漠然としてであれ感じられた。

2005年11月2日

        様

全国学校事務労働組合連絡会議  議長 菅原 孝

義務教育費国庫負担制度堅持を求める要請書

 貴職の日頃のご活躍に深く敬意を表します。

 昨年11月26日の政府・与党による合意を受けて、義務教育のあり方についての中央教育審議会での審議を経て、義務教育費国庫負担制度に関して現行制度を堅持するとの答申が10月26日に出されました。地方六団体は同日、この答申に自らの意見が反映されなかったことを不服として、政府による義務教育費国庫負担金の税源移譲・一般財源化の決定を求める旨の声明を発表しています。

 言うまでもなく「三位一体改革」は、補助金改革・地方交付税改革・税源移譲を一体的に行うことにより地方分権の推進を図ろうというもののはずです。しかるに04年度から06年度をトータルで見ると、地方交付税や補助負担金の削減で地方の収入減は、税源移譲による地方収入の増加額の約3倍という事になります。しかも「税源移譲」とされている約2兆4100億円の中身には、03年度の共済長期給付と公務災害補償基金負担金分約2200億円と、その後の予定を含めた義務教育費国庫負担金削減分約1兆800億円が税源移譲予定特例交付金として含まれており、合計約1兆3000億円になります。すなわち「税源移譲」の半分以上が相変わらず国税から支出されているのが実態です。「三位一体」の解釈を巡る総務省と財務省の対立は依然として続いており、これが全て税源移譲されるかどうかも不確定であると言わざるを得ません。「三位一体改革」は極めて歪んだ形で進められ、地方分権の推進どころか国から地方への負担転嫁を招く結果になっており、既に破綻しているのではないでしょうか。

 また、補助金改革項目の一つに過ぎない義務教育費国庫負担金が、中身の議論よりもその金額の大きさゆえに3兆円という数値目標への数合わせのため、異様なまでに削減の対象として焦点化されている感が否めません。中央教育審議会での論議でも、教育における地方への権限委譲は即ち一般財源化以外あり得ないことを前提とする地方六団体側の議論と、教育における地方への権限委譲を進めるための制度的な保障を模索する議論とは最後までかみ合わないまま終わりました。中教審で検討する課題のひとつであった昨年の政府・与党合意にある「費用負担についての地方案を活かす方策」とは、教育の分権を進める方策を検討するというよりも一般財源化の方策を検討するという意味でしかなかったのでしょうか。そうだとするならば、地方分権は単なる財源の問題に矮小化されたというべきでしょう。

 地方六団体側の意見とは裏腹に、義務教育費国庫負担制度堅持の意見書を提出した市町村議会は10月25日までに全体の47.2%にのぼっており、町・村となるほどこの割合は高くなっています。中教審の議論の中でも地方六団体側委員の主張と、地方の首長でもある中教審委員の主張が食い違う場面がしばしばありました。こうした事は、必ずしも「地方の意見」が義務教育費国庫負担金の一般財源化で強くまとまっているわけではないことを示しています。

 「地方財政法」第9条は、地方公共団体の事務経費自己負担原則を定めていますが、但し書きで同法第10条の国が一部を負担する義務教育職員の給与等は例外としています。仮に義務教育費国庫負担制度が無くなった場合、都道府県費負担制度を定めた「市町村立学校職員給与負担法」があるとしても、この制度は極めて不安定となり学校設置者である市町村の財政にも大きな影響を与えかねません。そうでなくとも既に全国的に「教職員定数標準法」で定められた定数を下回るという事態が特に事務職などの少数職種で進行しているのが現実です。これが進めば自治体の財政状況によって教育条件が大きく左右される事態をもたらし、憲法や教育基本法の趣旨に反することにもなりかねません。教育に関する安定した財源措置こそが必要であり、数字合わせで財源を移譲すれば全て良いという安易な決着は将来に禍根を残すでしょう。

 私たちは、貴職が義務教育費国庫負担制度の堅持のため関係機関に働きかけるよう、要請いたします。

☆政治決着の行方は…

 全学労連が全国の仲間の署名を集めて国会提出した「義務教育費国庫負担制度維持に関する請願」は、11月1日に最終日を迎えた今国会では残念ながら審議未了で「保留」となり事実上廃案とされた。これは義務教育費国庫負担制度への取り組みの21年の歴史の中で初めての事である。9月の衆議院選挙の影響で国会会期が例年より変則だったとか、いよいよ事態が煮詰まってきて国会も慎重になったという事情もあろうが、同制度維持を求める請願が他に無かったというのも何か象徴的でもある。

