WEB全学労連 |
377号 |
2015年8月1日 |
全学労連ニュース今号の内容
7月10日、全学労連は過日提出した要望書に基づき、文部科学省初等中等教育局と交渉した。政令市移管や共同実施、それらに伴い学校事務職員定数が不安視される中、当該の文科省に学校現場の実情を伝えた。以下、要望(明朝)と回答、質問を交えて報告する。
2.義務教育費国庫負担制度(以下、義教金制度)及び学校事務職員制度について
C 政令指定都市への教職員給与負担移管及び市区町村への人事権移譲を始めとする県費負担教職員制度解体につながる施策を行わないこと。
文科省)政令市への移譲については、従前から県と政令市から「給与費と人事権のねじれの解消」を求められていた。昨年12月に合意に至り、平成29年4月移譲に向け法改正が行われた。文科省としては給与費が移管することにより、教育水準の低下が生じないように、円滑な移譲を目指し、引き続き助言等を行っていきたい。
人事権については今年1月30日に閣議決定された。2月に任用に関して文科省が市町村に行った調査では、特に手を挙げた自治体はない。広域人事行政に関しては、関係者の理解を得ながら、引き続き市町村と協議していくが、画一的にすべきではないと考えている。事務処理の方法など連絡を密にしていきたい。
D 教職員給与費の政令市移譲に伴う任用一本化、労働条件改悪を行わないよう政令市に働きかけること。
文科省)県費負担教職員の労働条件については、地方公務員法上は任命権者の権限になる。それぞれの自治体が適切に判断していると考えている。
E 「教育の民営化」の一環である学校事務の「共同実施」並びに「外部委託」を推進しないこと。
文科省)学校事務の共同実施は、学校の多様な在り方、学校の自主制・自律制の確立、組織として課題解決にあたるなど、学校の一翼を担う学校事務職員がマネジメント能力を発揮し、また、学校の機能強化など、教員が子どもと向き合う時間の確保や、事務機能の強化に有効なツールの一つであると考えている。ここで中間まとめがでているので、デメリットの部分をできる限り少なくなるよう取り組んでいきたい。
3.定数改善等について
@ 加配方式による定数配置をやめ、学級数や児童生徒数(要保護・準要保護数を含む)を基準とした抜本的な定数改善を行うこと。<中略>A)事務職員については複数基準の引き下げによる改善を行うこと。B)標準法の要保護・準要保護加配の省令改定(25%かつ100名以上を、100名以上へ)を行うこと。
文科省)昨年の予算編成において法改正を求めたが、認められなかった。今年度も加配措置は出していくつもりだ。今、学校事務職員の必要性は高まっている。要求は強く出していくつもりだが、風あたりは強い。現在教職員定数充実全般において検討中である。
全学労連)定数問題にしても、共同実施にしても、文科省が言うチーム学校とはかみ合わないことを進めようとしている気がしてならない。東京都の義務制学校事務職員が定数割れしている状況をどう考えているのだ?
文科省)標準を下回ったからといて、直ちに違法ではない。定数を充足するように、求めていくが、最終的には地教委、この場合は都の判断になる。
全学労連)東京都は総額裁量性が入ったせいで、事務の定数基準が廃止され、それを放置して欠員とも言わない。一時500人も欠員を出しておいて限度があるだろう。「標準は下限である」とか「法に沿って」とか言い方はないのか?
文科省)現行法の中では「標準」としか言えない。
全学労連)政令市費化になればこの事態がもっと拡がる懸念は?
文科省)今の水準が悪化することのないよう、標準を満たすように定数のヒアリングを行ってきているし、これからもしていくつもりだ。
全学労連)義務教育制度が変わっていく危機意識がないように見える。文科省としての責任はなく自治体まかせで、学校としては住民からの要望など聞いていくと不安だらけだ。
中核市の議論はされているのか?
文科省)閣議決定を受けて、「関係者の合意を得るように」という通知を2月に出した。通知を出してからは特に話は出ていない。今はまだ具体的な移行については聞いていない。
全学労連)基本定数を割り切る施策を行っている。文科省は「そういうことはやめて!」とは言えないのか?
