2014年7月13日

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全学労連ニュース今号の内容

 福島第一原発破壊による影響を目の当たりにした  =現地ツアー参加報告記=

 有給休暇はもらうもの?

 労働法制大改悪反対!

 「全交流・愛知」のご案内

福島第一原発破壊による影響を目の当たりにした

=現地ツアー参加報告記=

 2014年5月31日日曜日。朝7時集横浜駅西口に集合した29人は、なかなか乗り心地の良いマイクロバスに、同じ組合員3人と共に乗り込み福島県に向かった。このツアーは日ごろ交流している寿労働者組合の仲間などが呼びかけたもので、福島第一原発事故による放射能を“除去”する(除染)作業を担う労働者の賃金のピンハネ分を取り返す活動を支援し、現地の実情を直に確かめようとする試みである。

未だに進まぬ復旧

敷地がバリケードで覆われた。(富岡町“夜ノ森”地区通り)
敷地がバリケードで覆われた。
(富岡町“夜ノ森”地区通り)

 11時過ぎには常磐道いわき四ツ倉パーキングに到着して、同道する仲間の車を待つ。福島第一原発まで25キロメートル。昨日からという暑さもさることながら、放射線量が気にかかるが、これよりやや北の広野町辺りまでは、生活風景は普通だった。12時過ぎ、バスは富岡町に入り、浜辺が見える常磐線富岡駅に降り立った。線量計は0.1〜0.2ミリシーベルトを示す。津波が襲い、プラットホームの屋根と、駅舎内の改札ゲートとフロアーだけが残っているだけだった。駅付近は津波に加え、地震の影響による惨状であった。車は更に街中を進む。国道からはやや遠目の、田んぼや畑だった校庭ぐらいの広さの土地に除染土が詰まった、人の背丈ぐらいの黒い袋が並んでいるのが数箇所あった。

 程なくして津波の被害を免れた住宅街に着く。ここで厚手のアヒル型マスクと不織布製の靴カバーを着用してバスから降りる。街は、テレビなどで紹介された、“夜ノ森”の桜並木の通りを囲む瀟洒な家が立ち並ぶ住宅地。しかし、通りの片側の家は、敷地入口にバリケードが設置され人の出入りは不可能な状態。住人であっても入れないとのこと。一つ通りを隔てただけでこの扱いの違いに息を飲む。放射線量は0.2〜0.3ミリシーベルトと高め。


汚染された土地は・・・

 次は町はずれへ進む。途中、除染した土が詰まった、黒いシートがあちらこちらに固まって見えた。住宅が途切れた辺りに広大な土地が広がっている。案内の方の説明では、この土地の所有者は除染土などの放射性廃棄物の中間貯蔵地として提供する意向があるとみられるとのこと。ちなみに、この翌日が候補地に関する、国による町民説明会の報道があったが、必ずしも賛同されたという状況ではなかったようだ。また、国の示した構想地はこことは異なる大熊町のようである。果たして結果はどうなるであろうか?

 車は大熊町など第一原発にはこれ以上は近づくことができなくて、南下し再びいわき市四倉地区に戻り、公民館にて遅めの昼食と学習会に。

学習会での現場の声は・・・

 前半は、日常生活が可能な地区で働く除染労働者の報告。除染労働者の実態は次のようなものであるという。@マスクなどの防護用品は、会社から支給されるはずが請求しても会社はくれたがらない。A除染手当(特別勤務手当)は国の支給水準が孫受けの段階で大きく下がる。(例:1万円→6千円)B労働基準監督署に訴えると、照会された会社が下手人探しを始める。判明すると当人は雇い止めに遭う。C会社自体も上位の会社から手を切られる。D問題を改善しようとすると結果的に同僚が巻き込まれるので、黙って働くしかない。

 後半は、100km離れた地で仮設住宅に暮らす方に、自宅に戻りたい気持ちが揺れ動く当事者の人々の心情や、家族を襲うひび割れの中で翻弄される子どもたちの今を語っていただいた。

 改めて身が引き締まる思いで現地を後にしたツアーだった。

山田(学校事務職員労働組合神奈川)

有給休暇はもらうもの?

