2006年12月21日
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全学労連ニュース今号の内容

 全学労連秋季中央行動 新たな取り組み3日間

 任命権委譲問題について

全学労連秋季中央行動 新たな取り組み3日間

 11月11・12・13日と行なわれた全学労連としての新たな取り組みは、目標に近い形で全ての行動をやり遂げた。今回はその行動を追って報告する。

11日 「学校を巡る状況と今後の運動についての討論集会」

 議長からの基調報告、事務局から中央情勢報告がなされ、さらに東京から任命権委譲の問題(別記記事参照)を絡め、全国から結集した参加者と活発な意見が交わされた。討論の中で、共同実施や神奈川県県立高校の事務民営化など今まさに起きている事務合理化の事例が紹介され、参加者、事務局ともこの中央行動の意義を改めて認識した。国庫問題が一定の決着をしたとは言え、まだ学校事務職員を取り巻く状況は厳しいものがある。総額裁量制や任命権委譲の問題は「地方分権」という「錦の御旗」のもと、あらたな学校事務職員制度解体を促すものとして、全学労連は取り組んでいく決意を新たにした。

12日AM 「学校の現状を訴え教育基本法改悪こ反対する街頭アピール」

 有楽町駅そば「マリオン」前にて横断幕を広げ「全学労連」桃太郎旗を立て、街頭アピールを行った。日曜日の午前中だが始めた頃、人通りは少ない。それでも全国から集まった仲間で手分けをして、チラシ(今号別紙)の配布と、リレーアピールを行った。発言は教基法改悪から波及する教育環境の悪化など各県・各人それぞれ思いを路上で拡声器を使いアピールした。街頭アピールは全学労連では初の試みであったが、1時間半、時間いっぱいまで市民に学校現場の実態を訴え、日比谷公園へと向かった。

12日PM 「教育基本法の改悪を止めよう!11.12全国集会」へ参加

 日比谷公園の噴水前では全学労組が前段集会を行っている。全学労連からは議長菅原が、「事務の定数は総額裁量制のもと大幅な欠員も生じている。また、共同実施等で合理化も進んできている。これらの問題への対応としてこの3日間中央行動を展開している。」と連帯の挨拶をした。また参加者は全国集会の会場、日比谷野外音楽堂前でチラシの配布と、精力的に活動する。

 そして「11.12全国集会」へ。主催者発表によると集会参加者は5000人。その後8000人とも言われた大きな集会。全学労連からは51人が参加した。約2時間の集会の後、東京駅までのデモパレードに参加。沿道、街行く人にもアピールを続け、チラシも配布。この日用意した2400枚を全て配布しきった。

13日 「中央折衝」

 この日は文科省と賃金に関する交渉を行った。前日からの中央行動の締めくくりとして、総勢14名で下記要望書をもとに交渉に臨んだ。

 また、これに先立ち交渉前に都道府県教育委員会連合会へ要請書(別掲)を提出した。

 これに対応した連合会事務局長は、「総額裁量制は定数崩しだ。少数職種の事務職員にも悪影響を及ぼしている」「政令市・中核市への移管問題は深刻な財政格差がある中で簡単にはいかない」「教壇に立っていない教員まで教職調整額を出す必要はないのでは」などの考えを示した。

 
文部科学省への要望書とその回答
要望書 回答

2006年9月20日

文部科学大臣 小坂 意次様

全国学校事務労働組合連絡会議議長 菅原孝

学校事務職員の賃金改善に関する要望書

 公務員制度の根底からの見直しが進んでいます。賃金については、昨年「給与構造改革」が行われ全国の地方公務員の賃金水準は引き下げられました。さらに学校事務職員は「昇格基準の見直し」のために、生涯賃金が大幅に引き下げられ、まさに「学校事務職員という職業を長く働き続けることができない」状況が生まれようとしています。

 そのため、これから学校事務職員が学校事務を安心して働き続けるために、文科省の学校事務職員賃金への働きかけはきわめて重要になっています。つきましては、学校事務職員賃金改善に関し、下記のとおり要 望いたします。

 

