2011年12月10日

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全学労連ニュース今号の内容

 高年齢層狙い撃ちの人事院勧告

 歴史改ざん、基本的人権無視・・こんな教科書子どもたちに渡せない!「つくる会」教科書採択を撤回させよう!

 成功裡に終わった5組合共同学習会 経営支援部設置を許さない広範な闘いを! 今こそ各地区で「校務改善」にNO!の声を

 文部科学省来年度予算概算要求 小学校2年生35人以下学級を中心に定数改善7,000人を要求

 2011年度全国代表者会議開催される

高年齢層狙い撃ちの人事院勧告

事務局 船橋 享

 人事院は9月30日、公民格差を△0.23%(△899円)とし、40歳代以降の月例給を引き下げるとともに、いわゆる現給保障廃止の勧告を行った。

 この間、人事院は50歳代に焦点を当てた給与抑制の勧告を行っている。俸給表改定もマイナス勧告のときは50歳台を中心とした引下げ改定を行ってきた。昨年は55歳超え職員に対して定率減額を行ってきた。そして今回は現給保障の廃止だ。一応、激変緩和ということで来年度は二分の一、完全廃止は再来年度からになっている。

○50歳代公務員給与は本当に民間よりも高いのか

 人事院は今年の報告の中で「年齢別にみると、50歳代では公務が民間を上回っており、特に50歳代後半層では依然として官民の給与差が大きい」とし、その要因として「地方機関の管理職登用が55歳以降に行われる場合が多い」ことをあげているが、具体的なデータは一度たりとも出したことがない。

 たぶん国ではほとんどの人が6・7級まで昇格しているので、管理職登用云々の話が出てきて民間を上回ることになるのかもしれないが、地方にあっては、とりわけ学校事務職員は4級退職も普通にあることからすると、人事院が語るような実態はありえない。人事院はデータを具体的に示し、公務員のどういう層が給与を引き上げているのかを示すべきだ。

○現給保障廃止は許されない

 そもそも現給保障は、労働条件の一方的な不利益変更は許されないという法理から、給与構造改革のときに「新たな俸給表の俸給月額が平成18年3月31日に受けていた俸給月額に達しない職員に対しては、経過措置として、その達するまでの間は新たな俸給月額に加えて、新旧俸給月額の差額を支給」ということで作られたものである。これには期限は明示されず、俸給表のプラス改定や昇任・昇格によって平成18年3月31日現在給料を超えることが期待されていたのである。それを反故にする今回のやり方は到底認めるわけにはいかない。

 高齢層の官民格差という議論があるにしても、具体的なデータに基づいて高いところから削ればすむ話だ。55歳超えで7級昇格する職員がいる一方で給与構造改革以降4級止まりで1円も給料が上がらない職員がいるのだ。

○60歳超えは退職時の70%!?

 人事院は、60歳を超える職員の年間給与は60歳前の70%と意見を申し出ている。また、その根拠を「60歳台前半層の民間企業従業員(製造業(管理・事務・技術))の年間所得(給与、在職老齢年金、高年齢雇用継続基本給付金)が60歳前の年間給与の約70%(企業規模100人以上535万円/787万円=68.0%、同10人以上509万円/719万円=70.8%)である」とあげている。

 ここで示される民間賃金は、現在の在職老齢年金が出ている人を例にし(公務員で言えば再任用)ているが、その働き方は60歳以前と以降とでは、労働時間や労働内容も含めて大きく異なっていることが前提となっている。

 今回の意見申し出で念頭においているのは、定年延長である。60歳前と以降と同じ勤務時間、同じ職務を遂行することを前提としているが、比べる対象が違う。仮に比較対象をこのようにするのであれば、労働時間や労働内容も同じように比較対象にすべきである。

○70%も満たされないフルタイム再任用

 公務員の再任用制度は、老齢年金が満額支給される厚生年金適用の短時間勤務を前提に制度設計されている。民間で支給される高年齢雇用継続給付金がなくても退職時の7〜8割は確保されることになっている。しかし、フルタイム再任用の場合、共済年金が無支給となり、高年齢雇用継続給付金が適用除外となることから、退職時と比べて所得は半減以下になってしまう。