文科省)やめてとは言いづらい。置いてくださいになるかと思う。東京は教員の加配などで全体の充足率は満たしているが、職員別では足りないところもあると聞いている。定数を満たしたうえで加配だということは今後も指導していく。
何とも煮え切らない文科省の回答だった。
総額裁量制以降、自治体任せで定数の割り振りを黙認してきた結果、事務職員の欠員や教員の非常勤化が進んできている現状をどう考えているのか。その結果、総務省や財務省から「こんなに人件費をかけなくてもほかにやり方あるのでは?」と、予算削減攻撃の矢面に立たされているのだ。
また、学校そのものが壊されてきている。教頭や副校長の負担増などは学校そのものの在り方を考えていくべきところまで来ている。事務が共同実施をして、仕事が増えてきているのは現場、教頭、副校長である。学校事務職員が現場にいて施設を回ったり、アドバイスをしたりするから学校にも職にも愛着が出てくる。現場を離れたらそういうところに気がいかなくなるだろう。学校にいるから学校内の仕事をやる。そういう面からも文部科学省は自分たちの政策、事務職員制度を考えていってもらいたい。
東京の共同実施は学校事務職員にとって全国的課題だ!
7月4日、東京における7者協議会は立川市の三多摩労働会館で集会を開いた。
立川で開催することには特別な意味と思いが込められている。東京の共同実施は江東区と武蔵村山市からスタートしたが、今年7月には清瀬市が、そして来年度試行に向けて東村山市、立川市、青梅市と続々と多摩地区の名前が上がっていたため、多摩地区の事務職員に是非とも集まってほしいという思いだ。
参加状況から見ると少し淋しいという感じが否めない。約60名参加で立川などの多摩地区の方々がたくさん集まったとは言えないだろう。
しかし、内容的にはかなり密度の濃いものとなり、今後の共同実施に対する闘いを方向付ける視点がいくつも出てきたことは大きな成果であった。
基調提起としては、これまでの4年間の経緯を振り返り、今後の争点を@権限問題A校務改善との関係B定数問題 と3点にまとめた。そして多摩地区の状況整理を通じてなぜ多摩地区で拡散して23区ではないのか。徹底した地教委との関係づくりの必要性を提起した。
23区に比べて市費正規事務職員が引き上げられたあとも非正規職員が財務事務を担っているケースが多く、その点についての混乱が少ないという分析がある程度有効である。ただし、地区によって予算編成の手法に違いもあり、都費事務職員が予算編成や学校納入金を担当しているケースも見られ、一般的法則として立論するには無理があるという貴重な意見も出された。さらに都教委との人的パイプの有無もかなり影響しているという見方も有力である。
武蔵村山市は小中あわせて14校、清瀬市も14校。東村山市は22校、青梅市は27校、立川市は29校。つまり多摩地区の共同実施は徐々に規模の大きな地区にシフトしつつある。多摩地区の中規模自治体で共同実施が成立すれば、かなり他を侵食していく危険性も高まる。
今年度基本定数を割り込んだ欠員に非常勤職員を充てようとした都教委は地教委の反発に対して都立学校から新採28名を持ってくることによって何とか事態を収拾した。と言っても新採配置の恒常化を都教委は意図していない。任用一本化においては小中学校は不人気職場となっており、常に輸出超過であり再任用希望率も本庁の約半分にとどまるならば、新採補充がないと欠員発生の可能性は高い。欠員発生の危機と総務局からの定数削減要求を同時に満たすのが共同実施による定数削減なのだ。つまり東京においては共同実施の唯一の狙いは定数削減なのだ。
武蔵村山市は7校1グループで2グループ。1グループあたり共同事務室に都費は4人。つまり基本定数(1校1名)からすればマイナス6名となる。この陣形が都教委の共同実施モデルとなっていると私たちは考えている。学校数の同じ清瀬市は武蔵村山市の共同実施をそのままスライドさせて作られようとしている。この共同実施拡散方式において各地区の事務職員の任務分担の相違などは度外視されている。
