2008年6月7日

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全学労連ニュース今号の内容

 全学労連 5.12 中央行動 報告

 厚生労働省の「『新雇用戦略』について」について

 「日の丸・君が代」不当処分に改めて抗議する!

 シリーズ共同実施 旅費相互確認で見えてきたこと(4)

 

全学労連 5.12 中央行動 報告

 全学労連は、5月12日、文部科学省への’08年度要望書提出折衝を行なった。これと併せて、総務省、財務省、全国都道府県教委連合会、全国知事会との折衝ももった。各折衝を通じて見えてきたことは、まず「改正」教育基本法に位置付けられた教育振興基本計画を根拠に教育予算の増額を求めていこうとする文科省と財政再建をふりかざす財務省の「対立」の構図がより鮮明に浮上しつつあるということだ。又、総務省が主導する公務員制度再編の中で、学校現場を含む公務員労働者の困難な状況はより深まりつつあるということもいえるだろう。「臨任、非常勤の増加によって教育の『質』は落ちている」という指摘(教委連合会)、或いは地域格差が拡大し各都道府県は「バラバラな状況」だという発言(全国知事会)などに見られる認識に注目しつつ、私たちをとりまく全体的な状況と対峙していく必要があると思う。

 以下、各折衝の様子をかいつまんで報告する。

《総務省》

1.公務員制度改革の現状について

 国・地方同時改革という目標はあるものの、地方にまで手が回っていないというのが実情である。地方公務員法改革案は昨年5月に国会へ提出され、今国会でも審議が継続してはいるが、審議するべき総務委員会が地方交付税や道路特定財源の問題で手一杯で、残りひと月ばかりの会期中に成立はとても無理な状況だ。

2.国家公務員制度改革基本法案について

 公務員の労働基本権に関しては、協約締結権の有り方について議論されている。地方公務員についても国に合わせることになるだろう。

 「能力および実績に応じた」評価と処遇が具体的にどうなるのかわからない。

3.労基法および労働安全衛生法について

 公立学校の三六協定の締結状況や労働安全衛生管理体制の整備状況を統一的に把握はしていないが、学校に限定せず推進の為必要に応じて地方へ情報提供はしている。

4.官製ワーキングプアへの対策について

 公立学校の臨時的任用や非常勤職員の労働条件は、地方で決定するのが筋であり、総務省が実態をすべて把握するというのは難しいが、2005年4月1日現在で学校に限ったものではない調査をしているので資料を提供する。

※ 提供された資料は、全地方公共団体ののうち任期6ヶ月以上かつ勤務が週20時間以上の職員を調査したものだが、勤務実態や職種が多様で団体により捉え方も様々なので調査の数値の精度に限界があるという前提付のものであった。その上で調査された都道府県・政令指定都市・市町村等の臨時・非常勤職員合計は455,840人で、そのうち「教員・講師」の合計数は46,530人だった。

 同じ人間が臨時的任用職員として日を空けて毎年繰り返し任用されている実態については、地公法上は新たな任用をしていると解釈する。

 昨年は「脱法行為」とまで言っていたのにずいぶん後退した回答になっている。学校現場の現実を少し知って軌道修正したという事だろうか。

 非常勤職員の報酬は給与費ではないため、地方交付税上細かく積算しておらず、単価引き上げで処遇改善とはならない。

 厚生労働省の出した新雇用戦略(3年間で若者100万人の正規雇用化等)が公務員の雇用形態に影響してくるかどうかはわからない。

5.その他

 文部科学省が策定しようとしている教育振興基本計画について、政府内での議論は進んでいない。具体的な数値を盛り込むかどうかで文教族議員との間で対立があるようだ。

《財務省》

 まず、文科省が教育振興基本計画にOECD並みGDP5%の公教育費を数値目標として盛り込む、とのマスコミ報道について質問したが、政府部内ではまだ正式な折衝は行われていないとのこと。従来から日本の公教育費は十分な水準にあると主張している財務省、ここでも「日本の教職員定数は少ないとは思っていない。OECDといっても色々な国がある。G5と較べるのか、それともハンガリーとかまで含めて比較するのか。教育費の負担は地方が8割だ、国だけで数値目標を作っていいのかと思う。地方の負担も考えなくてはいけない。財務省としても考え方を示していきたい。」と語った。