 一般的に多くの公務員は短時間再任用だが、学校事務の場合フルタイムしか認められない県が少なからずある。学校事務であるがゆえに低賃金を強制されるのである。50歳代の公民格差を語るのであれば、60歳台の公民格差に目を瞑るべきではない。

○自律的労使関係か、労働基本権剥奪の代償か

 現在、国家公務員の7〜10%給与カット法案が国会に出されている。自律的労使関係ということで、労働基本権回復とセットで連合系組合が政府と合意し、それが法案となったものだ。労働基本権の扱いをめぐって成立のめどが立っていないが、給与について「自律的労使関係」か「労働基本権剥奪の代償」かという二律背反する流れが事実上並び立っている状態にある。人事院は、報告の中でこの給与カット法案に不快感を示したが、人事院勧告の取り扱いがどうなるのか不透明な状況にある。

 とはいっても、各地の人事委員会は人事院勧告に影響されながら給与勧告を出していくことが予想される。各人事委員会がどのような報告・勧告を出していくのか大きな関心を持って見ている。(10/13記)


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歴史改ざん、基本的人権無視・・

こんな教科書子どもたちに渡せない!

「つくる会」教科書採択を撤回させよう!

 来年度から使用する中学校教科書採択を巡って各地での攻防が伝えられる。

 「新しい歴史教科書をつくる会」が分裂し、日本教育再生機構=「教科書改善の会」が育鵬社(扶桑社の子会社)から、「つくる会」が自由社から、それぞれ「歴史」「公民」の教科書を発行。

 神奈川では横浜、藤沢で育鵬社版「公民」「歴史」、来年度開校の県立平塚中等教育学校でも育鵬社版「歴史」教科書が採択され、来年度、県下の45%の中学生が育鵬社版教科書を押し2年前、全国で唯一自由社版「歴史」教科書を採択した横浜市は、採択地区を全市一括に改悪し、今回は育鵬社版を採択した。全国最大の採択地区―来年度から4年間、中学生約16万人がこの教科書を使用するのだという。反対する市民は11万の署名を集め、8月4日―採択の教育委員会には七百人以上が傍聴にかけつけた。しかし、教育委員6人の記名投票における結果は4対2で、前回、自由社を選んだ委員―中田前市長が選んだ4人の賛成で、教科書選定審議委員会の答申とは別の育鵬社版「歴史」「公民」を採択した。

 藤沢では、松下政経塾出身の海老根市長が「つくる会」系史観ともいうイデオロギーで、自分に近い教育委員を選任、やはり多数決で育鵬社版「歴史」「公民」を選んだ。学校現場の声は一切無視、二市とも教育委員会の議論では、自衛隊や外国人参政権・領土問題・国旗国歌などに関して、委員の政治信条ともいえる発言が相次ぎ恣意的な採択だ。横浜の今田教育長は反対する市民の運動に対して「自分たちのイデオロギー闘争をしているだけ。義憤を感じた」と発言したが、自分たちこそ教育にイデオロギーを持ち込んだ張本人なのではないか。また、平塚中等は、社会科担当の希望教科書を校長の一存で育鵬社版に変更した。学校意見を尊重したという県教育委員会決定も無効であるとさえいえ、県教委の責任も大きい。

 日本がアジアを侵略し、たくさんの人々を虐殺した戦争を「大東亜戦争」と呼び、歴史を歪曲し戦争を美化する教科書。沖縄戦の集団自決への日本軍の関与を隠蔽、中国や朝鮮半島への侵略の事実を正当化し、中国・朝鮮を蔑視する。大日本帝国憲法を賛美する歴史教科書。「国民」より、「天皇」「国家」を優先、在日外国人を差別し、原発を礼賛、女性差別や子どもの権利、外国人参政権などマイノリティの権利、ひとりひとりの人権尊重の視点を持たない「公民」教科書。こんな教科書で学ばされること自体が子どもたちへの人権侵害だと思う。

