2010年3月20日

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全学労連ニュース今号の内容

 突然出てきた東京の「標準的職務」表/地教委段階における攻防へ

 改悪教育基本法路線と対決し「日の丸・君が代」の強制を許さない/2・6総決起集会、開かれる!

 もう黙っていられない!/3/5共同実施の市内全域化に反対する集会(横浜)

 

突然出てきた東京の「標準的職務」表
地教委段階における攻防へ

学校事務ユニオン東京 宮崎俊郎

 

 1月29日、都教委は「学校事務職員の標準的職務について」を地教委指導室課長会において地教委に対して通知した。1月15日、私たち組合に提示してから2週間という短期間で私たちのあらゆる要請を全く無視し、標準的職務表(別表)の一切の変更もなく通知を強行した。

 

 そもそもこの問題は、「学校現場の多忙化」解消という大義名分の下に、副校長や教員の業務を事務職員に肩代わりさせようという「教育管理職等の任用・育成のあり方検討委員会」の報告に端を発している。しかし、学校現場を多忙化させている元凶は、現在進められている個性化・多様化を求める新自由主義的な「教育改革」にある。複雑な授業時数管理、選択授業の拡大、入試制度の多様化・複雑化、地域に開かれた学校作り、等々の教育政策は実は徹底した能力主義と「日の丸」「君が代」強制に見られる国家主義がその背景にある。ところが、それが容易に貫徹できないために、「ゆとり教育」から「基礎学力の重視」まで現実の教育政策は揺れ動き、その度に制度変更のための膨大な現場実務が、そして様々な調査報告が現場を混乱させてきた。そうした愚策を改めることなく、「多忙化解消」を唱えることは教職員間の仕事の押し付け合いにしかならないことを肝に銘じるべきである。学校全体の仕事量を減らしていく努力こそが「学校現場の多忙化」解消のための根本的解決策なのだ。

 学校事務職員の職務のあり方については1957年の本島通達以降、様々な場面で議論されてきた。しかし、各地区における事務職員の配置状況・経験年数、仕事上の権限付与、学校規模などに大きな違いが存在し、統一的な職務標準を作ることなど絵に描いた餅でしかなかった。私たちは各学校現場で試行錯誤を繰返し、管理職や教員とも論争しながら長い年月をかけておのおのの職務範囲を作り上げてきた。だから地区や学校によってばらつきが出てきて当然なのである。今回都教委が通知した「標準的職務策定」はそうした長年にわたる私たちの努力を一瞬にして水泡に帰すことを意味する。様々な地区や学校現場の「差異」を捨象し、「学校経営への参画」という「美名」の下に「小間遣い」の役割を甘受する「事務職員像」の確立こそが「標準的職務策定」の真の目的なのだ。

 さらにこうした動向は決して東京都だけのものではない。横浜市でもほとんど同内容の職務標準表が強行導入されようとしているし、全国的な動きと見なければならない。東京都ではその片鱗すら見られないが、全国的に広がりつつある「学校事務の共同実施」はまさに学校現場の「差異」に目を瞑り、学校現場から事務職員を引き剥がす合理化をもたらそうとしているが、学校現場の「差異」の「捨象」という点では根本的な思想において「職務標準」と通底するものがあるのである。

 もう一つの今回の標準的職務策定の問題性は、それがこれまでの平均的職務範囲(=業務量)を大幅に拡大するものとなっていることである。つまりこの点で私たちは今回の問題を労働問題として捉え、労働条件の変更として交渉せよと都教委に迫ったのだ。ところが、都教委は交渉の中で決して今回の標準的職務策定が「職務範囲の拡大」であることを認めなかった。これは都教委の最大の欺瞞である。もし拡大でないとすれば、標準的職務表からのセレクトが可能であることは論証の余地のないところであるが、この点について最後まで「NO」と言い続けた。しかし、「職務範囲の拡大」ではないということは当然標準的職務表に掲載されている「具体的な職務例」は読んで字のごとく「例」であり、「例示」は「必須用件」ではないと解釈されて当たり前ではないか。

 

都教委が提示しようとする[標準的職務表]

 

 ここ20年は東京都の小中学校事務職員にとって労働条件切り下げの歴史だった。要準加配欠員は約500名にものぼり、市区町村費事務職員の引き上げも止まるところを知らない。再任用事務職員も2000名の県費事務職員のうち220名となり、短時間再任用事務職員の1人校化も急速に進行している。東京都の事務職員配置率は全国最低だ。

 こうした事態を都教委は放置した挙句の果てに職務範囲の拡大=業務量の拡大を提示した。人的条件の切り下げに伴うのは職務範囲の縮小であって拡大はありえない。都教委が真っ先に手をつけなければならないのは大量欠員の解消であり、短時間再任用事務職員の1人校化の解消であり、それなくして職務範囲の見直しはありえない。もし現状において都教委の示した標準的職務表が学校現場にそのまま適用されれば、未曾有の混乱が招来するであろうことは間違いない。私たちはこれ以上の労働強化を断固拒否する。過労死しないためにも闘いを開始しよう!