集会における江東区からの報告は今後の共同実施を問うていく際のヒントを与えてくれた。例えば通勤手当を見てみよう。通勤届原本が連携校事務室で収受され、共同事務室へ送付される。そこでは内容を確認し手当額が算定される。そして通勤手当原本が連携校に戻され、校長決裁となり、表裏の写しが共同事務室へと送付され、システム入力となる。そしてさらに写しが区教委へと送付され、内容確認の上保管される。通勤届は連携校事務室、共同事務室、区教委と写しも含めて3か所で保管される。
この書類の動きは全くナンセンスである。決裁権を所属校長が持っているために起こる無駄な書類の行き来。そして確認のため3か所で原本も含むコピーの保管。旧所属から送付されてくる職員の異動関係書類もすべてコピーを取って共同事務室へ送るという。連携校事務室から共同事務室へコピーを取って送付する非常勤支援員の手間だけでも膨大なもののようだ。そして非常勤支援員は超勤手当が予算化されておらず、本来超勤はありえないはずだが、特に年度末・年度初めを中心としてサービス超勤は慢性化しているという。
副校長業務の軽減も共同実施のメリットとして上げられているが、学校現場の小破修理などに副校長が関わらなければならない機会が増えて、かえって業務負担は増加しているのではないのか。副校長の業務軽減につながったという声は今のところ聞こえてこない。
東京の共同実施は他県のそれと全く異質であることが強調されるが、全学労連佐野議長は集会の中で、「いま全国の共同実施の流れは東京型に流れようとしているのではないか」という貴重な問題提起をした。この認識は重要である。確かに基本定数を割り込む合理化型共同実施を実施している地区はほとんどない。しかし大分県や非常勤化を止めたが秋田県などの動向を再度勇気づけるものとして東京型共同実施は存在している。政令市費化ともに事務職員制度を崩壊に導く東京型共同実施については全国から追及の声をあげてほしい。
(学校事務ユニオン東京 宮崎俊郎)
東京のとんでもない「共同実施」を阻止するべくというのもあるが、家からとっても近い立川の集会に行きたいと思い、参加した。
私は、職場も組合も埼玉だが住まいは東京多摩地区で、小・中学校も府中市、八王子市そして高校は調布市と子ども時代は東京・多摩地区で過ごしてきた。東京といっても緑が多く、住みやすい多摩はとっても愛着があり、好きな土地だ。子ども時代はそんなのどかな学校に今ではとんでもない「共同実施」がじわじわとやってきている。立川は自宅の最寄駅からはほんの5分しかかからず、たまに買い物にやってくるよく知る街だ。今回も午前中は欲しいとおもっていたタブレットなど見にB電気屋さんに寄り買い物がてら・・・ではなく集会があるからついでに電気屋に寄ってみようと・・・集会に参加した。
会場は初めて行く場所で、少し暗く分かりづらい場所だったが、主催者が案内誘導してくれていた。
会場に入ると結構いっぱいだった。いつもの全学労連のメンバーや久しぶりに会うユニオン東京の方も来ていた。集会では宮崎さんの基調報告のあと、「共同実施」地区からの報告があった。以前事務研で見に行った江東区の共同事務室のインパクトが強すぎたためか、多摩地区に「共同実施」のイメージが弱かったが、江東区以外はすべて多摩地区で「共同実施」が進んできている。東村山市では7校で都費事務職員を3名にして後は非正規にしてしまうとか、青梅市の報告者からは学校が非正規職員だらけになってしまう と報告があった。これらの学校は僻地の学校事務職員未配置校の話ではないことを念頭に置かなければならない。
休憩後の討論では都教委交渉の報告のあと、多くの意見が出された。
東京の「共同実施」は都教委が言っている副校長の多忙化解消や事務の効率化とは逆行している。現場にいる非常勤職員では業務を完結できないため、共同事務室と学校現場で書類が行き来し、かえって非効率で時間も手間もかかっていたり、非常勤職員では責任を持ちきれないため、副校長が給与取扱者になりその他現場に正規事務職員がいなくなったため、副校長は今まで以上に多忙になってしまったそうだ。
