2014年11月28日

top> ニュース> 369号

全学労連ニュース今号の内容

 全国の人事委員会勧告の様子  地域・世代による分断を許すな

 県知事選挙とこれからの沖縄

全国の人事委員会勧告の様子

地域・世代による分断を許すな

 8月7日の人事院勧告以降、政令市は9月4日から9月25日にかけて、都道府県は9月30日から11月5日にかけて勧告、報告が行われた。(別添「2014人事委員会勧告一覧」参照

● 長年にわたる給与抑制に腹をすえかねた人事委員会も

 今年の勧告は、本年4月の公民格差に基づく改定と、給与制度の総合的見直しの二つの柱で行われている。給与制度の総合的見直しで大幅な削減を「予定」するためか、ほとんどの自治体で人事院勧告準拠のプラスの勧告が行われた。

 昨年は「国の要請抑制」によって9割以上の自治体が給与抑制をしていたが、今年は13道府県、4政令市で給与抑制が行われている。抑制をする自治体の数は減少しているが、中には10年以上にわたって給与抑制を続けるところもある。長年にわたって、当局になめられっぱなしの人事委員会は、腹にすえかねたためか「実際に職員に支給されている給与を、本来支給すべき水準に回復する措置として、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間、減額措置相当分を引上げ」勧告をするところも出ている。

● 温度さが露呈した総合的見直し

 給与制度の総合的見直しについては、5県と18政令市が「引き続き検討」という報告をする一方、42都道府県と1政令市が総合的見直し(給料表削減)を勧告した。

 人事院の総合的見直しは、「地域」と「世代」で俸給表を再構成し、平均2%、最高4%の減額を行うものであった。多くの自治体の総合的見直しも人事院勧告準拠のもので同程度の削減を行い、県内に地域手当のないところでは事実上給与削減を強いるものとなった。

 しかし、いくつかの自治体では「世代」の視点だけで見直しを行い、そういうところでは国よりも低い引き下げ率(例えば平均1%、最高3%というような)のところもある。また、これを機会に「給料と地域手当の配分見直し」を行うところもあり、ここでは「最高6%減額」をしている。

 引き続き検討としたところは、「(国に準じた)総合的見直しは・・・民間の給与水準との均衡が維持できないこととなる」と、国と各地の事情の違いを明らかにしながら「引き続き検討」としている。

● 高齢層の給与は暗闇の中

 60歳以上の給与については人事院勧告横並びの状況が続いている。

 人事院勧告でもそうだったが、民調結果からは明らかに公務員給与が低位にあることが分かっているが、データが少ないことを理由に何らの措置も講じようとしていない。ただ、単身赴任手当を新たに付けただけだ。さらに、その低い給与になだらかに持っていくために50歳代後半層の給与を減額するための総合的見直しをするだけだ。

 かつて、人事院は「退職時の70%」が民間基準であることを明確にしていたが、それは遠い過去の話のようだ。

● 地域、世代による分断を許さないたたかいを

 このニュースが出るころには各地の確定交渉も終わっているかもしれない。

 例年なら近隣や同一規模の他県状況を参考にしながら確定交渉を行っていくところだと思うが、今回はそうした「他県状況」とはかかわりなく、人事院勧告準拠(公務としての近似性、類似性を重視して均衡の原則が適用されるべき)で進んでしまっている感がある。

 しかし、その中で、給料表引き下げに伴う退職手当削減や、再任用者の現給保障、通勤手当見直し等、今回の人事院勧告に関わる様々な課題が横たわっていることを忘れてはなるまい。

 地域によって、世代によって、分断されてしまうことを許してはならない。

県知事選挙とこれからの沖縄

沖縄学校事務労働組合 濱川幸夫

 11月16日投開票の沖縄県知事選挙は、10万票の大差をつけて翁長雄志氏が当選した。今回の県知事選挙は、従来の保革一騎打ちという形ではなく、現職の仲井眞氏と前回、前々回の知事選挙で仲井眞氏の選対本部長だった前那覇市長の翁長氏の二人が有力候補として対決することになった。保守対保守というこれまでになかった構図だ。

 しかし、二人の主張は大きく異なる。仲井眞氏は「米軍普天間飛行場の危険性を早期に除去するためには、辺野古沿岸部への移設は現実的具体的な解決方法であり、安全性は普天間より格段に高い」と主張し普天間基地の辺野古への移設を推進する立場だ。それに対し翁長氏は「米軍普天間飛行場の国外・県外移設を求め、あらゆる手段を駆使して辺野古に新しい基地は造らせない」とする立場だ。

