2010年10月9日

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全学労連ニュース今号の内容

 文部科学省の新定数計画について ―共同実施と加配方式は終わった?―

 人事院勧告を斜めから批判する 「職務給」よりもセーフティネットを!

 7.16 全学労連 文部科学省交渉つづき

 議長 菅原 かみブログ 100903

 

文部科学省の新定数計画について

―共同実施と加配方式は終わった?―

全学労連事務局学校行革対策部 佐野 均

 来年度予算概算要求に先立つ8月27日に、文部科学省は「新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画(案)」(以下新定数計画と略記)を公表した。当然のことながら概算要求はこれを反映したものになっている。

☆新定数計画の概要

 その中身は3つの柱で成り立っている。第1の柱は、来年度から8ヵ年計画の「少人数学級の推進等」というもので、小学校1・2年生を30人学級に、小学校3年生以上と中学校全学年を35人学級にするという。そのための教員の改善総数は46,500人(来年度分7,800人)とされている。更にその実施に伴う教職員配置の充実で、副校長・教頭1,340人(来年度分220人)、生徒指導(進路指導)担当教員990人(来年度分60人)、事務職員1,570人(来年度分220人)の改善が、また更に複式学級の編成標準の引き下げ(中学校は解消、小学校は14人、小1を含む場合6人)で1,400人(来年度は計画無し)の改善と、総数で51,800人(来年度分8,300人)の改善計画とされている。

 第2の柱は4年後の2014年度から5ヵ年計画での「教職員配置の改善」であるが、その「改善増に必要となる恒久的な財源確保について理解を売ることが必要」という前置きが付いている。改善の内容は、教育水準向上のための基礎定数の充実で24,800人、生徒指導(進路指導)担当教員の配置改善で2,100人、養護教諭(1,600人)、栄養教諭(900人)等々の配置改善で、総数で40,000人となっている。

 第3の柱は「柔軟な学級編成実施のための制度改正」である。これには地域の実情に応じて柔軟な学級編成が出来るよう、小中学校の設置者である市町村の学級編成の権限を見直す事と、画一的な取り扱いで学級規模が小さくなりすぎないよう、弾力的に学級編成が出来る仕組みの導入の2点が挙げられている。

☆新定数計画への5つのコメント

 民主党政権に変わって約1年、いつぞや文科省の鈴木副大臣が、自民党時代の延長となる第八次定数計画はやらないと記者会見で言っていたが、自民党政権末期よりもめまぐるしく3人目の代表=首相が誕生するか否かの騒動を尻目に、文科省が「新」と銘打った計画を出してきたことは注目に値すると言ってよいだろう。計画の実現に向けては、行革推進法をどうクリアするかとか、その過程で政権内部や財務省・総務省などの関係省庁との厳しい攻防を経なければならないので、今後の展開にさらに注目しなければならないのは勿論であるが、現時点では当面以下に5点程指摘しておく。

@ 積極的な定数計画

 新定数計画の全体像であるが、第七次定数計画は少子化による定数の自然減分を同数の加配定数で穴埋めする計画だった。新定数計画は第1の柱で51,800人、第2の柱で更に40,000人、合計91,800人を改善するという。それに対して、来年度以降8年間の定数の自然減は32,400人と見込まれている。更に第1と2の柱の「少人数学級の推進」それに伴う「教職員配置の充実」と「教職員配置の改善」に見られる「加配」の表現の無い理由付けを考慮すると、かなり積極的な改善計画であると言える。

 全学労連は、第七次計画を「改善」とは呼ばず、自然減の穴埋めという名目(実はそれすらも守られていない)や、文科省のお手盛り権限を強め臨時的任用の不安定雇用職員を増大させる加配方式を繰り返し批判してきた。そのことからすると新定数計画は、数的な多寡はさておき、基本的に我々の主張に近付いたものになっている。

