2015年2月3日

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全学労連ニュース今号の内容

 東京の共同実施の現在―共同実施地区を拡大させない闘いを―

 教職員人件費の政令市費化―正念場の2015年  学校事務職員として生きていく道を闘い取るぞ!

 共済組合に雇用者責任を取らせる!  フロラシオン青山争議解決

 来年度文科省予算案  「新たな定数改善計画」は早くも頓挫?

 横浜市人事委員会 神奈川県の差別的取扱いに喝!  「再任用職員の療休日数を他県並みに」

東京の共同実施の現在

―共同実施地区を拡大させない闘いを―

宮崎俊郎(学校事務ユニオン東京)

 これまで東京では江東区と武蔵村山市の2地区で共同実施が試行的に行われてきた。当初予定では今年度から「本格実施」となるはずだったが、いまだに「本格」とは銘打っていない。江東区は中学校のみでしかも23校中7校の実施(拠点校1校+連携校6校)。武蔵村山市でも14校中7校の実施である。

 東京の共同実施の最大の問題は、定数削減が狙いであることは再三指摘してきた。昨年度までは1校1名の基本定数通りの正規職員数が担保されてきた。今年度江東区は、定数削減はなかったが、武蔵村山市は7校で正規4人なので3名削減である。武蔵村山市は来年度14校全校で共同実施を行うが、さらに3名削減で正規は8名となる。学校現場は非常勤職員が担う。

 昨年3月に都教委は江東区と武蔵村山市の共同実施を総括し、拡大するための報告書を作成した。その特徴は、「共同実施は校務改善を推進する」という点を強調していることにある。特に副校長の業務軽減が実現したと。この報告書のまやかしは正規事務職員が削減されていない状態での共同実施の評価を絵に描いた餅のごとくに行っているところに存在している。東京型共同実施を推進していけば間違いなく正規の定数削減は進行する。その陣容で副校長の補佐などやっているゆとりがどこにあるというのだ。正規の削減された状態を想定して評価を行わずして正確な将来像などありえないことは議論の余地がない。共同実施を地教委に導入させるために画餅を提示する都教委の手法は大変悪辣だと言わざるをえない。

 そうした都教委の卑劣な勧誘が功を奏したのか、今年度から実施した地区は皆無だったのに来年度から予定している地区が2地区出てきた。多摩地区の東村山市と清瀬市だ。

 いずれも全校で22校、14校という小規模地区である。清瀬市では昨年9月突如来年度導入が浮上した。しかも都教委のお先棒を担ぐように、その目的の第一番目を「事務分担を明確にすることにより、副校長の校務軽減を図る」としている。

 清瀬市中学校事務職員会は2月20日に行われる都公中事の研究大会で「今、学校事務職員に求められているもの」という研究発表を行う。大会要項のコメントに以下のような意味深な文章が見られる。「清瀬市小中学校事務職員会では、東京都でも共同実施が試行されたことを受け、『学校事務職員は、学校現場にいてこそ学校事務職員なのではないか』(下線は筆者)という考察を行ってきました。(中略)学校に各1人という特殊な配置となっている学校事務職員が、資質能力を向上できるための環境の整備などについて報告をしたいと考えています。(中略)しかし、明るい未来を夢見て、今回の研究発表に臨むための準備を進めてきた私たちの前に、突然突き付けられた『現実』とは・・・・。この先は、研究発表の中で明らかにしたいと思います。」まさに清瀬市事務職員にとっては「青天の霹靂」だったのだろう。

 東京の事務職員は東京型共同実施に誰も賛成していない。どこが狙われるのか。@小規模地区A組合が弱い(うるさい事務職員がいない)B地教委幹部が都教委と人脈的につながりが強い  この3点に気を付けなければならない。

 東京の全事務職員関連組合の共闘組織である7者協議会はいま、各地区における共同実施に対する要請行動を精力的に取り組んでいる。来年度2地区増えることをどう評価するか。着実な前進なのか、あるいは都教委の野望を挫く牛歩でしかないのか。私たちは1地区でも増えないよう丁寧にかつ大胆に地教委に対する要請を継続的に行っていくしかない。10年後の勝利を目指して。

教職員人件費の政令市費化―正念場の2015年

学校事務職員として生きていく道を闘い取るぞ!

