2008年1月29日

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全学労連ニュース今号の内容

 新自由主義教育改革がもたらす学校荒廃を止めよう

 改悪教育基本法実働化への予算案

 「立たないとクビッ!?改悪教育基本法の実働化をとめよう!12・22集会」に全国から860名が結集した!

 シリーズ共同実施 共同実施は苦痛です

 

新自由主義教育改革がもたらす学校荒廃を止めよう

(1) 学校に非正規労働者の本格導入を打ち出した08年文教予算

 「サブプライムローン」という聞きなれない言葉がニュースの一面を飾り、世界同時株安などと「恐慌」を思わせる言葉が飛び交っている。株も投資信託も全く円のない身には、「そんなの関係ない」し、大金持ちたちが一日で何億円損しようが、かまわない。彼らの失った富が、巷の非正規労働者に回ってくればいいのだが。そういう話は聞かない。格差はますます拡大していくだろう。

 来年度政府予算が発表された。8月文科省の出した概算要求には、大幅な定数改善が載っていたが、政府原案では1000人の主幹配置を認めただけだ。しかし、今回の原案に、「非常勤職員を学校に本格導入する」方針が入っていることに注意しなければならない。

 政府原案によると、定数改善分は『主幹など1,195人、国費23億円』となっている。一人当たり192万円、地方負担分との合計は、一人575万円となる。以前より一人当たりの単価が値切られている。

 問題は非常勤職員のことである。概算要求に載っていた「特別支援充実、少人数指導充実など」の定数改善要求分のほとんどが「外部人材の活用」の非常勤職員に回されている。

 そこには7,000人で国費29億円となっている。つまり、一人当たり41万円にしかならない。国費と断っているのだから地方負担分を計算すると、一人当たり123万円になる。報道によればこの非常勤には週12時間程度の授業を持たせるということだから、年間35週とすると、2,700円×12時間×35週=1,134,000円でぴたり当てはまる。

 つまり、義務教育費国庫負担制度(国が3分の1、地方3分の2)に公然と非常勤職員をカウントするようになったのである。

 これまで、非常勤職員については、「総額裁量制度」が導入されたとき、あくまで地方の裁量で運用できるものとされていた。しかし、今回2008年度政府予算に、小中学校で授業をする教員の定数の中に非正規職員を公然と位置付けたのである。

 これは、学校職員の階層化を目指す文科省の新たな方向を示したものとして受け止め、また新自由主義教育改革の一つの現れとして確認する必要がある。巷に非正規労働者が溢れるのなら、学校の中にも、というのだろうか。

 学校への非正規労働者の導入を止めさせ、また非正規労働者の労働条件改善を労働組合の課題にし、取り組みを強化しよう。

(2) 「共同実施」は教員の賃金削減と学校事務職員労働強化をもたらす

 もともと文科省官僚は「事務職員定数改善は事務職員の労働条件改善のためではない」と言い切って、事務職員定数改善を「教員の仕事減らしのための共同実施」と位置付けた。また今回の政府予算原案では「教員賃金削減」は義務教育手当の一部削減だけで、教職調整額問題は先送りされた。

 「給特法」の下、教員は残業代を一切貰わず、無制限残業労働をこなしている。教員が「子どもとふれあう時間を作り、山のような事務もこなす」に、今は教職調整額だけで済ましている。

 事務職員定数改善を「教員の仕事減らしに結びつく共同実施」というのなら、「教員の賃金を削減し、教職調整額を見直し、浮いた分だけ、教員の仕事を減らす事務職員に回そう」と財務官僚が思うのは当然だったろう。事務職員定数改善は教員賃金削減が前提であったわけで、今回事務職員定数改善がゼロだったのは当然だ。

 その上、今や事務職員自らが「加配なしの共同実施で、教員の仕事を減らす」というのだから、官僚は笑いが止まらないだろう。教員賃金削減分を事務職員定数改善に回さなくても文句が出ないのだから。

 つまり「学校事務の共同実施」は教員賃金削減につながり、学校事務職員の過密労働をもたらすものとして確認する必要がある。そして学校に根深く張った「給特法」体制はそのまま維持されるだろうから、授業を終えた非正規教員が帰った後、少なくなった正規教員がもくもくと残業代が出ない残業をこなし、事務職員は減らされた正規教員がこなしきれない事務を山のように抱え込んでいる姿が目前に迫っている。

 「共同実施」がもたらすのは学校事務職員の中だけに留まらない。学校の荒廃を推進するものであることを確認しよう。かわいらしい「共同実施」、研究活動の延長程度の「共同実施」に留め、学校を荒廃させる「共同実施」をストップさせよう。

(議長 菅原)

 

来年度予算政府案で学校はどうなる?

