WEB全学労連 |
382号 |
2016年2月20日 |
全学労連ニュース今号の内容
来年度政府予算案における教職員定数の扱い
毎年行われている12月の臨時国会は、憲法で定められた国会議員の1/3以上の発議にも関わらず、これを無視した安倍政権により年内に開かれることは無かった。そのため霞が関の官僚はいつもより余裕をもって来年度予算案をまとめられたようだ。だが、余裕を持つことと内容の厳しさとは別問題で、義務教育費国庫負担金で決められる教職員定数は例年以上の厳しい状況となっている。
2015年11月8日付「全学労連」379で指摘したが、文科省は昨年8月に義務教育費国庫負担金、即ち教職員の基礎定数60人の減を、概算要求の段階から要求している。このことや定数計画の数字上の矛盾や一貫性の無さから文科省の“本気度”に疑問を表明したが、果たして財務省の査定を経た後の政府予算案ではどうなったのか。
文科省資料にある政府予算案の義務教育費国庫負担金部分の概要は右の通り。
ここに出ている義務教育費国庫負担金1,527,058百万円は、概算要求では1,516,335百万円であった。予算案が概算要求よりも減っておらず、百億円以上も増えている。さては文科省の「控えめな要求」が評価されて予算の増額が実現した…などと早とちりをしてはいけない。よく中身を見てみよう。
と計上されていた。
ここまでは全て減らされている。その次に「人事院勧告に伴う給与改定 +231億円」とある。これは概算要求では無かった項目である。文科省の概算見通しが甘かったのか、人事院が来年度給与改善勧告をやる気満々なのか(これまでの経験上それは無いと思うが…)、いきさつは判らないが、他は軒並み減らされているのだから、この項目が増えたことが予算案を概算要求よりも増やした要因だ。いずれにしても教職員定数は実質減であり、文科省の「控えめな要求」が評価された訳ではないのは間違いない。
「教職員定数の改善増」+11億円(+525人)の中身をもう少し詳しく見てみよう。資料の中ほどから項目ごとの改善人数が示されているが、ここでは≪加配定数の改善 +525人≫と少し違った表記がされ、加配定数であることが明記されている。項目ごとの人数を概算要求の数と比較して表にしてみた。
項 目 | 概算要求 | 予算案 | 予算化率 |
1.創造性を育む学校教育の推進 | 1,440人 | 190人 | 13.20% |
@ 小学校における専科指導の充実 A アクティブ・ラ−ニングの推進 |
350人 1,090人 |
140人 50人 |
40.00% 4.60% |
2.学校現場が抱える課題への対応 | 940人 | 235人 | 25.00% |
@ 特別支援教育の充実 A いじめ・不登校等への対応 B 貧困による教育格差の解消 C 外国人児童生徒等への日本語指導 D 統合校・小規模校への支援 |
300人 190人 150人 50人 250人 |
50人 50人 50人 25人 60人 |
16.70% 26.30% 33.30% 50.00% 24.00% |
3.チーム学校の推進による学校の組織的な教育力の充実 | 660人 | 100人 | 15.20% |
@ 学校マネジメント機能の強化 A 養護教諭・栄養教諭等の充実 B 専門スタッフの配置促進 |
410人 150人 100人 |
80人 20人 0人 |
19.50% 13.30% 0% |
合 計 | 3,040人 | 525人 | 17.30% |
表作成:全学労連
525人がすべて加配であるのは、概算要求から法改正を伴わない(即ち基礎定数でない)ものであるから当然の結果としても、概算要求と予算案の人数の比率を予算化率として計算してみたが、合計で見ると今年度予算900/2,760人(32.6%)に対して、来年度予算は525/3,040人(17.3%)と大幅に下がっている。
個々の項目で見ると、1-Aの文科省が新しい授業形態として昨年度より大幅に要求数を増やした(300→1,090人)「アクティブ・ラーニングの推進」は50人と惨敗した(昨年度は100人)。また、「チーム学校」に関連する3-Bの「専門スタッフの配置促進」は、昨年度100/150(66.7%)と予算化率は高かったが、今回は0人とされた。別に期待している訳ではないが、「チーム学校」の未来はどうなるのだろうか。
結局教職員定数の概算要求と予算案の関連で言うと、控えめな要求には控えめな予算がつけられたという事になるのだろうか。でもそれでは日々多忙化に追われ呻吟している学校現場の教職員は浮かばれない。政府や財務省は当然として、文科省の責任も重い。