 沖縄学校事務労働組合 JimJim No.318より

 今年4月に埼玉県議会議員が自身のFacebookに、来賓として参加した県立高校の入学式において一人の1年生担任教諭が自分の子の入学式に参加するために欠席したことを「私事の都合で簡単に職場を放棄する態度に憤りを感じる」「怒り心頭」「教員の責任感や倫理観、モラルはどうなっている?」「権利ばかり言う教員はいらない」と激しく批判する文章を載せた。

 インターネット上で広く論議され、テレビや新聞でも取り上げられた。

 関根県教育長は14日の定例会見で「入学式は重要な学校行事。基本的に教諭は入学式に出席すべき」としたが、「(休暇を)受理するのは校長の判断。校長が判断して学校経営をしている。個別の事情もあり、(県教育委員会や県教育局が)一律にこうしろといえるものではない」と処分の対象にはならず、異動も考えていないことを示した。ネット上の教員を非難する声の数は擁護する声の数よりも若干少ないようだ。

 

 そこで有給休暇制度について考えてみた。

 まずは国際比較から。Expedia.incが2012年に22ヶ国で調査した結果、有給休暇が付与された日数と行使した日数・消化率は、トップのスペイン、ブラジルが30/30日の100%。日本は、7/10日70%の韓国に大きく引き離された最下位で5/13日の38%だ。

 このように日本は突出して労働者が有給休暇を取らない国なのだが、その要因のひとつは、有給休暇制度をキチンと理解していない人が使用者側、労働者側の双方で多いことにもあると思う。

 

 週休日(土曜や日曜日)とは別に、賃金の保障された一定日数の休暇を労働者に付与することによって心身のリフレッシュを図ることが、有給休暇の目的だ。有給休暇を取って平日に映画を観たり買い物をしたり、あるいは 家で何もしないでゴロゴロして、翌日からまた働くための意欲を養うために有給休暇はある。

 労働基準法第39条第1項に、「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」とあり、第2項では継続勤務が1年6ヶ月になった時点から最初に付与された日数に加算されていき、6年になったところで上限の10日が加算されることになる。つまり1年間に最大20日の付与となる。第4項には、「使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」とある。

 大事なところは、「与える」という言葉を用いているが、有給休暇が成立するのは、労働者による休暇の請求→使用者の承認という流れに沿ったものではなく、労働者が有給休暇の取得時期を指定した時点で法的権利が成立するところだ。その点から見ると、「明日、有給休暇をもらいます」ではなくて「明日休みますからね」が正しいのだ。

 

 もうひとつの大事なところは、「使用者の時季変更権」だ。第4項にあるように、使用者は労働者が指定した有給休暇の日時が「事業(個々の業務ではなく事業全体)の正常な運営を妨げる」場合に限り日時を変更することができる。

 だから、「その日は人手が足りないからあなたに休まれたら困る」という理由では時季変更はできない。使用者は本来、労働者が有給休暇をすべて取得することを前提に経営すべきだ。それが出来ないのなら、せめて休む者がいても他にしわ寄せが出ないよう従業員をやりくりしたり、代替要員を補充するよう努力しなければならない。それでも生じる個々の業務の支障くらいは甘受すべきなのだ。身近な良い例は、幼稚園教諭が一日休むときに市教委に常駐している幼稚園教諭が替わりに来てくれること。ダメな例は、多くの小学校のように、担任教諭が20日有給を取ったなら年間での授業時数が足らなくなる時間割を組んでいることだ。

 できる限りの努力を使用者がしてもなお、「業務の正常な運営を妨げる」場合(学校なら休校だ)にのみ時季変更権を使用者は行使できる。だから実質的に時季変更権を使うような事例はほとんどないと言える。

 

