2016年3月19日

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全学労連ニュース今号の内容

  番号紛失は事務職員の責任か?!  社会保障・税の共通番号は県教委の責任で!

  横浜新人学校事務職員免職処分取り消し裁判、いよいよ山場へ

  国庫負担はずしに匹敵する二つの問題が襲い掛かっている  …政令市費化と共同実施…

 後記

番号紛失は事務職員の責任か?!

社会保障・税の共通番号は県教委の責任で!

 1月、横浜の学校事務職員が、職場の職員とその扶養親族数十人の共通番号(マイナンバー)が記載された書類を電車内で紛失し、新聞報道された。この書類は「マイナンバー報告書」というもので、神奈川県教委が学校に収集・提出を依頼したものだ。この事務職員はその依頼に基づき、学校で収集したマイナンバー報告書を県横浜給与事務所に持参する途中であった。

 共通番号制度が始まるにあたって危惧していたことのひとつが、早々に当たってしまった形である。言い換えれば、これは共通番号制度が続く限り付いて回り続ける問題であり、制度の欠陥である。

 先日、がくろう神奈川は県教委に社会保障・税の共通番号について申し入れを行った。

 趣旨は@収集・管理は県教委の責任で行うこと、A通知文はわかりやすいものとし全て出し直せ、B通知内容の整合性を図れ、C説明会を行え、というもの。

 @は言わずもがな。地方公務員法の「秘密漏洩」の罰則規定を大幅に上回る厳罰が規定される、そんな共通番号に係る責任を私たちに押し付けられてはかなわない。

 Aについて。当たり前のことだが、通知文はわかりやすいものでなければならない。ところがこのかん出されている通知文は、後からの訂正・追加が多い。しかも、取扱いについて明確な表現や指示、規定を避けた、曖昧な物言いが目立ち、多くの学校で困惑している。

 更にB。通知文相互の整合性が取れていない。例えば、県教委厚生課から出された財形貯蓄に係る通知文は、県教委教職員企画課から出された「個人番号関係事務における特定個人情報等取扱要領」で定められた共通番号の取扱い規定と全く整合していない。また、一方で「目的の明確でない写しは作成するな」としながら、他方で写しの保管を前提とした文書が出ていたりする。

 そして何より、一方的に数々の通知文を送りつけるのみで、具体的な説明会もなされなければ、法律が想定している事務取扱担当者への教育・研修も一切ない。

 こんな形で業務を押し付けられ、責任まで負わされたのではたまったものではない。県教委は個人番号関係事務事業者としての責任を果たせ!

(がくろう神奈川)


横浜新人学校事務職員免職処分取り消し裁判、いよいよ山場へ

学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)

Sさん裁判とは?

 2012年4月に横浜市の学校事務職員として採用されたSさんが、6カ月間の条件附採用期間を延長された挙句、2013年3月に分限免職処分を受け解雇されてから間もなく3年になる。単数職場に配置した新採用者を、やれ仕事が遅い、間違いが多い、能力に問題があると責め立てて、退職強要を行った上で首を切った異例の事件だ。Sさんが執拗な退職強要を受けるなか、労組の電話労働相談に訴えたことでがくろう神奈川につながった。Sさんが所属していた教組は何ら支援に動かず、処分寸前にがくろう神奈川に加入。同年9月の処分取り消し裁判提訴以降、13回の口頭弁論を重ねてきた。組合はこの間200通を超える団体署名や、1,147筆を集めた裁判所宛の「公正判決を求める署名」など、裁判支援拡大にも全力で取り組んできた。そのSさん免職処分取消訴訟の第14回口頭弁論が、3月8日、横浜地裁で行われた。

恒例となった駅頭宣伝と対市教委行動

 毎回裁判の前段に関内駅頭で街頭宣伝を行っている。この日も支援の人々を含め20人ほどの大部隊で宣伝を行うことができた。待ち合わせの間ハンドマイクでのアピールに耳を傾ける人、足を止めて横断幕に見入る人、一旦通り過ぎてからビラを受け取りに戻る人など、反応は良い。宣伝は裁判のない月も毎月行っている。組合員のやりくりがつかず、寒い中3人だけでやったこともあった。継続は力なり、だ。

 宣伝終了後、これも恒例となった市教委への申し入れ行動。当局担当者は例によって「係争中の事案につき一切答えられない」の一点張り。「Sさんの貴重な一日一日が無にされていることに痛みを感じないのか!」「きちんと労使交渉で解決しろ!」廊下に怒りの声が響いた。

