2012年1月28日

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全学労連ニュース今号の内容

 取り返しの付かない世界、どう生きるか。

 12.2全学労連中央行動報告 反原発、非正規雇用者の労働条件改善を強くアピール

 「教育基本条例案」「職員基本条例案」を是が非でも否決へ 橋下・大阪維新圧勝で大阪を覆う暗雲を吹き飛ばせ!

取り返しの付かない世界、どう生きるか。

 2011年3月。この世界は「取り返しの付かない」ことになってしまった。空に海に大地に放射性物質が撒き散らされた。

 わが身は、3月13日から空からのγ線に貫かれ、そして空気、水、食料から体内に入った放射性ヨウ素やら放射性セシウムが我が臓器の中でβ線γ線を出している。たぶん「直ちに健康に影響はない」のだろう。

 齢60を数える身には、「直ちに」ではない時間は少ないが、年若い人たちのことを考えると、「取り返しの付かない」世にしてしまった責任・後悔・反省がある。

 世界でも有数な地震国。巨大津波が襲う国。その上猛烈な放射線を出す極めて危険な使用済燃料を処理することが出来ない。それなのに54基の原発が日本に作られた。なぜ「原発を止められなかったのか」。原発を止められなかったから、福島原発は、全世界に放射性物質を撒き散らした。放射性物質が身の回りから消えるまで何十年、何百年、何千年、何万年もかかる。なぜ「原発を止められなかったのか」。

 3.11以降、いわき市内のデモ(パレード)には驚くほどの人々が集まり、雨中の福島市でのデモにもたくさんの人が集結した。9月の東京の6万人集会とデモは、明治公園に人が溢れた。だが、私の取り組みは不十分だったのだ。反原発の動きは3.11まで足りなかった。だからこそ、これからの反原発の運動は重大だと思う。

 いま、野田総理は「事故収束」と言う。冗談じゃない、今も壊れた原子炉から、空に海に放射性物質はダダ漏れしている。東電は放射性物質で汚染した水を、保管場所がいっぱいになりそうだから、また海に放出したいという。何が「事故収束」だ。

 私たちは、3.11から「我慢」は十分した。これからはもっと「怒り」を。そして、「怒り」を持続させなければならない。それが、「取り返しのつかない」世界にしてしまった責任のとり方だと思う。

反原発は反原爆

 世界で始めて作られた実用的な原子炉は原爆製造のためだった。1945年8月長崎に落とされたプルトニウム原爆のために作られた。原発ではウラン235の核分裂で熱が出る、そのとき分裂しないウラン238が中性子を吸収してプルトニウム239に変わる。これがプルトニウム原爆の材料なのだ。原発は運転をするだけで原爆の材料を作っている。

 原発がコスト的にも他の発電方法より割が合わないことが政府も認めるようになってきたが(それでも計算方法には大きなウソが含まれている)、それでも原発にこだわるのは作り出したプルトニウムが原爆の材料だからなのだ。

 現在、日本が保有するプルトニウムは45トン。何と原子爆弾5600発分(IAEAはプルトニウム8キロで1発と換算)。日本は潜在的核兵器保有国なのである。それも大量の。

 日本の有り余るプルトニウムに世界は不信の目を向けている。それの目を避けようと、実績作りのためプルサーマルで少し使おうとしているが、うまくいかない。大量に使えるはずの高速増殖炉は、原型炉「もんじゆ」は絶対動かない。日本のプルトニウムは、どこに行くのか。猛毒、放射能も危険、半減期は長い(24000年)。

 原発を止めるのは、日本の核武装をやめさせる取り組みにつながっている。もちろん今あるプルトニウムへの強い監視の目を続けなければならないが。

(議長 菅原)

12.2 全学労連中央行動報告

反原発、非正規雇用者の労働条件改善を強くアピール

 12月2日、全学労連は教員独立組合の全学労組と共催で、「子どもを放射線被害から守れ!」「学校で働く労働者の権利を守れ!」をスローガンに全国総決起集会を行った。それに先立ち、午前中は各省各団体への要請と、午後の集会前に文教関係の両院国会議員への要請行動も行った。

◎各省・団体等要請行動◎

各省、各団体への要請項目は次のとおり。

  1. すべての原子力発電所を廃炉にし、子ども・教職員を放射能被害から守るための対策を早急に講じること
  2. 教職員定数の抜本的な改善を図ること
  3. 学校事務の共同実施推進をやめ、学校事務職員定数の抜本的改善を図ること
  4. 大量の欠員を生じさせないこと
  5. 非正規教職員の労働条件を改善すること
  6. 教育の完全な無料化を図ること