A 民主党政権後(?)を見据えた定数計画

 第2の柱の「教職員配置の改善」は、先に述べたように「恒久的な財源確保についての理解が必要」とされている条件付のものだ。わざわざこんな条件を付ける理由は何かとか、2014年度からの5ヵ年計画などと、何故そんな先まで見越しているのかという疑問がわいてくる。おそらくその前に衆議院任期切れの選挙が必ず有る訳で、衆議院解散による選挙が無い限り、政権が民主党にあるうちにその後の道筋も決めてしまおうという意図があるのだろう。

 この中では養護教諭・栄養教諭等教授活動に従事する職員に限定されており、事務職員他それ以外の職種は第1の柱にのみ登場する。以前民主党内の議論で教授活動以外に従事する職員の増員を検討しているという話は聞いたが、その結果こういう形で優先順位が付けられたのかも知れない。

B 権限委譲には注意が必要

 第3の柱は、いわゆる市町村への権限委譲の話であるが、人事や任用権の全面的な委譲から給与負担の委譲さらには国庫負担の廃止など、地方自治体に無理な「権限委譲」の突破口にならないよう慎重に進める必要がある。それを進めようという議論は無くなった訳ではないのだから…。

C 高校の定数計画との違いはどこから来るのか

 文科省は今回の新定数計画と同時に公立高校の定数計画も公表している。それについても一言触れねばならない。来年度からの5ヵ年計画で「習熟度別少人数指導の充実」で740人(来年度分148人)他で総数2,600人(来年度分520人)の改善である。5年間の改善数は少子化による自然減2,600人と同じである。また改善の内容は事務職員について全くふれていない。高校にも小中学校と同じく定数標準法は在る。この違いは何処から来るのか?そして我々はこのことから何を読み取らねばならないか?

 小中学校との比較で、民主党政権が高校教育を軽視しているというのでは的外れだ。今高校現場の事務部門は、「総務事務センター化」とか「全庁的な一括事務処理システム」や外部委託の波に飲み込まれ、解体しつつある。断じて当該の学校事務職員が怠惰であった訳ではない。言うまでもないが、高校と小中学校の制度的な違いは国庫負担制度の有無と設置者・任命権者の不一致だ。この相違が防波堤となって、両者に対する対応の違いを生み出しているというべきだろう。別な言い方をすれば、小中学校の事務職員制度は、職員の勤勉に拠るのではなく、制度的に有利な条件に守られて、それを空洞化させようとする動きに対抗する不断の努力に拠って今日に至っているというべきだろう。(勤勉は駄目と言っている訳ではないので、悪しからず…)

D “共同実施”“加配”から複数配置・基礎定数化への転換

 最後に話は第1の柱に戻るが、学校事務職員の改善について指摘しておく。先述したように、新定数計画では事務職員1,570人(来年度分220人)の改善とされている。ただし複数配置基準引き下げではなく、学級数の増加に伴い増える定数分の計上だけのようではあるが…。注目すべきは、その内容が、「事務職員の複数配置による学校事務処理体制の充実」とされているところだ。従来のような「教員の事務負担の軽減」という意味不明な(だが殆どが共同実施のための加配として使われた)名目ではない。少人数学級実施に伴う教職員配置の充実という文脈での「複数配置」という内容はわかり易い。

 全学労連による文科省担当への聞き取りでは、

 新定数計画は加配ではなく少人数学級のための改善であり、当然事務職員についても従来の理由付けとは別物だ。ただし今まで加配された定数分は残るので、現時点では加配方式や共同実施をやめたという事ではない。今後の事は判らない。

 とのことだった。いったん始めた政策を素直に官僚が引っ込める事は無いので、こういう言い方になるのだろうが、今までの“推進”から“今後は判らない”と変わったのは、少なくとも文科省の中で転換が始まったという事だろう。今後従来の加配分は基礎定数へ切り替えが進められるだろう。事務は複数配置のために使われることになる。

 

 さて、今まで文科省の尻馬に乗って「共同実施の推進」とか「学校事務の新たな領域」とか言って盛り上がってきた人達、どーする?

