2011年3月12日

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全学労連ニュース今号の内容

 「小中学校の校務改善の方向性」に根本的批判を!

 埼玉で「共同実施に係る研究チーム」検討会議 行われる

 議長 菅原 かみブログ 110219

 

「小中学校の校務改善の方向性」に根本的批判を!

アクセンチュアの報告書に対する十分な吟味が行われたとは考えられない!

「経営支援部」はこれまでの校務分掌を破壊し、副校長の支配を強化する!

 2月10日都教委は「小中学校の校務改善の方向性について」(以下「方向性」と略)を発表した。概要版で4ページ、報告書の本文は89ページにも及ぶ(今なら都教委のHPのトップページに掲載されているので是非とも読んでほしい)。もともとこの流れは「教育管理職等の任用・育成のあり方検討委員会」からのものだ。特に今回の「方向性」は経営コンサル会社であるアクセンチュアに調査を全面委託し、その報告に基づき作成されたものだが、副校長の多忙感を多角的に調査・分析し、その解決策を展望するものになるはずであった。しかし、「方向性」は小中学校の組織・運営体制を抜本的に変革し、副校長を中心に「経営支援部」に大きな権力を与えるものと構想されている。そこに事務職員も位置付けられているのだ。

 私たちはこの間アクセンチュアの中間報告について開示請求してきた。現在最終報告についても開示請求しているが、最終報告提出から「方向性」提示までほとんど時間差が存在しないということは都教委の規定路線にアクセンチュアの報告書を付け足したか、さもなくばアクセンチュアの提言を丸呑みしたかのいずれかであろう。どちらにせよアクセンチュアの報告書に対して充分な検討が加えられて「方向性」が出されたとは考えられない。この点も最終報告に対する開示請求を通じて追及していきたい。

 学校現場はますます自由にものの言える場所ではなくなろうとしている。主幹教諭、主任教諭を導入し教員間の差別分断を図り、その上今回は校務分掌組織も階層化しようというのだ。もはや学校は「教育」の現場ではなくまさに「経営」の現場と化しつつあるのだ。

 いまNO!と言わずしていつ言う機会が訪れると言うのであろうか。私たちはこの問題は決して事務職員のみの問題ではなく学校全体のあり方を抜本的に変質せしめるターニングポイントだと認識している。声高らかにNO!を都教委に突きつけよう!

「方向性」は何を変えようというのか?

 報告書の約半分はいかに副校長の業務負担が過酷なものであるか、そしてその原因をアクセンチュアの調査結果を横引きして展開している。後半はその調査結果に基づき、「解決の方向性」を提示している。改善策としての具体的な条件整備は以下の4点である。@適正な役割分担の実現A業務の進め方Bスキル向上C意欲向上

 眼目は@とAにある。BとCのスキルや意欲が簡単に向上するわけがないし、付け足しのようなものである。ちなみにBスキル向上では、管理職のITリテラシーの向上、人材育成と人事考課の連動、業務マニュアルの整備などにふれている。「人事考課は他人を育てない」という問題性は人事考課の孕む矛盾であったが、人材育成さえも得点化しようという当局の危機感の表明か。C意欲向上では、表彰の充実、休暇が取得できるバックアップ体制整備、相談体制の充実などが上げられている。表彰の充実などで意欲向上が図れると考えること自体がいわば漫画の世界である。休暇取得のための解決策は定数改善でしか達成されないのに、「休暇取得に対する負い目の解消」という精神論まで飛び出すありさまだ。

 さて、本丸に戻ろう。@適正な役割分担の実現では、行政・外部と学校の役割分担の見直し、事務の大規模校への集約、経営支援部の必置などがその柱となっている。外部委託については具体論として上げられているのは休日の学校開放業務くらいで材料不足は否めない。ただしこの議論は決して地教委と学校との役割分担を見直すのではなく、外部委託をどの程度増やすのかに収斂しているところに大きな問題が潜んでいるのだ。

初めて登場した「共同実施」

 事務の大規模校への集約とは、@事務職員を大規模校へ集約しA一部の事務を集中処理することを意味している。ただし、事務職員の集約とは正規職員が対象ではなく非常勤である。全体の増員も行わない。集中処理可能な業務は@場所に依存しないA即時性が求められないものであり具体的には@給与、旅費、諸手当関連事務A証明書発行 が上げられている。

 いわば、ある種の「共同実施」である。しかし、いまさらなぜ共同実施なのだろうか。これまで都教委は全国の共同実施に全く興味すら示してこなかった。アクセンチュアの提言を丸呑みしたとしか考えられない。給与については発生源入力ということでPC入力支援システムを推進してきたのではなかったのか。大規模校に集約することに何のメリットが存在するというのか。定量的分析の跡が全く見られない。副校長の業務量分析とは対称的な粗雑さである。さらに集約されるのは非正規事務職員である。自治体ごとにその労働条件も職のあり方も異なる非正規事務職員を十把一絡げで大規模校に集約するということの困難さを全く認識できていない。

 このような無責任極まりない提言を行った都教委の責任は重大である。

経営支援部なんていらない!