1 学校事務職員の賃金改善に関する件

(1) 学校事務職員賃金水準を引き下げない方策をとること。

(2) 全ての学校事務職員が新給料表の行(ー)4級に早期に(遅くとも30台半ばには)到達するよう都道府県教委に通知すること。

(3) 義務教育費国庫負担制度の「総額裁量制」で示す職種ごとの金籠を引き上げること。

1 学校事務職員の給与については各都道府県が定めた給料表に基づいて支給されている。公務員の給料は職務の級に応じて額が決定されている。たとえば係長の級は決まっている。賃金の水準については、今は国が定めることではなくなった。とはいえ、学校事務の行政的な内容・標準職務は各都道府県でそれほどの差が出てくるものではない。文科省では今までの水準をキープしたいと考えている。しかし、財政事情が厳しい。給与構造改革により旧単価表よりは下がっているが、下がっている程度は少ないと考えている。

2 臨時職員の賃金改善に関する件

(1) 公立学校に臨時に雇用されている教職員(期限付き任用職員、非常勤職員)の職名、給料の格付け級、休暇等の労働条件を緊急に調査し、公表すること。

(2) 都道府県教委が、「臨時教職員の給与上限規定」を設けるなど、臨時教職員の賃金を抑制している。このような不当な行為をやめさせ、「給与上限規定」を廃止させること。

2 臨時職員の給与について上限を設けている県があることは聞いている。55才昇級停止と同じ考え方を持っているのではないか。しかし何を基準に限度としているのかはわからない。

3 超過勤務手当に関する件

(1) 義務教育貴国庫負担制度の「総額裁量制」における超過勤務手当分を給料の7パーセント相当にすること。

(2) 学校事務職員の超過勤務手当予算が削減され、サービス残業が生じている。超過勤務手当予算を給料の7パーセント相当にするよう都道府県教委を指導すること。

3 一般行政職の時間外手当は8%である。事務職員については国庫負担の算定上6%となっている。超過勤務の6%は確保したい。が、引き上げは難しい。

 以下は全学労連とのおもなやりとりである。

全)職務職階でいくと各県差が出ている。差を縮める作業は可能か。

文)可能であろう。給料は絶対的なものではない。各県の工夫次第。数字で統一的には難しいが‥。

全)現場では臨時的任用や非常勤講師がかなり増えてきているが‥・。

文)常勤を基本とした臨時的任用もあり得る。非常勤は任命権者の判断。給与を各県に配っても給与以外に回さないと言う事態がないようにしたい。

全)教育の機会均等からしても臨時的任用職員の格差が全国的にでてきて、同じような仕事をしていて「上限」を定めるのはおかしい。定数内での欠員補充、格付けの実態、休暇等について是非各県調査をお願いしたい。

文)各県負担が大きいので、難しいだろう。話の趣旨は理解した。

 

 内容については見るべきものはあまりなかった。しかし今回、沖学労が交渉に参加し、直接時間外の問題を発言した事は大きいと感じる。沖縄県の学校事務職員は時間外手当が1%しか現場配分されておらず、サービス残業を余儀なくされている。文科省が学校事務職員時間外手当として6%(1/3なので2%配分)を算定しているのならば、沖縄県がほかへ流用している可能性があるということが分かった。総額裁量のもとではありえる話なのかもしれない。

 全学労連は今後も交渉等を通じ各都道府県の実態を、私たち学校事務職員の労働条件はもとより、学校を取り巻く問題点を文科省にぶつけていく。

 

 このあと総務省、財務省にも要請書を提出し、3日間の中央行動を終えた。

【教育委員会連合会、総務省、財務省への要請書。宛先が異なるだけで中身はすべて同じ。】

2006年11月13日

総務大臣 菅 義偉 様

全国学校事務労働組合連絡会議 議長 菅原 孝

公立義務教育諸学校の学校事務職員制度に関する要請書

 貴職の日頃のご活躍に深く敬意を表します。

 いわゆる「三位一体改革」で義務教育貴国庫負担金の国庫負担率は3分の1に引き下げられました。それに伴う税源移譲や地方交付税の措置にも拘らず、当初から言われている税源の偏在化の問題はそのままで、その格差を埋めるはずの地方交付税は減少しています。「三位一体改革」により国の財政負担が地方に転嫁され、今後地域の格差が拡大し、憲法で保障された義務教育の水準が自治体の財政事情により左右される事態が来るのではないかと、私たちは深く憂慮しています。

