2015年5月22日

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全学労連ニュース今号の内容

 全学労連文科省交渉折衝報告

 文科省予算から学校事務の未来を覗く

 学校事務職員制度の解体を許すな!  ―教職員給与費の政令市費化攻撃に対するがくろう神奈川のとりくみ

 2015スローガン

 カンパのお礼

全学労連文科省交渉折衝報告

 全学労連は、5月7日、2015年度方針大綱に基づく要望書を、文部科学大臣宛に提出した(要望書全文は別添)。

基礎定数改善を要求

 昨年に引き続き今年度も、@政令指定都市への教職員給与費移管と市町村への人事権移譲、A学校事務の「共同実施」推進中止B学校事務職員定数の抜本的改善などを、重点要望項目として伝え、後日の交渉を迎えることとなった。

政令市費問題に注視

 昨年の交渉時に文科省担当者からは「政令市費化について文部科学省は積極的ではない。国と地方が合意した結果、動きが始まった」と語っていた。今回の要望でも政令市費化へ各市の状況が定まらない動きがある中で、文科省としての関わりを問うとともに、全学労連はあくまで反対の立場で交渉に臨む。

東京の実態を見よ

 要準加配と共同実施の問題については、東京の学校事務完全単数政策、江東区の共同実施状況を説明し、以降多摩地区を中心に共同実施自治体が増えていっていることへの懸念、標準法を守らない自治体が存在することで、各地の事務職員定数への影響などを具体的に説明した。

 本交渉は7月を予定している。

文科省予算から学校事務の未来を覗く

 4月9日、参議院本会議で2015年度予算案が可決・成立した。文科省予算の中で学校事務職員に関連する部分を見ていく。

 文科省は昨年8月の概算要求で「新たな教職員定数改善計画(案)(10カ年)」を掲げ、授業革新等の教育の質の向上・きめ細かな指導体制の整備、教員が授業など子供への指導に専念できるようにするために、多様な専門スタッフを配置し、校務及び教職員の業務分担を抜本的に見直すことを目的に2015年度で2,760人(59億円)、10年間で31,800人の定数改善を要求していた。

 これは「改善」と謳いながらも、児童生徒の減少による教職員定数の自然減の3,000人より240人少なく、定数の実質的な減少を容認する(これまで増員要求を続けいていた)文科省の方針転換を示すものだった。

 しかし文科省としては、財務省に負け従った結果と言いたくないのか、文科省の言葉で言えば「追加的な財政負担を要することなく必要な定数改善を実施」することにより、加配でない安定的な定数改善のための「義務標準法の改正」を10年かけて実現することが概算要求の中での言い分であった。

 結果はどうなったのか?文科省の出した概算要求と成立した予算の変更点を比較すると分かりやすい。

 まず、「10カ年」の言葉が消えた。定数改善すると読み取れる文章もない。別表Aを見れば分かりやすいが、「2.チーム学校の推進」の「学校の事務機能の強化」が概算要求では500人だったものが、「学校マネジメント機能の強化」(学校マネジメント体制の確立に向け、教頭・主幹教諭等の配置の充実)と込みで合計730人が100人へと大幅に減らされている。

 文科省は従来の方針を変え、実質的に定数減となる概算要求を行ったのにもかかわらず惨敗したと言ってよいだろう。

チーム学校ってなんだ?

 ところで、「チーム学校」ってなんだろう?

 簡単に言うと、学校に存在する多岐にわたる業務の多くを教員が担っていたのを教員の他に多様な専門性を持つスタッフを学校に配置することにより、教員を授業に専念させ、子どもたちとふれ合う時間を確保することを目的にしている。学校事務職員も教員を助ける専門スタッフのひとつとしてあげられている。

 具体的には、教員が行っている事務業務の一部を「共同実施による効率的運営」を利用して事務職員が替わりに行うことが求められている

 文科省が発表した「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」の答申・報告文書には、「事務職員が学校運営に一層積極的に関わるとともに、そのサポートにより、教員の事務負担を軽減することができるよう、事務の共同実施の促進、事務職員の質の向上のための研修の充実などを行うとともに、教育委員会の判断により大規模な学校や事務の共同実施組織に事務長(仮称)を置くことができるように制度の整備を行うなど、事務処理体制の充実を図っていくことが必要である。」と書いてある。

 他にも「学校マネジメントを支える事務体制を強化するための大規模校などにおける事務職員の複数配置や事務長の設置などが考えられる」の記述がある。

 どうやら、大規模小・中学校を中心に事務職員を複数置いたり、事務長を任命する(この場合の事務長の職権・職責の範囲は不明だけれど)ことにより、事務職員を学校経営により深く関与させること、教頭と事務長の間で業務分担させたいのだろう。共同実施についてもその目的を多忙な教員の負担軽減を第一に置いていることが読み取れる。