 今回の提言の最大の目玉は「経営支援部」なのであろう。都立高校の「事務室」から「経営企画室」への転換を髣髴とさせる。

 校務分掌の見直しについては学校規模に応じて小・中・大の3パターンを検討しているが、いずれも「経営支援部」の設置は必須として書かれている。「方向性」は経営支援部の機能を@副校長実務の支援A横断調整B学校内の資源(ヒト・モノ・カネ)管理 としている。実質的には副校長の仕事をいかにこのセクションの職員にばら撒くのか、またそれ以上に学校における「ハザマ」的仕事をこのセクションで引き受ける「何でも屋」であることも同時に期待されているのだ。

 ただし、従来の人員だけではパンクしてしまいそうなので、新たな職員を導入するのも大きな特徴だ。

 専任支援職員と経営支援職員だ。専任支援職員は、現状業務の割り振り先が不在のために副校長が行っている事務作業を担う。言わば副校長の「秘書」のような存在である。大規模校では常勤とし、それ以外は非常勤と想定している。経営支援職員は管理職OBを想定している。主幹教諭を配置できない小規模学校にその代わりとして参入させる。副校長業務経験者を配置して手伝わせようという魂胆だ。せっかく管理職OBになったのにまたもや副校長の下で「小間遣い」を志願する物分りのよい「管理職OB」が出てくることを想定していることが「おめでたい」としか言いようがない。

 確かに経営支援部は副校長の仕事をうまく吸収するための組織として構想された。そこで働かされる事務職員は「事務部」から「経営支援部」に移行させられることによってこれまでの学校内における比較的自由な「位置」と他部署との「協業」を一挙に失い、副校長の「監視」の下に日々「働かされる」ことになるのではなかろうか。

 さらに「経営支援部」は教務部や生活指導部などの他部署より上位に位置することによって学校全体の「管理セクション」として位置付けられるだろう。これがこれまで培ってきた学校の「協同性」を破壊することになるであろうことはほぼ間違いない。絶対に認めてはならない!

業務の進め方

 A業務の進め方 については、過去の調査データの蓄積と調査数の削減というまともな提言もあるが、柱は校務のICT化である。ICT化は道具でしかないのにメール交換による打ち合わせの廃止など都段階のタイムスのような改革が行われるとしたら、職場の荒廃は一層進むに違いない。

今後の推進体制

 これから地教委と都教委で「校務改善委員会」(仮称)を設置し、具体策の検討を行うことになっている。2011年度はモデル実施とその成果検証、そして12年度が本格実施を予定している。学校現場の実情を理解していない地教委と都教委がいくら検討を重ねても「方向性」の見直しにつながることはありえないだろう。私たちは来年度あらゆる観点から「方向性」を具現化させない取り組みを全都の仲間とともに行っていきたい。

(学校事務ユニオン東京 JIM-UNION No.177より)

 

埼玉で
 「共同実施に係る研究チーム」検討会議行われる

 2011年1月より県教委の呼びかけで、「小中学校事務の共同実施に係る研究チーム」検討会議が行われている。全3回を予定しており、共同実施を行うためにみなさんの意見を聞きたいとのことで私たち埼玉学労協が所属している学校ユニオン埼玉も声をかけられた。

 この会議は、2010年度県教委が募集した教職員施策提案の提案賞に県内小中学校事務職員3名(共同提案)が、「学校事務を組織化し、学校事務職員を最大限活用する」のテーマにて受賞したことも関係あると思われる。

 さらに、当局側は関係ないとしているが、2011年度から昇任昇格基準が見直される5級事務主査・6級事務主幹の廃止(4級事務主査・5級事務主幹・6級「困難」事務主幹に)と関連があると思われる(6級主幹を残すためには、共同実施体の長としての事務長が必要との一部の思惑もある)。