 既に数年前から教職員定数標準法の定数内での臨時的任用や非常勤職員化が進行し、文部科学省が進めてきた教職員定数計画も今年度からは計画そのものが見送られています。私たち学校事務職員に関しても臨時的任用者の増加はもとより、標準法定数の欠員が常態化している地域が年々増え、現場から学校事務職員を引き離す「共同実施」を推進する所も出てきています。また教職員人事権の区市町村への移譲が検討され、特に東京都では事務職員の先行的な移譲を国に要求するという提案が出されています。

 こうしたことは学校職員の労働条件を切り下げるばかりでなく、その雇用を不安定にし学校現場に混乱と不安をもたらすものです。ひいては公教育制度そのものの崩壊を促進するものに他なりません。

 私たちは、貴職が下記の諸点実現に向け、貴職の職責に基づき関係諸機関に対し取り組んでいただきたく要請いたします。

1 義務教育費国庫負担制度の更なる改悪をしないこと。また学校事務職員を同制度から除外しないこと。

2 政令指定都市への教職員給与負担の制度変更をせず、都道府県費の給与負担制度を維持すること。

3 学校事務職員も含めた教職員の人事権を市区町村へ移譲しないこと。

4 学校職員の定数内の臨時的任用職員や非常勤職員を無くし、本採用職員を配置すること。

5 学校職員の定数標準法を遵守し、欠員を生じさせないこと。同時に総額裁量制を廃止すること。

6 加配方式による定数配置をやめ、学級数・児童生徒数(要・準要保護数を含む)等客観的な基準による配置をすること。

7 学校事務の「共同実施」を推進しないこと。また学校事務職員の兼務発令をしないこと。

以上

 

任命権委譲問題について

学校事務ユニオン東京・山田

 全学労連は、1984年に「国庫負担はずし阻止闘争」を全国化した。その理由は「はずされた場合、市町村費職員に身分が変更になり、地方行革の嵐の中に投げ込まれて学校事務職員制度が崩壊する」というものであった。その後の約20年間の中で全国各地で市町村費職員が次々と削減されていった。84年当時に危慎していた事態は現実のものとなり、今、又、私達に更なる犠牲を強いろうとしている。05年2月の中教審の「地方分権時代における教育委員会の在り方について」の中で次のように出されている。

「5.都道府県と市町村との関係の改善(抜粋)

(1)国、都道府県、市町村それぞれの役割と関係

 近年、教育長の任命承認制度廃止や義務教育費国庫負担制度における総額裁量制の導人など、地方分権を進める制度改正が行われている。

 今後、更に、国から地方へ、都道府県から市町村へ権限の委譲を進め、地方自治体が権限と責任を持って地域の実情に応じた教育を実現できるようにしていくことが必要である。 (2)市町村への教職員人事権の委譲

 子どもや住民に最も身近な市町村が責任を持って教育行政に当たることができるよう、市町村に可能な限り権限を委譲していくことが必要である。

 市町村立の小中学校の教職員の給与負担と任命権については、公務員制度の例外として、都道府県が給与を負担し任命権を行使する県費負担教職員制度が採られている。この制度は市町村の財政力の差によって教員の給与水準に差が生じるのを防ぎ、あらゆる地域で必要な教職員を確保するとともに、広域で人事を行うことにより県域全体を通じて適材を配置し、教職員の職能成長を図ることを目的とするものである。

 この県費負担教職員制度については、教職員が市町村に属しながら市町村に人事権がない、小中学校の教職員は市町村の職員としての自覚を持ちにくいなどの課題が指摘されている。また、中核市については、既に研修の事務が委譲されているが、異動の権限を持たないことから、研修の成果を教職員人事に反映できないとの指摘もある。

 このため、教職員の人事権については、できるだけ市町村に委譲する方向で見直すことを検討すべきである。一方、採用や懲戒処分も含めた人事関係事務を現在の市町村の事務体制で処理することができるか、また、県内全域で人材が確保できるかどうかに留意すべきである。当面の方策として、中核市や一定規模以上の市町村に教職負人事権を委譲する方向で検討する必婁がある。

