2013年1月31日

top> ニュース> 351号

全学労連ニュース今号の内容

 アベノトンデモ政策を撃て

 「共同実施」がもたらす合理化に歯止めをかけろ!―進行する学校事務のリストラ―

アベノトンデモ政策を撃て

議長  菅原 孝

 昨年の衆議院選挙結果のショックを引きずり新年を迎えた。安倍政権のトンデモ政策には、近い将来の不安を掻き立てられる。アベノトンデモ政策を撃つ。

物価上昇率年2%と、生活保護費8%カットがセット

 アベノミックスなる経済政策が進められようとしている。金融・財政・成長政策で年率2%のインフレを起こすという。これは毎年の賃上げが2%を超えないと、労働者の生活は必ず苦しくなる政策である。最近賃上げはあったのか。

 賃上げの後の物価上昇ならば安心だが、初めにインフレ有りきの政策はトンデモない。インフレで生き延びるのは資産のある者たちだけだ。少しばかりの預金は目減りするばかり。年金生活者には毎年生活が苦しくなることが予言されている。

 その上、生活保護費を8%カットするという。これもトンデモない話だ。物価が上がれば生活保護費も上がるのが当然で、二重の生活苦を強いることになる。就学援助、最低賃金、住民税にも悪影響を与えるだろう。

 退職金削減は現在進行形。「定年(60歳)になって年金がもらえるのに、年金を停止して3月31日まで働いてください。」というのが、公務員が60過ぎても年度末まで働く制度だ。それを年度末までわずかの1月、2月に制度を変えようとしたことが大間違い。その責任は総務省や浅はかな一部の知事の責任だ。

 国家公務員の賃金カットに合わせて地方公務員給与カットのため交付税の引下げが画策されている。物価上昇を目的とした政権が賃下げを画策する。民間労働者の賃金を上げたくない財界と示し合わせたものに見える。

 労働者の生活を破壊するアベノトンデモ政策を撃て。

お国のための「教育改革」と、お国を守る国防軍がセットに。

 安倍政権の「教育改革」が再び始まろうとしている。政権の意図を先取りした文科省は、早速「心のノート」を配布することにし、学力テストも悉皆だという。また、35人学級の拡大は断念させられた。

 前回安倍内閣の「教育改革で」で教育基本法が改悪され、すでに「国家のためになる教育」になった。これからの「教育改革」は、国防軍(憲法改悪)につながるものに進むだろう。

 それは、国を守るためにすべての若者に国を守る責任を負わせる「徴兵制」である。そして戦争体制を強制するため基本的人権を無視できる「戒厳令」につながる。

 戦争をする国つくりの「アベノ教育改革」を撃て。

共同実施の潮目

 東京で「共同実施」が始まろうとしている。詳細は別稿で報じているが、それは「徹頭徹尾合理化のための共同実施」である。これまでの「最初は、事務研に毛の生えた共同実施で、そのうち合理化につながってしまった共同実施」ではなく、初めから合理化を目的にしている。東京都教委は事前に大分県などの「共同実施先進県」を視察し、そこで「共同実施で学校事務職員の欠員・非常勤化を進めることができる」を確信したのか。東京が「共同実施」の本性丸出しの政策を出してきたことの問題は大きい。

 「事務研に毛の生えたもの」から始まった「共同実施」が時間を重ねていくうちに「合理化の手段としての共同実施」に変遷していった事例は九州各県の実態が証明している。しかし、今東京で出された「共同実施」は「共同実施幻想」を吹き飛ばすものなのである。「共同実施の潮目が変わった」と理解せねばならない。

 「東京方式共同実施」の全国への波及を止めよう。

(つづく)

「共同実施」がもたらす合理化に歯止めをかけろ!

