2015年11月28日

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全学労連ニュース今号の内容

 11.27全国から東京へ  全学労組・全学労連 全国総決起集会とデモを実施!

 連載「チーム学校」2  「チーム学校」て、なんだ<

 「チーム学校」と「共同実施」を並べるなんて<

11.27全国から東京へ

全学労組・全学労連 全国総決起集会とデモを実施!

 今年も全学労組と全学労連共催による全国総決起集会が行われた。例年は参議院議員会館で開催されるのだが、今年は会場の都合により国会議事堂隣の憲政記念館で集会が行われた。集会のメインスローガンは「戦争への道を開く教育改革反対!教職員給与費の政令市費化反対!」だ。折しも9月19日に、立憲主義を無視して憲法違反の疑いが濃厚な「戦争法」が強行可決されて間もなく、絶好のタイミングと会場だったといえよう。

 全学労連は午前中から文科・財務・総務の三省はじめ、全国知事会他の地方団体へ、そして午後の集会前には各都道府県毎に地元の国会議員への要請行動を行った。

 要請内容の概要は以下の通り

  1. 義務標準法に定める学校事務職員定数を遵守させ、欠員を生じさせないこと。また、学級数等客観的基準に基づき、複数配置基準を改善し定数増をはかること。
  2. 学校事務職員を学校から引き剥がし、人員削減や廃職につながる「学校事務の共同実施」の施策をとりやめること。また、「共同実施」を目的とした定数加配を廃止すること。
  3. 非正規雇用学校職員の労働条件を改善すること。
  4. 義務教育費国庫負担制度を堅持・改善すること。
  5. 教職員給与費の政令指定都市への移管に伴い、教育環境や学校職員の労働条件、事務職員の任用のあり方について地域間格差が生じないよう取り組むこと。また、給与費・人事権等の市町村へのさらなる「権限移譲」を行わないこと。
  6. 義務教育の完全な無償化を図ること。
  7. 収束しない原発事故から、子どもたちをはじめ被災者を守り支援するための対策・施策をとること。また、原発の再稼働に反対すること。

 また、全学労組は文科省との交渉をセットし、それぞれの取り組みの集約点として全国総決起集会を位置付けた。

 集会後は、日比谷公園から霞が関の官庁街を抜け、東京電力本社前や銀座を通るデモを行い、学校の抱える諸問題や脱原発・辺野古新基地建設反対・戦争法廃止などを訴えた。

連載「チーム学校」2

「チーム学校」て、なんだ

「チームワーク」のチームとは、わけが違う

文科省の失敗と弥縫策

学校事務職員にとっての「チーム学校」

(以上、前号)

教育諸団体の意見から本音が透ける

 「チームとしての学校」作業部会では教育諸団体が意見を表明している。事務職員関連での教育諸団体の言い分を見てみよう。本音が透けて見える。

 全国連合小学校長会長「学校事務職員については、学校運営に関わる職であることを法令上、明確にすることが主体的に校長を補佐する意欲を持たせることにつながる。」

 指定都市教育委員・教育長協議会「事務職員の職務規定の見直し及び配置の更なる拡充について。教員が行っている職務の一部を担うことにより、教員の負担が軽減されるため。」

 全国町村教育長会長「事務職員の職務内容を明記し、事務処理に関する職務を増やし、教頭のリーダーシップの発揮や教諭の指導に関する時間確保が課題です。」

 やはり、教員の負担軽減のために事務職員に仕事を回すことを念頭に置いた発言が多い。教職員の定数改善が困難な中で、教頭や教員の業務削減を行うためには、事務職員の労働を増やすしかないということか。

 

 各団体の意見のなかで、全国市町村教育委員会連合会が面白い。事務職員に関しては「今まで培われてきた学校事務職の常識を変えるには、事務職員の採用から見直すべきである。」採用から変えないと、事務職員にそこまで仕事をさせられないことを分かっていらっしゃる。また、別の項目でも部活動支援員に関して「生徒指導上また授業の効果をあげるためにも学校おいて部活動を推進している。総合的に把握するよさは残すべきと考える。」そのうえ、人事評価に関しては「人事評価の結果を任用・給与などの処遇や研修に適切に反映とあるが、十分な注意が必要であり、組織の協力体制の崩れにも配慮する必要がある。」と批判している。「教職員や各種スタッフの増置をするしか策は見当たらない。」と至極まっとうな意見を開陳してくれています。

 

 さて、各団体の最後に、日教組、全事研の言い分にも触れていこう。

 日教組「事務職員が担当する領域を教育委員会が明示すべき。」「国は、事務職員が担当する職務領域について通知などで教育委員会に例示する必要。」と「職務標準」にこだわっているようだ。

 全事研「校長の補佐体制を強化するために事務長の配置が必要である。」何が何でも「事務長」の全事研です。

「チーム学校」はできるのか

@ 専門職の定数化は困難

 文科省はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフを「国は、将来的には学校教育法等において正規の職員として規定するとともに、公立義務諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律において教職員定数として算定し、国庫負担の対象とすることを検討する。」としている。