支援で満杯の傍聴席

 傍聴席は今回も満杯で、一部入れない人も出てしまった。今回裁判で、原告=Sさん側から証人申請が行われた。本人Sさん、元学校事務支援員Nさん(市教委により2年前無理やり学校現場から引きはがされ、方面別学校教育事務所に配置換えさせられた方。当時Sさんの支援にも1度参加している。学校事務支援員は横浜市独自の制度で、共同実施加配を使い、新採用者等への支援にあたる)、がくろう神奈川横浜支部役員(Sさん問題で当局と交渉した経緯、学校事務職員の仕事全般について)の3名を申請、それぞれ陳述書を提出した。別に元横浜市職員(類似事例の新採用者分限免職処分を同僚として間近に見分された方。ちなみに横浜市でSさん以外に新採用者で分限免職処分を受けたのは過去10年でこのケース1件のみ)の陳述書も提出した。

 被告=横浜市側は新たに「争点整理について」を提出し、前回証人申請したSさん在職当時の、校長と東部学校教育事務所教職員係長、同学事支援第二係長(元学校事務職員)の3名の陳述書を提出した。双方の証人申請が出そろったところで、次回は弁論準備を行うことになった。これは公開の法廷で行うものでなく、争点整理を行い証人の採否を決するためのもの。その次はいよいよ証人尋問と裁判は山場に入る。

怒りと激励の声相次ぐ

 終了後、報告集会を最寄りの開港記念会館で行う。弁護士から、被告側の「争点整理について」に対しては弁論準備までに反論を提出すること、裁判官にどこが争点なのかを明瞭に認識させることが大事であること、証人尋問は7月あたりになる見通し、との説明があった。

 次いで支援の方々から発言を受ける。毎回参加してくれるJAL争議団からは「不当解雇された悔しさはSさんと同じ。あの空に戻るまで闘い抜く」。はるばる岡山から何度目かの傍聴に駆け付けた全国一般労組の方からは「市教委への申し入れ行動の際の当局担当者の姿勢はなっていなくて呆れた。Sさんには是非原職復帰してもらいたい」。雇い止め取り消し裁判に勝訴したばかりの青葉郵便局ゆうメイト清水さんは「駅頭宣伝でのビラの受け取りはよかった。自身の一審全面勝訴で随分元気を取り戻した。Sさんにも是非元気になる結果出てほしい。自分も控訴審を引き続き頑張る」とエール。埼玉から駆け付けた全学労連の佐野議長は「申し入れ行動での当局労担の『この件では交渉しない』は問題発言だ。労使交渉の意味が分っていない」と厳しく批判。証人となったNさんは「Sさんはたくましくなった。周囲に支えられてめげずに闘い続けたからだろう。被告側証人の陳述書はひどい。嘘を並べ立てている。しかし一番の問題は市教委の体質。少しでもまともにするために奮闘したい」と力強く語った。当該Sさんからは「最近勤務先でアルバイト全員解雇されることになった。2度目の解雇だがへこたれずにいるのは闘い続けてきたから。証人尋問を精一杯頑張る」と決意表明。最後に組合の小内委員長から支援への謝辞が述べられて集会を終えた。

 Sさんを支援しているのは神奈川県共闘を初めとする組合関係者ばかりではない。所属組合の別なく学校事務職員を中心に作っている「Sさんの職場復帰を支える会」は2月12日に総会を開催し、引き続き支援していくことを確認してSさんを激励。闘争資金の贈呈を行った。「支える会」は傍聴支援や、事務職員研修会、事務研総会等での宣伝活動も行ってきている。


国庫負担はずしに匹敵する二つの問題が襲い掛かっている

…政令市費化と共同実施…

(愛学労第31回定期大会議案書より抜粋)

2 給与微増も更なる削減攻撃、そして給与費の政令市移管と「事務の共同実施」

 愛知県では給与カットが2013年度まで5年続き、前回のカットも含めると8年になる。そして、退職手当の削減が追い討ちを掛けた。私たち公務員の給料はどれだけ削減されなければならないのか。2015年度は給与構造改革第2弾とも言える「給与の総合的見直し」の実施がされ、更なる給与削減が行われた。2015年は円安で大企業の業績回復による税収の好転により、若年層を中心に給与を増額改定する県人事委員会勧告が行われた。しかし、ベース給与は「給与の総合的見直し」で削減されており、喜んではいられない。給与改定提示・交渉は12月9日の最終まで4回行われたが、総務省が地方自治体に対して国家公務員に先んじて給与改定を行わないように圧力をかけ、給与法改正案の閣議決定が年末と遅れたため、地方自治体の給与改定は越年となり、愛知県は2月県議会を経て差額が支給される見込みである。県当局は自分の都合に合わせて、「国に準ずる」を巧みに使い分けてくる。県当局の2枚舌に組合は翻弄され続けてきた。2016年も闘いも組合の真価が問われるタフな提示・交渉が予想され、それに対抗する体制で臨まなければならない。