文部科学省―当事者意識のないきわめて不誠実な回答―

 3月11日の震災、分けても福島の原発事故と複合した原発震災の深刻な影響が広がるなかで、例年10〜11月に設定されていた文科省との賃金改善に関する交渉は大幅にずれこみ、今年は12月2日(全学労組との共同行動当日)に設定された。原発の廃炉と現実に進行する放射能汚染から子どもたちを守る手立てを講じることなどを盛り込んだ「学校教育に関する要望書」の提出と併せて厳しく文科省を追及した。以下、簡単に報告する。

(1) 全学労連は学校行革対策部作成の職種別定数充足率及び本採用―臨任構成についての推移(2006〜2011)に関する資料を提示しながら、学校で働く非正規雇用労働者の労働条件の抜本的改善について文科省に迫った。年々増加し続けている非正規労働者の劣悪な労働条件が職種間差別を伴いながら放置されていること、しかも都道府県間で恣意的な賃金の上限設定による不当な格差があること指摘しつつ、非正規労働者の労働条件改善の第一歩として実態調査を早急に実施することを要求した。これに対して文科省は、国家公務員賃金の大幅削減が検討されているなかで賃金改善は困難だ。各都道府県が適切に措置しているはずである。学校現場に様々な調査を依頼することは多忙化の原因ともなるので新たな調査の依頼は難しいという極めて不誠実な回答に終始した。これに対して全学労連は、被災に伴う災害給付において正規―非正規間の歴然たる差別があり、賃金のみならず休暇や社会保障等を巡る不当な差別によって非正規労働者の生活権が脅かされていることを福島の仲間から具体的事例に即して指摘した。本当に必要な調査とは何かということを根本に立ち返って考えてほしいと訴えた。

(2) 学校におけるサービス残業(無制限時間外労働)体制は、給特法―「成果主義」に基づく差別賃金制度によってより強化されつつある。休憩時間を保障されない長時間過密労働の蔓延は、確実に学校現場の労働者を蝕んでいくものである。この体制を解消していくために、給特法―人事評価制度の廃止を求めるとともに、学校における労働時間の記録がなされているか調査すること、「学校労働者への評価制度」の実態把握とその結果の公表を併せて要求した。

 正規―非正規労働者の差別分断構造を総体として克服していくことを展望しつつ、今回の交渉をうけた取り組みを考えていく必要がある。文科省が私たちの提起する調査をあくまでも拒むというのであれば、全学労組と緊密に連携しながら自前の実態調査を行ないその調査結果を踏まえて学校で働く労働者の権利を実現すべく文科省に要求をつきつけていかねばならない。原発事故による放射能汚染から人々の、とりわけ子どもたちのいのちを守っていくことと、私たち労働者がまっとうにはたらき生きていく権利を要求していくことをしっかりと結びつけ闘いをすすめていかねばならない。文科省への怒りとともに、そのことをあらためて痛感させられる交渉であった。

(事務局 羽成)

総務省―期付雇用の労働条件改善を要求―

 総務省への課題は、@今年6月に出された地方公務員の労使関係制度の改革の進捗状況を問い質す事。A地方公務員の共済組合制度に関連して、民間の雇用保険にある高齢者雇用継続給付金制度(定年退職後の賃金が定年時の75%に満たない場合差額を補償する制度)が地方公務員共済組合で実施していない理由を質し実施を求める事と、特に学校現場に多く存在している期限付き雇用労働者が共済組合に入れるように求める事。B例年関係省庁や団体に対し実施している行動の一環で、学校教育の充実に関する要請書を提出する事の三つである。

 @に関しては自治行政局公務員課が対応した。6月に文書を出したが、国家公務員の制度改革が進まないので、未だにほとんど進展が無い状態であり、今後の見通しも立たないとの事。

 Aに関しては、高齢者雇用継続給付金制度というものは承知しているが、高齢公務員の定年制や働き方をどう考えるかの問題であり、期限付き雇用労働者の共済加入も合わせて、その議論が進んでいないとの事。内容的に特に進展は無かったが、学校現場の実態を訴えることにより、地方公務員共済制度の元締めとも言うべき総務省に対する問題提起となった。この課題は今後総務省はもとより、所管の文部科学省や公立学校共済組合とも交渉をしていく予定である。

 Bについては時間が無く、今年は要請書の提出だけとなったが、例年の教職員定数の充実や非正規教職員の労働条件改善に加えて、今年は特に子どもと教職員を放射能被害から守るための対策の要求を盛り込んだ。