改悪教育基本法実働化への予算案

―主幹教諭千人配置、文科省お手盛り構造はそのままに
不安定雇用と管理強化は進行する―

全学労連事務局 学校行革対策部 佐野 均

☆ 頓挫した?文科省の野望

 昨年末来年度予算政府案が閣議決定され、今月17日に国会へ提出された。今審議の最中であるが、参議院の与野党逆転状況の中で例年以上に攻防の焦点となるのは必至で、内容の修正や場合によっては解散・総選挙にまで至る可能性もある。その予算案にしても、今話題になっている年金財源や道路特定財源の問題だけでなく多くの波乱材料を含んでいる。文教予算ついて言えば、文科省の教職員定数要求と閣議決定されている歳出削減計画との兼ね合いで官僚レベルでは調整できず、大蔵原案直前に財務・文科両大臣の政治決着がされている。

 前安倍内閣の下で、数を頼みに教育基本法改悪の強行から関連3法まで成立したし、政権の目玉の一つである教育再生会議も発足当初は混乱したが、何とか文部官僚の手の平でコントロールできるようになった。これにより「大いなる野望」を抱いた文科省は、ここ数年義務教育費国庫負担制度や定数計画など、削減の矢面に立たされてきたことの巻き返しを図る絶好の機会とばかり、行革推進法の定数削減方針に反して、8月の概算要求において3年間で約2万1千名の定数増を打ち出した。ところが参院選での自民党惨敗と、それでも辞任しなかった頼みの安倍総理の突然の政権投げ出しで雲行きが怪しくなってきた。定数問題の取り扱いで文教予算編成は暗礁に乗り上げ、最後は大臣間の政治決着とならざるを得なかった。

 結果として、教員千人の純増と非常勤講師7千人で決着したと新聞各紙は報じているが、これについてはもう少し詳しく見る必要がある。

☆ 政治決着のカラクリ

概算要求と文教予算の対比

文部科学省概算要求と当初予算の対比。事務職員の共同実施加配は認められなかったが…。画像をクリックするとPDFファイル(96kb)が開きます。

 右の図に示したことから明らかなことは、予算化がされた「教員千人の純増」とは、主幹教諭の配置であるということだ。「教員の子供と向き合う時間の拡充」を言うなら、少しでも一般の教員を増やしたほうが良いだろうに、文科省が教育基本法改悪後の学校管理体制強化を優先している事は明らかだろう。しかもこの千人というのも、行革推進法は定数標準法で定められた職員以外の給食調理員や用務員などの削減も求めており、実はそうした職員の削減分を充てる“工夫"により「純増」と言っているに過ぎない。

 また、文科省の概算要求の教職員定数に関する部分は数的にはかなり削減されたが、項目的には「外部人材の活用」を利用しながらほとんどが実現している。たとえば、概算要求では「定数の改善」の項目に入っていた「特別支援学校のセンター的機能の充実」と「習熟度別・少人数指導の充実」は政府案では「外部人材の活用」の項目へ概算要求の内容に上乗せする形で移行している。これも「外部人材の活用」は行革推進法の規制外であるための“工夫"なのだ。しかしこれらの“工夫"の結果として、学校現場はさらに外部委託化が進行し、不安定雇用労働者が増えることになる。

 そうした中で学校事務職員の加配は完全に削減されている。このことは何を意味するのか。昨年文科省に返り咲きを果たした勝山教育財政室長は概算要求について、養護教諭や栄養教諭よりも「事務職員の改善数が圧倒的に上回る」とエラそうに豪語していたが、結果はこのとおりである。もっとも「改善」の内容というのは「教員の事務負担の軽減」のために「複数校の事務を共同実施する体制の整備促進」をする加配である。これは全学労連的に言うと、学校事務職員を教員の下請け化し職の合理化を推進する事にほかならない。

 文科省は今年の概算要求から学校事務職員の加配を全て共同実施のためのものに切り替えてきた。昨年10月の全学労連との交渉でも、「定数改善」は学校事務職員のためにやっているのではないと言い切り、共同実施以外の加配は認めないと断言している。当然のことながら、こんな概算要求なら実現しないほうが良かったということで、実際予算案ではそうなった。ではそれで良かったのかというと、もう少し事態は複雑だ。