 この検討会議は、教育局小中学校人事課が主催し、各団体1名が正式出席者とされ、その他傍聴者も認めるという形式で行われている。2月10日に行われた第2回会議に傍聴で参加した時の様子を以下報告する。

 参加団体は、@教育局小中学校人事課 A教育局教職員課 B都市教育長会 C町村教育長会 D小学校長会(欠席) E中学校長会(欠席) F埼玉事務研(全事研) G 施策提案賞受賞者 H埼教組(全教) I埼玉教組(日教組) J自治労学校支部(元埼学労) Kネットワークさいたま(元埼学労) L学校ユニオン埼玉 Mさいたま市教委 N各教育事務所 である。

 それぞれの団体は以下のように発言した(発言順)。

埼教組(全教)

 反対。

 事務研のアンケートでも「地域複数校のリーダーとしての事務長になりたい」事務職員はごく少数である。大半の事務職員の望んでもいない「共同実施」や「事務長制」に巻き込まないでほしい。

 他県の状況調査をする場合は、推進している立場の人からだけ意見を聞かないでほしい。

 新任・臨任の支援は必要だが、共同実施で担保できるのか。

施策提案賞受賞者

 賛成。

 事務長になりたい人が少なかった件に関しては、事務長はみんながなれるわけではない。

 事務長ポストは制度的に必要。制度化しないと地教委が事務職員を軽視する。

 地域事務研も「共同実施」と同じように情報交換、経験の浅い事務職員のフォロー、相互確認でミスをなくすこと等 をしているというが(第1回会議の際、佐野さんが発言)、事務研は任意団体である。きちんとした制度にすべきである。

 世間が事務職員をどうみているのか・・・だから共同実施したい。

埼玉教組(日教組)

 賛成。

 職務内容標準表が地教委止まりの市町村が多いので、各学校までおろしてほしい。

 主幹と主査の仕事の質は違う。(主幹が)十分に生かされる方向として共同実施は賛成である。

 (組合内でかなり温度差があるようだ。・・・後日談)

学校ユニオン埼玉

 反対。

 共同実施という言葉だけが先行している。具体的にどうすることなのか。

 共同実施ありきではなく、学校現場での現在の課題を明らかにし、その支援を地教委・県教委・文科省レベルでどうしていくのかという現場からの積み上げが必要である。

 共同実施が外部からどうみられているのか慎重に考えるべきである。知事会では、事務職員の削減策とみている。

ネットワークさいたま(元埼学労)

 条件付賛成。

 文科省の定数どおりの配置をしてから、共同実施の話をしてほしい。

 何のための共同実施か目的が見えてくれば賛成。

 任命権者研修をしっかりやるべきである。

 事務に限らず、PC等ネットワークを利用して地域コミュニティー・地域小中連携が必要である。

埼玉事務研(全事研)

 共同実施を発表した支部もある。関心がないわけではない。

 事務職員が今後学校の中でどういう期待感があるかである。

 現状のままで(わたりのことか)世間の人が納得していけるのか。

自治労学校支部(元埼学労)

 現在県内では、加配で共同実施をしている市町村があるが、来年度越谷市が要求していないのはなぜか。

町村教育長会

 事務職員は、一人職で苦労しているのではないか。先輩から学ぶことも難しい。それを乗り越えていく手段として考えてはどうか(共同実施を)。

 下から積み上げていくことは大切だ。ぜひいいものをつくってほしい。

各教育事務所

 事務が担保されればよい。高校の事務室は事務長がいてよかった(後ろ盾、仲間がいることはよい)。事例にいっぱいあたれるという意味で(共同実施は)よい。

 研究チームについては所長も注目している。共同実施で、すべては解決しないが、意義はある。

教育局教職員課

 職員間連携の重要性については、全員一致できるのではないか。

教育局小中学校人事課

 この場は、広く意見を聞く場であり課題解決の場ではない。

 現在共同実施を行っている行田市と越谷市に行ったが、共同実施がうまくいっているかどうか、今は話ができない。

 他県でもうまくいっている県とそうでない県があるようだが、もっと調査する予定である。

 もう1回やるか、また共同実施の今後の日程は白紙である。(後日「第3回会議はしない。意見は大方出尽くした。」と連絡有り)

 電話だけだと裏話が聞けないので、実際に他県に出向き調査する。(後日、「新潟県へ視察に行く」と連絡有り)

