2014年10月19日

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全学労連ニュース今号の内容

 文科省来年度予算概算要求  「新たな定数改善計画(案)」を読み解く

 第43回 全国学校事務労働者交流集会(全交流・愛知)開催

文科省来年度予算概算要求

「新たな定数改善計画(案)」を読み解く

 8月末に来年度予算の概算要求が出された。文部科学省は総額で5兆9,030億7,700万円(対前年度10.1%増)の要求を出した。文科省に限ったことではないが、4月の消費税率引き上げで税収増が見込まれるからと言って、1割強の増額要求と「財政再建」の大義名分との兼ね合いはどうなるのかと思いつつ、文科省概算要求のうち教職員定数に直接影響する義務教育費国庫負担金に関する要求について見てみよう。(資料参照)

☆文科省の方針転換―定数自然減分より少ない改善要求

 まず第一に目につくのは、全体では10%以上増えた要求であるのに、義務教育費国庫負担金の要求は対前年度▲64億円の1兆2,528億円となっていることだ。これを定数でいうと、少子化等による定数の自然減3,000人(▲65億円)に対して2,760人(59億円)の要求しかない。すなわち240人の減員である。これに教員給与の改善(部活手当3,000→3,600円)の2億円と、教職員の若返り等の給与減▲60億円が加わり、▲65+59+2+▲60=▲64億円となる。

 たしかに少子化のご時世で、前年度より減るのはやむを得ないという見方ももっともだろう。しかしここで忘れてはならないのは、昨年度まで文科省は「減らない定数改善」とか言って、自然減分を埋めてさらにそれに上乗せする改善要求を概算要求ではしてきたことだ。当然財務省や総務省の反発があって、実際の予算編成では要求内容はかなり削減されてきたが、それでも昨年度予算までは自然減分に少し上回る「定数改善」(話がそれるので、加配であるか否かの問題はここではあえて問わないでおく)は確保してきた。ところが、今年度予算編成過程で財務省・総務省との攻防がいろいろあったのだろうが、初めて自然減より▲10人となる定数改悪が実現してしまった。(2014年2月7日付「全学労連」361の記事参照

 その上で、この概算でのマイナス要求、すなわち教職員の定数減を容認したということだ。文科省の方針転換である。

☆「少人数教育推進」から「教職員指導体制整備」へ

 文科省は昨年の概算要求までは「少人数教育の推進」を掲げ、教職員の定数を維持しようとしてきた。2010年には当時の民主党政権のもとで、義務教育での35・30人学級実現の8か年計画を打ち出したが、初年度小学校1年生の35人学級の法改正が実現したものの、計画は1年で実質的に頓挫した。その後は法改正の無い加配措置が続き、前述の通り今年度初めて自然減を超える定数減となった。

 こうした経緯から、文科省が「少人数教育」を理由にした定数改善に限界を感じたかどうかは知らないが、今回の概算要求で方針を変え、「教育再生の実行に向けた教職員指導体制の整備」という新たな定数改善計画を打ち出した。

☆文科省の苦肉の策

 計画では10年間で総計31,800人の改善としている。これに対してその間の自然減は40,700人が見込まれており、差し引き▲8,900人となる。これも方針転換の故である。その結果「追加的な財政負担を要することなく必要な定数改善を実施」ということになる。このあたりは財務省・総務省との今までのやり取りを配慮しての事と推察される。

 そのかわり(とは言っていないが恐らくそういうことだろう)、「義務標準法の改正を予定」というのがセットで示される。すなわち、省令による不安定な加配定数ではなく、法改正による安定した定数を確保しようということだ。文科省の方針転換は、これまでの数の維持から安定性を求める方向へ変わったということが読み取れる。

 苦肉の策というべきだろうが、加配定数は不安定雇用を生み出すと批判してきた全学労連としては、法改正を伴う定数方針への転換はとりあえず歓迎しておこう。しかしまだ概算要求段階では、文科省の思惑通り事が進む保証があるわけではなく、今後の展開に注目する必要がある。

☆「チーム学校」にまつわる疑問・違和感について

 計画の内容にも少しふれておこう。計画の柱は大きく次の4点から成る。

@ 授業革新等による教育の質の向上 580/15,500人(初年度/10か年計画 以下同じ)
A チーム学校の推進 1,010/6,950人
B 個別の教育課題への対応 700/7,000人
C 学校規模の適正化への支援 470/2,350人

 このうちAの「チーム学校」とは聞き慣れない言葉だが、趣旨には「教員が授業など子供への指導により専念できるようにするためにも、教員に加えて多様な専門性を持つスタッフを配置し、一つのチームとして学校の教育力を最大化」とあり、どうやら教員以外の職種の配置の事らしい。その中の「学校の事務機能の強化」(500/3,000人)というのが事務職員分なのだろう。

 なぜかこの「チーム学校」とCの「学校規模の適正化への支援」の部分が10年計画にしては初年度の比率が高い。事務職員分などは6年で完成する数である。逆に@の教員分であろう人数は比率が低くなっている。文科省が「チーム学校」をそれだけ重視していることの表れなのか?

 もう一つ気になるのは、「チーム学校」の趣旨に「文部科学省において、校務及び教職員の業務分担を抜本的に見直すとともに、教育委員会など学校関係者にも積極的な対応を促していく」とある。いったいどう見直し、どう積極的な対応を促すというのか?

 教員以外の職種に手厚くするのは悪いことではないが、総額裁量制で事務職員定数分を教員分に回すことを黙認し、「共同実施」推進で学校事務の合理化に道を開いている文科省のやる事だから、どこか気味悪さが伴ってしまうのは偏見だろうか?

 ついでにもう一つ言うと、「チーム学校」と「共同実施」の両者を文科省は整合的に推進できるのだろうか?

 とりあえず疑問・違和感の解明は、今後の課題としておこう。

第43回 全国学校事務労働者交流集会(全交流・愛知)開催

 今年の全交流・愛知集会は、8月1日〜2日「愛知県青年会館」にて開催された。安倍政権による、矢つぎ早の政治・経済に亘る諸政策で、生活、学校事務の世界にも少なからぬ影響が及ぶ諸課題について取り上げられ、報告・検証が試みられた。その中で、「政令市費化」「共同実施」を重点的に交流した。また、開会前の「プレ交流」、夜の部の「懇親会」、閉幕後の「ミニ講演会」もあり、充実したものとなった。

 議長の基調報告の中でも、「『共同実施』・給与費の政令市費化と国庫負担制度というテーマで、それらがどのような関連性をもっているのかという観点で話したい。」と触れられ、学校事務「共同実施」の方向転換や、教職員給与費の政令市移管問題、国庫負担法・給与負担法・定数標準法体制の終焉などが語られた

 全体会では、東京の「共同実施」、学校事務労働者の権利・労働条件、教職員給与費の政令市費化問題、これからの運動課題、などが討論され、充実した交流集会となった。

 詳しくは、別添の「夏の記録」をご覧ください。


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