(9月12日記)

   

人事院勧告を斜めから批判する

「職務給」よりもセーフティネットを!

 人事院は8月10日、公民格差を△0.19%(△757円)とし、50歳代後半層の月例給を重点的に引き下げる勧告を行った。

 給与構造改革以降、毎月の給料は事実上昇給ストップ状態で、現給保障のはずがマイナス格差とともに減額され、各地の給与抑制が追い討ちをかける…。世の経済の動きも芳しくないことから、人勧にほとんど期待するものはないのだけれど、今回は「56歳以上6級以上」という限定付ではあるが、初めて「定率削減(△1.5%)」という手法が使われた。ちなみに40歳以上は俸給表改定で平均△0.1%。

○ 定率減額は給与決定原則違反だ

 この定率減額方式、各県の給与抑制では当たり前のように使われているが、意外なことに、これまで「人勧」という枠組みの中では使われてこなかった。というのは、公務員の給料は給料表(国は俸給表と呼んでいる)によって実現するという大原則があって、基本給を上げるにせよ下げるにせよこの給料表を触らなければならなかった。これに倣うのなら俸給表の管理職層の中高位号俸のところで減額をすべきところだ。

 それをしないのは若年管理職(キャリア官僚)の俸給には手をつけない(キャリアは50歳代後半には天下っている)、ノンキャリアの定年間近(6・7級で定年というパターンが多い)を狙い打ち、ということなのだろう。もっとも、6級昇格が稀である学校事務職員はそのノンキャリア以下の存在のため、△1.5%にはならない。しかし、そうした状態をただでは放っておくはずはない。より劣悪な改悪を押し付けてくるはずだ。

○ 連帯責任を強いられる不利益遡及

 4月以降の官民均衡のために、例によって不利益遡及が今回も行われる。△0.19%の公民格差を40歳以上で負担すると一月あたり一律△0.28%になるそうだ。

 一部の「持てる人」の分が40歳代以上のところに「等しく」平準化される格好だが、56歳以上の管理職でない△0.1%の側から見るとトバッチリ以外の何ものでもない。昨年は住居手当がらみで不合理があったが、今年は「持たざるもの」が割を食うことになった。

○ ヒラに厳しい現給保障改定

 人事院は[前年の調整率をベースに最大号俸改定率を加味する]として、06年ベースの現給補償額から0.41%を減額する。最大号俸改定率は△0.17だが、これは7級以上の管理職層の改定率だ(ヒラ職員の場合は4級で0.06%)。

 俸給表は級によって改定額も改定率も異なっており、その意味では職務給原則は貫徹されている。しかし、現給保障に限っていえば、職務給原則は貫徹されず管理職の級の削減率をヒラ職員にあっても強いられることになる。

 考えてみれば、国家公務員のノンキャリアでもほとんどは退職時には管理職になっている。そういう環境の中にあっては全員が一律の削減率であってもそれほど問題は起きないのかもしれない。しかし、3級止まり、4級止まりが当たり前になりつつある地方にあっては、どうして管理職層の削減率までもヒラ職員が追わなければならないのか。

○ 民間では退職時給料の75%補償

 公的年金の支給開始年齢引き上げに伴う定年延長に関連して、民間では退職時給料の75%(上限約34万円)が雇用保険(高年齢雇用継続基本給付金)で補償されていることを引き合いに、60歳台の給料を30数万円に減額することを示唆している。また、50歳代後半についてもそれとの関連で大幅引き下げの意向であることを示した。

 高齢者の給与引き下げは、退職手当にも連動する話で「とんでもない!」ことではあるが、現在のフルタイム再任用の給与実態を見ると新たな怒りがこみ上げる。短時間再任用の場合年金も支給され、合算して月額30万程度にはなるが、フルタイム再任用の場合、年金は支給停止となり、月額20万円程度になってしまう。退職時給料を40万円としても半減だ。しかし、民間なら30万円は補償されている。法の谷間で置いてきぼりになってしまった格好だが、このような不作為は許されない。…寝た子がまた起きてしまった!…