―進行する学校事務のリストラ―

☆東京都では

2012年11月15日付東京都中学校長会会報より

 

■ 9月 地区代表者連絡会報告

   日時 平成24年9月11日 (火) 15時〜

   場所 新宿コズミックセンター

 

1 行政説明

(1) 「小中学校事務共同実施について」

東京都教育庁総務部  松山 英幸 部長

  • 正規職員を減らし、人件費の余剰分で非常勤職員を雇用し、拠点校以外の学校にはその非常勤職員を当て、日常の事務処理に当たらせる。
    (週4日勤務、私費会計の管理にも当たらせる)
  • 拠点校の事務職員には兼務発令を行う。
  • 必要な事態が発生すれば担当校へ出向。
  • 予算編成などは正規職員が行う。
  • 江東区・武蔵村山市から実施し、10年程度のスパンで全体実施を考えている

 まずは右の資料を見て欲しい。東京都教育庁の部長が中学校長会の会議で行った発言の報告だ。「小中学校事務共同実施」が人員削減・不安定かつ低賃金雇用の増大・労働強化をもたらすものとして露骨に語られている。

 元々東京都は、定数標準法で定められた学校事務職員の数(定数)に対して実際に配置された数(実数)が少なく(以下「定数割れ」と表記)、大量の欠員が常態化していた。これには知事部局との任用一本化により学校現場に人材が定着しづらい等事情は様々有るにせよ、法で定められた定数に対して長期間にわたり大量の欠員を生じさせる事態というのは、学校事務職員制度にとって深刻な問題であった。

 ところが東京都教育庁は、欠員の解消への努力どころか更に人減らしを促進する方策を言い出した。そのために持ち出されたのが「学校事務共同実施」なのだ。

☆未だに定着出来ない「共同実施」

 1998年9月に中央教育審議会が「共同実施」を言い出してから、まもなく15年もが経過しようとしている。これに飛び付き推進しようとした人々の「涙ぐましい努力」にも拘らず、未だに学校事務の有効な手法として定式化されることもなく、それどころか各地域でバラバラかつ恣意的な取り組みが進み、それを内容抜きで「共同実施」と呼んでいる。

 そもそもが無理なのだ。千差万別に日々変わる学校現場の実態に即し、殆ど1人かせいぜい2人で個別具体的に対応せねばならない学校事務職員が、顔の見えない他校の事情に首を突っ込んでも、事務処理の効率化・適正化も事務職員の資質・意欲の向上も学校の自主性・自律性の確立もすべて中途半端となる。学校間の情報交換と事例研究程度の交流があれば十分だ。さらに事務職員で推進する側の多く(全てとは言わないが…)が、グループリーダーから事務長・管理職の「上位事務職員」となる下心が本音として見え見えで、元々の動機が不純である。もっともらしい言葉で現場実態を知らない役人をダマせても、多くの現場事務職員はシラケきるだけだろう。

 それに比べると、東京都教育庁の目的は明確である。人減らし合理化のために「共同実施」を使おうというのだから、善悪は別にして大変わかり易い。だからこそ事態は深刻である。

☆東京だけではない、全国的に深刻な事態が進行

 「共同実施」が提唱された当初から、このたびの東京都のような行政のリストラに利用される危険性の指摘はされていた。しかしそれを無視して、これこそが新しい道とばかり突き進んできた結果が、今や全国的に深刻な事態を引き起こしている。この話をわかり易くするためにグラフを二つ作ってみた。どちらも文部科学省が把握している数字から2006年と2012年を抜き出し分析してまとめたものだ。都道府県の中で特徴的なところを抜粋してある。

定数割れ

公立学校事務職員の定数に対する本採用と臨任構成

 右のグラフは、小中学校事務職員の標準法に定められた定数に対して、実際に配置されている本採用と臨時的任用職員(以下「臨任」と表記)の人数の構成比率を棒グラフで示したものだ。100%ラインが本来配置されるべき事務職員の数(定数)となる。

 一目見て100%ラインに届かず定数割れしているところの多さが目立つ。6年前と比べて定数割れの進行が著しいのが愛媛と大分。冒頭でも述べたとおり東京都は前からひどい定数割れが常態化していたが、実は大分は昨年度から東京都を上回る定数割れ状態なのだ。決して偶然ではないと思うが、東京都が「共同実施」のモデルとして視察に行ったのがこの二県だという。

臨時的任用の増大

 もう一つ見るべきは臨任比率の増加だ。大阪はずっと高い比率だが、6年前から5%以上増えているのは、北海道・岩手・秋田・埼玉・東京・三重・京都・兵庫・島根・岡山・広島・宮崎・沖縄である。特に岩手・宮崎は著しくて、15%を超える増加だ。岩手・埼玉・東京・大阪・兵庫・島根は定数割れが多少改善しているが、それは要するに、定数割れを臨任の増加で埋めているという事にすぎず、改善以上に臨任比率は増加している。

