2007年1月27日

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全学労連ニュース今号の内容

 廃職攻撃を止め、学校事務の「公平」を守ろう

 連載 給与構造改革1 給与構造改革は「学校事務職員=30万円職員」攻撃だ!

 来年度予算政府案を読む 「教育再生」を前面にし、定数・給与は削減基調

 

廃職攻撃を止め、学校事務の「公平」を守ろう

格差拡大論

 「格差拡大社会」を巡る議論が活発になってきた。「規制緩和」「地方分権」など耳障りのいい新自由主義政策がもたらしたのは、「社会的経済的差別構造の拡大と固定化」であり、漸くそれへの批判の矛先が向いてきた。(ただし、「格差拡大」という言葉は中間的用語であり、正しく「不平等」と言わねば)

 学校事務職員の間でも、「教育格差」が注目され、就学援助や給食費未納が話題になっている。しかし、そこでも「学校事務職員の格差拡大」に注意が向くのが遅いような気がする。

月給上限30万

 「給与構造改革」がもたらしたのは「地域給与」導入だけではない。いくつかの地では「学校事務職員の行(一)2級格付け」が強行された。もともと「給与構造改革」とは「公務員の格差拡大」を目的としたものだが、その地方では学校事務職員がその標的となってしまったのである。これまでも学校事務職員は公務員賃金のなかでは下をキープしていたが、その固定化がはじまったのであろうか。

学校事務は「公平」

 多くの学校事務職員は、多数派の教員との関係で誰もが「学校の日常的差別」に敏感になっていただろう。だからこそ学校事務職員は公平さを大事にし、事務職員間に上下関係を作らなかった。職名がどうであれ、年齢が違っても「学校事務の仕事は同じ」でやってきた。そして、賃金格差はできるだけ縮めた「年功序列」を守ってきた。

「共同実施」は不平等拡大

 「学校事務の共同実施」は進んでいるのだろうか。「日常的な事務研活動」に毛の生えた程度の「共同実施」から、全事研幹部の思惑「出世のための共同実施」まで、いろいろ混在している。ただ共同実施程度の差があれ「長」を生み、学校事務職員の間に不平等を拡大する。これまで学校事務職員らしさを作ってきた「公平」をあくまで求め、共同実施の拡大を止めよう。

学校事務廃職攻撃を止めよう

 給料30万と共同実施は、「長く安心して学校事務職員として働き続ける」ことを困難にしていくだろう。生活を困難にさせる賃金水準と学校事務職員らしさを破壊する共同実施は、共に学校事務廃職攻撃なのである。これらに立ち向かい、今こそ学校事務職員として働き続けるために、労働者として自立し、労働運動を興し、働くことを保障させていこう。

(議長 菅原)

    

連載 給与構造改革1

給与構造改革は「学校事務職員=30万円職員」攻撃だ!

 

 これまで、学校事務職員の賃金は、各県で違いはあってもだいたいは旧6・7級で退職をしていた。これは「学校における事務組織の規模、個々の事務職員の学歴、経験年数等を考慮して学校事務職員を国の行政職俸給表(一)の四等級に相当する等級に格付けることを否認するのではない」という旧文部省の「32年通達」を根拠に、旧四等級(旧6・7級)格付けが全国的に定着してきた結果であった。

 しかし、昨年4月より始まった給与構造改革はそうした様相を一変させようとしている。

 給与構造改革は、給料表水準の大幅な引き下げと給料表の4分割をおこなった。これは、賃金に勤務成績を反映させやすくすることを狙ったものであるが、これまで査定昇給や勤勉手当への成績率強化が注目されてきた。しかし、実際に給与構造改革が運用されるにつれ、「給与に勤務成績を反映させるのだから、これまでのワタリは廃止する」という県が出始めている。

 別掲のグラフはある県の賃金カーブだ。これまでは退職時には旧7級(新5級・最高号給で約40万円)であったところ、「ワタリ廃止、厳格な昇任」を標榜する県当局の方針により、主事のままでは新2級(最高号給で約30万円)止まりになることになった。ここには「32年通達」の考え方は微塵もない。「悔しかったら、係長級、課長補佐級に昇任すればいい!」という競争への煽りだけだ。

 これまで、学校事務職員は誰もが旧6・7級で退職する「40万円職員」だった。それが競争に勝ち残らない限り新2級止まりの「30万円職員」になってしまうのだ。

 この問題は学校事務職員の賃金制度にとって、大きな問題を孕んでいる。これまでの歴史や給料表構造からいって「30万円職員」攻撃は極めて乱暴だ。今後数回にわたって、この問題について連載していきたいと考えている。

行(一)賃金カーブグラフ    

来年度予算政府案を読む

「教育再生」を前面にし、定数・給与は削減基調

全学労連事務局学校行革対策部 佐野 均

☆万全の対応?

