2007年5月13日
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全学労連ニュース今号の内容

 進行する廃職攻撃を見据えて 学校事務労働運動の新展開を模索  −全学労連全国代表者会議−

 2007年度 全学労連運動方針大綱

 連載 給与構造改革4  「切り替え」に潜んでいた危険な罠

 シリーズ共同実施 「ある事務長日記から」

 

進行する廃職攻撃を見据えて

学校事務労働運動の新展開を模索

−全学労連全国代表者会議−

 

 全学労連は3月24・25日、東京で全国代表者会議を開催し、2007年度運動方針大綱(別掲)、予算、人事を決定、新たな1年を闘い抜く体制を整えた。

 冒頭、挨拶に立った菅原議長は、この間の内部議論を総括する形で全学労連、学校事務労働者の現状と課題について要旨次のように提起した。

 20年以上に亙って国庫闘争を牽引してきた全学労連は、国庫問題の一旦決着もあって存在感が薄れている反面、学校事務廃職攻撃が強まる中、一段の飛躍が求められている。攻撃にさらされる学校事務労働者は、新自由主義=競争社会の中で「教育改革」に棹差し出世に活路を見出そうとするか、格差拡大社会の中で「子どもたちのために」一層献身することに意義を見出すか、あるいは途方に暮れるかしている。

 給与構造改革は各地で学校事務職員賃金の格下げをもたらした。上限30〜35万円への抑え込みは全国化していくだろう。文科省は「学校事務職員は仕事をしていない」と公言し、労働強化を目論んでいる。受け皿としての共同実施推進圧力は高まる。

 私たちは「長く安心して学校事務職員として働き続ける」ことのできる賃金を要求し、「管理職はイラナイ」学校事務職員の平等なあり方にこだわり続け、創意工夫を凝らして学労運動を前進させ、改悪教育基本法の下戦争国家化に向けた学校への統制強化に徹底して抵抗していこう。

 経過報告をめぐる議論では、11月の教育基本法「改正」反対中央行動について、初めて試みた有楽町マリオン前での独自街頭宣伝が新鮮だった、その後の教育3法改悪への取り組みを行うべきであった等の議論があった。運動方針大綱をめぐっては、休憩時間がとれないという労働条件の基本に関わる実態を重視すべき、労働諸法制改悪の急な動きに対応できる態勢が必要、多々問題のある全国学力調査に反対の意思表示をすべき、現場で教組が崩壊している状況で改めて組合のあり方を検討すべき段階に至っている等々、活発な意見があった。

 最後の各県活動報告は毎回貴重な情報交換の機会になる。今回は、組合活動に関わる職免について、横浜で剥奪の動き(他県は概ねすでに剥奪)、沖縄では正規の交渉についても、移動時間について年休を使えとされている実態。増大する欠員補充臨時的任用職員の任用期間について、4/1〜3/30の県が多いが、沖縄は4/2〜3/31、神奈川からは他県の実態を背景に交渉を強め、ようやく4/1任用開始(従来は4/5。終了は従来通り3/25)が実現したとの報告があった。

 

2007年度 全学労連運動方針大綱

1.はじめに(情勢に代えて)

・ サダムフセインの死刑強行によりイラクの混迷はより深まり、アメリカは手を引くどころか派兵を増強せざるを得なくなりました。日本も陸上自衛隊は撤収したものの、航空自衛隊は未だに米軍への支援輸送を行っています。小泉の後を継いだ安倍は、その最初の国会で最重要課題とした教育基本法の改悪を強行し、更に自らの任期中に改憲を実現したいと発言し、国民投票法の上程を進めています。名実ともに戦争の出来る日本へと突き進んでいます。

  しかし、教育基本法の改悪を許したとはいえ、改悪反対の取り組みはギリギリの段階まで広範に闘われ、一定の実績を残しました。この闘いの実績を改憲を阻止する闘いへと継続し、戦争国家策動を阻止しなくてはなりません。

  また、教育再生会議の目指す方向は、新自由主義に基づく新たな教育の国家統制です。教育関連3法案と合わせて、その実態化を許さない取組が重要です。

・ 20年余りの「国庫闘争」は、負担率の引き下げにより「休戦状態」となりました。全学労連の全国闘争は大きな岐路に立たされています。昨年の全国闘争は、教育基本法改悪反対の闘いと結合させ情勢に適応した取り組みとなりました。