 日本会議系議員など政治的な圧力で全国に拡大しようという勢力の攻勢で、前回に続き今回も「つくる会」系(育鵬社版)を採択した東京都立中高一貫・特別支援学校、大田原市だけでなく、大田区、武蔵村山市、東大阪市などに「つくる会」系(育鵬社版)教科書が広がった。しかし、前回扶桑社を採択した杉並区は市民の運動で今回の採択を阻止したし、沖縄・八重山地区では採択地区協議会がこれまでの採択方法を変更して答申した育鵬社版「公民」教科書を竹富町が拒否、3市町の全教育委員協議会の多数決で採択を撤回させた。納得しない石垣市教育長が文科省に指導を求めるなどいまだ混乱が続いているが、教育長の政治的な振る舞いに沖縄の人々の怒りは大きい。大阪・橋下知事の「日の丸・君が代」強制条例のように、首長の教育への介入が強まっているし、「つくる会」系だけでなく教科書各社の内容の劣化など、改正教育基本法下での教育の中身に心配はつきない。教科書で言えば、現場の教員や子どもたちが一番よいと思うものを、かつての学校採択へ戻すなど、文科省の検定と採択制度そのものを見直すべきなのだ。

 民主主義を否定する教科書を子どもたちに押し付けるな!政治の介入を許すな!採択の撤回、使用の中止を求めて、反対の声を上げよう!

京極紀子(「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会)(9/28記)

成功裡に終わった5組合共同学習会

経営支援部設置を許さない広範な闘いを!今こそ各地区で「校務改善」にNO!の声を

 9月10日13:30から新宿において5組合共同(東京教組・都校職組・学校事務ユニオン東京・アイム‘89・東学)の学習会が開催された。参加者は50名を超えた。

画期的な共同行動

 東京は様々な経緯から事務職員関係組合が四分五裂状態だった。それにはそれなりの事情もあり、これ

までなかなか課題別の共同関係を作っていくことすら困難な状況に置かれていたといえる。

 ところが、今回の「校務改善の方向性」に対する危機意識はこれまでのあらゆる課題の中でも最も強く、個別組合の壁を乗り越えさせるほどのものだったのだ。「校務改善の実体化を許すな」「小中学校に経営支援部はいらない」という点では組合間に違いはない。

 今回の共同行動は今後の闘いの第一歩であったが、これまで共同行動がなかなか成立してこなかったことを考えると画期的なことだと評価できよう。

基調提起をもとに討論

 基調提起では、「校務改善」が出てくる背景、その狙い、そしていかに闘うかが提起された。校長・主幹教諭の受験率の低下に危機感を持った都教委は2006年に「教育管理職等の任用・育成のあり方検討委員会」(通称「あり方」検路線)を設置し二次にわたる報告を出した。第二次報告の中では、学校事務職員の活用として「行政職として、これまで以上に学校経営への参画が求められ、積極的な取組が期待されることから、学校運営部(仮称)を設置する場合等に事務職員をその基幹職員として位置づける」とあり、まさに経営支援部の片鱗が伺われる。つまり「あり方」検路線の延長線上に「校務改善」もあるのだ。

事務職員にとっての経営支援部

 「あり方検路線」では実際に「学校運営部」を作ることはできなかった。しかも昨年出てきた職務標準も各地区で頓挫している。それらを一挙に解決するのが「経営支援部」なのだ。副校長、主幹教諭、事務職員、用務職員を構成メンバーとし、他の教務部等の分掌組織の上位組織として学校全体を管理し、副校長がチーフであるセクションが経営支援部である。その中で副校長の嫌な仕事を事務職員に押し付けようというのがその内実である。私たちはそんなセクションに入るのはごめんだ!

学校全体の支配の要?

