2005年12月18日
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全学労連ニュース今号の内容

 国庫負担率1/3決着の意味する事

 12.2 全学労連 全国総決起集会・総務省前集会開催

「三位一体改革」の政治決着、義務教育費国庫負担金は約8,500億円削減

国庫負担率1/3決着の意味する事

全学労連事務局 学校行革対策部 佐野 均

☆直ちに抗議

 補助金削減と地方への税源移譲をめぐり、各省庁と地方の利害が入り乱れてギリギリの調整が続いてきた「三位一体改革」だが、11月30日に政府・与党により政治決着がつけられた。内容はこれまでの分と合わせて4兆円を上回る国庫補助負担金の削減と3兆円規模の税源移譲を来年度で達成するというものである。これにより当初の数値目標はとりあえず実現することになる。

 注目の義務教育費国庫負担金は、国庫負担率を1/2から1/3へ引き下げることにより約8,500億円が削減された。これも昨年地方六団体が要求した中学校分8,500億円削減と数字だけは一致している。

 全学労連はこの決着に対して、直ちに右のように抗議し撤回を要求する文書を小泉首相宛に送付した。

首相 小泉純一郎様

 政府与党は11月30日、義務教育費国庫負担制度の改悪を決定した。

 国庫負担率1/3への引き下げによって国家財政の矛盾を地方に押しつけつつ、教育における国家の支配はこれをさらに強めていこうとしている。

 この攻撃が新自由主義的な教育改革を一層推し進め、私たち学校で働く者の労働条件切り下げに直結していくものであることは言うまでもない。

 私たちは今日の制度改悪決定に強く抗議するとともに、その撤回を要求する。

 2005年12月1日

全国学校事務労働組合連絡会議 議長 菅原 孝

☆喜んでいるのは誰か?

 今回の政府・与党合意は、「義務教育制度については、その根幹を維持し、義務教育費国庫負担制度を堅持する。その方針の下、費用負担について、小中学校を通じて国庫負担の割合は三分の一とし、8,500億円程度の減額及び税源移譲を確実に実施する。」と義務教育費国庫負担制度の堅持を明言している。負担率が1/3になったとはいえ、学校事務職員が職種別に切られたわけでもないし、ここ数年の攻防の末に制度堅持とされたことで最悪の結論は回避されたことは間違いがない。素直に喜んでおこうと言いたい所だが、事態はそう簡単ではないようだ。

 政府・与党合意は先の文章に続けて「また、今後、与党において、義務教育や高等学校教育等のあり方、国、都道府県、市町村の役割について引き続き検討する。」と述べている。この部分の解釈が立場によって大きく分かれる。総務省や地方団体はそこに今後の全額一般財源化への足がかりを、財務省は更なる歳出削減への道を、文科省や文教族議員は負担率の回復から全額負担への可能性をそれぞれ見出す。12月2日全学労連の要請行動の際、総務省は今回の決着について、天の声だから従うしかないが、今後の義務教育費国庫負担法の改定や予算の審議で、地方の自由度が高まることを説明できなければ国会の理解は得られない、文科省にはそれを説明する義務があると述べ、また同じ日に文科省は、負担率が1/3になった影響が地方でどう出てくるか今後十分調査していくと述べ、それぞれの立場から負担率引き下げという決着への不満をにじませた。

 地方六団体は12月1日に政府与党合意に対する声明を発表し、「3兆円という大規模な税源移譲を基幹税により行うこと」は「画期的な改革」であり「地方分権を進めるうえにおいて大きな前進」と評価しつつも、「義務教育費国庫負担金の負担率引き下げなど」の「真の地方分権改革の理念に沿わない内容や課題が含まれている」と指摘し、今回は「第一段階」で「更なる改革を進めるべき」として、「国と地方の協議の場」の制度化を求めている。こちらも今後の要求実現に期待を繋げる。まさに政治決着の結果としての合意文書なのだ。

 そして我等が小泉首相は「三位一体改革」のノルマが数字の上だけ達成されたことを素直に喜んでいることだろう。何しろひずみが具体的に現れるのは自分の任期後のことなのだから…。

☆負担率引き下げのもたらすもの

 義務教育費国庫負担金は、結果論ではあるが、今回の1/3への負担率引き下げは、蓋を開けて見れば落ち着くところへ落ち着いたと言えなくもない。

 文科省は中学校分を取られたら「義務教育費」ではなく「小学校費国庫負担制度」になってしまい全額廃止への道筋が決定的になるし、事務・栄養職分を差し出しても全然足りないのでこれには徹底抗戦するしかなかった。幸か不幸か8,500億円を削減した残りがちょうど1/3国庫負担とだいたい同じ数字だったため、もっともらしく負担率引き下げという結論に収まった。文科省だけの責任ではないが、何の論理性もない数字合わせの結果である。中教審でのもっともらしい議論は何だったのかと言いたくもなる。

 以前から総務省や地方団体は地方への権限委譲にならないとして強い反対を表明していたが、地方が求めていない生活保護費の削減が焦点化されたことで、それとの見合いで押し切られた。それがいかに不本意だとしても、ともかく3兆円の税源移譲は実現するわけで、今度は移譲を受けた地方の側がそれをどう生かすかが問われることになる。

 総務省の総人件費抑制策により、公務員への大合理化政策が進められる。2/3が一般財源の地方負担となった教職員人件費は、その規模の大きさゆえに抑制の格好のターゲットになるだろう。当面税収の格差を是正し財源不足を埋めるための地方交付税総額確保に焦点が移らざるを得ない。それが駄目なら「第二段階」は難しくなる。