おっと私の真後ろにはT学のY村さんが・・・国分寺や国立市は枠配分予算方式だが非常勤でその事務ができず、令達方式になっていくのではないか と発言していた。また、学校事務職員だけではなく、立川市職労(自治労)の方からの発言もあった。給食職員が民営化されようとしたとき、ストライキで闘おうとしたがそこまでは出来なかったことや、ぜひ「共同実施」反対のビラを全校・全市にまいて学校職員だけではなく市民や保護者にも知ってもらうことが必要だと・・・どっかの自治労とはトーンの違った心強いエールを私たちに送ってくれた。
最後に主催者からは、東京の「共同実施」はだれにとってもいいことはありません。と発言があり、そうだな と思った。
7組合での闘い、ご苦労はあると思いますがとってもよいと思います。東京で「共同実施」をさせないこと・・・重要であると思っている組合員が多いんですね。
東京の「共同事務室」を機会がある方はぜひ見に行ってください。話を聞くのと全く違う衝撃を受けます。そして、「共同実施」阻止の運動もっとしなければとのおもいが強くなります。
ただ、東京のような「共同実施」でない「共同実施」にしようと思っている勢力もあります。特に、新採用職員への支援には有効だ と。そもそも新採用職員への指導は任命権者・地教委・職場管理職が行うべきものなのに、それを「共同実施」グループにさせ、そのなかでグループ長になり、うきうきになっている「事務長」がいるのは気持ち悪い。どんな「共同実施」も非正規職員を増やし、学校事務職員制度を解体させるものであることをもっと多くの人たちにわかってもらいたい・・・。
(埼玉学労協 布川 昌美)
―東京都の「共同実施」と定数削減の実態―
全学労連は、学校事務の「共同実施」が人員削減合理化の手段となる危険性を当初から訴えて、その拡大に反対してきた。中教審が「共同実施」を1998年に答申してから当初は「処遇改善のため」として、その後は「制度存続のため」と推進する理屈は都合よく変えられながら10数年がたっている。しかし未だに様々な「共同実施」が全国に乱立しているのが実態だろう。目的も定義も曖昧なまま推進された当然の結果といえる。そして全国的に学校事務職員の欠員が増加し、加配による非正規採用が増えてきた。
東京都では定数加配どころか、標準定数法に定められた大規模校の複数配置や就学援助加配規定を無視して550人を超える欠員を意図的に生み出している。すなわち学校事務は合理化の対象であって、標準定数法などに従う必要などないということだ。そしてそのことを更に決定づけるのが東京都の推進している「共同実施」なのだ。
東京都の「共同実施」の実態を2013年度から実施されている江東区に見てみる。深川第二中学校を拠点校にして連携校が6中学校で、全7中学校が共同実施の構成校となる。今年度からは1拠点校4連携校のグループが新たに加わっている。拠点校には共同事務室が置かれ、本来なら各連携校に配置されるはずの都費事務職員は全員が共同事務室勤務となる。そこでは各構成校の事務を処理するが、今年度から学校担当制から事務分野別担当制に変わったという。すなわち事務職員は担当が給与ならグループ全校の給与事務を処理する。別な言い方をすれば、事務分野別に切り離されて、学校現場の総合的な把握は出来なくなるし、その必要は無いということだ。
共同事務室は拠点校内に置かれてはいるが、業務の中身が拠点校や連携校から提出された書類の処理が主なので、教職員や生徒の名前に書類上で触れることはあっても、顔まで覚える機会もその必要も無い。実際他の教職員や生徒が立ち入ることはほとんど無いという。
はたして共同事務室でやっているものは「学校の事務」ではあるが、学校事務職員のやる「学校事務」と言えるのだろうか?役所の本庁や出先機関でも出来る事ではないだろうか。共同事務室が拠点校に置かれているのは、学校との一体感を偽装して義務教育費国庫負担金を貰い、人件費を浮かせようという魂胆なのかと勘繰りたくなる。
共同事務室へ都費事務職員が引き上げられた代わりに、学校現場には「共同実施支援職員(専務的非常勤職員)」が配置された。1日フルタイムで月11日以上、年192日勤務の都費非常勤職員だ。これに元々配置されていた1日5時間45分週5日勤務(8月は勤務無し)の「学校事務専門員」という区費非常勤職員と、予算の範囲内で1日6時間、週1〜2日程度必要に応じて雇用される臨時職員が加わる。すなわち学校現場には常勤フルタイムの学校事務職員がいなくなったということだ。