 那覇市長を14年間勤め自民党沖縄県連の重鎮であり、時期沖縄県知事と目されていた翁長氏がなぜ、現職知事の対立候補として立ち上がったのか。

 翁長氏は、2010年の県知事選挙で仲井眞氏の選対本部長を引き受ける条件として、辺野古移設はしないことを仲井眞氏と取り決めていた。それなのに2013年12月に仲井眞氏は翁長氏に相談もなしに反故にし、そのうえ「公約を変えたつもりはない」と強弁し続けた。

 裏切られた翁長氏の怒りは、仲井眞氏だけに向かったのではないだろう。そのひと月前に沖縄県選出自民党国会議員5名全員が、普天間飛行場を県外に移設するという選挙公約を破棄する方針を表明したことも含め、これまで新たな米軍基地の建設を認めないとする公約を持つ政治家を選んできたはずなのに、「お上」の勝手な都合で新しい米軍基地を沖縄に造ることを認める政治家へと変えられてしまったことに怒りの根源がある。

 翁長氏は、知事選立候補の意思を固める半年前の2013年12月の那覇市議会答弁の中で、県内選挙で保革が争う状況に関し「コップの中で争うのを本土から高みの見物で見られている」「県民からしたらこの悲しい分裂は本土に対して何も対抗するところはない」と述べ、保革の枠組みを超えて米軍基地の県外移設要求などで一致することが重要だと言っていた。この言葉には、翁長氏が実行委員会共同代表として参加した2012年9月に10万人余りの参加者が集ったオスプレイ配備に反対する沖縄県民大会と2013年1月の沖縄41市町村の代表がオスプレイの配備撤回を求める建白書を政府に届ける際、デモ行進の途中、銀座にて沿道から「売国奴・反日非国民・死ね」等の罵声を浴びせられた経験が少なからず影響しているのだろう。

 また、今回の選挙活動の中で翁長氏は「私は保守の政治家であります。しかしながら、私は沖縄の保守の政治家なんです。普天間飛行場は国外・県外。県内移設は絶対に許さない」と言っている。「沖縄の保守」とは、沖縄に根付いた伝統や文化を重んじる伝統保守を意味するもので、仲井眞氏のような新自由主義を標榜する経済保守、国益や国家への奉仕を尊重する国家保守主義とは異なることを翁長氏は強調したかったのだろう。

 今回の知事選で新しい米軍基地は沖縄にいらないという沖縄県民の民意は、再度確認された。米軍基地に囲まれた中で生きるのは嫌だという要求はささやかで最低限のものであるはずだ。沖縄県民は、日本の法律が及ばず県民相手に犯罪を犯しても罰せられない特権を持つ米兵と隣り合って生きることの恐ろしさを身に染みて感じている。米軍基地が核ミサイルの標的であることを気にしないように生きている。沖縄から遙か遠い場所で起こった軍事衝突やテロが沖縄観光に非常に大きな悪影響を与えることを知っている。そんな沖縄を子や孫に引き継がせたくない県民の想いが新しい知事を誕生させた。

 そもそも、国民全体で考えるべき防衛問題を沖縄に押し込めていることこそが間違っている。全国の人々に、沖縄が抱える米軍基地問題は自らの問題なのだと自覚してもらいたい。そして、普天間や辺野古、高江の現場で闘い続ける人たちを支えてもらいたい。

 翁長氏は知事就任後、早期に訪米し新基地建設反対の民意を米国政府関係者に伝えると言っている。それこそが政府自民党の最も嫌がることだ。政府が辺野古へ新基地建設を強行すれば県民の反感がますます高まる。それは米軍基地そのものへの反感に直結し、米国政府が危惧する沖縄にある他の米軍基地とりわけ嘉手納空軍基地の存続を危うくすることになる。そうなれば米国側は、海兵隊のための新基地を沖縄に置く優位性を見直さざるを得なくなる。

 だから私たちは、沖縄の中からも外からも堂々と「これ以上の米軍基地はいらない」と声を上げ続けていこう。それが、翁長新知事を後押しする力となり米軍基地の縮小・撤去への近道だから。



無料WEB-pageスペースを利用しているため、広告が表示されますが、全学労連とは無関係です。



inserted by FC2 system