 しかし、全国連合小学校長会長が「教職員定数の拡充や加配措置については、財政制度等審議会が教職員定数の計画的な削減などを求めた経緯もあり困難を極めると予想」と指摘しているように、現在の教職員定数の確保さえ困難になっている。そのため文科省は新しい職を定数法の中に入れて、自らの権能を守りたいのだろう。だが、どう考えても近い将来に実現するとは思えない。

A 「定数崩し」をやめさせられないのに「職務標準」とは

 文科省は「事務職員の標準的な職務内容を示す」とし、なんと日教組は「事務職員が担当する職務領域について通知などで教育委員会に例示」と同じ歩調で「学校事務職員の職務標準」に触れている。しかし、このようなことが現実にできるのであろう。

 今、事務職員定数が標準法を割りこむ「定数崩し」が、東京をはじめとした多くの自治体が行っている。全国では定数の3.1%、1,005人に上る。文科省はそれを承知しながら「違法とはいえない。」と、手出しができない状態である。

 また、任用一本化も全国で拡大している。この問題は、目前に迫った義教金政令指定都市化が輪をかける可能性がある。

 そういった状況で、文科省が「事務職員の職務標準」なるものを作成したところで、何か効果があるとすれば、事務職員への労働強化につながることだけになりかねない。

B 先に片づける課題がある

 事務職員の非正規化が進んでいる。全国平均で全事務職員の15%が非正規雇用である。多い自治体では30%に上っている。また、「共同実施」が進んでいるところほど、非正規化が進んでいる。もちろん、非正規事務職員は、賃金・休暇等のあらゆる労働条件はについて著しく低くなっています。義務教育費国庫負担制度の改悪(総額裁量制)がもたらしたこれらの弊害を解決することが先に求められている。

 また、「中間まとめ」では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフの活用が提案されているが、彼らの現実は、「官制ワーキングプア」なのである。文科省からのわずかな交付金をもとに地方で雇用されているが、専門家の待遇には程遠い。活用するなら、問題を直視すべきである。

C 「給特法見直し」はどうした

 以前から、文科省にとって「教員の多忙化解消」は大きな問題であった。2009年ごろには「学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会」で、「教員にも時間外勤務手当を」とか「メリハリのある給与」などと議論されていた。また、スタッフ専門職のことも議論されていた。

 「給特法」が廃止されれば、教員の勤務時間に制限がかかり、多忙化解消に少しばかりはつながったことだろう。が、突如この議論は消えてしまった。きちんと議論を進めていれば、今回の「チーム学校」のようなわけのわからないごった煮議論にはならなかっただろうに。

 

(以下、次号)

労働強化に反対し、事務「職人」として生きる


チーム学校をめぐる動向時系列

14. 7.29文科相、中教審に「チームとしての学校の在り方について」諮問
 「教員が専門職として教育活動に専念できるよう、例えば教員と事務職員の役割分担を見直し改善」
14.11.21中教審初中教育分科会「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」(第1回)
15. 5.12自民党教育再生実行本部第4次提言・「チーム学校推進法」
 「校長のリーダーシップ強化と運営体制の充実」の具体化として、「『事務職員』の名称を『学校運営主事(仮称)』に改め、事務長や事務担当の副校長など学校運営事務の統括者の制度上の位置づけや職務内容等を明確化」「事務職員が管理職の事務負担を軽減し地域との連絡調整や予算等の観点から校長の学校経営を支えることが必要」
15. 5.14政府・教育再生実行会議第7次提言
 「学校経営を支える事務職員の充実を図り、教師と事務職員の役割分担を見直す」ことなどにより「『チーム学校』を実現」「事務長や事務担当の副校長等への登用など事務職員のキャリアパスの明確化」
15. 6. 1財政制度等審議会「財政健全化計画等に関する建議」
 教職員合理化促す。加配減も。教員の多忙については「関連した専門部門等との 連携を図ることにより、教員が本来の教育勤務に専念できるよう、その負担軽減を図る」
15. 6. 5文科省、上に反論「加配定数をはじめとする教職員定数の戦略的充実が必要」
15. 7.16チーム学校作業部会 中間まとめ
 「教頭と事務職員の分担の見直し」「事務職員には(略)校長を学校経営面から補佐する学校運営チームの一員として役割」「教員が、より子供と向き合う仕事に取り組み、副校長・教頭が教員への指導等に取り組むことができるように、副校長・教頭や教員が行なっている管理的業務や事務的業務に関して事務職員が更に役割を担うことも効果的」「国は、事務職員の標準的な職務内容を示すことを検討」「一定規模以上の学校については、事務長等の学校運営事務の統括者を置く」「事務職員が、管理職を補佐して学校運営に関わる職として(略)研修の実施を支援」「事務の共同実施の活用は有効な方策」「事務長等の位置づけの明確化の検討と併せて、事務の共同実施との一体的推進の検討」
15. 7.27文科省「学校現場における業務改善のためのガイドライン」
 「事務職員が、これまで担当してきた総務・財務事務に加え、学校評価や危機管理、ICT管理、人事管理、組織管理、渉外等の学校運営に係る役割を積極的に担えるよう、教育委員会は職務内容の明確化を図る必要」「拠点校に事務の共同実 施組織を置き、各学校の事務職員が定期的に集まって共同処理を行うなどの事務の共同実施、そのような共同実施組織への事務長の配置」「事務職員が学校運営事務を担当するよう業務改善を進める 上では、事務の共同実施組織において、事務長等のリーダーシップの下、相互に 支援する体制づくりが求められる」