今は「事務職員」と呼ばれる人員は増えてはいるが、雇用は不安定であり削減も容易になっている。共同事務室にしても、先述したように事務分野別担当制に変わり、それが軌道に乗ってきたらグループ構成校数分の人員を配置せず合理化を図るのは有り得ることだ。総額裁量制を活用して余った国庫負担金は現場の都費非常勤職員の人件費に充てれば減額されることもない。
東京都は副校長が激務で志願者が激減している事態に対処するために「業務改善」と称して負担の軽減を図っていた。ところが共同事務室に本務者である都費事務職員が引き上げられてしまったため、それまで都費事務職員が担っていた物品出納員・財務検査員・給与取扱者などの仕事の多くを副校長が担うことになってしまった。確かに学校現場でなければできないし、非常勤職員が担うには不適当な仕事ではあるが、かといって現実的に副校長が担えるかというと極めて疑問である。
こうした問題もあってか、江東区には小学校44校、中学校23校があるが、導入3年目にして「共同実施」が行われているのは中学校のみ2グルーブ全12校だけである。ただし都からの圧力もあり、23区外の特に多摩地区を中心に導入する市が徐々に増えているのも事実である。これが今後拡大していくか中止されていくかは、東京都の人員削減に向けた意欲と学校現場からの反対運動との力関係にかかっている。全学労連への加入組合である学校事務ユニオン東京をはじめ学校事務関連7組合は、これまでの様々な経緯を越え「共同実施反対」で7者協として結束して闘っている。それ程東京都の「共同実施」が酷いということだ。
はたして東京都の事例は“特殊”なのだろうか?確かに550を超える定数欠員の上に「共同実施」により更なる削減を図ろうとしているのは、全国的に見ても異様であるのは間違いない。しかし東京都が「共同実施」導入の際参考にしたのが、大分県と愛媛県であったことを考えると、決して“特殊”として済ますことは出来ない。むしろ東京都の方が共同実施の本性を素直に表現しているというべきだろう。
東京都ほどではないにせよ、標準定数法に反して意図的に学校事務職員に欠員を作りながら「何のペナルティも無い」と公言してはばからない地方の教育委員会担当者もいる。教育委員会の所管内での任用一本化(国庫負担法対象職員の独自採用でない)が行われている自治体も増えている。2017年度からの給与負担の政令市移管、そしてそれに続くであろう中核市への移管を見据えて市職員との任用一本化も検討の俎上に上っている。
教職員配置に責任を持つべき文科省は、全学労連との交渉で東京都をはじめとする学校事務職員定数を守らない自治体が増えていることに対して「定数を充足するよう求めていくが、直ちに違法とは言えない」と極めて消極的な姿勢だ。さらに「共同実施は事務機能の強化に有効なツール」と相変わらず主張し続けている。東京都に限らず、定数や国庫負担の空洞化と現場事務職員の行政事務への一本化が進めば進むほど学校事務職員の定数削減圧力は強まる。
東京型の「共同実施」ではないから大丈夫…、ではない。問題は「事務の組織化」と称して能天気にその下地作りをしていることにある。目的も定義も曖昧だからこそ、「共同実施」が広く行き渡れば行政側の姿勢によって容易に東京型に転化しうるし、その際は定数削減の「有効なツール」として「学校事務の共同実施」は活用されていくということを肝に銘ずるべきだろう。
先日教頭が、事務室に臨時的任用教員の更新手続き書類を持ってきた。
「ちょっと聞いていい?校長から臨任の更新書類を預かって、『これで間違いなければ、発番をふって市教委に提出しておいて』って言われたんだけど、これ、みんな3月30日までの期間になっているんだけど、なんで?31日じゃダメなの?何か根拠があるの?」と聞いてきた。
きたきた!わからないことを素直に聞いてくる、これはとても大事なことだ。私は丁寧に答える。ちなみに我が県は通常年度末に1日空白を設けている。
「法的根拠はないといわれています。そもそもこの空白は“臨時的任用は6か月以内、人事委員会の承認があればさらに6か月を超えない期間で更新でき、再度の更新はできない”という地公法22条の趣旨に基づいています。」