 ただ、この会議は共同実施をやることを目的で開いている。ご協力願いたい。

 また、当局から、「学校事務の共同実施について(メモ)」が提示された。このメモは、今後の共同実施要綱の柱になるものなのか、今回だけの単なるメモか学校ユニオン埼玉が質問したところ、今回だけのものであると回答があった。

 もう一度会議を開いてほしいといくつかの団体から声があがった。

 傍聴してみて・・・最近は、共同実施より学校間連携なんて用語を使って柔軟に共同実施を進めようとしている人たちがいるなかでいまさらという思いがあった。仕事上のミスをなくすように相互チェックをするとか、新任事務職員のフォローをするとか・・・本来は教育事務所や任命権者がすることを現場に投げているだけではないか。現に3年前からはじまった旅費請求書の相互確認によって、教育事務所はほとんどチェックしなくなったように感じる。そして、教育事務所の職員は減っていった。

 共同実施推進派は共同実施・事務長制が制度化されないと、自分たちの意見が通らないという。しかし、それはあなたたちのちからや、影響力がないからではないか。制度化されれば、一部の者のみが影響力を持ち、対等である学校事務職員間に差別を生み出すことにつながっていく。

 共同実施で私たち学校事務職員に幸せはこない。人員削減され、労働強化されるだけ、上下関係が生まれるだけ・・・このことを県内の多くの学校事務職員に気づいてもらって、絶対に共同実施をさせない運動をつくっていきたいと感じた会議であった。

(埼玉学労協 布川 昌美)

 

議長 菅原 かみブログ 110219

労働条件改善の「定数政善」を求めて

 2010.12.17「国家戦略担当・財務・文部科学3大臣合意」で、すったもんだの「35人学級」が決着した。2011年度は小学1年生のみで、それでも4000人必要だが、自然減・加配減で純増は300人止まり。年が明けて、予算案の中身を覗いてみたら、財務と文部科学で紹介の仕方が違う。その思惑が透けていて笑ってしまった。

文部科学省は次のように言う。

 「新学習指導要領の本格実施や、いじめ等の学校教育上の課題に適切に対応し、教員が子ども一人一人に向き合う時間を確保することにより、子どもたちの個性に応じたきめ細やかで質の高い教育の実現が急務。

 このため、35人学級については、2011年度は、小学1年生について制度化する。」

 つまり、文科省は、今回の定数改善の目的を「来年度から始まる新指導要領」とし、だから他の学年も必要であると主張し、35人学級は「制度化」すると宣言している。

財務省は次のようにまとめた。

 民主党のマニフェスト、幼児教育との接続の問題やいわゆる『小1プロブレム』等の特殊な事情が存在することを踏まえ、小学校1年生について35人以下学級を実現するための教職員定数を配置」「22年度(15,938億円)⇒23年度(15,666億円)」

 このように、「民主党のせい」「1年生は特殊だから」と次年度以降に波及するのを牽制し、さらに次の駄目だしを示した。もっとも国庫負担金は減額しているのだが。

 「小学2年生以降の少人数学級の取扱いについては、学級規模と教育効果の相関性、後年度負担の問題、公務員人件費改革との整合性、国と地方の役割分担(すでに8割が35人以下学級)の観点等から、引き続き、来年度以降の予算編成で議論」

 「制度化」何ぞはとんでもなく、いくつものハードルを掲げ、あくまでの2011限りの「措置」を強調している。

 

 今回の決着はまとめると、文科省にとってみれば、「とうとう35人以下学級に着手できた」という評価ができるが、財務省にしてみれば「国庫負担金は減らせたし、わずか300人の増加で済ませ、加配減に手をつけた。来年度以降の言質は与えなかった」と言うだろう。総合的には財務省の勝ちといったところか。

 

 では、私たち学校で働く労働者にとっては如何なものなのか。私たちは「学校労働省の労働条件改善につながる定数改善」と、「現在の義務教育費国庫負担制度の問題点である総額裁量制・最高限度額制度・加配制度の改善を伴っての定数改善」を求めた。

 しかし、結局のところ今回の「差し引き300人の純増でしかない定数改善」は、学校労働者の労働時間短縮に結びつくことにはならないだろう。また、制度的見直しの伴わない国庫負担制度は、大変な数の非正規雇用学校労働者を正規雇用化することを促す効果も薄い、と言わざるを得なく、今年もまた、労働条件改善を求める闘いは引き続き強化していかねばならない。「税財政と社会保障一体改革」という大増税路線との闘いと結びつけた取組みにしていきたい。

 
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