学校事務職員に関わる部分では、3-@の「学校マネジメント機能の強化」80人は、文科省資料に「(主幹教諭、事務職員の拡充)」とあるので、事務職員が含まれているのだろうが、これだけでは主幹教諭との内訳が判らない。そこで役立つのが財務省の資料である。別に財務省の味方をするつもりは無いのだが、ここ数年同じようなことを言っているような気がする。要するに何か知ろうと思ったら、情報は多角的に仕入れて分析せねばならないということだ。
右に財務省資料「平成28年度文教・科学技術のポイント」の4〜5ページにある「28年度予算における加配措置の概要」という表を示す。
まず目に付くのは文科省の項目との分類の違いである。文科省の押す1-A「アクティブ・ラーニングの推進」はほとんど無視され、「1.創造性を育む学校教育の推進」の項目は「専科指導の充実等」に一括されている。他でも「2.学校現場が抱える課題への対応」の項目は表記も無く、その中の@〜Dが順番も変わって出てくる。逆に「3.チーム学校の推進…」は@・Aが一括されている。文科省と財務省の官僚の教職員定数に関する発想の違いが表れているようで興味深いのだが、財務省資料の方がそれぞれの項目ごとに考え方が示されていて、賛否は別にして、判りやすいといえる。
話を事務職員の定数に戻すと、「チーム学校の推進」の「考え方」の所に「学校の事務職員等(+70人)、主幹教諭(+30人)の拡充」とある。文科省資料では「主幹教諭・事務職員」と「養護教諭・栄養教諭等」が別建てになっていたが、ここでは「事務職員等」と「主幹教諭」が別建てになっている。即ち財務省資料の「事務職員等」には「養護教諭・栄養教諭等」も含むと思われる。その数が70人なら、文科省資料で「養護教諭・栄養教諭等」が20人となっているのだから、差し引きして事務職員は50人という事になる。事務職員と主幹教諭を合算して80人は文科省資料の数字とも一致する。
JIM-UNION 252号(2016年2月19日付け学校事務ユニオン東京)より
マイナンバー協議に都教委は応じろ!
1月29日、都教委は「マイナンバー(個人番号)の収集・管理業務の実施について」という文書を地教委におろした。
私たちの組合はニュース前号でお伝えしたように、11月20日にはマイナンバー運用に対する要請書を都教委に提出し、協議に応じるよう伝えていた。ところが事前の協議どころか何の情報提供もなしに突如上記の文書がおろされた。こうした一方的なやり方には万感の怒りをもって抗議しておきたい。
しかも、任命権者の責任を全く放棄してマイナンバーの収集から管理に至るまで民間会社に丸投げという形態。民間会社への丸投げの問題点は、
など多岐にわたっている。しかも今回の受託業者である日本郵政スタッフ(株)から情報漏洩しないという保障がどこにあるのだろうか。
マイナンバー付情報を「特定個人情報」というが、この特定個人情報は厄介な代物で、収集・登録・保管・廃棄などの処理過程は通常の個人情報より厳しく扱われなければならない。民間中小業者が根を上げる所以である。しかもその特定個人情報は誰でも扱えるものではなく、その組織において扱える「事務取扱担当者」を指定しなければならない。
今回都教委は、この「指定」という作業を一切割愛してしまっている。仮に地教委に委ねるにしても「指定」行為を指示しなければならない。こうした指示が全くなく、あたかも「事務取扱担当者」が事務職員であるかのような誤解を与える表記が都教委文書には散りばめられている。「事務取扱担当者」には特定個人情報に関する正確な認識を持つようきちっとした研修も施さねばならないが、それについての言及も一切ない。全く無責任極まりない。
事務取扱担当者を指定しないで、番号収集をすることはできないし、事務職員は指定を受けずして収集業務を行っては本来いけないのだ。
このニュースの裏面に教職員向けのビラを刷り込んでいる。是非とも教職員に配布願いたい。私たちの組合は基本的に事務取扱担当者を事務職員として引き受けたくないが、管理職であれ、事務職員であれマイナンバー提供について強制することをやめてほしい。国税庁も厚労省も利用機関であるが、番号提供がなくても基本的には処理やサービスについて変更するつもりのないことを言明している。番号収集から保管や廃棄まで厳密な取り扱いを求められる割に番号利用はできなく、会社や自治体には今のところ何のメリットもないマイナンバーについては国に文句は言えても、国以上の強制力を持って労働者に対応するなんてもってのほかではないのか。
「事務取扱担当者」は教職員に対して提供を強制してはならない!