  しかし、国庫闘争は「休戦状態」でも国庫はずしを超える状況が我々を取り囲んでいます。「共同実施」や学校事務の民営化、人事権委譲や定数崩しにより、学校事務職員制度が解体され、廃職の危険性も出てきています。これらの動きに対抗するための取組を強め、全学労連が担うべき役割や課題を明らかにし、新たな全国闘争の構築が求められています。

・ 新自由主義の蔓延は、競争の激化と格差の拡大を生みました。そして、その対極にある共生と反差別の視点を曇らせ、負け組は「自己責任」とする風潮が当たり前になっています。

  しかし、我々の組合の結成は、全学労連の結成は、教育現場で、教組運動の場で差別されてきた職として、反差別の視点からの出発でした。我々の労働条件改善の闘いは、先ず差別的な状況からの脱却の闘いでした。我々の、そして先人の闘いは、我々の「生活」を改善してきました。我々の闘いが一定の成果を上げたと言えるでしょう。しかし、今新たな「酷い生活」の中へ投入されようとしています。36年前の都学労が結成された時の状況よりもなお厳しい状況へ。

  36年前、学校事務職員にとって「学労」が必要であったように、今学校で働く者にとって労働組合が必要な状況になっています。職場に労働組合を再生させねばなりません。

2.学校事務の制度解体・廃職攻撃に対抗する闘い

 全国の学校事務職員によって20年余り闘われてきた国庫負担はずし阻止の闘いは、負担率の引き下げど言う形で「休戦状態」に入りました。しかし、総額裁量制の導入、「共同実施」、学校事務の民営化、人事権の委譲等々の動きは、国庫負担はずしを超え、学校事務の制度解体、廃職に繋がる攻撃に成ろうとしています。

 全学労連は、ポスト国庫状況から新たな全国闘争の課題としてこれらの動きを焦点化し、制度解体、廃職攻撃に対抗する取組を提起し闘います。

3.賃金改善の闘い

 給与構造改悪は、公務員労働者が営々と積み重ねて来た「格差の少ない」給与制度(ワタリ)を一夜にして水泡に帰させ、競争主義による上厚下薄・職務職階給強化の差別的給与制度に変えました。大阪府では、選考をパスしなければ生涯2級、40才代後半で頭打ち、最高号給でも31万円と言う厳しい制度となっています。しかし、まだ運用を決めていない県が多くあり、格差拡大を阻止するための各県での取組が重要です。

4.諸課題について

(定数改善)

 04年度の総額裁量制導入以降多くの都道府県で、学校事務職員は標準法を下回り、逆に教員は上回る配置が現れ、結果的に教員定数が事務職員定数を喰う状況となっています。(全学労連資料参照)特に要準加配は、ほとんど標準法が守られていません。標準法遵守を監督庁の文科省に強く求めるとともに、各県の教育委員会への取組を支援します。

(事務室設置)

(教育の国家統制反対・反戦平和)

(交渉・申し入れ等)

(調査・研究等)

(共同闘争)

5.反コンピュータ合理化について

6.支援・連帯について

7.全国学校事務労働者交流集会について

8.組織強化・拡大について

 

連載 給与構造改革4

「切り替え」に潜んでいた危険な罠

 前回は、「32年通達」と国庫負担金を算出する基準となる経験年数別単価表について検討し、文科省は学校事務職員が退職するときには旧7級の最高号給あたりに到達していることを念頭に置いている様子であることを明らかにした。

 今回は、ある県の実態から「学校事務30万円攻撃」を見てみたい。

A県の級・号給別人数一覧
号給 1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級 8級 9級
1〜4           2 2   1
5〜8 2 43 1            
9〜12 5 79 81            
13〜16 28 92 134 1         5
17〜20 39 112 169     1 1 1 2
21〜24 38 94 130           4
25〜28 20 41 143 2       3 6
29〜32 47 1 118 1   1 1 11 3
33〜36 60 1 79 1   1 1 6 1
37〜40 9   29 1   1 7 3 1
41〜44     93 4   2 11 3  
45〜48     131 19 1 2 39 4  
49〜52     161 18 7 25 32    
53〜56     28 25 16 48 22    
57〜60     2 40 61 100 9    
61〜64     34 42 95 121 13    
65〜68     77 64 132 144      
69〜72     81 18 134 158      
73〜76     41   99 189      
77〜80     42   69 317      
81〜84     38   49        
85〜88     67 52 70        
89〜92     38 26          
93〜96     61 87          
97〜100     26            
101〜104     85            
105〜108     41            
109〜112     66            
113〜116     1311            
117〜120                  
248 463 3307 401 733 1112 138 31 23
6456

