2011年1月28日

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全学労連ニュース今号の内容

 議長年頭所感 2011

 文部科学省少人数学級推進の意味するもの

 関ブロ事務研ビラまき行動

 名古屋市の学校間連携

 

議長年頭所感 2011

大増税・新自由主義路線・戦争国家に向かわせないために

 米倉弘昌経団連会長が「税財政と社会保障一体改革」「世界貿易自由化の波の乗り遅れないこと」と発言したのは昨年末。2011年、菅民主党改造内閣はまさに同じ言葉を強調している。あらためて、この国の権力がどこにあるのを知らされた。

 そんなこと当たり前だといわれそうだが、「民主党」に何かしら期待を持ってしまっていただけに、余計に腹が立つ。

 

 今や、民主党も自民党もマスコミも、こぞって「消費税増税・TPP・日米同盟強化」を叫ぶ。

 それは具体的には、法人税減税を従えた「消費税大増税」であり、社会保障ではこれまた企業負担軽減や自己責任論を持ち出しての「弱者切り捨て」。また、TPPは資本がアジアへ更に進出するために、国民生活と交換する道具を作ろうとするものである。さらには、中国・北朝鮮批判を煽り、「日米軍事同盟強化」はアメリカ軍と自衛隊の一体的行動を進め、実際に東アジアで戦争できる体制を作っていくだろう。

 この時代にわたしたちに何ができるだろうか。だが、どう考えても座して過すわけにはいかない。私たちは小さな労働組合だが、その存在感は想像以上に高いと思う。職場でも、この業界でもその存在感には自信を持っている。だとしたら、私たちの存在感を利用した取り組みを作り出し、大増税・新自由主義路線・戦争国家に立ち向かう運動を始めようではありませんか。

身近な仲間とともに

 年末から職場で「来年度教育課程」の議論が活発になる。学校の金を預かる身の立場で、時に参加する。先日は「総合的学習」の話題で、内容はやはり来年も「キャリア教育」。大きなテーマが「自分探し」になり、「自分の夢の実現」という言葉が踊っている。

 だが、今や若者の半分が非正規雇用労働者の時代なのである。「職業・仕事で、自己実現」といわれても、むなしい。「自分の夢を実現しよう」は「職業・仕事」では無理だと思うのだが。

 逆に言えば、キャリア教育とは、「夢が実現しないのは自己責任」「だから、非正規でも文句を言わず、たくましく生き力を養おう」ということになってしまいかねない。それを「職業で自己実現したと思いこんでいる教員」に話すといやな顔をする。

 

 わが中学校の教員も非正規雇用が多い。43人の教員中6人が「1年間の期限付雇用の講師(小中教育職1級)」。35歳以下に限れば10人中4人である。「教員になる夢」を目指して、普通の教諭よりたくさん仕事をしている姿(4人のうち2人は学級担任)を見ているのは、ちょっと辛い。

 福島県の講師は「給与条例・初任給決定規則」を無視して、県教委が勝手に決めた(県の財政当局に強要された)賃金の上限がある。月額およそ26万円。経験を重ねたベテラン講師も同じ金額に抑えられている。正規職員は毎年1月定期昇給がやってくる。しかし講師には無いので、人勧削減・給与カットで賃金は毎年下がっている。

 福島県の期限付雇用学校事務職員はさらに悲惨である。彼らの月給の上限は17万円である。20歳前半から働き始めてあっという間に上限に達してしまう。上限に達してから長い期間働いているベテランの方もいる。正規職との格差は非常に大きい。

 この間の義務教育費国庫負担金制度の改悪が学校労働者に格差拡大をもたらした。だから、私たちは単に「35人学級のための定数改善」ではなく、「総額裁量性・最高限度額制度・加配制度の改善を伴っての定数改善」を求めた。しかし、今回の「定数改善」は格差縮小には結びつかない。

 「格差の拡大」を止めさせ、縮小を実現させるための課題は多い。しかし身近な仲間とともに、新たな、創造的な闘いを開始しよう。

 