 

 今回の人勧は、国家公務員が退職時には管理職の級に昇格していることを前提としていることを浮き彫りにさせた。そのような退職時には管理職になっている立場にあれば、大幅な給与減額であり、とても許されない!ということなのだろうが、せいぜいが6級、多くは4級、将来的には3級止まりかもしれない我々学校事務職員とはよって立つ基盤が違う。職務給云々よりも最低限度のセーフティネット拡充に向けた闘いが求められる。

 

7.16 全学労連 文部科学省交渉つづき

 本紙前号(No.331)で7月16日文科省交渉当日の様子は報告したが、重点項目以外のいくつかの項目について、交渉後、電話でのやり取りを行ったので、以下報告したい。(冒頭に要望の文面及び質問を揚げる)

(1)要望3. 教育基本法「改正」を見直し、従前の教育基本法に戻すこと。教育関連三法を見直し、教員免許更新制度を早急に廃止するとともに、教職員の階層化政策をやめること。また、「全国学力・学習状況調査」を直ちに中止すること。

Q. 教員免許更新制の廃止と併せて上級免許の新設等の検討が開始された(2010年6月3日、中教審に文科相が諮問)。教職員のより一層の階層化をもたらす等様々な問題をはらむ施策の検討を中止し、すみやかな免許更新制の廃止こそ実行すべきではないか。今後の検討についてその内容とスケジュールを示してほしい。

 また、全国学力テストについては、今年から抽出式に転換されたが、抽出以外でも6割が希望し結局7割の学校が参加したという。中途半端な抽出というやり方は「学力競争」をいたずらに煽る結果を招いていると考えるがどうか。

《文科省回答》

 1947年以来、教育を巡る状況は大きく変化してきた。そのことを踏まえて6年にわたる検討を経て、2006年12月に教基法を改正した。元の教基法に戻すことはできない。教員免許更新制を含む教員養成制度の在り方をどうするかということについては「本年中に一定の方向を示してほしい」という文科相の意向を受けて進めている。学力テストについて、抽出の対象にならなかった学校のうち、参加を希望したのは61.97%だった。2011年度の抽出による実施以降の調査の在り方については目下、専門家会議を設置して検討している。

《コメント》

・ 教基法「改正」を巡っては、いかにも紋切り型の回答だった。「改正」教基法を巡っては、民主党がマニフェストで掲げてきた「日本国教基法」構想の問題点も視野に入れた具体的批判が必要であろう。全学労組の仲間との「学校を巡る状況(の変化)」をどう捉えるか等、共同の論議、実働化阻止の闘いが求められていると思う。

・ 民主党は教免法の廃止というよりは、その発展的形態として上級免許制度を含む新たな教員養成=管理体制を構想している。「本年中」にその全容が打ち出されていくのだとすると、早急に批判−反対の運動を全学労組等との連携の中で作り出していかねばなるまい。

・ 学力テストについては「実質7割強の学校が参加した」ということも踏まえて、今後どうしていくかを検討するとしている点に注目していく必要があろう。「(抽出は)ナショナル・テスト導入前の露払いではないか」(中嶋哲彦)という指摘についても考えていかねばならないだろう。貧困な学力論を私たち自身がどう超えていけるか。学力テスト−人事評価を貫く能力(主義)思想をいかに批判していくか。学力とは何か、労働とは何か、生きていくこと、共に生きていくことに定位したその再定義を共に試みていくことが求められているのではないか。

(2)要望4−A 教職員の休憩時間を確保すること。そのために各都道府県の教育委員会に対して、労働基準法に基づく休憩を保障する旨の通知を出すこと。また、勤務時間の中に休息時間を設けること。