 次に有給休暇と給料の関係について。往々にして私たちは、その字面から「休んで働いていない日なのに給料がもらえる日」と考えがちだが、働く者の立場で見方を変えてみよう。

 本来、雇用者側は労働者に付与する有給休暇日数を労働者が全て休むことを認める前提で労働者の給料を決めているといえる。労働者が有給休暇を取得せず捨ててしまっても給料は変わらないのだから、有給休暇を使わないということは、無給で休日出勤することやサービス残業をすることと同じだ。つまり、有給休暇を使わずに捨ててしまうということは、同じ収入を得るためにより多くの労働時間を費やしたことになる。20日有給休暇を使わない場合、約一月間ただ働きをしたようなものだ。

   だからこそ労基法では使用者側に厳しく労働者が有給休暇を取れるよう規制を設けているのだが、実態は国際比較調査結果のように取得率は極めて悪い。その理由は、使用者側だけでなく労働者側にもある。  

 別の調査では、有給休暇を取らない理由として、休んでも自分だけ休むのは気を遣う、休むと同僚から否定的な見方をされる、業務量が多い・自分の代わりに仕事をする人がいないので休めない、上司が有給休暇に否定的、休むと勤務評価が悪くなる(失職の危険性)等があげられている。 使用者が労働者がすべての有給休暇を取得する前提で人員配置をしていないために、労働者どうしが互いに牽制し合って休みにくい雰囲気を作り上げていることがわかる。

 労働者がより有給休暇を取得できるようにするためには、法制度を西欧並に改善(フランスは30日、2週間程度の連続取得を法律で保障)することや最低基準を遵守させるための罰則の強化等の実効的な施策が必要だ。

 また、国民の多くが被雇用者なのだから休暇が増えれば、休む者の代替要員が必要になり雇用の増加につながること、旅行やレジャー、外食産業の需要増に直結することから景気上昇に役立つという利点を強調することも効果的だろう。

 

 冒頭に紹介した話に戻るが、埼玉県教育局は、「教員としての優先順位を考え行動するよう指導する」と新聞社の取材に答えている。教員個々人が考える「優先順位」を県教育局が求める「優先順位」にそろえるよう「指導」することでこの件を収束させたいのだろう。

 しかし、それは一時のごまかしでしかない。埼玉県教育局がすべきことは、新入生担任教諭が入学式当日に有給休暇を取ることは、「事業の正常な運営を妨げる」ことであることを証明し(証明できないのであれば「指導」することはできない)、今後は担任教諭が休んだとしても問題ないよう人員配置を見直し、校内における分掌のあり方を改善することだ。

 

 子どもの祝いの場に立ち会うという当たり前のことが憚られるような世の中を変えることができるのは、それぞれの職場で働く私たちが、考え、行動することで得られる小さな成果を積み重ねていくことから実現できると信じたい。

労働法制大改悪反対!

 特定秘密保護法を強行成立させ、解釈改憲により集団的自衛権の行使を可能にしている安倍政権は「戦争をする国」づくりに必死だ。このことだけでも歴代最悪最低の内閣だが、現政権の悪政はこれだけではない。原発輸出・原発再稼動の動きは、人類史上最悪の事故(未だ収束すらしていない)から何も学んでいない。それどころか、その姿勢には悪意すら感じる。沖縄への軍事基地の押付けにも同じことを感じる。武器輸出解禁やTPP参加の動きなども、一定の利益のためには多くの人が犠牲になることに何の躊躇もない。そして労働法制の大改悪攻撃だ。

●“生涯ハケン”が強いられる

 安倍政権が進めようとしている労働法制の改悪には、解雇要件の緩和や金銭解雇ルール、限定正社員などもあるがとりわけ、次の3点については内容が悪質である。この点について訴えたい。