文部科学省少人数学級推進の意味するもの

― 共同実施・定数加配方式は終焉 ―

全学労連事務局学校行革対策部 佐野 均

☆客観的基準の定数改善

 既に新聞報道等で伝えられている通り、政府・文部科学省は小学校1年生の35人以下学級を来年度予算案に盛り込んだ。しかし当初の文科省の計画は、公務員定数の削減を推進する財務省・総務省の猛反対で、下の表の通り大幅に後退している。

  当初計画 予算案
概要 8年計画で30・35人学級実現 来年度のみ。それ以降は予算編成で検討
改善@ 小学校1・2年生の35人学級   7,800人 小学校1年生の35人学級    3,770人
改善A 実施に伴う教職員配置の充実   500人
(内訳) 副校長・教頭 220人
  生徒(進路)指導担当教員 60人
  事務職員 220人
実施に伴う教職員配置の充実   230人
(内訳) 副校長・教頭 100人
  生徒(進路)指導担当教員 30人
  事務職員 100人
初年度合計 8,300人 4,000人

 8年計画が単年度の事業とされ、改善内容も半分以下に減らされたとは言え、とりあえず1学級の児童数という客観的基準に基づく定数改善が行われる事を素直に評価したい。

☆文部科学省の政策転換

 文科省は1993年からの第6次定数計画以来、加配方式による定数配置を実施している。学校事務職員に関しては2001年からの第7次計画で共同実施のための加配も行われてきた。

 全学労連は、加配方式は児童生徒数や学級数等の客観的基準に拠らないので定数配置の地域間格差を生じさせ、加配という不安定な配置故に不安定雇用の職員を増大させると批判してきた。事実政府の人件費抑制策とも重なり学校現場には臨時的任用や非常勤の職員が増え続け、官製ワーキングプアと呼ばれる社会現象のさきがけともなりマスコミでも報道された。全学労連の調査でも、加配を受け共同実施を推進している地域での臨任者の増加傾向が確認されている。今回の少人数学級の為の定数改善は、数的な多寡はさておき基本的に私たちの主張に沿うものとなった。

 残念ながら事務職員に関する配置基準は据え置かれ、学級増に伴う定数の増加だけに留まったが、今までのような訳の解らない加配方式よりは、その公平さや制度的な安定性において数段勝るものと言って良いだろう。配置基準の改善を今後も要求し続けるとともに、更なる定数政策の展開に期待したい。

☆共同実施加配定数の今後

 これまで積み重ねられてきた事務職員の加配定数は、とりあえず来年度予算案では継続となっている。しかし継続という事よりも、今まで増えてきた加配が増えていないと言う点に注目すべきであろう。来年度予算案の4,000人の改善の内訳は、定数の純増が僅か300人で(繰り返すがこれでも加配方式よりは遥かにマシなのだ)、自然減分が2,000人、少人数学級加配からの振替が1,700人となっている。

 昨年文科省は全学労連との交渉で、少人数学級実現の為の定数確保の手法として従来の加配分の切り崩しもあり得ると答えている。また昨年7月には中教審も加配定数を基礎定数へ組入れることを提言している。この事が来年度予算案で1,700人分現実となった訳である。

 文科省は少人数学級の推進に大きく舵を切ったと言って良い。今後の厳しい攻防の中で、更に加配定数の切り崩しが進むものと予想できる。その中で事務職員の加配も決して例外ではあり得ないだろう。文科省は既に「共同実施」という言葉を公式に使えなくなっている。内容も曖昧なまま言葉だけが先行して、10年以上学校事務職員を混乱させてきた「共同実施」も大きな転換点を迎えているというべきだろう。

 各地の教育委員会や学校現場にも、定数と学校事務の有り方について再検討が迫られている。全学労連はこれからも加配定数方式と「共同実施」に反対していく。

 

関ブロ事務研 ビラまき行動

 全学労連は2011年1月27日、埼玉県さいたま市において開催された「関東地区学校事務研究大会および埼玉県学校事務研究大会」の開会式にあわせてビラまき行動を行った。