数字から見える私たちの未来

 文科省が今後も「共同実施」を推進していくことは、今年度予算から分かった。そして、1998年の中教審答申で初めて「共同実施」の言葉が全国に広がったときから、学校事務職員の定数削減・非正規雇用化、小規模校からの事務職員の引き上げが進んでいる事実を今一度確認したい。

 2006年と2014年を比較した、各都道府県における学校事務職員の欠員人数や臨時的任用者数、本採用人数を定数で割った対定数本採用率の変化を見ればそれは明らかだ。

 最悪なのは、東京都で臨任44人が300人に増加、欠員が424人から568人に増加、対定数本採用率が81.0%が63.9%へと悪化している。

 大分県は、欠員が2人から38人に増加、対定数本採用率が88.1%から74.3%へと急激に悪化している。宮崎県の対定数本採用率は93.4%から71.1%に悪化、福岡県、熊本県、鹿児島県も75%前後で九州は非正規雇用化が急激に進行している地域となっている。

 沖縄県は、欠員が4人から20人に増加、対定数本採用率は87.1%から86.9%(近年の採用数の増加が影響か)と変化している。

 全国の総計では、定数が34466人から33262人へと1204人減少している(児童生徒数の減少による学校数、学級数の減少が理由)のに、欠員数は939人から1061人へと122人増加、臨任者は2695人から4750人へと2055人も増加、対定数本採用率は89.5%から82.5%へと7ポイント悪化している。

 学校事務職員の雇用形態が悪化した理由として考えられるのは、私たちの給与の根拠となっている義務教育国庫負担制度が、教員も事務職員もプールにした総額裁量制に変わり、事務職員の定数が教員に回され使われていること(首長選挙等の公約の少人数学級実現のため)や、大分県や東京都の共同実施のように、拠点校に人数を減らした本務職員を集中配置し、周辺校には事務職員を置かなかったり(大分県)、非常勤職員を配置する(東京都)ことで本務職員を減らし、非常勤職員のような非正規雇用の職員に置き換えられているからだろう。

共同実施の最先端は東京都

 この傾向は、今後ますます加速していく。それは、東京都教育委員会が公然と共同実施を行う目的を「正規職員を減らし、人件費の余剰分で非常勤職員を雇用し、拠点校以外の学校にはその非常勤職員を当てて、日常の事務処理にあたらせる」と言っていることから分かるように、共同実施は、学校事務職員の人件費抑制、非正規雇用化を進めるための道具として使われていくからだ。

 東京都の共同実施は、まだほんの一部で行われているだけ(東京都の学校事務職員の労働組合7団体すべてが共同実施に反対し抵抗している成果だ)だが、東京都の共同実施が今以上に拡大していくと学校事務職員の将来に悪い影響を与えることになる。

 これまでそれぞれに共同実施を行ってきた他の自治体が東京都に倣い、既に構築された共同実施組織を利用して学校事務職員の定数削減、非正規雇用への置き換えのために共同実施を利用することは非常に簡単なことだから。

 もうひとつ重要なことは、東京都は都費負担学校事務職員の任命権を区市町村に権限委譲する方針(義教金制度により国庫から支払われる私たちの給与費を都から区市町村に替えること)を既に2006年度に明らかにしていることだ。1800人以上もの学校事務職員を抱える東京都でそれをやられるとしたならば、2017年4月に行われる政令市への県費負担教職員の任命権委譲と合わせ考えれば、学校事務職員制度そのものを根幹から揺るがす大問題となる。私たちが学校事務の仕事を続けられなくなる日が目の前に来ている。現在沖縄で行われている「のどかな」共同実施はいつまでも続くものではないこと。共同実施を進めれば進めるほど、そんな日がより早く来ることを促すことになる。(濱)

沖縄学校事務労働組合
おきがくろうニュース
2015.4.27 329 より転載

学校事務職員制度の解体を許すな!

教職員給与費の政令市費化攻撃に対するがくろう神奈川のとりくみ

 教職員人件費等の政令市費化―移管の目途とされる2017年4月まで2年を切った。給与・服務・旅費等の条例・規則化、給与システムの設計・稼働までの時間的なリミットを考えると、今年度中が交渉の山場。というわけで横浜・川崎・相模原、3つの指定都市教委と交渉中だ。一番の懸念は、私たち「学校事務職員」の職としての存続。市行政職との任用一本化になれば、東京のような状況になるのは明らか(東京のみなさんごめんなさい!)、いや、各市の財政力を考えればもっと過酷な状況も予想されるのだ。組合は以下の「見解」を当局に突きつけ、学校事務職員制度の維持を求めている。厳しい状況だけれども「自らの労働条件は自らの手で!」−原点の闘いを展開中だ。義務教育制度の根本を揺るがす大攻撃を、全国の仲間と繋がって神奈川からもはねかえしていく。ともに!