全国知事会―原発事故後の国の安全基準を憂慮―

組: 要請内容について、3.11後の状況を受けて、放射能対策を第1に上げている。2以降は、事務職員定数に関わる事項、非正規労働者に関する事項、教育の完全無料化に向けての要請で、ほぼ昨年と同様の要請内容。立場の違いを超えて取り組みをお願いしたい。

知: 1について、当該県とそうでない所で取り組みの違いはあるが、改善に向け何とかしたいとの思いは、皆同じだと思う。

   定数問題は、全ての都道府県で基本的に改革の対象だが、学校と警察は別の取り扱いが必要だとの認識はある。

   非正規雇用は、それぞれの県での事情があるのでは。

   教育の無料化については、対中央との関係が重要だと思う。

   要請書は、全国の知事に回送する。

組: 資料にあるように教員に比べて学校事務職員は、ほとんどの県で欠員状況だ。特に東京都の欠員状況は異常だ。

知: 東京都の状況は承知しているが、何故なのか。

組: 人事任用制度に違いがあるのだが。

   今、知事会としてのまとまりは? 以前は片山さんの頃の「闘う知事会」の呼び名もあったが。

知: 以前より対中央(地方分権?)と言う関係では、個々の知事の個性を超えてまとまっていると思う。知事会として具体的に何かを取り組むと言うことではないが。

組: 東北被災地の瓦礫処分に関わって、一部地方では受け入れ拒否の態度が見られるが、「地方ナショナリズム」みたいなものがあるのでは?

知: そうではなくて、住民の拒否反応が原因だ。正しい安全基準を示されれば協力する姿勢だ。ただ、基準がブレて混乱が生じていると思う。

組: 重ねて、立場の違いを超えて、あらゆる場での取り組みを要請したい。宜しくお願いします。


 その他、都道府県教育委員会教育長連合会や財務省にも要請を行った。

参議院・衆議院議員文教関係議員要請

 午後は18チームで手分けをして参議院文教科学委員と衆議院文部科学委員の国会議員に要請書と定数一覧の資料を手渡した。国会会期中と言うこともあり、ほとんどが秘書対応だったが、じっくり話を聞いてくれるところがあったり、「文科省の資料よりもおもしろそうですね。」という言葉もいただいたりした。

◎総決起集会及びデモ◎

 総決起集会は参議院議員会館内の会議室にて行った。冒頭、全学労連菅原代表から震災と原発事故に際して、全国から福事労へのカンパが寄せられたことへの御礼が述べられた。午前中に文科省交渉を終えた全学労組の吉田代表からは、その交渉の内容報告が語られた。また、共同開催であるこの決起集会などを通し、中身の濃い共同行動を追求していく決意が表明された。

 その後、各地からの情勢報告。福事労から原発震災下での苦闘の報告、大阪教育合同から橋下・維新の会のダブル選挙勝利後の闘い方、横校労からはストロンチウム90が出た横浜での放射能除染の取り組み、北九州ういからはココロ裁判が最高裁で上告されたものの反対補足意見に今後の闘い方の報告、がくろう神奈川から不当逮捕された4名がそれぞれ登場して不起訴を勝ち取った報告、沖学労からは辺野古への基地移転と中江のヘリパッド建設の現状が報告された。

 共闘団体から連帯の挨拶、集会宣言採択、団結ガンバローの後デモへと移った。

 デモは出発地の社会文化会館から赤坂見附を通り、拡声器などによるシュプレヒコールでアピール。その後文科省前で大きくアピール。経産省前では市民団体のテント村へエールを送った。そして日比谷公園へとデモは続く。参加者は最後まで大きな声でシュプレヒコールを響かせた。

集会宣言

 2011年3月11日の東日本大震災によって引き起こされた福島の原発事故はいまだ収束せず、深刻な放射能汚染が広がりつつある。震災によって被災した人々への持続的な支援とともに、今後も長期にわたって予想される人々の、とりわけ、子どもたちの放射能による健康被害をおしとどめていく取組みを急がねばならない。全学労組―全学労連に集う私たちもまた、その取り組みの一端に連なっていきたいと思う。

 と同時に、これほどの事故が起きてもなお、原発を止めず運転再開を強行し、原発推進教育を続けようとする政府―文部科学省を厳しく糾弾し、一刻も早く原発廃棄を実現していかねばならない。そのことを私たちの共同の意思としてはっきりと示そう。