 会場である埼玉会館大ホールに集まってくる参会者に、学校行革対策部の上記記事「共同実施・加配方式の終焉」と、埼玉県で1月から始まった「共同実施研究チーム検討会議」の様子を記した“学校ユニオン埼玉”のニュースを配布した。参会者のビラ受け取りはよく、会館内の運営役員からも何度か「少しください」と声掛けられるほど・・・。1時間ほどで約600枚を配ったが、埼玉県だけでも1300名を超える事務職員がいることを考えると開会式への参加者が少ないと感じた。

 

名古屋市の学校間連携

 名古屋市で今年度から学校間連携が全市化し、来年度からは「学校事務支援センター」が開設されるという。全学労連が入手した資料をもとに、その問題点を検討する。

不正経理問題が拍車

 市教委作成のマニュアルによれば、学校間連携が始まったのは2008年度から。2009年度には24ブロックで実施し、2010年度から全小中学校を対象に55ブロックで行われている。当初の目的は団塊の世代の大量退職、新採用事務職員の急増に対処することを主眼としていたようだ。しかし、2007年度に発覚した裏金問題が、2010年11月現在で学校事務職員7名が懲戒免職、業務上横領容疑で告訴され、他に数百人の教職員が処分されるに到り、不正防止目的が前面に出てきたようだ。

学校間連携の実際

 2中学校ブロックを単位として拠点校と連携校を決める。ブロック内事務職員で「学校間連携組織」を作り、拠点校の事務職員が代表者となる。年間計画書や実施報告書等を作成する。定期的に出張で集まり学校間連携に必要な協議、執務等を行う。例示によれば集まるのは月2回、1回は他の出張日にあわせ1時間程度打ち合わせや情報交換、1回は半日を使ってブロック内の学校に集まり(巡回)、その学校の書類等の点検を集中的に行う。問題箇所に付箋をつけ、誤り事例については副拠点校事務職員が記録し、疑義の生じた事項については協議する。点検終了後拠点校事務職員が確認印を押し、その学校の校長に報告する。誤り事例はセンターに報告し、イントラにアップされる・・・と実に細かく指示されている。

学校事務支援センター

 2011年度から設置される「学校事務支援センター」は@学校事務の確実性・効率性の向上、A学校事務の指導強化、B人材育成・交流人事 の3点を目的としつつ「不適正経理処理の再発防止を行う」とされている。役割として、当初は経理事務を中心とし、ゆくゆくは他の業務へも拡大を図る。経理事務では、一括購入、学校間連携組織での相互チェック立会い、「監査点検の共同実施」、研修等を行う。学校間連携組織を上から指導監視するということだろう。体制は所長に課長級の市職員、主査として主査級の市職員、所員として市職員3人、県費事務職員(加配、主査級)3人、再任用県費事務職員1名の計9名。センターが市役所近くの学校に置かれるとされているのは、義務教育費国庫負担法の制約を意識してのことだろう。

学校間連携は何をもたらすか

 不正・不適切経理問題が背景にあることが名古屋市の特徴だが、前渡金で消耗品費の執行ができることが不正につながったようだ。神奈川では公費予算に前渡金制度が導入されている市町村はほとんど無い。制度のある横浜でも消耗品費は対象外だ。不正を生みやすい制度を放置してきた市教委の責任こそが問われるべきだろう。神奈川でも千葉県が会計検査院に不適切経理を指摘された余波で、県、市で調査が行われ、横浜ではただでさえ面倒な経理事務が一層煩雑化された。川崎にもその動きがある。事務職単数配置ということを含む学校経理の特殊性を無視し、杓子定規に法令規則通りの事務手続きを押し付けてくる。名古屋の場合も結局事務職員が相互監視で疲れ果てることにしかならないだろう。2009年度の「成果・課題」で「多忙な中、事務量が増えるのみで効率化につながらない」「個人情報持ち出しが不安」と指摘されているのは尤もなことだ。学校事務職員が行政のスケープゴートにされるのはたまらない。

(がくろう神奈川 池上 仁)

 
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