☆ なし崩しの「共同実施」

 学校事務職員の加配は、2000年度から研究加配が、2001年度から2005年度まで第7次定数計画による加配が行われ、その後も含め今年度までに合計で540名が加配されている(これまで何度も言っているが、この数は未だに第7次定数計画の726名にも達していない)。今回の政府の予算案では「教員の事務負担の軽減」のために「複数校の事務を共同実施する体制の整備促進」をする加配計画を概算要求から削減したのであって、今まで第7次定数計画等で積み上げてきた加配分は来年度も残る。その理由付けは「きめ細かな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部門の強化対応を行う学校への加配」である。この中にはもちろん「共同実施」もあるが、それだけではなく学習指導や情報化の支援等のより広い内容を含んでいた。実際にはさらに広く解釈され、複数配置校維持のための配置がされることもあった。このような理由も含めて国会の議決を経て予算化され執行されてきていた。

 ところが文科省は来年度の事務職員加配の理由付けを「共同実施する体制の整備促進」に限定して各県の要望を募ってきている。この理由付けの加配が政府予算案で否定されたにも拘らず、である。たとえば愛知県はこれまで「共同実施」のための加配は要望もしておらず、今年度は「情報化支援」を理由とした22名の事務職員加配を受けているが、突然今後は「共同実施」のための加配として優先的に活用する(1組織10校程度で県内に35の組織設置)と言い出し県下の市町村教委に意向聴取を行っている。加配を受けていた現場は今までの取り組みを投げ出し「共同実施」を始めるか、加配をあきらめるかの選択を迫られることになる。これでは現場はたまったものではない。繰り返すが加配理由を「共同実施」に限定することはどこの承認も受けておらず、文科省がなし崩し的にやろうとしているだけなのだ。これは予算の不当な“流用"ではないのか。

☆ 結局教育再生会議って…?

 来年度予算案が閣議決定された翌日の12月25日に教育再生会議の第三次報告が出されている。パトロンであった安倍首相が辞任してもまだやっていたのかという事はひとまず置くとして、来年度予算案に関して1点だけ指摘しておく。

 今回の報告で始めて「学校支援地域本部」の設置が提言されている。その内容については報告の14ページに「国、教育委員会は、PTA、卒業生、地域ボランティアの人々などが補充学習、部活動、施設管理など学校運営を支援する『学校支援地域本部』が全国の学校で整えられるよう支援する。その際には、地域の企業の協力も積極的に求める。」とある。ちなみに昨年6月の第二次報告まではこれについては一言も触れられていなかった。でもこれだけならまあそういう提言を出したのかと思うだけで済む。

 しかしその前日に出された「平成20年度文教及び科学技術予算のポイント」の2ページに、「@学校支援地域本部の創設 50億円〈新規〉」とあり、内容は「意欲ある地域住民が知識・技能・経験を活用し、地域ぐるみで学校運営を支援する体制を全国1,800地域に整備」とある。渡海文科大臣も政府案発表後の記者会見で、的外れながらこの役割を強調していた。さらに「概算要求主要事項」の説明資料では「学校支援地域本部(仮称)事業の実施20,474,082千円(新規)」とあり、金額が減らされているとはいえ、これが文科省の概算要求段階からの規定の政策であったことが判る。

 いったい提言が出されるよりも早く、予算要求がなされ査定を経て予算案が作られてしまうということはどういう事なのか。別に期待をしていた訳ではないが、これでは教育再生会議は当初の勢いは何処へやら、文科省の意を受けて後付けでもっともらしく提言らしきものを出しているに過ぎないではないか。まもなく最終報告が出るらしいが、パトロン不在のサロンは、文科省に利用しつくされた挙句残務整理をするだけて終わるしかないのだろう。

 

「立たないとクビッ!?改悪教育基本法の実働化をとめよう!12・22集会」に全国から860名が結集した!

 07年12月22日、東京都北区王子の北とぴあにおいて上記の集会が持たれた。

 06年12月に教育基本法が強行的に改悪され、その実働化を図る教育三法(学校教育法、教育公務員特例法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律)が3月に改悪された。

 内容は、(1)副校長・主幹教諭・指導教諭の導入により教員の階層化をはかり、物言わぬ教員を作り出すこと (2)10年目研修を強要し、教員免許を更新制にし、「問題ある」教員として労働現場から締め出すこと (3)県費負担教職員の任命権を市区町村に移譲する前段の措置として、同一の市町村の異動において市区町村教委の人事権を強化したこと などである。何れも安倍政権による新自由主義的教育「改革」(エセ改革)によってもたらされたものである。本集会はこれらの流れに抗するため07年5月に京都で開催された集会を受けて旧「教育基本法の改悪を許さない!全国連絡会」の呼びかけ人4氏(大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅昌子)が再び起って全国に呼びかけたものである。