 次ページにがくろう神奈川の見解を載せました。

政令市移管後の学校事務職員のあり方について

2015.4.13 学校事務職員労働組合神奈川

 地方分権第4次一括法の成立により、2017年度を目途に政令市教職員の給与負担や教職員定数の決定・学級編成基準の決定権限が県から政令市へ移譲されることとなり、現在関係機関で準備作業が進められ、職員団体との間での交渉も始まっている。

 私たちは、当初より、政令市費化は義務教育における県内・全国の地域格差を広げるとともに、各自治体における外注化・非正規化など「教育の民営化」を一層加速するものであること、また私たち学校事務職員にとっては、全市的合理化の対象に組み込まれ、一般行政職との任用一本化や定数削減、「共同実施」=センター化、非正規雇用への置き換え等、学校事務職員制度の解体に繋がるとの懸念を表明し、政令市費化に反対し、合意撤回を求めてきた。

 現在の給与負担者である県も、また移管後の給与負担者である市もそれぞれが、政令市で働く教職員に対する雇用者責任を持っている。今回の移管によって、県下義務教育諸学校の教育水準、また教職員の給与・労働条件の低下をもたらすことは絶対にあってはならないし、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進」という法の目的を踏まえるならば、より充実した教育水準が担保されなければならない。

 以上の観点から、政令市移管後の学校事務職員のあり方について組合の見解を述べるものである。

1.学校事務職員制度の趣旨と歴史が尊重されなくてはならない。

 学校事務職員は学校教育法に基づいて置かれる学校に必須の職員であり、教育基本法第5条「3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実績に責任を負う」の具現化の一端に他ならない。市町村立学校職員給与負担法(1948年)、義務教育費国庫負担法(1952年)、定数標準法(1958年)はいずれもこの観点から学校事務職員の給与負担や定数について定めるものであり、こうした法的根拠に基づいて学校事務職員制度の充実が図られて今日に至っているものである。現行学校事務職員の国庫負担金算出基準など、給与上の位置づけについても文科省の通知を基準にしており、制度的な保障と全国的な水準が担保されていることを認識されたい。

2.学校事務職員の職務の独自性が重視されなければならない。

 学校事務職員の職務内容は、おおむね、総務・庶務、学籍、経理(学校予算の計画・執行・管理・決算および就学援助・就学奨励)、管財(学校施設・整備の維持管理及び物品管理)、人事・服務、給与・旅費、福利厚生など実に多岐にわたる。それぞれに一定の法規、事務処理方法についての知識を必要とする。学校事務職員の定数の現状は多くの学校で単数配置であり、ひとりでこれらの職務をまんべんなく遂行しなければならない。また、学校には校長・教員、現業職員がいるものの、学校事務を専門とする職員は学校事務職員以外にいないため、適切な指導助言を同僚から得ることが困難である。学校事務職員は採用時からこの悪条件の下で職務を開始し、次第に習熟していくものであり、蓄積された経験豊富な学校事務職員の存在は学校の円滑な運営に不可欠である。また、事務職員同士の交流と助け合いが、一人職としての弊害を乗り越える役割を果たしている。ベテランも新人も同様の仕事をする職務の独自性が、事務職員間に連帯の意識を作り出していることも重要な視点である。

3.任用の一本化はすべきではない。

 このような独自性を有する学校事務職員の採用については現行の独自の採用試験を継続すべきである。全国的には学校事務職員の採用を一般行政職員採用試験と一本化し、人事異動にも一般行政・学校の別を問わず行われている(いわゆる任用一本化)自治体があるが、学校教育にとっての弊害が著しい。

 東京では一時学校事務に他局からの再任用職員が多数配置されたものの、単数配置での業務の困難さに希望者が激減した経過がある。また新採用の配置を行わず、学校事務職員のままでは昇任ができないため他局に異動するものが多く、熟練した学校事務職員が育たない。よって、定数が確保できずに膨大な数の慢性的な欠員が放置されている状況がある。宮崎県では、県からの出向という形で学校事務が腰掛け的な職になっている。このような職場は働く場として不健全である。石川県では任用一本化の弊害が著しいため、学校事務の独自採用区分が復活している。以上の例を見ても、新採用から時間をかけて育成する学校事務職員制度の維持は不可欠である。

4.学校事務職員定数の改善が強く求められること。

 教職員定数の決定権限が政令市に移譲されるのを機に、学校事務職員の定数について改善が図られるべきである。文科省は2015年度予算概算要求で学校事務職員の複数配置基準引き下げを図った。過去においては、県も国を上回る複数配置基準で県単措置を行ってきた。政令市独自に措置が可能である。

2015年度全学労連スローガン

この間のカンパに感謝を申し上げます。

 この3月から4月にかけて、購読料のお支払いと併せて多くの読者の方から多大なるカンパを頂戴いたしました。事務局一同感謝に耐えません。皆さんのお気持ちは大切に使わせていただきます。ありがとうございました。

 全学労連は、臨時的任用職員など非正規労働者の権利・労働環境にも全力で取り組んでいます。もちろん、学校事務課題にも闘い続けます。皆さんのご支援が、無駄にならぬよう、精一杯がんばってまいります。

 今後もご支援をよろしくお願いいたします。

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