 労働者派遣法は'85'の成立から、何度かの改悪を経て現行法になったが、それでも「常用代替防止」の原則は守られていた。それが現政権の改悪案では、派遣期間の上限を3年としているものの、同一事業所内において、当該派遣労働者の所属する課を替えれば、再び雇用が可能となる。つまり、3年毎に課を替えることで同一労働者を生涯派遣労働者として雇い続けることができるのだ。「常用代替防止」が消えてしまう。

●ヒドイ!!無期転換に10年も

 次に労働契約法だ。'12年の改正で「5年を超えて雇用が続けば有期から無期への転換が保証される」となったが、今回その5年を10年にする改悪案が出された。'13年発効の同法が実効性が出る'18年を待たずにこの改悪である。

●8時間労働制が壊される

 3つ目は、労働時間の規制緩和だ。これもとんでもないものだ。私たちは1日8時間週40時間労働を全く当り前に感じながら働いてきた。もちろん、それを超えれば時間外手当を受け取ってきたが、その8時間労働制が壊されようとしている。

 第1次安倍内閣の時に法案として登場したホワイトカラーエグゼンプションが再び法案化されようとしている。'07年のときは「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」と呼ばれ、労働者の猛反対にあい、あえなく消えたが、現政権はあきらめていない。

 この法案の問題は、サービス残業や名ばかり管理職が、合法化されるだけではない。企業・使用者が労働者の時間管理をしなくなる危険性が出てくることだ。一日何時間、週何時間超勤をしようと、賃金は同じなのだから、当然、時間管理は疎かになる。まさに「過労死促進法案」だ。政府は年収一千万円以上の労働者を対象とする考えだが、年収要件はいずれ緩和・撤廃されかねない。派遣法改悪の歴史を見れば火を見るより明らかだ。

●私たちは経済の奴隷ではない

 非正規雇用労働者の待遇改善が急務だ。そして8時間労働制は人が人らしく生きる最低限の歯止めのはずだ。

 安倍政権は経済のためなら労働者をいくらでも犠牲にしていいと考えている。私たちは経済の奴隷ではない。そして労働は商品ではないのだ。労働者派遣法改正案は今国会で廃案に追い込んだものの、再びこの法案が登場するのは必至だ。安倍政権の悪質さは変わらない。

 一刻も早く安倍政権を退場させたい。

 小内秀高(がくろう神奈川)

第43回全国学校事務労働者交流集会

「全交流・愛知」のご案内

 現在、学校事務職員を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。

 東京都が導入しようとする「共同実施」は明らかに合理化の手段であり、全学労連が当初から指摘してきた「共同実施」の本質が露わになってきました。さらに県費負担教職員給与費の政令市移管の合意が成立し、市との任用一本化や定数標準法からの除外といった危険にさらされています。また、学校現場では不安定な身分の非正規職員が増えており、今後もさらに増え続けると予想されます。

 この状況に警鐘を鳴らし、我々のできる対応を考え、協議するために「全交流・愛知」を開催します。たいへん厳しい状況ではありますが、我々の未来を少しでも明るいものにするために有意義な議論を展開していきたいとおもっています。

 今年の夏は愛知でそれを実感してみませんか。みなさんの参加をお待ちしています。


「プレ交流会]

テーマ:「全学労連、各組合のプロフィール」


[集会要項]

○情勢報告

 *教育の民営化・行政合理化・教育再編

   人件費の政令市費化

○特別報告

 *沖縄の米軍基地問題

 *東日本大震災からの復興の現状

○全体会

 *『東京の共同実施』

 *『教職員給与費の政令市費化問題』

 *『義務づけ再任用と非正規雇用の各地の状況』

 *『これからの労働運動課題』


[会場]

 愛知県青年会館

  名古屋市中区栄一丁目18−8

   地下鉄伏見駅から300m

[集会日程]

全交流日程表

ボーナスカンパにご協力をお願いします。

 全学労連は、臨時的任用職員など非正規労働者の権利・労働環境にも全力で取り組んでいます。もちろん、学校事務課題にも闘い続けます。皆さんのご支援が、無駄にならぬよう、精一杯がんばってまいります。



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