 全学労連からは、全国的に学校事務職員の標準定数法上の定数を割りこむ欠員が常態化している一方、教員についてはほとんどの都道府県で標準定数法を上回っている実態を指摘し、総額裁量制や地方の財政逼迫が事務職員定数に皺寄せされているにもかかわらず、文科省がこれを放置している実情を説明した。また、完結した第7次定数改善計画の加配定数は7割程度しか使われていないばかりか、都道府県格差が著しく、加配方式の定数配置は国庫負担の性格からしても非常に問題があること、にもかかわらず実現しなかったものの08予算概算要求で共同実施加配を盛り込んだ文科省のちぐはぐな姿勢を批判した。

 これに対しては、一定問題点を理解しつつ、財務省としては30人学級でも文科省からそういう案が出てくるなら検討する、ただ、財務省の側から文科省にどのような定数配置が望ましいか言うわけにはいかない、とした。

 予算化された主幹教諭について、現場実態から問題点を指摘すると、各県からの配置希望にばらつきがある中、今年手を上げなくても来年は希望する県もあるだろう、その時定数がないと困るのではないかと文科省に言ったが、「加配定数だから引き剥がすことができる」と答えたとのこと、ひどい話だ。

 最後に、財務省が主張している「学校の適正規模化」は財政削減効果の観点に偏している、市町村合併や地方の財政難から学校の統廃合が進んでいるが、財務省の調査でも通学距離が遠いのにスクールバスが配置されていない所もある、地方切捨てにならないよう十分配慮すべきだ、と申し入れた。これについては「どのような規模が教育的に望ましいのかという観点で言っているので、決して財政削減効果だけを焦点にしているのではない」と苦しい言い訳をしていた。

《全国都道府県教育委員会連合会》

全学労連:ここ数年の大量退職を迎え、本採用を抑えている自治体が多く見受けられ、臨任・非常勤職員が増加している。地方では、全職員の2割から3割近くが臨時的任用者で、担任も持たざるを得ない状況だ。

連合会:臨任者というのはいわゆる採用試験に受かっていないものに担任をもたせているというのか。教育力の低下が危惧されている中、さらに不安を増すようなことだ。

全学労連:育児休業等の代員ではなく、欠員補充が圧倒的に多い。これというのも、文科省の定数改善がクラス数や生徒数などによる客観的な基準から配置されるものでなく、研究加配等によるあいまいな基準により措置されているものだから、各県は本採用を控えていることもある。

連合会:4/1から欠員なんていうことがあり得るのか?

全学労連:人事権移譲は動きがあるか?

連合会:今日(5/12)これから、文科省の「人事権の在り方に関する協議会」が開かれる。そこでの議論を聞いてからの判断だ。

《全国知事会》

○人事権を市町村に移譲させることについては研究中○

知事会:推進を求める声が一方、「優秀な人材が偏在する」などと消極的な意見もある。そうしたバラバラな状況であるので、それを調整することが先で、そのために課題を解決する勉強会を重ねているのが現状である。いわば“研究中”ということ。知事会のスタンスは段階論の立場だ。先ず政令指定都市に給与費への移譲を求め、その後に中核市などへ、という要望をしている。

全学労連:制度を変更することの前に、今の制度を充実させなければ意味がない。東京都の大幅定数割れや、臨時的任用職員・非常勤職員配置の増加が学校現場を苦しめている。その解消が先決だ。また、その非常勤職員は収入が極端に低く、格差も問題になっている。

知事会:知事会は各県の声を集約する団体で、今は“研究する”がスタンス。要望の趣旨は理解できる。趣旨は会長に伝えるが、現場のことは各県にも言ってくれ。

《文科省折衝》

 要望書(全学労連 No.306参照)を提出し、関連折衝をもった。要望書の中心的な内容について、(1)「学校事務、業務の共同実施」を中止し、加配方式ではない抜本的な定数改善を行うこと、(2)臨時労働者のこれ以上の導入をやめ、同時に現在導入されている臨時労働者の労働条件を改善すること、(3)教育基本法「改正」を見直し、教職員の階層化政策をやめること、(4)「愛国心」を押しつける新学習指導要領に基づく教育をやめること、又、学力テストと特別支援教育の同時推進が示している差別的―競争主義的な教育をやめること、(5)休憩時間を確保し休憩室を整備するなど教職員の労働環境を改善すること、等説明を加えた。