 昨年12月25日に来年度予算政府案が閣議決定された。「平成19年度文教及び科学技術予算のポイント」を見ると、文教関係費は昨年より78億円減った3兆9,281億円となっている。説明によると、

だと言う。何が「万全」かよく判らないが、「教育再生への対応」では、全国学力調査の実施(66億)と放課後子ども教室(68億)という二つの新規事業をはじめ学校評価の推進(6億、2倍増)、いじめ問題対策(69億、21億増)、公立学校耐震化(796億、247億増)、理数教育の充実(79億、21億増)と全て前年より増額されている。

 それに対して「骨太方針に掲げられた歳出削減の着実な実施」では、義務教育貴国庫負担金(1兆6,659億、104億減)、国立大学法人運営費交付金(1兆2,044億、171億滅)、私学助成(4,547億、46億減)、奨学金事業(1,439億、85億増)、教科書予算(394.9億、0.3億減)と一つを除いて削減されている。増えている奨学金事業でも「金利の上昇等により、歳出規模は大幅増。今後の事業の健全性を確保するためにも、骨太方針や独法見直しで指摘された回収体制の強化、上限金利の見直しについては引き続き検討」と今後削減する意図が明らかである。

☆定数・給与は…

 義務教育費国庫負担金に関連しては、

とある。要するに人も給与も増やさないということだが、これについてはもう少し詳しく見る必要がある。

 「平成19年度文部科学省予算(案)主要事項」を見ると、8月末の概算要求から盛り込まれている新規事業で「教育課題対応緊急3か年計画の実施」があり「今日的な教育課題として特に緊急性の高い特別支援教育及び食育を推進するため…、平成19年度は331人の定数措置を実施する」とされている。総人件費抑制基調の中では第八次定数計画は諦めざるを得ないが、全く定数措置が無いという事態は避けられたようだ。しかし何を「緊急性の高い」事とするかの基準は示されておらず、また文科省お手盛りの加配方式に使われる事になるのだろう。

 また「人材確保法に基づく教員給与の優遇措置の縮減」については、「平成19年度予算からの縮減は行わない」「…現在進行中の教員の勤務実態調査を踏まえたメリハリある給与体系の見直しと、人材確保法に基づく優遇分の縮減とを併せて20年度の検討とする」とあり、先の資料と比べてみると、人確法の見直し・検討が20年度で、改定はもっと後になったらしい。一昨年の12月24日の閣議決定「行政改革の重要方針」では、人確法の廃止を含めた見直しを「教職員給与の在り方について検討を行い、平成18年度中に結論を得て、平成20年春に所要の制度改正を行う」とあったことを考えると、2年位先延ばしたということになる。

 この背景として、資料の表現からは昨年7月から12月に行われた教員勤務実態調査の結果を踏まえるという表向きの事情が垣間見られるが、給与費削減のため人確法そのものを廃止したい総務省・財務省と一律支給から評価制度を活用した差別支給に切り替えることで人確法自体を残したい文科省や自民党文教族議員との確執がなかなか調整困難ということがあるのだろう。どちらにしても教員のみならず大多数の学校労働者にとって賃金削減に繋がるという事を忘れてはならない。

☆義務教育貴国庫負担金の地位低下

 昨年までなら義務教育貴国庫負担金と教職員定数は文教予算の説明の筆頭項目であったのだが、今年はずっと後の、それも削減を基調とする項目の中に入れられている。もともと文教予算の中で最重要の位置付けで、数多有る補助負担金の中でも最大だった。だからこそ小泉政権の三位一体改革の中で格好の標的にされつつも、制度の存続をめぐる攻防の焦点という意味で良かれ悪しかれ重視されていた。しかし結果的に制度が残ったとはいえ、僅か5年間で半分近くまで削減されてしまい、国庫負担率1/3という決着以降、削減は既に前提で、どれだけ削減するかの対象としての位置にまで降格してしまったということの反映なのだろう。

 地方向け補助金等の全体の中でも、社会保険関係の中の老人医療(3.8兆)、市町村国保(2.3兆)、生活保護(2兆)、介護保険(1.8兆)と義務教育費を上回る物が並んでいる。少子高齢化の世相を反映しているとはいえ、総人件費抑制・行政改革の流れの中では、文科省の言う国庫負担率の復元・全額国庫負担という道がますます遠のいている感は否めない。

☆政策官庁への野望?

 安倍首相は昨年末に教育基本法「改正」を強行した余勢を駆って、今年1月末から始まる通常国会を教育国会としたい考えのようだ。新基本法に基づいた教育関連諸法が既に30幾つか準備されているという。「目玉商品」である教育再生会議の第1次報告が波乱含みながら1月19日にはまとめられる。こうした一連の動きは、冒頭に紹介した「予算のポイント」の「教育再生・教育改革のための予算は重点的に増額」という政府の予算案と合致する。

 今回の予算案を見ると、教育現場での学校労働者の地道な努力を人的・物的に支援する事よりも、場当たり的に目新しい政策を上から打ち出し、現場をその通り強権的に動かせば今の学校を取り巻く問題が解決するかのような幻想に取り付かれているように感じる。もしかしたら文科省は一方で国庫負担率の復元を言いつつ、この流れを利用して国庫負担金と教職員定数の配分官庁から政策立案官庁への脱皮を図ろうとしているのではないだろうか。

全学労連のカンパにご協力ありがとうございました。

 共同実施、事務職員定数、さらには臨時職員・非常勤職員の勤務条件など、学校を取り巻く様々な問題に、全学労連は全力で取り組みます。今後もご支援をよろしくお願いします。

まだまだ受け付けております。


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