Q. 学校全体として見れば、業務量が増大するなかで、定数はいっこうに改善されないという状況が続いている。長時間過密労働がさらに強化されていくなかでは、休憩時間の確保などおよそ望みえない。学校(教育)の現場で不要なものを精査し、子どもたちや学校現場の労働者を疲弊させる諸制度(学力テストや人事評価制度等はその最たるもの)を廃止していくことが必要だと考える。と同時に、無制限な超勤体制を招いた根本原因である給特法体制を転換していくべきである。給特法の廃止を含めた検討の方向を明らかにしてほしい。

《文科省回答》及び《コメント》

 ほぼ0回答。35人学級の検討も新学習指導要領の「詰め込み」教育とテスト漬けが前提なのだとすると、状況は更に荒廃していくということを学校現場の状況を具体的に示しながら、何とかして休憩の実質を確保していく手だてを講じてほしいと要求した。「一斉休憩の原則」がないがしろにされている実態の一端は伝えられたように思う。給特法体制とサービス残業の常態化に私たち自身がさらされているという切実な認識を共有化することから始めたい。

(3)7−C 「君が代」を「歌えるように指導する」ことや「天皇への敬愛」を持たせようとすることなど、「愛国心」の押しつけを更に強めようとする新学習指導要領(2008年3月28日告示)を撤回し、国家主義的教育をやめること。

Q.今年4月から横浜市の8区の公立中学校で使用されている自由社版「新しい歴史教科書」を巡って極めて深刻な状況が生まれている。アジア太平洋戦争において日本軍の侵略を東南アジアの人々が「歓迎し協力」する態度をとったと教えるのが正しいとする指導書が出回る一方で、横浜市教職員組合が組合員に配布した「中学校歴史資料集」に対して横浜市教委は、違法なものだから使うなという通知を出している(2010年4月28日付)。アジアの人々とともに平和な世界を築いていくための歴史意識の形成という観点を欠落させた排他的な「愛国心」を子どもたちに押しつけようとする教育が検定教科書を使ってまかり通っている。教科書検定へのかかわりを含め、いびつな国家主義的教育に対する文部科学省の責任をどう考えているか。

《文科省回答》

 横浜市教委の通知(’10.4.28)は、あくまで「検定教科書を使って授業すること」を言っている。教科書に関連した副教材の使用を否定していない。横浜市教組が組合員に発した文書が「教科書以外の資料のみを用いて授業を展開していく例などが掲載されて」いることを問題にしている。

《コメント》

 横浜市教委は「平成22年度横浜市教科書不採択の基本方針」(’10.5.11)において「我が国と郷土横浜の伝統文化を愛し、守り伝えていくともに、諸外国の人々の生活や文化を理解・尊重し国際社会に寄与する開かれた心の教育に適したものであること」を教科書採択の観点の一つにあげている。しかし、アジア太平洋戦争において、日本が東南アジアに侵略していった行為をあたかも「欧米の植民地支配からの解放」であったかのように描く教科書によって行われる歴史教育が「開かれた心を育成」していくものなのか。この問いかけに文科省担当者の答えはなかった。改正「教基法」の実働化という状況が、例えば横浜における教科書問題において現れているという共通認識を持って、全学労連の枠を超えた対抗の試みに連なっていくことが考えられていいのではないか。例えば、今、横校労が主催して続けられている「『自由社版歴史教科書』に関する連続学習会」に注目したい。

(4)要望8 特別支援教育体制を見直し、「障害」児が普通学級で学ぶことを保障すること。その裏付けとなる人的・物的な条件を整備すること。

Q. 子どもたちの教育の場を分けないインクルーシプ教育は、障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備と一体的に進められる必要がある。就学時に子どもたちを振り分ける根拠となっている学校教育法施行令第5条、第11条、第22条の3を廃止すべきであると考える。障害のある子どもたちが通常の学級で共に学んでいけるためには、換言すれば、原則統合(※)を実現するためには、しかるべき教員増が図られ、医療的ケア等を必要とする子が普通学級で学べるための法的かつ具体的なてだて等々が講じられていかねばならない。普通教育−特別支援教育という別学教育体制は転換されるべきであり学力テストに象徴される競争主義的教育の見直しが同時に求められている。学校教育法施行令第5条等の廃止をいつまでにやろうと考えているのか明らかにしてほしい。