 文科省の対応は終始あいまいなものであった。

 国内総生産(GDP)に占める教育支出の割合を3.5%→5%に引き上げるという主張を一方で掲げながら、私たちの主張する抜本的な定数改善は「行革推進法があり、むずかしい」、臨時職員の問題については「地方分権の観点から指導はできない」といった具合だ。国家戦略としての教育投資という発想(結局は文科省官僚の利害!)が根っ子にあるという意味では財務省と同一の基盤に立っていると言わざるを得ない。私たちは財務省―文科省の対立の構図そのものを批判しこれと対峙していく必要があるだろう。7月の交渉に向け全学労連としての要求の中身を明確にしていかなければならない。

終わりに

 ’08年度文科省予算に登場した「学校支援地域本部」に象徴されるボランティア動員型の教育―社会(御厨文科省生涯学習政策局地域政策室長「学校支援ボランティアを、地域ぐるみ、社会総がかりの広く国民的な運動に」『学校事務』’08/6)が作り出されようとしている。学校事務労働者も又、この状況に組み込まれていこうとしている(全事研の言う「学校地域事務室」論!)。教育、医療、福祉といった領域において市場原理主義による「民営化」が推進されることによって、例えば退職したけれども年金では食べていけない人々をこれらの部門に自発的に動員していく構造(例えば「社会総がかりの教育」!)が生み出されていくことと、私たち自身の学校における労働環境の劣化とは密接に結びつけている。

 今回の折衝の中で総務省の社会保障財政も担当しているという課長補佐が「個人的見解」と断りつつも「働いていきちんと生活できる社会をつくることが何よりの社会保障ではないか」と述べていたが私たちも又そう考える。新自由主義的な政策がもたらしつつある状況に反対の声をあげ始めた人々と連なりながら働き生きる現場からの闘いを組織していこう。

 

厚生労働省の「『新雇用戦略』について」について

 今年4月23日の経済財政諮問会議に出席した舛添厚生労働大臣は、「新雇用戦略」なるものを発表した。それによると、「働く意欲を持つすべての人の就業を実現するため、団塊ジュニア世代が30代後半を迎え、団塊の世代が60歳代となる今後3年間を『集中重点期間』として… 中略 …『全員参加の社会』の実現を目指す」という。そして @ 若者について100万人の正規雇用化 A 25〜44歳女性20万人の就業増 B 60〜64歳の高齢者100万人の就業増 と3年間で合計220万人の正規雇用化や就業増を掲げている。このほか障害者等について「『福祉から雇用へ』推進5カ年計画」による就労支援や正社員以外の待遇改善などを打ち出している。    とりあえず雇用が安定して就業者が増えることは良い事なのかもしれない。しかし構造改革で、労働法制の規制緩和をやりたい放題やり、福祉政策を切り下げ、社会的弱者の働く場を奪って、非正規労働者やワーキングプアを増やし、格差社会を作ってきた結果への責任に一言も言及せずに「新雇用戦略」などと言われても信用できるだろうか。鞭で散々打ちのめした揚句に飴玉をやるよと言われているようなものだ。団塊の世代が大量退職をするのは何年も前から判りきっていた事なのに、無策のままここに至って急にというのも胡散臭い。3年間で220万人というのも唐突な感じだし、何年までに就業率何%とかいう数字は揚げているが、その具体化に向けて雇用者に義務を課すとか法整備をするという策は無い。    この程度の「戦略」で「働く意欲を有するすべての人たちの就業の実現」など出来る訳がないと思いつつ、「『全員参加の社会』の実現」とは、単に「挙国一致」「国家総動員体制」という願望が言い換えられただけではないかと意地悪く思えてくる。何はともあれ、年金問題や「後期高齢者医療制度」で批判に晒され、福田内閣の支持率低下に大いに貢献している厚生労働省が人気回復のために出した打ち上げ花火以上のものではなく、あっという間に消え去らないことを願う。  (佐野 均)  

 根津さんは解雇されなかったものの、不当処分の乱発は止まない。私たちは5月8日、都教委に対して以下のような抗議文を提出した。都教委は不当処分を撤回せよ!

「日の丸・君が代」不当処分に改めて抗議する!