「じゃあ、3月31日でもいいんじゃないの?1年を超えていないんだから・・・」
「そこが難しいのでしょうね。仮に3月31日まで任用していて、次の4月1日にまた任用したら退職という概念がなくなってしまうと考えているのかもしれません。」
「そんなの退職手当を勤めていた分蓄積して計算すればいいんじゃないの?」
「そうすると退職手当は1年以上になってしまう。これでは任用が1年を超えてしまったことになると思っているかもしれません。ただ、退職手当の支給割合はある年数までは、年を重ねた分、倍しているだけですので数年間蓄積しても、たとえば3年まとめた方が、給料号給が毎年上がる分、最終の退職手当支給額が多くなるくらいですね。そもそも1日空けて「継続」でなくなるのであれば、同じ職場で2年、3年と臨時的任用が続けられるはずです。わざわざ違う学校に任用しているのですから、ごまかしをしているとしか言いようがないですね。」
「じゃあ、3月31日で出してみる?」
「市教委からはきっと、30日に直してと差し戻されるでしょう。」
この話のあと、「空白を設けること」について改めて調べてみた。
「総行公第59号 平成26年7月4日 各都道府県知事 各指定都市市長 殿 各人事委員会委員長」 充てに 総務省自治行政局公務員部長」が出した「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」の<別紙> では 「T 臨時・非常勤職員の任用等について A 任用根拠ごとの留意点 ウ 臨時的任用職員 臨時的任用職員については、任用可能な場合や任期に係る要件が地公法第22条に明確に定められているところであり、任用に当たっては、こうした制度上の要件を再度確認し、特にフルタイムの臨時的任用を繰り返すことによって、事実上任期の定めのない常勤職員と同様の勤務形態を適用させるようなことは避けるべきである。」とある。あくまで「臨時的な任用」に限定している。これを教育公務員に当てはめ、毎年人を探すというのはこれもまた煩雑だ。とはいえ、現状は「常勤職員と同様の勤務形態」ではある。
また社会保険についても、同通知で「厚生年金保険及び健康保険の被保険者資格については、『有期の雇用契約又は任用が1日ないし数日の間を空けて再度行われる場合においても、雇用契約又は任用の終了時にあらかじめ、事業主と被保険者との間で次の雇用契約又は任用の予定が明らかであるような事実が認められるなど、事実上の使用関係が中断することなく存続していると、就労の実態に照らして判断される場合には、被保険者資格を喪失させることなく取り扱う必要』(平成26年1月17日付厚生労働省通知「厚生年金保険及び健康保険の被保険者資格に係る雇用契約又は任用が数日空けて再度行われる場合の取扱いについて」と引用している。
先日の県教委交渉でも「臨任更新のための空白の一日は必要か?そもそも31日を空けても、4月5日発令とかになって、手当も出てないし、保険証は5月まで発行されないし(我が県の被保険者資格は空白1日のみ認めるとしている)、年金加入の被保険者資格も失い1か月空いてしまう。労働環境的にはひどいと思う。改善の意思、見込はあるか?」と問いただすと、「他県の状況を見まして・・・」「だから他県は1か月でも継続としていて繋げているんだって・・・」「「まあ、状況を見ながら・・・」・・・何とも煮え切らない。
そもそも、学校での臨時的任用は、欠員補充が多い。ここのところの退職者増に見あい、多く採用すると、また世代に塊ができてしまうため、年齢や経験を慣らすために、臨時的任用を多用しているという指摘もある。様々な児童生徒が育まれていく学校という環境の中で、担任が毎年変わってしまうとか、行事や校内校務分掌に関し理解が深まらない、常勤の特定の人に業務が偏るなど、およそ学校にとって良いことはないと思われる。
任命権者は使い勝手のよい職員を増やすばかりでなく、学校現場のこと、教職員のことを考えて、教育政策を柔軟に考えていってもらいたい。(事務局 吉田 泰)
無料WEB-pageスペースを利用しているため、広告が表示されますが、全学労連とは無関係です。