「チーム学校」と「共同実施」を並べるなんて

どっちなの

 「共同実施」と「チーム学校」を並べてみると違和感があります。学校事務職員はどっちを向けばよいのでしょう。それを考える時、「共同実施」で事務職員の合理化をねらっている東京型共同実施を考えてみました。

 東京都江東区の「共同事務室」にいる都費学校事務職員は、とある中学校の片隅にいます。しかし彼らは、その中学校の職員ではありません。一応学校にいるのは「義務教育費国庫負担金」のためです。そして、中学校にいる事務職員は非常勤の人たちだけです。

 そうすると、文科省の言う「チーム学校」に入るのは当然非常勤事務職員の方たちになります。都費事務職員はもちろん「チーム学校」のメンバーには入れません。

 「事務研に毛の生えた程度の共同実施」であれば、ほとんどは学校にいるので「チーム学校」のメンバーに入ることでしょう。しかし、「共同実施」率が高いほど、「チーム」度は低くなるでしょう。それとも、学校事務職員分身の術で「共同実施もチーム学校も」と二倍働くのでしょうか。

「チーム学校(中間まとめ)」で「共同実施」は、具合の悪い接ぎ木扱い

 「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会 中間まとめ」で、「共同実施」については最後の部分でとって付けたように触れています。

 「事務職員が一人配置であるため、学校事務を効率的に執行する観点から、事務の共同実施の活用は有効な方策である。」「共同実施については、事務処理における質の向上やミス・不正の防止、学校間の標準化による事務処理の効率化等において大きな成果が見られるところである。」としています。また「教員の事務負担の軽減や事務職員の学校運営への支援・参画の拡大等においても成果が見られる。」としていますが、「チーム学校」との関連はどこにもありません。

 意見を提出した教育諸団体のうち「共同実施」に触れているのは、全事研、日教組、全教、のみです。他の団体は一言も触れていません。

 まず、「何が何でも事務長」の全事研、やはり意見書の最後の部分で触れていますが、「事務の共同実施については、学校運営改善のための組織の一つとして位置付けるなど、事務の共同実施の推進が学校運営改善に結びつくような体制や規定整備についても、国としての改善方策に盛り込み、調査研究を推進していくことを望みます。」と歯切れが悪く、「チーム学校」に「共同実施」を結びつけることが難しいことを認めています。

 日教組はそもそも「チーム学校」に賛成なのか反対なのか、はっきり書いて言いません。全教は「教職員の管理強化の言い換えにすぎません。」とはっきりしていますが、日教組は「定数改善」を要求していますが、立ち位置はすっきりしていません。さて、「共同実施」については、「事務職員は一人配置ということもあり、・・学校ごとに属人的な面があります。」「属人的な担当ではなく、・・事務職員が担当する領域を教育委員会が明示すべきです。」

また、「事務職員の配置は多くが一人であり、経験等の違いにより事務職員が行う学校事務機能は規定されてしまう・・学校事務の機能の安定と向上を図るためには、学校事務の共同実施(学校間連携)が有効です。」と「チーム学校」とは異なる文脈で「共同実施」推進をうたっています。やはり「チーム学校」と「共同実施」がうまく結びつかないようです。

文科省は「共同実施」→「チーム学校」  都教委は「経営支援組織」→「共同実施」

 この文書の最初に東京型共同実施に触れましたが、東京では「共同実施」の前に「経営支援組織」が提案されていました。都教委は、2012年3月「小中学校の校務改善推進プラン」で、副校長の多忙化解消を目的に、「経営支援部=経営支援組織」に主幹教諭・事務職員を組織し、副校長の仕事を振り分けようとしていました。現在、都内で5分の1の学校で組織されているとのことですが、現実的な効果は少ないようです。

 ところが、都教委は「共同実施」を推進するようになってきました。これは「経営支援組織」と「共同実施」を担当する部署が異なり、違う思惑から出発したからです。「教員の負担軽減」が「経営支援組織」で、「事務職員の合理化」が「共同実施」だからです。

 同じことは文科省でも言えます。「共同実施」は「事務処理における質の向上やミス・不正の防止、学校間の標準化による事務処理の効率化等(中間まとめ)」のため推進してきました。しかし、「チーム学校」は「副校長・教頭の負担軽減」の問題から登場したからです。

 このように文科省と東京都は全く逆の向きに進んできましたが、結局はどっちも「事務職員の合理化」と「副校長・教頭の負担軽減」の両方をねらったものになってしまったのです。

 しかし、所詮繋がりようのない二つが同時に進んでしまったなら、事務職員には最悪の事態を生じかねません。

 全国の学校事務職員がここは一致して、二つの悪夢を振り放そう。



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