 前半は教育をめぐる諸課題。沖縄高教組と出版労連からの教科書検定問題の現状の報告に続いて様々な人たちが報告を行った。杉並区では教育基本条例が制定され、教育「改革」が開始されている。京都の「『心の教育』はいらない!市民会議」からの発言、「教育と自治埼玉ネットワーク」からは埼玉の教育委員就任問題、大阪教育合同から新勤評反対訴訟、新宿区での新採教員の自殺、都立高校の管理強化の数々、北海道では逆に人事委員会が道教委の処分を取り消す裁決、「足立の教育を考えるネットワーク」からは足立区の学力テストでの顛末、首都圏青年ユニオンからは教基法改悪の流れと若者の労働の有り様は軌を一にしているとの話。

 後半は「日の丸・君が代」強制との闘いに粘り強く取り組んでいる東京・新潟・神奈川からの当事者たちの話があった。最初に登壇したのは根津さん、河原井さん。集会のメインスローガンにもなっている「立たないとクビッ!?」は彼女たちのことだ。特に根津さんは停職6ヶ月の処分を不当にも受け、次は「懲戒免職」が危惧されている。この解雇攻撃をさせない取り組みの一環として本集会があり、12月25日の都教委要請行動、27日の文科省要請も予定されていた。被処分者の都教組組合員、被処分者の会・「予防訴訟をすすめる会」(9・21東京地裁での画期的判決を勝ち取った)共同代表、東京「君が代」裁判弁護団事務局長から報告があった。新潟被処分者の会からの05年の県教委通達以降処分が続いているとの報告には「ついに地方に波及したか」との声多数。ちなみに06年の文科省調査によると東京41人に続いて新潟35人、広島17人となっている。神奈川では、県の個人情報審査会が県教委の不起立者氏名の収集を個人の「思想信条に関する情報」として不適切と判定した。その申立人と神奈川こころの自由裁判をすすめる会からの報告があった。

 呼びかけ人4氏は各地からの発言の合間であいさつ。日の丸・君が代強制反対の闘いと改悪教基法の実働化を許さない闘いは、その後に控える憲法改悪反対へと通じるものである等々が話された。最後に集会アピールが拍手で承認された。これから3月・4月の卒・入学式へ向けての取り組みが重要になってくる。

 全学労連からは埼玉・神奈川・東京から6名が参加。全学労連の12・7中央行動は正に「教基法の実働化を許さない」予算面からの取り組みだったわけで、今回の集会では、政府予算への取り組みがなかったことが残念であった。とは言え、日教組等が取り組まない中での本集会の開催は、市民レベルの運動を巻き込んで拡大していっているので、今後の動きに私たちも合流し、共に闘っていくべきであると思う。集会終了後、全学労組の方々と反省会を行ったメンバーであった。(東京・Y)

 

シリーズ共同実施

 共同実施は苦痛です

 我が共同実施グループは5校(5人)の構成で、今年度グループ長が替わり、中心校に集まる回数が週1回から2回(火・木曜日)に増えた。その分、忙しさも増した。当日は仕事に使う事務用品や書類を入れた重い袋を持って、気が進まない共同実施のため中心校へと向かう。

 中心校といっても会場は会議室で、机・椅子を借りるだけで他には何もない。すべて必要と思う物は持参しなければならない。通知文や認印のほかに鉛筆・消しゴム・ボールペン・蛍光ペン・のり・付箋紙・2穴パンチ・朱肉・ホチキス・スタンプ台・ハサミ・修正液・修正テープ・セロテープ・定規・電卓・職名や氏名等のゴム印類・クリップ類。時にはノートパソコンも持参する。出かける前のこれらの準備と、帰校後の整理にも時間がかかり、毎回なので大変なのだ。グループ長は必要がないらしく、用意しようとする気配もない。

 業務に主担当と副担当が割り当てられたが、グループ長は業務を分担していないので暇そうにしている。事務長決裁文書があれば解散間際に書類を見ずして押印するだけ。グループ内教員向けの「共同実施グループだより」の原稿を提出すると、いつもあちこち朱書きしたものが返ってくる。「むかつく!添削など頼んでないよ!何様のつもりなんだ?やってられねえ」と時々思う。そんなに、人の原稿が気に入らないなら、自分で作ればよいではないか。勤務校では「学校だより」を校長が作成している。「共同実施グループだより」をグループ長が作成して悪いはずがない。威張ってばかりいないで、りっぱな事務だよりを作ってみせてほしいものだ。我々グループ員の質問には、不機嫌にならず明確な回答をしてほしいものだ。

 責任者にふさわしいリーダーシップがとれないグループ長の元での共同実施は苦痛以外の何物でもない。こんなグループ長が県内には意外と多いのかもしれないと自らをなぐさめている今日このごろである。

 
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