2014年8月2日

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全学労連ニュース今号の内容

 7.11 文部科学省 全学労連 交渉報告

 地方公務員の抜本的賃下げを狙う・・・  「給与制度の総合的見直し」を阻止しよう!

7.11 文部科学省 全学労連 交渉報告

 7月11日、全学労連は過日提出した要望書に基づき、文部科学省初等中等教育局と交渉した。政令市移管や共同実施、それらに伴い学校事務職員定数が不安視される中、当該の文科省に学校現場の実情を伝えた。以下、要望と質問を交えて報告する。

原発問題に関し・・・

 要望書1のB B)での「全国の学校に配布した『放射線等に関する副読本』 (2011.10文科省発行)を回収、撤回すること。『新しい放射線副読本』(2013.12文科省公表)の配布を中止すること。」では、「初中局では本来、原発教育に関しては産業界との観点から、中立的な立場を示してきている。平成23年12月に配布した『副読本』の回収、撤回については、震災後の状況や福島のことには触れられてはいないものの、その内容は誤っていないため、回収の予定はない。また、平成26年2月に作成、配布した『新しい放射線副読本』では、中高生版の『はじめに』で『科学的な理解を深めるための一助となり、事故を他人事と考えず向き合うことのきっかけになれば』と記されているので、中止は考えていない。」との回答。

 そもそも、原発に依存しないエネルギー政策への転換が叫ばれている中、児童生徒へ「放射線とのつきあい方」などと茶を濁し、「想定外の事態へは対応できない」原子力のようなものを人が扱い、発電所周辺への影響も無視している現状では、原発を再稼働すべきでないし、慎重に扱っていただきたい。

政令市費化問題では・・・

 2のC 「政令指定都市への教職員給与負担移管及び市区町村への人事権移譲を行わないこと。」では、「政令市への移譲については、昨年12月の合意に基づくもので進められていて、平成29年4月移譲が法律で決定している。文科省としては可能な限り、各方面と意見交換を行って、円滑な移譲を目指している。」と回答。さらに「国会でも移譲すべきだといわれている。基は、平成17年の中教審で出されたものであるが、賛否あり進んでこなかったのが実情だ。教育関連予算について義務付け、枠付け等を行い引き続き検討していく。また小規模自治体からの意見も聞いていくつもりだ。」と語った。

 全国各地で平均的な教育を提供できる義務標準法に、各地の思惑が入りつつある中で、文科省としても、この政令市移管については慎重に進めていく姿勢は見えた。地方財政の措置などでできるだけ他方面へ予算が使われないよう工夫することなどを伝えた。

共同実施はどうなっている?

 2のD 「『教育の民営化』の一環である学校事務の『共同実施』並びに『外部委託』を推進しないこと。」では、ほぼ昨年と同じ回答。「学校の自主制・自律制の確立」や「組織力の強化に向けて、そのマネジメントサポートが必要」など「共同実施」ありきの回答となった。「教員が子どもと向き合う時間の確保や、事務機能の強化に有効なツールの一つであると考えている。」という回答などは、共同実施で学校現場を離れている時間が教員への負担となり矛盾している。

 「事務の標準化」や「若手育成」などは、「事務研究会」で行ってきていたし、そもそも、任命権者、雇い主である都道府県教育委員会の仕事だ。それらをすべて現場に押しつけてきている「共同実施」や「学校間連携」などは自らの役割を放棄するに等しい。

次年度定数は・・・

 3の定数改善等については「昨年の予算編成は極めて厳しい状況であった。『(教員給与を)10万下げろ、定数1%減、加配基準を下げていくべきだ』など様々な意見が出された。給与減は回避できたが、定数は純減しマイナス10%。今後も検討していく必要がある。2年連続の減は避けたい」との回答であった。

 文科省としても「どういう観点で定数問題を考えていったらよいか、意見を伺いたい。」「また、財政当局に要望する際、要準加配も現場がどんな状況か理論武装したい。」と意見を求められた。全学労連としては、全国各地の状況を整理し、改めて報告・要望することとした。

 A の臨時的任用職員の勤務条件等については「臨時的任用や非常勤の雇用に関して課題があることは認識している。定数内職員を正規任用にするか臨時的任用にするかは任命権者である都道府県が適切に判断していると考えている。」と回答。

 各県状況の調査の有無を確認すると「総務省でやっている」と答えた。当該の文科省が状況を把握して、各県を牽制しないと、それぞれ任用者の法令解釈がまちまちで、すでに全国的なばらつきが出ていると指摘。秋の賃金交渉へ向け、社会保険の継続適用問題と併せて、全学労連も調査を行い再度質問・要望することを確認した。

 

 また、事前の折衝で、文科省から「要望書の特別支援教育に関する具体的な質問がほしい」と言われていたため、次のような質問を送っている。これらも併せて、次回の回答を求めたい。