 経営支援部設置は事務職員だけの問題ではなく、学校全体の支配構造の強化の問題でもある。他の校務分掌組織の上位に位置づく経営支援部は上位下達のあり方をますます助長させることだろう。職員会議はますます形骸化させられるだろう。そういう意味からいえば、教員の問題でもある。

 共同学習会には東京教組、アイム89の教員も参加していた。自由闊達で風通しのよい職場を作るためにはぜひとも教員組合との共闘も重要だ。

組合間共闘で地教委を現場サイドに!

 モデル校になった事務職員からは現場の変化のなさが報告された。しかしモデル校の検証結果がどのようなものであれ、来年4月の経営支援部設置という結論は既に用意されたものなのだ。学習会においても地教委に対する取組の重要性が提起された。職務標準の時に多くの地教委が現場に配慮し、一方的に各学校に対して通知できなかったように、地教委はある程度現場の苦悩を理解しうる。今秋、私たちは今回の組合間共闘を梃子に各地区において地教委が私たちの側に立つよう、都教委の代弁者にならないよう粘り強い取り組みを行っていきたい。

(学校事務ユニオン東京JIM-UNION NO.1892011.9.26.より)

文部科学省来年度予算概算要求

小学校2年生35人以下学級を中心に定数改善7,000人を要求

 例年より一月遅れで来年度予算概算要求が出された。文部科学省は、義務教育費国庫負担金として、昨年より30億円多い1兆5,696億円を要求した。そのうちの152億円が教職員定数改善分だ。その内訳は、「小学校2年生の35人以下学級」のために4,100人、「学習支援が真に必要な児童生徒への支援の充実」で2,500人、「きめ細やかで質の高い指導の充実」で500人、このほか既存の研修等定数を100人合理化減することで合計7,000人としている。この改善分は「日本再生重点化措置」6,000人・130億円と「復旧復興対策経費」1,000人・22億円と一致している。すなわち定数改善分は日本再生と復旧復興対策で賄おうということだ。(図参照)

文科省概算要求

 定数改善分の金額は152億円だが、教職員定数の自然減が4,900人・107億円と教職員の若返り等による給与減を15億円と見積もって差し引くと30億円となり、冒頭で述べた通りこの分が義務教育費国庫負担金の前年より多い要求となる。

 また、なぜか今年は明記されてはいないが、文科省からの聞き取りによると「小学校2年生の35人以下学級」の4,100人には事務職員110人分が含まれている。さらに「きめ細やかで質の高い指導の充実」の中に「地域連携のコーディネーターとしての役割を担う事務職員の充実」とあるが、これは現在800校ほどある研究指定校に対する加配を、担当課の要請で盛り込んだものだ。

 いずれにしても昨年同様予算編成作業の中で、財務省・総務省との厳しい折衝を経ることになる。文科省の設置した「公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議」もまだ継続している。今後の動向に注目しよう。(10/13記)


2011年度全国代表者会議開催される

 震災の影響により1回分見送られていた全国代表者会議が、9月の全交流横浜に先立ち開催された。被災地である福島に勤務している議長からは、挨拶の中で、原発事故の問題や、学校現場での混乱の状況などが語られた。また、この間全学労連が課題としている臨時職員問題でも新たな課題が出てきていて、一層の取り組み強化が促された。

 方針大綱も3月に議論できなかったが、大きな修正・意見がこの間出されていなかったため、この場で了承されたものとし、確認された。また、文科省への賃金要望書や、共済組合への要求事項、さらには秋の中央行動への提案がなされ、いずれも確認された。

2011年度 全学労連運動方針大綱



全交流記録集できました。

 この紙面で、概要を載せる予定でしたが、スペースの関係で今号では難しくなりました。記録集が完成しておりますので、もし、詳しく知りたい方は、お譲りできるかもしれません。事務局へご一報ください。

 また、全交流は参加した方がより楽しめます。様々が議論や、語り手の臨場感は、その場にいないと味わえません。是非、次回は皆さんで参加をしましょう。事務局、開催地実行委員ともにお待ちしております。



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