☆文科省の思惑の行方

 財務省は再び地方交付税総額の抑制を打ち出し、地方団体や総務省との対立が深まろうとしている。文科省が概算要求で打出した第8次定数計画については、総務・財務両省とも、公務員を削減するという時、ましてや少子化が進んでいる中で教職員だけ増やすことは有り得ないという態度である。地方交付税も第8次定数計画も年末の予算案策定までギリギリの攻防が続く。

 今後負担率が1/3になった影響を調査して元へ戻す努力をするのは良いとしても、総額裁量制をそのままにしていては、地方の「裁量」に対してどれだけ物申すことが出来るのか疑問である。地方は2/3への負担増と総人件費抑制策の圧力で合理化に躍起になることだろう。もし負担率が元へ戻るとしたら、財源不足を埋める為の地方交付税総額が財務省の思惑通り大幅に減額され、合理化が追いつかず地方財政の悪化に地方が音を上げるような事態が起こった場合だろう。文科省はそれを見越して影響を調査すると言うのだろうが、そのときには学校現場は既に荒廃しているわけだ。

 文科省にとっては国庫負担金の総額確保の省益優先であり、学校現場の実態は二の次なのだろうが、我々は現場実態が何より問題である。我々は職場や労働条件の為に国庫負担制度を守ろうとするが、文科省の為にするのではない。「三位一体改革」をめぐる攻防の中で教育関係団体は軒並み文科省翼賛体制とでもいうべきものに組み込まれてしまった。教育に関する「国家の責任」をことさらに強調する議論も多く出された。今後これが文科省の権限や国家主義強化の方向へ向かうのを警戒しなければならない。

 新聞報道では各省庁の役人はもうウンザリしているという。確かにここ数年のように政治決着で決められるのは官僚の本意ではないだろう。文科省官僚の言葉を借りれば、「休戦協定」が成立しただけで終わったわけではないのだろうが、先に述べたように次へ進むにはそれなりの条件が整わなければならないだろう。とりあえずこの数年続いた「改革」は一つの山を越えたといえるが、今年の人勧に現れているように公務員制度改革と総人件費抑制攻撃は本格化する。我々も戦いの陣形の再構築を迫られている。

(’05.12.14記)

 

12.2 全学労連

全国総決起集会・総務省前集会開催

 「三位一体改革」による国庫の行方が決着した後ではあったが、全学労連は例年どおり「全国総決起集会」を開催した。

 今年は午前中に文科省や財務省、都道府県教育長連合会などに要請行動を行い、12時30分から総決起集会の前段として総務省前集会も行った。今夏に続き2度目となる総務省前集会。全学労連のオレンジ色ののぼりが立ち並ぶ中、議長挨拶のあと、要請団は約60名の参加者に見送られ、総務省へ入館し、今回の決着、さらには今後の義教金の行方について抗議・要請を行った。その間、集まった参加者は、各県の情勢や新たな決意を表明し、総務省前集会は約1時間続いた。

 その後、霞ヶ関から神宮前千駄ヶ谷区民会館へと場所を移し、全国総決起集会を開催。議長挨拶、情勢報告(前記事参照)と続き、講演が始まる。講師は「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の共同呼びかけ人のひとり、三宅晶子さん。演題は「労働と教育そして戦争」。講師は“レジメ”と称していたが、とても詳しい資料をもとに、新自由主義がもたらす教育の市場化、そして国家統制へと向かう教育改革の現状から憲法改悪へと90分以上も講義を頂いた。翌日は日比谷の「教育基本法・憲法の改悪をとめよう!12・3全国集会」もありご多忙にもかかわらず、質疑、討論でも活発に意見交換していただいた。

 そして集会宣言採択(次ページ)、団結ガンバローと続き集会は幕を閉じた。

集会宣言(案)

 11月30日、政府・与党はいわゆる「三位一体改革」の内容について正式合意した。義務教育費国庫負担金については国の負担率を現行二分の一から三分の一に引下げ、8,500億円が一般財源化される.「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する」とした昨年の合意内容、またそこで結論が委ねられたはずの中央教育審議会の答申を全く無視した暴挙である。にもかかわらず今回も制度の「堅持」を謳っている厚顔無恥に怒りを禁じえない。

 「地方分権」の大義名分のもと、地方団体、省庁、族議員の利害対立、せめぎあいのなかで、義務教育費国庫負担金がその金額の多さに目を付けられ、数字合わせの格好の餌食にされたというしかない。負担率引き下げによって、都道府県の人件費負担が確実に増大する。三位一体改革次の課題は地方交付税の削減であると指摘されている。益々逼迫する地方財政のもとで、定数・賃金等の労働条件切り下げ圧力は高まらざるをえない。行革・合理化の嵐は一段と強く吹き荒ぶだろう。すでに各地でポスト国庫状況と言うべき動きが表われている。

 ぎりぎりのところで回避されたとはいうものの、今回の合意にいたる土壇場まで生活保護費の削減が焦点となったことは象徴的である。思い起せば21年前、学校事務職員・栄養職員にかかわる国庫負担問題が勃発した1985年予算で、生活保護費等の社会福祉関係高率補助金の負担率が引き下げられた。教育・福祉をまず犠牲に供しようとする政府のやり口は実に一貫していると言わざるをえない。

 私たちは20年余り、国庫闘争を精一杯闘い続けてきた。私たちの反行革・反合理化・反差別を掲げての闘いは、義務教育費国庫負担制度が「聖域」のベールを取り去られ、新自由主義的改革の対象に擬されるに至った現在、一層普遍的な意義をもつものとなったというべきである。私たちはこれまでの闘いに確信をもち、これからも闘い続ける。

 以上、宣言する。

2005年12月2日

国庫負担はすし阻止!学校行革反対!賃金削減攻撃粉砕!教育基本法改悪反対!

12.2全国総決起集会参加者一同


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