インクルーシブ教育に関する質問

  1.  別学分離教育をインクルーシブ教育に転換しインクルーシブな社会を実現していく道筋は大きな困難をはらんでいると思います。当事者の意思や選択を大切にしつつ時間をかけて進んでいく必要があります。そのためには、すべての子どもの学籍を校区(居住地域)の普通学級に置くことを原則とし、例外的に、本人(と保護者)が希望する場合特別支援学級或は特別支援学校に就学する、という原則と例外をともに認めていく法制度への転換が必要であると考えます。このことについての文部科学省の見解及び今後の具体的対処をお聞かせください。
  2.  養護学校義務制度化によって制度的に完成された別学分離教育体制は、すでに35年を経過しています。特別支援学校に通う児童生徒が急増していると指摘する鈴木文治さんは、「特別支援教育は子どもたちを結果的に特別支援学級や特別支援学校に追いやっているのではないか」と述べています(鈴木『排除する学校』)。保護者自身もまた地域の普通学級ではなく特別支援学校(学級)を希望していく(させられていく)厳しい現実が横たわっています。そのことを踏まえて子どもたちに関わる者たち(もちろん当事者を含めて)が対話と対論、試行錯誤を積み重ねることによってインクルーシブ教育を実現していく、その過程自体を大切にしていく必要があると思います。そのためには、就学先の最終的な決定は、教育委員会ではなく本人(と保護者)に委ねられるべきであると思います。このことについて文部科学省の考え(法令改正の必要性を含めて)をお聞かせください。
  3.  インクルーシブ教育を実現していくためには少人数学級政策をより精力的に実行していく必要があると思います。当面、35人以下学級を全学年に拡大し、併せて障害をもった子どもたちが普通学級で学ぶための「合理的配慮」を担保する教職員配置の客観的基準の設定(たとえば「障害をもった子ども何人に何人の教員を加配する」といった)が是非とも必要です。このことについての文部科学省の考え(法令改正を含めて)をお聞かせください。

以上3点の質問に関連して以下の「特別支援教育への疑問」を参照してください。


「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(2012年7月〜以下「報告」)及び「学校教育法施行令の一部改正について(通知)」(2013年9月1日〜以下「改正令通知」)に即していくつかの疑問点を指摘してみます。

@インクルーシブ教育システムと特別支援教育の関係について

 1979年の養護学校義務制度化によって別学分離教育は制度的に完成されました。特別支援教育はこの別学分離教育体制を前提として導入され、障害の種類と程度によって子どもたちを振り分ける体制はさらに強化されてきました。普通学級に在籍する「発達障害児」といわれる子どもたちを含めて特別支援教育の対象とされることによって、インクルーシブ教育とは逆方向の結果を招いてきたことは否定できません。障害者権利条約の教育条項(第24条)では、障害のある人が、(他の者との平等を基礎として)生活する地域社会においてインクルーシブ教育を受けられ、フルインクルージョンという目標に即して支援措置がとられるという原則が述べられています。日本の場合について言えば、障害のある子どもは校区の普通学級に在籍し、例外として特別支援学級或は特別支援学校でフルインクルージョンを目指した教育が行われると解釈すべきだと思います。

 以上の観点に立って考えたとき、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすること」(「報告」)という考え方は、条約の基本理念を曖昧にした極めて不十分なものと言わざるを得ません。障害者権利条約が述べる原則からすれば、まず、障害の有無にかかわらずすべての子どもは校区(居住地域)の普通学級に就学する権利があり、これを原則とする就学先決定の仕組みが構想されてしかるべきです。その第一歩は全ての子どもの学籍を地域の学校に置き、本人(と保護者)が求めた場合には例外として特別支援学校に就学することができるようにすることだと思います。その場合、現在の特別支援教育はフルインクルージョンを目指す教育へ根本的に転換していくことが求められているのではないでしょうか。

A就学先決定の主体について

 「改正令通知」においては、就学先決定について「最終的には市町村教育委員会が決定する」ことを「改正令における基本的な前提」とするとしています。これは、就学先は子ども(とその保護者)が決めるという当然の原則を逸脱するものです。「総合的な観点」(「報告」)は、あくまでも最終的な決定の主体が就学当事者である子ども(と保護者)であることを条件とするものでなければなりません。子どもの権利条約第2条は障害を含む様々な理由によるいかなる差別も禁止しています。さらに障害者権利条約は、「障害に基づく差別にはあらゆる形態の差別があり、合理的配慮の否定も含まれる」(第2条)としています。「認定特別支援学校就学者」を教育委員会が決定しその子どもを校区(居住地域)から排除する(「改正令通知」)という一方的な就学―転学の仕組みは子どもの権利条約及び障害者権利条約に抵触するものであり、改めるべきです。子ども(とその保護者)には、校区(居住地域)の普通学級に就学する権利があり、その権利を実現するためにこそ教育委員会、学校は共に学ぶための「合理的配慮」を尽くさなければならないと思います。

