2013年3月26日

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全学労連ニュース今号の内容

 教職員の人事権と給与負担の政令市移管報道を受け、あらためて教育の格差拡大にNO!を突きつけよう

 3・9「つながろう フクシマ!さようなら原発大集会」に1万5千人が結集―原発の再稼働・輸出は許せない。原発は民主主義と相容れない―

 3月2日共同実施にNO!学習交流集会in江東  100名の参加をもって開催!

教職員の人事権と給与負担の政令市移管報道を受け

あらためて教育の格差拡大にNO!を突きつけよう

全学労連学校行革対策部 佐野 均

☆マスコミの報道は誤報か?

 今年3月8日に政府は「地方分権改革推進本部」の第1回目の会議を開催して「義務付け・枠付けの第4次見直しについて」という文書を了承した。これは小泉内閣の三位一体改革以来、形を変えつつ進められてきた、国が地方自治体を法的に縛っている業務の項目を「地方分権」の名目で見直すという取り組みの安倍内閣版である。議事要旨によると、会議は午前8時33分から40分のわずか7分で終わっている。

 同日午前中に日経・産経・時事通信・NHKの報道機関はこの会議を報じる記事の中で、見直し項目の内容として公立学校教職員の人事権と給与負担の政令市移管を挙げている。そして3月12日に閣議決定し、4月に関連一括法案を国会に提出するというスケジュールを報じた。

 この報道を鵜呑みにすると、教職員の人事権と給与負担の政令市移管が法案に盛り込まれて、国会で審議されるかのように理解される。3月12日には全く同じ内容の文書が報道の通り閣議決定されている。

 しかし文書の該当箇所の中身を見ると、

 第30 次地方制度調査会において行われている大都市制度の見直しの審議状況及び教育行政の在り方についての検討状況を踏まえつつ、関係省庁において、関係者の理解を得て、速やかに結論を出した上で、指定都市へ移譲する。

とあり、関係省庁が「関係者の理解を得」るのはこれからで、「速やかに」とは言うものの「結論」はまだ出ていないという事がわかる。内閣府地方分権改革推進室が作成した第4次見直しの概要では、「主な例」として挙げられている中に教職員の人事権と給与負担の政令市移管は全く出てこない。要するに「主な例」ではないということだ。

 こう見ると、一連の報道は誤報・デマとは言わないが、ポイントがかなりずれた誤解を招くものであると言われても仕方がない。文部科学省の担当課に問い合わせても、政令市移管を含んだ閣議決定はこれまで何度もやられているが、関係者の合意が前提であり、それが実現できる状況ではないから無理だろうとそっけないものだった。

☆政府の動きと報道の背景について

 ではなぜこのような報道になったかと考えると、政府側の「地方のために分権改革を進める安倍内閣」をアピールしたい意図が伺える。

 今年1月15日に安倍内閣になって最初の「国と地方の協議の場」が開催された。議題は経済対策と、来年度予算編成及び地方財政対策についてである。この中で、災害復興のために国家公務員給与の平均7.8%削減措置に準じて、地方公務員給与も削減するように、来年度予算の地方交付税や国庫負担金等に反映させる方針が明らかにされた。これに対する地方団体側の反発は強く、厳しい意見が政府側に出された。それにもかかわらず、その後まとめられた来年度予算案でこの方針が変わることはなかった(「全学労連」352参照)。その後の新聞報道(3月5日付埼玉新聞)ではこの措置を「国の押しつけ」であるとして、「知事、政令市長8割が反対」と報じられている。また、あの東京都の猪瀬知事ですら、国庫負担減額分を補填して都教職員の給与を削減しないという(2月1日付日経)。

 こうした地方の批判の矛先を逸らす目的で地方分権改革を進めるポーズをアピールするために仕組まれたのが3月8日の「地方分権改革推進本部」の開催と、それを報じる報道と、性急な閣議決定から法案提出までのスケジュールである。

 従来の「地域主権戦略会議」を廃止し、新たに「地方分権改革推進本部」を設置しただけならば政権が変わったからとも思えるが、その第1回目のたった7分の会議で「義務付け・枠付けの第4次見直しについて」という文書を決めて、その数日後には閣議決定までしてしまう。しかも組織を入れ替えただけで、その内容は政権交代にも拘らず、従来の取り組み項目をほとんど踏襲し少し書き足しただけという矛盾に満ちたものなのだ。

 これを速報した報道機関も限定されたものであり、これも意図的なものが伺える。報道内容についても、すでに指摘したようにポイントがずれたものであり、小泉内閣の三位一体改革でそうだったように、一番金額的に大きく話題性のある教職員給与費をとりあえず持ち出して記事にしたという事ではないか。言い方を変えればそれだけ中身の無い政治的リークだったということだ。

☆全学労連の立場

 今回の一連の報道と安倍内閣の動きの背景は以上のようなものだったとしても、「地方分権」を口実にした教職員の人事権と給与負担の政令市移管と、さらにその中核市や市町村への移管の危険性や問題点が無くなった訳ではないということを忘れてはならない。