 ではいよいよ義務教育費国庫負担制度は無くなるかというと、事態はなかなか複雑だ。第1に政府与党合意の「中央教育審議会において結論を得る」という結果で結論が出た事を総務省や地方団体が「あんなものは文部科学大臣の諮問機関にすぎず、決定するのは政府だ」と言うのに同調して無視できるのかという事。靖国問題や教育基本法・憲法改悪という政治課題を控えて自民党文教族という「抵抗勢力」の存在も無視できないし、その中で中教審の「権威」も落とせない。第2に、今焦点になっているのは3兆円の税源移譲であり、義務教育費国庫負担金に関しては8500億円という数値目標だという事。地方案ではこれを中学校分給与費に算定基礎を求めているが、小泉総理は「地方案の尊重」と言うだけでそれがどの部分かは言っていない。まして地方側の言う「第2期での全額一般財源化」は小泉総理の任期外であり全く言及は無い。第3に今年度の「暫定措置」として削減されている4250億円は「税源移譲予定特例交付金」として「特例」的な扱いを受けており、これが本当に来年度8500億円全て「特例」が取れた税源移譲となるかという事。総務省は11月の税制改革でそうなると言うが、財務省も含めて義務教育費国庫負担金2兆5千億のどの部分を当てるかを考えるのは文科省に丸投げしている。しかし文科省は削減そのものに反対している。具体的にどこを削るかが決まらないまま「暫定措置」が2年目にずれ込むのは「三位一体改革」自体の破綻に直結する。我々はそれでもいっこうに構わないのだが…。

 「最善」の策が無いからこその政治決着なのだろうが、どうなるかは全く予断を許さない。ただ落とし所が全く見えないわけでもない。とりあえず3兆円税源移譲という目標の達成、その内にある義務教育費国庫負担金分8500億円を削減して税源移譲、これが小泉政権の最優先課題であろう。だとすると義務教育費国庫負担制度自体はとりあえず残ることになる。このシナリオは、要請行動の際総務省の「国庫負担制度が残れば8500億円は無くなってもいいですか」という発言に合致する。

 ではどこを削るか?事務・栄養職分1500億円程度では全然足りない。今年のように4250億円を曖昧に総額から引けたのは「暫定措置」だったからこそで、8500億円を引き続きというのは難しいだろう。総額から8500億円を引くというのは、総務省や地方団体が権限委譲にならないから絶対認めないと言う負担率の引き下げと同じことになる。地方の言うように中学校分を削ると、義務教育という点での統一性が崩れ将来的な全額削減に道を開く事になる。文科省の悩みは深いが、我々が生贄の羊になる義理は無い

 11月中と言われるタイムリミットが迫っている。今の時点ではわからないが、来週中には決着が見えてくるだろう。全学労連は12月2日に総務省前の要請行動に続いて全国総決起集会を計画している。最新情勢の報告と今後の方向への論議がそこで行われる。どういう決着であろうと、我々の労働条件を守るのは我々自身なのだ。

〔11月13日記〕

国会請願署名にご協力ありがとうございました

 全学労連の「義務教育費国庫負担制度の維持に関する請願」。今年も多くの皆様にご協力いただきありがとうございました。ここ数年、他の団体の国庫関係の請願が継続審議や審議未了となる中で全学労連の国庫に限定した請願は、採択され続けていました。しかし今年は残念ながら「審議未了」という結果で、事実上廃案となりました。「与党の反対」や「地方の意見尊重」なのか・・・。いずれにしても、来年度予算の決定に大きな影響が出ることは必至です。

 これから年末へ向け、いよいよ大詰めを迎える義教金の国庫情勢。全学労連はまだまだ闘い続けます。

 

ボーナスカンパにご協力をお願いします。

 国庫情勢がいよいよ緊迫しています。

 全学労連は国庫負担制度維持、また学校現場の労働環境改善へ向け、この間、各省・各団体との中央折衝を精力的に取り組んでまいりました。これもひとえに皆様のご支援の賜物です。今後も力の限り頑張ってまいります。カンパにご協力をお願いします。

 

12.2 全国総決起集会開催

 今号トビラの通り、今年も全国総決起集会を開催します。

 中教審で「国庫維持」を打ち出し、さらに8500億円削減も「義務教育が分断される」とひかない文科省と、「地方案が全く受け入れられていない」「最後は政府が決めるのだ」という地方六団体側は全面対決の構えだ。全く予断を許さない緊迫した情勢である。

 今回は決起集会の前段として、総務省への要請行動も計画している。全国の怒りの声を総務省へぶつけよう!

総務省要請行動  12:45〜 (総務省前12:30集合)

全国総決起集会  14:30〜17:00

  場所:千駄ヶ谷区民会館 (渋谷区神宮前1−1−10)

  内容:・国庫情勢報告

     ・講演「教育改革がもたらす荒廃(仮題)」

       講師 三宅晶子さん

       (「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」共同呼びかけ人)


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