B障害のある子どもが普通学級で学び生活していく環境について

 2014年5月8日提出の全学労連要望書では、「(30人以下学級を実現すること。また、)インクルーシブ教育を推進していく観点から、一学級あたりの児童・生徒数に囚われない教職員の増員を図ること」(要望書3−@−@))と述べています。この要望の趣旨は共通の場で子どもたちが学び育っていく基本的な条件である少人数学級を実現していく際に、「30人以下学級」という基準とともに、障害のある子どもが普通学級で学んでいる場合にはたとえば「子ども何人に教員何人」といった客観的基準によって教職員を加配するといった措置が取られる必要があるということです。公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下、標準法)の改正によって、学級編制の標準は現在、小学校1年生については35人以下に引き下げられ、教職員定数に関する加配事由に「障害のある児童生徒に対する特別の指導が行われていること」等が追加されてはいます(「報告」)。しかし、事務職員に関して標準法を無視した定数改悪が公然と行われている東京の状況(要望書前文)を想起するまでもなく現行の標準法とその実効性を抜本的に見直さない限り、インクルーシブ教育を推進していく環境は構築されようがありません。インクルージョン、インクルーシブな教育が求められる世界的な動きのなかで今年1月、日本政府は障害者権利条約を批准しました。しかし、このような流れとは裏腹に財政制度等審議会は、少人数学級について子どもの学力・能力・人間性の向上といった「成果」につながっていないとしてその「政策効果」はないと断じています(「平成26年度予算の編成等に関する建議」2013年11月29日)。一方で全国学力学習状況調査等に見られるような競争主義教育を徹底し、他方で別学分離教育を継続強化していこうとしているこの国の能力主義に貫かれた教育の在り方・構造自体が問われなければならないのであり、そもそも少人数学級を求める根拠自体が問い直される必要があるのだと思います。

 インクルーシブ教育とは、障害のある子もない子も、色々な国からきている子も、男の子も女の子も、社会的少数者の子も、等々、様々な社会的属性のある子どもたちが一人ひとり異なる存在として共に育ちあい学び合うことを大切にする教育という意味をもっているだろうと思います。この「インクルーシブ志向をもつ通常の学校こそ、差別的態度と闘い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会をつくり上げ、インクルーシブ社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段であり、さらにそれらは、大多数の子どもたちに効果的な教育を提供し、全教育システムの効率を高め、ついには費用対効果の高いものとする」(サラマンカ宣言)。1994年にスペイン、サラマンカ市で採択されたこの宣言の精神に立ち返って、インクルーシブな教育―社会への大胆な一歩を踏み出すことが求められているのだと思います。


地方公務員の抜本的賃下げを狙う・・・

「給与制度の総合的見直し」を阻止しよう!

 50年ぶりの変更と言われた2006年度「給与構造改革」が2010年度に終わり、引き続き「復興財源確保」を名目とした国家公務員の2年間の賃金カット(多くの自治体も連動)がこの3月に終了した。神奈川では、県財政危機を理由にした独自の賃金カットが、さらに1年継続中だ。ところが、新たな地方公務員の賃下げが目論まれている。

 人事院は、昨年夏の勧告で「給与制度の総合的見直し」として@「地域間の給与配分の見直し」A「50歳代後半層の水準見直し」等4点を検討するとした。見直し案を今夏人事院勧告と同時に勧告し、2015年4月からの実施をみすえる。

<「給与構造改革」とは何だったのか>

 「給与構造の改革」は、バブル崩壊以後、民間企業がリストラという首切り合理化をする中で、公務員の給与は全国一律で地域によっては高すぎるから、地域格差を前提に年功給与から能力給与にし、かつ、地域の民間給与水準を上回らないように給与を引き下げる変更だった。賃金を全体で4.8%、30歳台半ば以降は7%引き下げ、地域格差を地域手当の新設で調整した。また、民間企業の成果主義の考えを導入して人事評価によって昇給・昇格に職員間格差を実施した。

<地方公務員の賃下げが狙い?!>

 「総合的見直し」は総人件費抑制の自民党公約や政府方針(2013.11.15閣議決定)を達成するために、国―地方を貫く給与体系の抜本的見直しであり、狙いは国家公務員の「配分見直し」を名目にした地方公務員給与費の引き下げにある。

 その中身は、@民間賃金の低い県12県を対象にはじき出した官民較差を基本にし、地域手当で調整。A若年層の水準を維持し、55歳以上を4〜5%引き下げる。さらにB一層の成績主義の導入・・等。生涯給与や退職金のさらなる引き下げであり、職員間の格差も大きく拡大する。

<分断を跳ね返し、賃上げを!>

 すべての論理は「官民準拠」。だが、安倍政権の下、労働法制の大改悪が目論まれ、「正社員ゼロ」「生涯派遣」とか、「残業代ゼロ」・・など、「民」の雇用状況はずたずた・・・。「準拠」の結果、多くの「官制ワーキングプア」を作り出した。さらには、東京一極集中化で、市町村の半分が存亡の危機を抱えているというのに、あまりに漫画と言えないか。今必要なことは、労働者の分断をはねのけ「官」も「民」も、安心して暮らせる賃金を獲得することだ。

 地方公務員を狙い撃ちにする「給与制度の総合的見直し」に断固反対!みんなの連帯で、阻止の体制を作ろう!


(がくろう神奈川 連帯245より)



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