 貴職は、本年3月31日この春の卒業式に日の丸斉唱時に起立しなかった教職員18名に対し停職6ヶ月をはじめとする不当処分を出した。うち2名は非常勤講師、再雇用の任用取り消しというあからさまな違法処分も含んでいる。

 一昨年には東京地裁で「10.23都教委通達」そのものが、“違憲”'であるとの判決が出され、今年2月には不起立の職員の再雇用を拒むのは、裁量を逸脱乱用したもので“違法”であるとした判決も出された。さらに貴職の強権的なやり方を“憲法違反”とする判決も複数出されている。最高裁で都教委敗訴が確定した2件は、いずれも組合活動に対する都教委の違法な弾圧が認定されたもので、貴職の方針、強権的なやり方が間違っているということが確定したものだ。にもかかわらず、貴職は、10・23通達以来学校教育の場へ「国旗・国歌」実施を強要し、これに従わない者に対して戒告,減給,停職、嘱託不採用、等の不当処分を繰り返してきた。被処分者の数は実に400人以上にのぼっている。そして、不起立を繰り返すほど重処分を科し、戒告,減給、続けると停職、6ヶ月の停職処分まで行きついていた。免職処分は論外というしかないが、6ヶ月停職という重い処分を重ねることにより、1年のうち半年は停職という異常な状況を生み出している。この東京の異常事態の責任は都教委の硬直した方針にある。我々は改めてこの不当処分に抗議すると共に、400名に達したこれまでの処分をただちに撤回することを要求する。

 一方、神奈川県では不起立者の氏名を収集しようとする県教委に対し、県個人情報保護審査会に続き審議会でも、思想信条に触れるとし、収集は憲法の思想良心の自由を侵すものとの判断が出された。

 貴職は、今年『卒業式、入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の実施状況調査』を区市町村に要請した。我々は、地教委・学校現場に対し、通達にさらに圧力をかけることになるこの調査を強く非難するものである。ただちに調査結果を破棄し、今後は調査を行わないことを要求する。

JIM−UNION No.116より

 

シリーズ共同実施

旅費相互確認で見えてきたこと(4)

 いろいろと細かい点では疑問が残る旅費請求書の相互確認ではあるが、08年度も同じ学校グループで確認は始まっている。翌月20日までに旅費請求書を教育事務所に届けなければならないため、4月当初に異動した事務職員などは3月分請求書を3月終わりには大方仕上げておかなければならなかったであろう。従前、我が管内の教育事務所は、3月中に3月分旅費請求書を検収していたので、管内異動ならば異動先で旅費請求のことはしばらく考えなくても良かった。今年からは、いきなり相互確認をしなければならないのだ。

 私の所属する確認グループには今年、新採用者がきた。県教委が市町村教委に相互確認の実施依頼文のあるように「経験の浅い事務職員や臨時的任用職員の旅費業務の相互補完、学校間の情報交換等のOJT効果を期待する・・・」が現実的なものになった。そこは今までだって、校長が「近くの事務職員に手続きを聞いてきなさい」とか「悪いけど手伝いに来て」などと、こんな制度がなくても事務職員がお互いに助け合ってきているのだ。なにも制度でたがをはめなくてもいいのに・・・。しかし新人はこの制度でいやおうなく、相互確認を行わなくてはならなくなったのだ。

 この新採用者の所属学校は3月までは定年退職するベテランの事務職員Aさんがいた。我が確認グループの相互確認の会場はほとんどAさんの学校で行っていた。Aさんは再任用で4月以降も事務職員として働くことは決まっているが、どこへ赴任するかはわからないと言う。確認グループ内の他の事務職員からも「退職後に誰が異動してくるかわからないけど、4月着任者がすぐに旅費確認は難しそうだね。3月中に事前の確認を済ませておこうよ」ということになり、3月中にそれぞれ確認校へ請求書を送った。4月に入り、確認作業の日程と場所を決めようとすると、Aさんも相互確認に参加するという。「3月までの仕事は私の仕事だ。最後まで責任持ってやるよ。」・・・・う〜ん。気持ちはわからなくもないが、たまたま再任用で同じ市内の学校に赴任したからといって、そこまでしなくてもいいのでは・・・事前の確認が済んでいるのだし・・・まるっきり前任者が退職していたらそうはできないことだし・・・と周りが言っても「まあ今月は新人には無理だろうから私が相互確認に前任校へいくよ」とのこと。まあいいか、確認が出来ればいいのだから。まあこんなこともいちいち調整しなければならないし、他者の仕事の進め方が気になったり、集まって仕事をするって負担だなぁ。こんな流れで相互確認当日をむかえた。(続く)

 
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