 給与負担と任命権・人事権との一致という議論は依然提示されているし、それは義務教育費国庫負担金を一般財源化するという議論に直結する。この議論の経緯と我々の立場については既に2008年6月27日付の「全学労連」308で述べているが、ここで述べた教育における労働条件も含めた地域間格差の拡大に反対するという立場は現在も変わるものではない。詳しくはその記事を参照してもらいたいが、以下にその中から一部を再掲することで改めてこの問題に対する立場表明としよう。

 文科省は、移譲に賛成している指定都市・中核市と反対している都道府県・町村の間の意見対立をどう調整するのか。これにより権限を「与えられる」(まさにこの表現がピッタリで、最初から自ら主張して実現する訳ではない)側が賛成するのは当然として、反対する側の一角を占める都道府県はいろいろ理屈をつけているが、結局既得権が失われる事への反発以上のものとは見られづらい。本当に深刻なのは小規模な市町村である。医療や福祉での人材不足はこれまでも指摘されてきたが、教育においても人材難が現実のものとなる。(…中略…)かくして教育部門でも「構造改革」による地方の切捨てが進む。

 身も蓋も無く言ってしまえば、我々にとって「地方分権」といっても所詮雇用者側の権力配分の変更に過ぎないのだが、問題は我々の労働条件にも直結するだけに、高見の見物を決め込む訳にはいかない。移譲のされ方によっては人事面・給与面での地域間格差拡大に大きな影響を与える。給与の県費負担制度が有ればこそ単独でいられた組合もバラバラに分断される可能性もある。ことによると国庫負担制度の廃止論が再燃するきっかけとなるかもしれない。いずれにせよ性急な制度改変を一方的にやらせてはならない。ここが組合の出番であり、頑張り所だ。

(3月15日記)

3・9「つながろう フクシマ!さようなら原発大集会」に1万5千人が結集

―原発の再稼働・輸出は許せない。原発は民主主義と相容れない―

 東日本大震災から2年を迎えようとする3月9日(土)、明治公園において「さようなら原発1千万署名市民の会」主催の「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」が開かれ、1万5千人が参加した。私たちも全学労連の仲間15名とともに参加した。

 第1部は各団体、各地からのリレートーク。福島県葛尾村民の集団訴訟の取り組み、NGO FOR JAPAN、原子力資料情報室、首都圏反原発連合、日本消費者連盟、上関原発建設に反対している祝島の島民、東海原発・浜岡原発・六ヶ所村再処理工場・泊原発の現地、福島県双葉町の前町長、浪江町の避難者からそれぞれの現状と取り組みの報告がなされた。

 第2部は呼びかけ人主体の集会。はじめに大震災の犠牲者に対して1分間の黙祷を行った。鎌田慧さんは「原発事故を繰り返さないという想いは福島の人々と共にある。空しい想いで亡くなった人がいる。人々が立ち直っていくために力を尽くしたい。経済の方が大事だという人たちがいるが、そのような政治家は認めない。力強くデモをして新たな気持ちで出発しよう」と訴えた。司会が1千万署名が820万筆に上ったと報告。続いて大江健三郎さんが「フクシマをなかったことにはさせない」と長崎原爆の被曝作家、林京子さんの作品を引用した上で「フクシマが長崎・広島を生き延びてきた人たちと結ばれている。広島・長崎そして福島をなかったことにしようとする連中と闘う。もう一台の原子炉も再稼働させぬ。そしてこのデモコースを完歩する」と決意を語った。福島の集会に参加している内橋克人さんは「原発事故の責任を取る者がいない。安倍政権の再稼働は合意なき国策であり、避難者を逃亡者呼ばわりする酷い現実を許してはならない。『フクシマ』を『福島』に戻せ。賢さを伴った勇気を取り戻そう」とメッセージを寄せた。

 続いて落合恵子さんが「誰も犠牲にしない社会を求めてきたが、原発の再稼働・輸出、オスプレイ配備、憲法改悪と悪い方向へ向かっている。でもくじけずに一歩一歩毎日を反原発デーにしていこう。一部の人でも苦しむ人がいる社会を変えよう。福島は私たち自身でありニヒリズムはしまっておこう。生きている限り心の中に反原発を持ち続けよう!」と挨拶した。

 司会が「今日はロンドン・パリ・アムステルダム・ベルリン・デュッセルドルフ・トゥルク・ベルンなどで同時開催されている」と発言すると歓声が上がった。

 澤地久枝さんは「福島で被曝した人たちはすべて国の責任で補償させよう。北海道では泊原発が動いていなくとも電気は足りた。世直しとはよい政治に変えることだ。一人一人が考える人間になろう」と呼びかけた。明治公園に飛来するヘリコプターは広瀬隆さんら「正しい報道をする会」がカンパを呼びかけて飛ばせていることが紹介された。その広瀬さんは「この2年間全国を走り回って伝えた人に感謝する。余震が12月から起こって大きな地震の予兆もある。地震が起こるとどこだ?と恐れている。再稼働を止めよう。一度冷やしたものを熱するのは危ない。関東でも蚊や鳥が鳴かない。フクシマの子どもたちの被曝を止めたい。反原発運動への弾圧は憲法改悪へとつながっていく。憲法を守りたい。原発を稼働させる方が大きな金がかかることをマスコミは報道してほしい」と訴えた。