(※)原則統合について 子どもの就学先を地域の普通学校(学級)に一元化する。ただし本人や保護者が希望する場合は、特別支援学校への就学を認める。このことを法律で定める。

《文科省回答》

 現在、障害者制度改革推進本部のもとに、障害者制度改革推進会議が設置され、教育分野についてはインクルーシブ教育について検討されている。財政面を含めて、2010年度内に制度改革の基本的方向性が出される予定だ。また、7月12日、中教審において、特別支援学級の在り方に関する特別委員会が設置され、検討が開始された。障害者権利条約の批准に伴う国内法の改正問題も議論されていくものと思われる。

《コメント》

 民主党政権の発足によって曲がりなりにも、インクルーシブな社会の在り方、インクルーシブ教育について、障害者を中心とした諸団体も参画する形での法改正を含んだ動きが始まっている。このことの持つ意味について、私たちもまた注目し、学校という場所で働く一労働者(労働組合9の一員として、多様な関わりを追求していけたらと思う。一年前の文科省の回答は「通知で済ませられるか法改正が必要か論議している」という呆れたものであった。学級規模の再検討が始まった現在、インクルーシブ教育をいかに内実あるものにしていけるかという観点からも「定数改善」を考えていくべきだと訴えた。

 

 議長 菅原 かみブログ 100903

全交流+全学労組交流会

 この夏も全学労連交流集会(群馬)と全学労組交流集会(名古屋)に行きました。どちらも暑く、かつ議論も熱く過ごしました。

 2010全交流は、群馬県が担当。「わたらせ鉄道」で渡良瀬川の谷を昇った標高400mが会場。涼しいかど思ったがやはり群馬は暑い。「いくつかの話題で大いに議論する」が今年の全交流の目的で、大いに議論はできました。個人的には「組織問題」のコーディネーターとして、これまで以上に幅広い意見を引き出せたと思います。教員組織との協力関係をどこまで進めるかなど、さまざまな意見は出ましたが、現実的には組織間はいろいろあり、急に世界が変わるはずもなく、地道に進めるしかないでしょう。

 夏休み最後の23,24日は名古屋で開催された全学労組交流集会に参加。全国の独自教員組合(といっても事務職も、非常勤教員、ALTまで組織している組合もある)が集まっての年に一回の大討論会。ここ数年参加して「非正規学校労働者の実態報告」をしています。今年は文科省の公表した図表や全学労連のデータを使って「義教金の使い切らない実態」を説明しました。大阪府が「義教金の最高限度額より30億円以上低い」事態に驚いていました。(制度の説明が大変でしたが)また、今年の概算要求で「教員定数改善」が出される予想を示し、しかし「加配と交換」では教員一人当たりの持ち時間数は減らないことに注意すべきと言っておきました。

定数改善

 8月31日文部科学省は2011年度概算要求を発表しました.その中で来年度から順次学級編成基準を改定し、「35人学級」「30人学級」を目指すとしています。また、学校事務職員については、「複数配置による学校事務処理体制の充実」と来年度220人(全体では1570人)の改善を明記しています。つまり、文科省はこれまで「共同実施の加配」が学校事務職員の定数改善の手法でしたが、それをやめて「複数配置の充実」に切り替えたのです。「共同実施」ははしごを外された(?)。

 「加配」では臨時職員ですが、定数改善になれば今より正規職員が増えるはずです。多くの講師が教諭に採用されることにつながれば良いなと思います。

 個人的には、大規模校の事務職員複数配置が改善され、増えることを期待しています。

人事院勧告

 8月9日、人事院は今年の「給与勧告」を出しました。予想通りボーナスも給料も下がります。給料は40歳くらいまでは下げず、それ以上の方が下がります。ボーナスは全員下がり、とうとう年間4月分を下回りました。

 
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