 そして今、学校事務職員制度の存立を揺るがした、あの「国庫負担はずし」攻撃に匹敵する二つの問題が学校事務労働者に襲い掛かっている。

 2017年度から県費負担教職員給与費が政令市に移管される。人事権(任命権)と給与負担義務の「ねじれ」現象は解消されることになるが、組合側から言えば組織の分断に繋がりかねない事態になる。また、移管される政令市にすれば、少数の学校事務職員を別枠任用するメリットはなく一般職員との「任用一本化」が進むものと予想される。即ち、学校事務は異動先の一つになり、数年で異動していく。学校事務という専門職は消失することになる。そこには学校事務職員の人員削減が必ず絡むことになるだろう。愛知県には名古屋市があり、組合員も在勤している。11月には連帯する教員組合「がっこうコミュニティユニオン・あいち」(アスク)の名古屋市組織が行った名古屋市総務局職員部との権限移譲に関する交渉に委任状参加した。今後は学校事務労働者特有の問題を交渉項目に取り上げてもらうため、問題点の整理を進めている。並行して、政令市を抱える学労組合と情報交換を行いながら名古屋市教委との折衝も継続強化していく必要がある。

 さらに、中核市移管への拡大を求める声も強くなっている。2015年度には従来の特例市制度が廃止され、中核市制度に一本化された。中核市の指定基準は人口「20万人以上」に引き下げられた。中核市移管となれば、学校事務職員の半数以上が県費負担でなくなる自治体も出てくる可能性がある。中核市移管の動きを注視しておく必要がある。

 もう一つの問題は「事務の共同実施」である。文部科学省は「チーム学校」という組織論を打ち出し教育再生を謳うが、その核である「事務の共同実施」が人員削減の手段であることは導入した他県の状況をみれば明らかである。県教委は2014年1月に「事務の共同実施(案)」を市町村教委に示した上、「事務の共同実施」のグループ組織リーダーになる総括事務長の6級格付を制度化して「事務の共同実施」導入を誘導させた。2015年度には飛島村を除く県内の市町村が導入した。その陰で6級格付に拘る県事研(全事研と一体化した活動を進める「愛知県公立小中学校事務職員研究会」)や愛事組(日教組を追随する「愛知県学校事務職員組合」)が市町村教委に対する働きかけを強めていたことは言うまでもない。愛学労は一部エリートの6級格付よりも、3級格付に抑えつけられている多くの学校事務職員を定年退職までには全員4級格付への底上げが行われるべきと考える。「事務の共同実施」が人員削減に繋がることを訴えてきたが、県事研会員や愛事組組合員がほとんどを占める県内学校事務職員に認識を浸透させることは容易ではない。導入後は総括事務長による諸手当認定の専決処理が一部市町村で制度化しようとする動きが見られる。これは「事務の共同実施」の事務センター化を助長し、学校配置を基礎とする学校事務職員制度の崩壊に結び付きかねない。愛学労組合員の在勤市町村では「事務の共同実施」を形骸化させるために取り組みを続ける。




後記

▼マイナンバーにかかわる業務は各地で始まっている。しかし、その取扱いについてはこれまでの個人情報一般と同じのところがほとんどで、本当に大丈夫なのかと思っていた。そのような中での横浜の番号紛失事故。特定個人情報の現場での取り扱いについて留意すべきことは何かということは、当局が周知しなければならないことなのだが、どこまでそれが行われただろうか。逆に個人の責任にすり替えられはしないだろうか。大事にならなければいいのだが。
▼そういえば、昨年の今頃、愛知では「職務懈怠」を理由とした懲戒処分があった。書類の作成し忘れや毎年の確認のし忘れを取り上げて、事務職員にだけその責を求めるものだった。間違いは誰しもあるもので、回復すればいいだけの話であるにもかかわらずだ。現在も、何かにつけてこれを引き合いに「完璧な仕事」を当局は恫喝している。
▼こういう中で、Sさんの免職撤回闘争も身につまされる話だ。免職の理由とされた「仕事が遅い、間違いが多い」ということは、労働者にその責を求めるのではなく、業務を日常的に点検できない当局の側の責をまず自覚すべきだ。新人であればそれは尚更だ。
▼こういった日常から生起する憤りは更なる闘いに我々を駆り立てる・・・。
▼というわけで、年度末になりました。異動で職場を変わる読者もいるかもしれない。ニュースの送付先に変更のある方は、メールでも、ハガキでも、カンパ用振替用紙の通信欄でも、お知らせください。



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