 「学校事務」誌12月号に昨年の様々な事務職員団体の研究大会報告が掲載されたが、その中に「給与構造改革によってほとんどの人が3級の最高号給に切り替えられた」というA県の事務職員の発言があった。

 全学労連の加盟組合で調べた限りでは、2006年4月の切り替えでは、06年3月の級号給を単純に新給料表へ切り替えただけであったことから、例えば旧6級にいた人は4級への切替であり、3級の最高号給へ切り替えられるということはなかった。「30万円職員攻撃」というのも「これからの人」に対するワタリ剥奪攻撃という受け止めだった。

 しかし、3級最高号給への切替というと単純な級号給の切り替えではなく、級別資格基準の変更による降格切り替えだ。その実態を確認するためにA県のweb-pageを覗いてみたら、別掲のような級号給ごとの人数が出てきた(見やすくするために4号給ごとにまとめて表示した)。

 3級の最高号給は1,311人、3級に占める割合は約40%、行(一)全体では約20%にも上っている。残念ながら切替前の人員構成がわからないので細かいことはわからないが、この3級最高号給の人数は異常だ。また、4級についても73号給から84号給までが空白になっており、ここでも降格切り替えが行われた形跡がある。

 

 「切り替え」というとこれまでの級号給を単純に新給料表に適用させることを思い浮かべる。国の2006年4月の切り替えもそのように行われたし、そのための切り替え表も作成されていた。しかし、いくつかの自治体ではそうした単純な「切替」像を超えた賃金引下げの罠(級別資格基準の変更)が仕掛けられたのである。

 ところで、国の級別資格基準では1・2級は係員の級、3・4級は係長の級、とされている。A県をみると3級と4級の間に大きな溝があるように見受けられるが、こうした厳密な級別資格基準の運用はさまざまな県で見受けられる。次回はこの級別資格基準について眺めてみたい。


 

シリーズ共同実施

「ある事務長日記から」

○月○日

 共同実施の場で、通勤、住居手当の認定方法をどうしていくかが話題になった。我が県では昨年度より、住居及び通勤手当について、認定権者(学校長)の公印を省略し、共同実施責任者の専決により認定できる方法も取り入れ、県教委からはその方向で市町村教委に協力のお願いが出されているところである。そのことにより、事務の省力化を図り、手続きを円滑に進めるためだと言うのがその理由である。

 ではその具体的流れはというと、該当職員が出た場合、(1)該当職員から提出された届を共同実施の場に持ち込む、(2)共同実施責任者は、その届を確認し、備考欄等に「平成○年○月○日 事務の共同実施の特例により公印省略 共同実施責任者 職 氏名 印」を追記し、専決処理する。その後、(3)共同実施責任者はその認定内容について、該当職員の所属校の認定権者(学校長)に速やかに報告する。県教委が示したその報告書の様式例によると、記載事項は、通勤手当の場合でみると、認定に関わる職員の「職、氏名、現住所、事実発生日、受理日、支給開始日、手当額、通勤方法、利用機関の種類、距離、加算の有無等」となっている。簡単に言うと届をもう一部別な様式で作成するということになる。

 現状では、責任者により専決された届も所属校に戻ってくる訳だから、各校には一職員について、内容的には同様の「届」と「報告書」が並存されることになる。

 これまで、所属校の校長印一つで完結されていたものが、「共同実施責任者の権限強化」「職務分担制」に基く共同実施というシステムに組み込まれると、こんなにも面倒なことになってしまう。しかしこれが、「事務の効率化を図り、教育支援を」を標榜する共同実施なるものの実態である。

 責任者といわれる事務長もグループ員も、そんなムダのために新たな負担を強いられることになる。

 冗談じゃないよ、という訳で、その場の結論は、これまでどおりの所属長決済になったのはいうまでもない。

第36回 全交流・埼玉に参加しよう

 今年の全国学校事務労働者交流集会(全交流)は埼玉県さいたま市で開催されます。

 詳細は現在、全学労連事務局と実行委員会で検討中です。労働組合の組織問題が懸念されている中、埼玉では様々な学校労働者と手を取りあって、一つの組合を立ち上げています。教員組合から独立した学校事務職員組合「学労」ですが、労働者が結集することにより、様々な問題へ取り組んでいる形態が新鮮かも・・・。

 是非、この夏の計画に組み入れて、皆で参加しよう。


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