 3.11以後私たちが身をもって経験してきたことは、この国の戦後の矛盾の積み重なりが、一挙に噴き出してきて、いやがおうでもその情況と対峙していくことを迫られているということではないだろうか。新自由主義の破綻、資本主義そのものが大きく行き詰まるなかで、引き起された原発震災。その背景に核の傘―沖縄の米軍基地を前提とした日本の安全保障政策と、「原子力の平和利用」の名の下に福島をはじめとする原発立地地域に矛盾を押し付ける産業政策(潜在的核保有=核武装)があった。科学技術を過信し生産力(効率)至上主義と力による支配を疑わない核レジームとも言うべき強固な体制が一切の批判を押しつぶして築かれてきた。1945年の沖縄の地上戦、広島・長崎への原爆投下によって敗戦に追い込まれ、その廃墟から、戦争を否定し、軍隊によらない平和を希求して社会を創りだしていこうとした原点に立ち返るべき時が来ているのだと思う。国家主義―市場主義、そしてなによりも能力主義に貫かれた「改正」教育基本法体制下の教育は、インクルーシブな教育―社会の実現に向け根本的に転換されていかねばならない。究極の上意下達体制を構築しようとする橋下新大阪市長による「教育基本条例」「職員基本条例」制定策動を許さず、労働者の自由と連帯を自らの労働の現場から創出していこう。新学習指導要領の本格実施の中でより一層の長時間過密労働が強いられ、「教育民営化」によって非正規労働者のさらなる導入・拡大が図られようとしていることに反対していこう。

 改めて確認しよう。地域で生まれ、育ち、学び、働き、共に生きていくことのできる、私たち自身が生き延び、次の世代に、のちに生まれてくる者たちに、そのような世界を手渡していくために、原発をとめ、核を廃絶しよう。未来への希望を語ることのできる労働者の運動、その第一歩を共に歩みだそう。

2011年12月2日

全学労連・全学労組全国総決起集会参加者一同

「教育基本条例案」「職員基本条例案」を是が非でも否決へ

橋下・大阪維新圧勝で大阪を覆う暗雲を吹き飛ばせ!

民主党への不信感か・・・

 皆さん周知のとおり大阪の府知事・市長同時選挙で、橋下・大阪維新の会が圧勝した。知事選では、自民・民主が手を繋ぎ、市長選では、共産が候補者を降ろしてまで反維新で戦った結果がだ。戦前の予想では、自民・民主・公明が手を組んでも互角か、あるいは危ういと言われていたのに、公明は次期国政選挙を意識して自主投票に逃げた。大きかったのは、投票率だった。大阪でのこれまでの投票率は、恥ずかしながら30%台だったのが、60%に届く投票率で、平松氏は前回よりも得票数を伸ばしたにも関わらず負けた。橋下の選挙戦後半の呼びかけは「誰に入れてもいい。選挙に行かなければ変わらない。」だった。伸びた投票率のほとんどが維新へ投じられたのだ。30代を中心にした若年層は、「何かが変わる」と根拠の無い期待感だけで維新に投じた。その背景は時代の閉塞感と「民主も自民と同じでだめだった」との失望感だ。

公務員・学校労働者に矛先が・・・

 橋下は、「民意は我にあり」と意気軒昂に勝利宣言し、返す刀で「民意に従わぬ役人は役所を去れ!」と迫った。また、民主・自民の中央は、早くも橋下にすり寄り「大阪都構想」に協力の姿勢を示した。住民不在の権力収斂の流れがどす黒く流れ出した。

 即悪影響を受けるのが、公務員労働者、学校労働者だ。「教育基本条例案」・「職員基本条例案」が控えている。大阪市議会では、既に9月議会で維新の会提案の両条例案は否決されたが、橋下は、市長提案として再度2月市議会に掛けると宣言。継続審議となった府議会も、2月議会で採決を予定している。この両条例案は、是非を論じる以前の問題として憲法・教育基本法・地教行法等の上位法を超越しており、各界から反対声明が上げられ、橋下の肝いりで就任した府教育委員が連名で「反対宣言」を上げ、成立すれば辞職すると発表した。(その後協議に応じる姿勢に変わったが)そして、文科省も「違法性」を指摘している。詳しくは「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪のホームページをご覧頂きたい。

静観していてはいられない

 我々は、選挙結果には正直意気消沈したが、黙してどす黒い潮流に飲まれる分けにはいかない。我々は、両条例案が何なのかも知らず、ただただ根拠の無い期待感だけで橋下・大阪維新に投票した大阪府民にその実態を示し、両条例案反対の声を広め、条例案反対うねりを作りだし、2月議会での否決を目指さざす。「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪は、連日の街頭宣伝活動を予定している。大阪を守るために。大阪の教育を守るために。共に闘おう。

(阪学労 銅 則夫)



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