 また、同一市町村内における人事異動については、基本的に市町村が主体的に行えるよう工夫を講じることや、現在特例措置として市町村が独自に常勤の教職員を任用できる制度を全国化することも検討する必要がある。」

 都道府県と市町村の役割分担論は、国・地方を通じて1000兆円の財政赤字を抱えている現場においては、国による必置規制はずし、定数合理化を推し進めて行くための論理でしかなくなっている。自治労は、この戦略に乗る形で「市町村に財源が行けば、積極的に市町村費化を推進する」側に回っている。自治労の無原則的な役割分担論では学校事務職員制度の崩壊を防ぐことは出来ない。

 

 都立高校における学校経営支援センター化による400名の削減や、大阪市のセンター方式、全国で馬脚を表している「共同実施」など、地方を見れば合理化の方策は枚挙にいとまがない。地方交付税が削減され続けている市町村の現状では、「元県費事務職員」を一校一名を堅持しながら学校事務職員制度として存続させて行く財政的余裕はないと言わざるを得ない。異動も、学校間異動ではなく市町村への強制異動もあり得るから、学校に居続けられる保障はどこにもない。

 任命権委譲は、今のところ「県費負担教職員」と教員と事務職員を一括りにしてはいるが、教員には県内の広域異動が必要との認識から、東京のように事務職員のみを切り離して、定数合理化の俎上にのせることは考えられる。

 

 東京都の方針について検討してみよう。

 06年6月の自民党の「国家戦略としての教育改革」は、教育基本法改「悪」後の教育戦略と謳われているとおり、自民党は先を見越して戦略を立てている。その中で「義務教育費は国が10割負担、市町村に任命権を委譲する」としている。つまり、東京という一自治体レベルの問題ではなく、国家的動向として捉えて行かなくてはならないものである。東京の市町村では反対のところが多いが、その理由として「教職員の人事事務を扱うには負担が大きすぎる」事が上げられていた。しかし、自民党は、小規模の市町村には共同の教育委員会の設置を促している。東京23区では協同組織として「特別区人事委員会」が設置されているから、教育委員会の共同設置も十分あり得る。こうして自民党の構想の中では、全部の市町村への任命権委譲が出来上がっているのである。

 これらは、私達一人一人の身分上の改変ではあるが、労働組合としては県段階での統一組織の限界を知らされるものとなる。私達の組織間題となる類いのものである。旧自治労埼学労はこの流れを先読みし過ぎて抵抗勢力として屹立することもなく表舞台より消えているが、私達は断固としてその道を拒否して最後まで闘おう!

 任命権委譲は、形を変えた国庫負担はずしだ。合理化としての本質には変わらない。

 

 12月14日、都教委人事企画担当との折衝で、質問書への回答を得た。そこで都教委が考えている骨格が見えてきた。「任命権は区市町村に委譲するが、給与は国庫負担制度を前提として都が引き続き負担する。定数も引き続き都条例で定めるため、任命権委譲でただちに定数削減に結びつくものではない」と回答があった。しかし、制度への無理な解釈からか「採用は特別区人事委員会」と言い、「それでは、特別区職員ではないか?」と質しても「別枠で事務Dみたいなものを作る」と言い出す始末。「どのような法改正を要求するのか?」との質問にも「国が検討すべき内容だ」と逃げる。

 自民党の「国家戦略としての教育改革」は、「人事権を市町村に委譲し、給与も市町村へ国庫負担10割で降ろす」と、ある意味すっきりしているが、都教委の言い分は極めて無茶苦茶で、都と区市町村の役割分担が現状より更にねじれるものとなる感を受けた。

 都教委は、一部の市町村の反対があるにもかかわらず、11月10日、文科省に対し、「県費負担事務職員の任命権の市町村教育委員会への委譲について、法令を整備されたい」と要望を行った。現場の当事者である事務職員の反対の声を無視し、手前勝手で事を進める都教委の暴挙は許せない。私達、学校事務ユニオン東京は、引き続き都教委を追求していくつもりである。任命権委譲に反対!


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