 私たちは今回の課題を近年では最大の課題として都教委とのやりとりを行ってきた。今回の課題に対しては個別組合の取り組みの集積では突破することが困難だという認識があり、組合間の共同行動を極力追求した。そして1月26日には共同要請行動を成功させた。ところが都教委段階ではそのまま通知を強行されてしまった。今後も更なるより力強い共同行動を積み上げていく必要があるだろう。

 現在私たちは対地教委との闘いに突入している。実質的な標準的職務表策定者は地教委である。当面の私たちの取り組みの中心は、3月末までに標準的職務表を策定し、学校長に下ろさせないようにすることだ。すでにいくつかの地教委は残念ながら学校長に対して都教委の示した標準的職務表に鑑をつけて下ろしてしまった。しかしその他多数の地区では今後検討するとして年度内の学校長への通知を断念した。学校への実体化は現実のものとはならず、都教委の野望は貫徹していない。私たちは今後息の長い闘いに入ろうとしている。全国的にこうした動向が拡大しないためにも東京において標準的職務表を実体化させない取り組みを継続していきたい。

 

改悪教育基本法路線と対決し「日の丸・君が代」の強制を許さない

2・6総決起集会、開かれる!

 2月6日中野ゼロ小ホールにて上記の集会が開かれ、200名が参加した。49団体、63個人が賛同している。私たちが加入している全国学校事務労働組合連絡会議も賛同団体に名を連ねている。主催者である都教委包囲・首都圏ネットからの挨拶のあと、東京の小・高・特別支援学校の現場からの発言があった。八王子の小学校では「サービス残業が横行し、土曜授業月2回、年20日を当番制で割り振られ、振替は夏休みにまとめ取りとされている。昨年10月、27歳の新採が過労死する事態となった」と報告があった。特別支援学校からは「養護学校から特別支援学校と名称変更されたことで入りやすくなって生徒が増加。軽度の子どもが来るようになった。朝打ちはパソコンでやっている。多忙で夜中の2時までいた者が出た。主任教諭の導入で階層化された」と報告された。高校からは「主幹のなり手がいない。1.0倍の倍率だし、管理職のなり手もない」と報告された。

 講演はジャーナリストの斉藤貴男さんが「民主党政権の教育政策と石原・都教委の教育行政を批判する」と題して、自民党とあまり変わらない民主党の教育政策(教育基本法への愛国心注入、地教委の廃止、教育免許6年制の導入、教育の民営化など)を痛烈に批判した。石原都政へは、豊洲市場・新銀行東京、オリンピックなどの政策を批判。公共事業は10兆円、都政を私物化し、10・23通達で教育を支配しようとしていると断罪した。

 次に05年不起立で裁判闘争を闘い、3月24日に東京地裁の判決を控えているAさん、嘱託員採用拒否で裁判に打って出たBさんは、07〜09年の人事委審理の人たちが裁判に入ると報告した。板橋高校の卒業式でビラまきをして不当にも起訴された藤田さんからも報告があった。更に不起立を続ける河原井さん、根津さん近藤(順)さんからは分限免職の危機と強制異動、間もなく退職するがその後の学校が気がかりとアピールがあった。

 和田中の夜スペなどでたらめのオンパレードを行った民間校長に対して住民訴訟が出されている報告、千葉、大阪(門真三中君が代処分を正す会)、福岡から報告があった。最後に「民主党による新たな教員免許法案に反対する2・6集会アピール」を採択して終了した。

 政権が交代しても、こと教育に関しては流れが変わらない。何とかならないものか。根津さんたちの3月末分限免職はさせてはならない。私たちは今年も都教委に申し入れを行うつもりだ!

<学校事務ユニオン東京 JIM-UNION156号より>

   

もう黙っていられない!

―3/5共同実施の市内全域化に反対する集会(横浜)―

いまだに一般事務職員はカヤの外

 3月5日、横浜で「共同実施の市内全域化に反対する集会」が開催された。組合の枠を超えた実行委員会が呼びかけた集会に、年度末の繁忙期にかかわらず多くの事務職員が駆け付けた。

 既報の通り横浜市教育委員会は今年度「学校事務共同実施プロジェクト」を設置し、すでに十数回の会合を重ね、この4月からの共同実施の全市化をあちこちでほのめかしている。にもかかわらず、職員団体に対して交渉はおろか一切何の説明もしていない。(横浜市教組事務職員部役員は最近になって「4月実施はなくなった」と言っているそうだ。彼らには情報がリークされているのだろう)一方で、4月から開設される4つの方面別教育事務所と兼務になる事務職員(加配の16名が当てられる模様)については既に人選が行われ、配置校も決定されている。大多数の事務職員には何も知らされないまま着々と既成事実が積み重ねられている。

 集会冒頭、実行委員会から「多くの事務職員が何も知らされず、不安な思いに駆られている。様々な情報を持ち寄って共同実施全市化の実態をつかみ、これに反対する声をあげていこう」と挨拶があった。続いてこれまでに明らかにされている限りでの共同実施全市化の内容について報告があった。昨年度末突如導入された「職務標準」、とりわけ準公金事務を事務職員に押し付けることを狙いとし、事務職員に事務職員を管理させる手法としてブロック制・教育事務所兼務の事務職員を活用する、事務長志向の教組事務職員部・研究会と事務職員の労働強化・管理強化を図る市教委との思惑がからみつつ秘密裏に計画が進行している実態が明らかにされた。

怒りと不安の声相次ぐ

 続いての意見交換では、経験数年の若い事務職員が相次いで発言した。

 市教委・教組事務職員部・研究会の談合による共同実施推進に断固反対していくためのネットワークをつくることを確認し、集会決議を採択して会を終えた。

(がくろう神奈川 池上)


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