他にもマイナンバーカードの職員証利用や紙媒体の申請書等については今後とも記載を求めることはしないのか、そして事務職員への不当な取り扱い業務の押し付けなど今後とも協議すべき内容は盛り沢山だ。国に追随せず、危険なシステムを廃止に追い込めるよう都教委は早急に協議に応じるべきだ!
全学労連は1月28日、神奈川県民ホールで行われた関東地区学校事務研究大会(関ブロ事務研)に際し、会場前で参加者に向け、「チーム学校」の問題性を指摘し反対を呼びかけるビラまきアピールを行いました。
昨年12月に、中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」が出されました。14年中頃よりにわかに議論が活発化した「チーム学校」の施策について、ひとまず文科省としての結論と方向性が示された形です。
この「チーム学校」をめぐっては、議論の当初より「事務職員も欠かせない戦力」(読売14.9.29社説)などと持ち上げつつ、教員・管理職の「負担軽減」(その実は、さらに増大させた教育活動・管理監督業務への専念)のために、教員・管理職と事務職員の「役割分担の見直し」=教員・管理職業務の事務職員への押しつけが打ち出されてきました。
一方、こうした動きに呼応する中で自身の要求実現を図ろうとする様々な勢力が、それぞれに手前味噌な「チーム学校」像とその中での事務職員のあり方を喧伝しました。また、「事務職員への期待」という言葉のみが一人歩きし、さらには「事務職員のあり方について議論がされている」ということそのものをもポジティブに捉える形で、「チーム学校」について事務職員の明るい未来を開く好機と捉える言説も見受けられます。
しかし、検討議論から答申を通して一貫して見て取れる「チーム学校」の方向性とは、上意下達式の学校管理・職員管理の強化であり、事務職員への労働強化であり、学校現場における不安定雇用の更なる増大です。今回配布したビラでは主に中教審答申を参照し、事務職員に重点を置く中で、そうした問題性の一端を示しています。
当日は、地元がくろう神奈川をはじめユニオン東京、そして折よく上京していた沖学労OBも加えた9人で、この時期にしては温かい晴天のもとでのビラまきとなりました。会場の定員が約2500人ということで、さぞや多くの人が続々とやって来る…かと思いきや、あまりそんなことはなく。不思議に思って後で参加した方に聞けば、開会時の会場はかなり空席がありスタッフばかりが目立つ状態だったとか。少々肩すかしでしたが、それでも500枚ほどをまききりました。
今後、「チーム学校」答申が政策化されるや否やという段階になってきます。全学労連は引き続き、「チーム学校」の問題性を広めていきます。
(事務局・伊藤拓也)
当日配布のビラ内容は次頁
紙面の真ん中に入った後記 ▼来年度予算を見ていると、文科省はやられっぱなしであることがよくわかる。見かけはともかく定数予算は削られ続けている。起死回生(?)の「チーム学校」もそれほどの定数改善にはなっていない。加配措置で結局不安定雇用が増えるばかりだ。▼マイナンバーは各地で吹き荒れている。特定個人情報はその取扱いに厳密さを求めているが、東京では民間会社に丸投げして当局は責任逃れをする。この無責任体制は現場に混乱をもたらし、番号提供の強制に繋がる。そして業務として関わらざるを得ない事務職員は当局の手先に使われてしまう。学労は各地で必死に抵抗している。▼この間のカンパ呼びかけに対して、多くの方から協力をいただいた。状況は厳しいけれど、こうした多くの仲間からの期待に身が引きしまる思いだ。こうした支援が無駄にならないよう精一杯頑張っていきたい。▼全学労連はWEB上にも宣伝の場を設けているが、やはり紙による宣伝に勝るものはない。全学労連はカンパとともに読者も募っている。読者の皆さま、お近くの方をご紹介ください。 |
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