 ちなみに、埼玉の定数割れが改善しているように見えるのは、昨年度まで入れていなかった就学援助加配と特別支援学級を定数算定に含めて、定数標準法本来の姿に近づけたからに過ぎない。北海道・青森・秋田・京都・岡山・広島・愛媛・宮崎・沖縄は定数割れと臨任比率の増加が同時進行している。全国のグラフもこれに当てはまり、全国的な傾向であることがわかる。

※ 誤解の無いよう補足するが、臨任の増加の問題の本質は、最近文部科学省や教育委員会連合会が言っているように、臨任だからその能力や働き方が問題だという差別的なものではなく、雇用が不安定で低い労働条件を余儀なくされている労働者の増加自体が不当であり、全体の雇用不安定と労働条件の低位標準化を招くという問題なのだ。

教員に食われる定数

校長教諭等と事務職員の定数充足率比較

 次に左のグラフ、本採用か臨任かを問わず定数に対して実際に配置されている職員数の比率(定数充足率)を、校長教諭等(いわゆる教員)と事務職員それぞれの棒グラフを重ねたものだ。前のグラフと同じく100%ラインが定数で、当然ながら事務職員は前のグラフの本採用と臨任を合計した長さの棒になる。

 一目でわかるのは、最初のグラフで指摘したとおり事務職員はほとんどが定数割れだが、それとは逆に、教員はほとんど(2012年は全て)100%ラインを越えている。すなわち定数以上に配置されているということだ。6年前と比較すると、事務が減っても教員が伸びていたり、たとえ事務が伸びたとしても教員はそれ以上に伸びていたりするところが多い。鳥取などは事務の減少に対して教員の伸びが著しい。教員数を伸ばすために事務職員数が食われていると言える。

 直接教育に従事する立場ではないとしても、同じ定数標準法や国庫負担法の適用を受けているにもかかわらず、教員に比べると事務職員の扱いのひどさが際立つ。文部科学省は「基幹職種」というが、「あるべき姿」や「職務の確立」どころか、現実は職としての存続が危うくなりつつあるのではないだろうか。

☆なぜこうなるのか?

 実は紹介したグラフで6年前との比較をしたのには訳がある。6年前に何があったか?当時の小泉内閣の推進した三位一体改革で、義務教育費国庫負担制度はかろうじて存続したが、教職員給与費の国庫負担率は1/2から1/3に引き下げられた。これとセットで定数の総額裁量制が導入されたのが6年前なのだ。すなわち定数標準法の職種別定数枠の規制を大幅に緩和して、実際に配置された実数に基づいて国庫負担金が決まるという仕組みだ。

 これにより自治体の裁量によって欠員・増員がやり易くなり、加えて定数加配方式と財政悪化からくる賃金抑制策で不安定で低賃金雇用の臨任者が増大する。二つのグラフで見た事態がその6年後の現実である。職種別定数枠を無くすという考え方は、先に紹介した「1998年の中教審答申の中にすでに盛り込まれていた。その時は「総額裁量制」という言い方はなかったが、職種別定数枠を無くすことと「共同実施」は、初めから同じ文脈で構想されたものと言っていいだろう。

☆行政に利用される「共同実施」

 教育の枠内だけで「共同実施」が完結することはあり得ない。国庫負担率が引き下げられたということはその分都道府県の財政負担が増えたということだ。何も東京に限ったことではない。財政悪化と総務省の人件費削減圧力をうけている行政側の視点で見れば、定数の規制が緩和された現在、事務職員の数を減らし不安定で低賃金雇用の臨任者を増やした後の仕事上の穴埋めのために「共同実施」に興味を示すのは当然のことだろう。文部科学省の内部にも、「共同実施」がリストラに利用されることを危惧する意見が出始めているという。

 グラフで上げた都道府県が「共同実施」の推進をしているのは、これも決して偶然ではないだろう。学校教育の枠内で「共同実施」にうつつを抜かしている間に、行政リストラの動きは確実にそれを利用できる手段として利用しつつある。

 学校事務職員が危惧しなければならないのは、「共同実施」が定着しないことではなく、その陰で職の基盤そのものが空洞化し、リストラに向かっている事態ではないか。

 「共同実施」に歯止めをかけよう。



top> ニュース> 351号


無料WEB-pageスペースを利用しているため、広告が表示されますが、全学労連とは無関係です。



inserted by FC2 system