 フランスからは「スーパーフェニックス反対闘争で死者が出た。原子力は民主主義と相容れないもので、これは世界的な民主主義の問題だ。声の力を信じよう(この日パリでは40kmの人間の鎖が作られた)」、イギリスからは「原発は核兵器より危険で、原発労働者、住民を被曝させる。原爆の何百倍の放射能を撒き散らす。再稼働、輸出、核武装はあってはならない。生き延びるため、未来を切り開くために声を上げよう」とメッセージが寄せられた。韓国の「核なき世界のための共同行動」のチェ・ヨル代表は「ソウルでも集会が開かれている。70団体で共同行動を作っている。核なき世界を一緒に作ろう」と挨拶を行った。最後に福島から京都に避難した斉藤夕香さんは「2人の子がいるが、放射能を測定して生活が変わった。20ミリシーベルトの文科省交渉に参加したりした。知らされずに遊ぶ子どもたちがいる。避難管理区域でないのに避難せざるをえなかった。事故は収束などしていない。悪化していることも知ってほしい。若い人に伝えよう」と訴えた。その後デモに出発した。

 安倍政権は原発再稼働と輸出を推進しようという予算を組んでいる。私たちはこのような政策には反対である。この国の一番のアキレス腱が原発とそれを推進する人々だ。昨年7月の代々木公園の頃より集会参加者は減っているが、「生きている限り心の中に反原発を持ち続けて行こう」と思った。

0310原発ゼロ大行動に6,000人が結集!

 翌3月10日、首都圏反原発連合が日比谷野音で開催した集会には6,000人が参加した。私たちは埼玉の仲間と5人で参加した。デモは2万人になり、霞門⇒総務省交差点左折⇒外務省・財務省・文科省左折⇒経産省前左折して一周し⇒財務省横の坂を国会議事堂方面⇒官邸前右折⇒衆参議院面会受付で請願書手交とシュプレヒコール⇒永田町。15時から17時まで国会周辺、省庁での抗議行動。17時から19時は国会前大集会が行われた。

 まだ、福島第一原発の事故が収束していないし、原因も究明されていない中での原発の再稼働が行われている。人々の怒りは収まらず、政府への抗議行動は続いていく。

(学校事務ユニオン東京JIM-UNION NO.225より)

3月2日共同実施にNO!学習交流集会in江東

100名の参加をもって開催!

全都教職員反対署名もスタート!1人でも多くの署名を!

 3月2日(土)14:00〜16:30江東区住吉のティアラ江東にて7者協議会主催により学習交流集会は開催された。参加者100名。モデル地区に指定された江東区において開催したことに大きな意味があるだろう。共同実施に反対するすべての組合が共同で行った集会としては歴史的な意味を持つだろう。この熱気が都教委まで届くことを願わんばかりである。

 冒頭学校事務ユニオン宮崎が基調報告。

 この流れは事務職員だけの問題ではなく、学校職員の非正規化、委託化などの民営化に通じるものであることを押さえた上で、都教委は10年のスパンで共同実施と校務改善を完成させようと目論んでいるので、私たちも長期的ビジョンを持って闘いを構築していく必要があることを強調した。

 続いてモデル実施地区の江東区と武蔵村山市から報告がなされた。同じモデル実施といえども地区事情によってかなり議論の内容も異なることが報告の中から浮き彫りとなった。江東区は中学校のみの6校、武蔵村山市は小学校2、中学校2の4校がモデル実施校であったが、来年度の試行実施もそのまま行われる予定である。

 拠点校と連携校との業務の仕分けであるが、武蔵村山市は、職務標準を3年前に策定した少数地区であったが、それを持ち出して検討がなされていることが判明した。江東区もより拠点校において多くの業務が共通的に処理できるものとされている。つまりこれらは学校現場に正規事務職員がいなくても学校現場が回っていくことの形式的論証を無理矢理作らされていることになるのである。

 それらの「仕分け」がいかに非現実的なものなのかを来年度の試行実施において私たちは明らかにさせていかねばならない。大分県において教頭が困ったように。矛盾を隠蔽せずに公にすることによって共同実施の破産を都教委に突きつけていける闘いを作り出していこう。

 この集会には東京だけではなく、神奈川や埼玉の事務職員も参加してくれた。会場発言もありその注目度の高さに驚かされた。もはや東京の共同実施は全国から注目されており、東京だけの問題ではないのである。

 最後に全都教職員署名の要請がなされた。今回の署名の特徴は非組合員の方々にもお願いして、事務職員が職場にこの署名を呼びかけるということにある。教員にも広く問題性を伝達していくことによって広範な共同実施反対の世論を形成していきたい。一人でも多くの署名を集め、都教委に突きつけよう!

(学校事務ユニオン東京JIM-UNION NO.225より)



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