京極紀子(学校事務職員労働組合神奈川)

 2017年4月を目途とした教職員人件費の政令市費化。各市で具体的な準備が開始されている。横浜・川崎・相模原―県内に3つの政令市を抱え、義務制学校の6割の人件費が県から市へ移譲される神奈川では義務教育制度の根幹を揺るがす大きな課題としてある。

 すでに各市教委から組合(支部)に対して提案があり交渉が始まった。基本は、給与、勤務時間や休暇制度などの労働条件、福利厚生など、市の制度との整合性を図ると言うことであり、私たちの側は賃金水準や労働条件の切り下げは認められず、移譲に伴う業務変更・労働強化に対してもNOだ。

 給与等の条例化、システム構築等の時間を考えると主要な事項はこの1年でおおむね決定したいと当局は言う。この重大課題を当局の都合で、1年で決着させるというのもひどい話だ。財源の確保も相変わらず不透明で結局のところどうなるかわからないのに、移譲という「結論」だけが決まっている。

 私たち学校事務職員の未来を決めることがらー「学校事務労働者」として生き、「学校事務労働運動」を作り出してきたがくろうにとっては、一歩も譲れない闘いなのだ。組合は、三市の交渉と共に残る県域の部分も含めて、労働条件の格差を作り出さないために取り組んでいくが、一番の獲得目標は、やはり「学校事務職員制度」の維持であり、任用一本化を許さないというところだと思う。

 「分権」や「規制緩和」で進む新自由主義的な教育再編の流れの中に政令市費化があり、市町村費化までを見据えた攻撃の始まりであることは明らか。今どれだけの闘いを作れるかと言うことが、続く攻撃への歯止めにもなる。全学労連としては、引き続き省庁、地方団体等への要請を強化すると共に、政令市以外への拡大を阻止する闘いを作っていきたい。「学校事務職員」という固有の職の中で、仲間と連帯し、自分たちの労働の在り方を考え、一つ一つの労働条件を獲得してきた私たちの立ち位置を改めて確認し、新自由主義が作り出す「教育の民営化」に断固反対していく。困難な闘いではあるが、学校事務職員として働き続けるために全力で闘おう!

共済組合に雇用者責任を取らせる!

フロラシオン青山争議解決

 公立学校共済組合東京支部が運営するホテルフロラシオン青山が、昨年末で閉鎖した。この施設は黒字経営で、地域住民からも閉鎖反対の声が上がるなど存続が望まれていた。

 昨年7月、閉鎖を知らされた当該施設に働く労働者たちは、直ちに労働組合を結成(全国一般東京東部労組に加入)、共済組合との団体交渉、抗議要請行動、閉鎖撤回を求める署名集め等々、この5ヶ月間、支援の仲間と共に閉鎖撤回の闘いを続けてきた。

 全学労連と同参加組合も、当該組合からの支援要請を受け、署名活動や共済組合への閉鎖撤回を求める要請書を出すなどの取り組みを行った。

 結果、12月26日の当該組合と共済組合との団体交渉で同施設の閉鎖撤回とはならなかったものの、@正規職員は異動により雇用を確保、A契約職員は共済組合他支部へ就労斡旋、B退職者へは金銭上積み、等を獲得し、この争議を解決させた。

 組合結成前には「人材派遣会社を通じた再就職支援」としか示さなかった共済組合側に雇用者責任を取らせたことは大変意義のあることだ。

 働く場所に組合がある。労働者が団結をする。支援の仲間がそれを支える。まさに労働運動の基本・原点を感じる争議の解決であった。

来年度文科省予算案

「新たな定数改善計画」は早くも頓挫?

 昨年12月の衆議院解散総選挙の影響で年明けの予算編成となったが、1月14日に来年度政府予算案が閣議決定された。文科省は昨年8月の概算要求で「新たな定数改善計画(案)(10ヶ年)の初年度分」として、教職員定数2,760人の改善(59億円)を要求していた。これは「改善」とは言いながら自然減(3,000人)より少なく、定数の実質減を容認する方針転換だった。これにより追加的な財政負担を要することなく「新たな定数改善計画(10ヶ年)」と加配でない安定的な定数改善のための「義務標準法の改正」を実現することが文科省の狙いだった。(2014年10月9日付「全学労連」367の記事参照

☆ 文科省の目論見違い

 このことを踏まえて来年度予算案の文科省の関連する部分を見てみる。

文科省資料「平成27年度文部科学関係予算(案)のポイント」より

文科省の2015年度予算案をまとめたページはこちら

 この中には「新たな定数措置」という文言はあるが、来年度のみの措置900人が示されているだけで、「新たな定数改善計画(10ヶ年)」の存在を示すような表現は無い。また、「定数改善」については加配での措置を示してはいても「義務標準法の改正」とは読み取れない。すなわち、定数の実質減容認の方針転換にも拘らず、文科省の目論見は実現していないということだ。

☆ 「チーム学校」の扱いは低い?

 「新たな定数改善計画」2,760人が「新たな定数措置」900人に変わった中身をもう少し詳しく見てみよう。

項目概算要求予算案予算化率
1.授業革新等による教育の質の向上580人200人34.5%
 ・課題解決型授業(アクティブ・ラーニング)の推進 300人100人33.3%
 ・授業革新に向けた研修の充実 100人 0人0%
 ・小学校における専科指導の充実 150人100人66.7%
 ・学制改革への対応(小中一貫教育の充実) 30人 0人0%
2.チーム学校の推進1,010人230人22.8%
 ・学校マネジメント機能の強化(教頭・主幹教諭等の充実)230人100人13.7%
 ・学校の事務機能の強化500人
 ・養護教諭・栄養教諭等の配置充実130人30人23.1%
 ・専門人材の配置充実(学校司書、ICT専門職員、地域連携担当職員等の充実)150人100人66.7%
3.個別の教育課題への対応700人250人35.7%
 ・家庭環境や地域間格差など教育格差の解消200人100人50.0%
 ・いじめ等の問題行動への対応190人50人26.3%
 ・特別支援教育の充実310人100人32.3%
4.学校規模の適正化への支援470人220人46.8%
 ・学校統合に係る支援350人200人57.1%
 ・複式学級編制の標準の引き下げ120人0人0%
 ・過疎地の小規模校への支援0人20人新規
合計2,760人900人32.6%

表作成:全学労連

 繰り返すが、単年度のみの予算措置であることと「義務標準法の改正」の無い加配での定数「改善」である。そのいちばん肝心な部分を除けば、概ね文科省の立てた項目に沿って予算がつけられていると言える。「4.学校規模の適正化への支援」の中の「複式学級編制の標準の引き下げ」などはゼロ査定だが、実現するには法改正が必要な内容であり、そのかわり新規で「過疎地の小規模校への支援」が加えられたと推察できる。「支援」ならば「義務標準法の改正」はいらない。

 財務省査定後の数だから全体的に減らされているのは不思議ではないが、重点の置き場には差が生じている。とりわけ「2.チーム学校の推進」の中で「学校マネジメント機能の強化」「学校の事務機能の強化」が統合されて「学校マネジメント体制の強化」とされた部分の削減幅の大きさが目立つ。新規事業であり厳しく査定されたという事かも知れないが、前出の「全学労連」367で、10年計画にしては初年度の比率が高く、文科省が「チーム学校」を重視していることの表れかと述べたが、それ程の事はなかったのかもしれない。しかし、そこで「チーム学校」への違和感を表明しておいたが、それが無くなった訳ではない。とりあえず予算が付いたことを歓迎する見方も出るのだろうが、学校の管理強化の手先として事務職員が利用されていくのは御免こうむりたく、今後どう具体化していくのか「共同実施」の動向と共に注目していく必要があるだろう。

☆定数「改善」はさらに減少が拡大

 文科省の資料だと判りづらいのだが、「教職員定数の増+19億円(+900人)」に対して「少子化等に伴う教職員定数の減▲86億円(▲4,000人)」とある。この後の方の定数減の分は概算要求では「教職員定数の自然減▲65億円(▲3,000人)」となっている。「自然減」と「少子化等に伴う減」という表現の違いと共に1,000人減少している。これはどういうことかというと、昨年もそうだったが、財務省の資料が判りやすい。

 「自然減▲3,000人」は文科省概算要求と同じだ。その後の「既存定数の合理化減▲400人」と「学校統合に係る既存定数の減▲600人」の合計1,000人を足せば、文科省資料の「少子化等に伴う教職員定数の減」▲4,000人と同じになる。要するに文科省は概算要求で計上した「自然減▲3,000人」に、おそらく財務省の査定の過程で迫られた結果だろうが、「合理化」と「学校統合」による定数減▲1,000人を加えざるを得なくなり、「少子化等に伴う教職員定数の減」と表現を改めたということなのだろう。その結果が「個別の教育課題への対応に必要な定数増900人」(文科省の表現でいうと「新たな定数措置」)と合算して、▲1,000+900=▲100で「教職員配置の改善▲100人」となる。これは財務省資料(参考2)にある通り、実質的な削減定数を▲10から▲100に拡大ざせたということである。

 昨年秋に財務省が、小学校1年生の35人学級解消や小規模校の統廃合で教職員定数の削減を言い出したが、それと比べればそこまでの削減にはなっていないものの、次第に削減圧力が増しつつあるのを感じる来年度予算案である。

財務省資料「平成27年度文教・科学技術予算のポイント」より

財務省の2015年度予算政府案をまとめた頁はこちら

横浜市人事委員会 神奈川県の差別的取扱いに喝!

「再任用職員の療休日数を他県並みに」

学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)

 神奈川県の再任用職員の療養休暇は10日と、国・他の都道府県に較べ大きく遅れている。県教委にも強く働きかけているものの依然改善されない。そのため、組合は、この間、人事委員会に対して「再任用教職員のを正規職員並みにする」よう、措置要求に取り組んだ。これについて、横浜市人事委員会は他の人事委員会に先がけて、昨年末に、神奈川県の実態は国や他都道府県とあまりにもかけ離れているとして、均衡を図るべきとの判定を行なった。そして、同時に県知事と県人事委員会に対して同様の趣旨を示し、再任用職員の療休日数を他県並みに措置するよう勧告した。

県当局は認識を改め、直ちに他県と同等の均衡を図れ

 実は、組合が3年前に行なった措置要求についても同様の勧告が発せられている。当時、県当局は、横浜市人事委員会からの照会には「@再任用職員は1年単位の任用であることから、短期任用職員の待遇とすべき対象である。A(神教組も加盟する)県労連と合意している。」など抗弁していたが、先の勧告が出されたにも係わらずその姿勢を見直すことはなかった。そのため、若干の改善(10日間の有給化)をしたに過ぎなかった。

 これに対して、今回の横浜市人事委員会勧告は、認識を改めない県当局に語気を強めて再度の勧告を行なった。曰く、「(現行措置でも)地方公務員法24条5項に言う“国及び他の地方公共団体との均衡の原則”に照らした場合、その不均衡の程度は合理的な範囲とは認められない」と断じたのである。勧告は同時に、改めて調査した国と他県の現状(国と大部分の都道府県は定年前の正規職員と同日数の90日・有給)を示し、神奈川県が如何に低水準であるかを余すところなく示している。

 組合は、この判定を受けて、県教委と各指定都市に対して判定を示すと共に早急に改善するよう取り組んでいく。

臨任・非常勤職員へも適用を

 この改善の方向性は臨時的任用職員や欠員非常勤職員にも共通する課題だ。とりわけ学校現場は、学級担任をする、予算執行業務を行なうなど正規職員と同様の業務を担っている。寮休日数についても、昨年の総務省通知にも謳う“勤務の実態に対応する処遇”を行なうべきである。

 組合は今回の成果を踏まえて更に前進を期すつもりである。



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