2016年5月22日

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全学労連ニュース今号の内容

 学校事務職員制度の解体と分断を許さないぞ!  政令市移管、横浜の状況

 学校事務職員はマイナンバー収集の手先となるな!  ―全学労連による調査の結果から見えてくるもの―

 文科省資料から読み取る事務職員加配と義務教育費国庫負担金について

 後記

学校事務職員制度の解体と分断を許さないぞ!

政令市移管、横浜の状況

 2017年4月の県費負担教職員給与費の政令市移管まで一年。ニュースNO.381(2016.1月号)で報告の通り、川崎・相模原では移管後の学校事務職員制度維持を確認、残る横浜だが3月になってようやく動きが出てきた。

 事務職員制度について市教委から示された中身は、来年度の学校事務職員採用は残すもののその後については未定。原則3級格付けで、選考で現6級から一部4級任用というひどい中身だ。「事務長」的な4級ならいらない!事務職員制度の解体と事務職員間の分断を許さないぞ!

来年度「学校事務」は維持されても、その後の職種統合へー検討を開始!

 横浜市教委から「移管後の勤務条件」が示されたのは3月1日。だがその中身はただ「『市の制度』とする」というだけで具体的な中身なし。「質問があれば答える」という傲慢さ、しかも4月中に決着を求めるというありえない対応だ。で、組合の側から申し入れ書等を提出し追及する中で、3月下旬ようやく明らかになった中身は、@今年度実施(2017年度新採用)の採用試験については「学校事務」「学校栄養職員」区分を継続する。ただし、「学校事務」と「事務(市の行政職)」の職種統合に伴う効果や課題を踏まえて検討する。A県費学校事務職員の現行1〜6級を市行政職1〜3級に格付け。その結果給与が下がる場合は、移管前給与の1.9%の引き下げ額を保障。B退職手当は2年間移管日前日額を保障(その後5年間に修正)。C諸手当は市に合わせる。住居手当(大幅に引き下げ)は2年間、扶養手当は1年間の段階的経過措置。地域手当は経過措置に合わせて段階的に引き上げ最終16%に。D再任用は3級格付け、臨任職員の制度化(新設、詳細は未定)。E年休は現行通り時間単位での取得が可(市の職員は5日間しか時間での取得ができない)。また他の休暇・職免・休業について市の制度を基本とし今後協議。F移管時、55歳未満の人に対して勤務実績に応じて最大1号給を付与(昇給月が1月から4月に変更になるための調整)など。懸念されていた任用一本化について、とりあえず来年度は維持するけれども、同時に職種統合も検討開始というのでは当面の維持とはとても言えない!

原則3級止まり、選考による4級格付けを提案

 さらに5月に入ってから、3級止まりとしていた昇格について、選考による4級格付けも可能という提案を行ってきた。

 市行(一)3級止まりで減額になる人について、現給の1.9%マイナス額を保障するというのが市教委の当初提案だが、そもそもなぜマイナス1.9%なのかの根拠は無い(教員給与での計算式から1.9%が示され、学校事務職員についてはそれを準用しただけなのだ!)。その場合、移管時より定年まで10年以上も昇給が無く、退職金についても数百万円の減額になる。「給与の支払い者が変わるだけ」(国・県・政令市の合意時の説明)という政令市移管で、なぜ政令市の教職員が賃金上の不利益を被らなければならないのか、まったく理解できない。組合との激しいやり取りの中で出されたのが前述の提案―市教委の提案は「市の4級職は原則試験であり、県費の5級・6級も選考であった」ことを前提に、現6級職から希望者に対して選考で4級への任用を検討するというもの。横浜においてこの間繰り返されてきた5・6級の差別任用は、一方で4級退職者を作り出し、他方で40代の6級者を不透明な選考で昇格させるという特異なもの。横浜以外では誰でも最低限5級へ昇格する。横浜方式をそもそもの前提とすること自体が許されないのだ。差別任用に対する一切の反省もないままに、さらに格差を拡大する4級任用など私たちはいらない。4級任用が可能なら、現4級以上の人は全員無条件で4級にすべきだ。

事務職員の分断を許さない!

 政令市移管が私たちの責任でない以上、現行勤務条件の維持は最低限の要求である。川崎・相模原では、組合に基本的な資料を提示し一年以上の時間をかけて協議してきたことがらを、わずか1〜2か月で決着させようという横浜市教委の態度そのものが組合に対して不誠実なのだ。再任用・臨任職員の労働条件についてもまだほとんど何も明らかになっていないし、業務に関わって検討されている庶務事務システムの中身もいまだ未提示だ。給与や旅費、財務という学校事務職員に深く関わる仕事の問題についても、きちんと情報を出していねいに交渉を重ねることが求められている。さらに県内でも仕事の多さでは随一の横浜で、できっこない分量の業務を網羅した「職務標準」の見直し(減らすのではなくてさらに拡大?!)も示唆されており懸念は広がるばかりだ。政令市移管をきっかけに今より多大な業務を「職務標準」化し、共同実施で事務職員に押し付ける。共同実施の「長」を4級に・・・という、市教委や教組の思惑も見え隠れする。ふざけるな!と言いたい。

 3市と県域―移管後の4者4用のありようが見えてきて、予想以上の学校事務職員の分断に怒りがわく。その上、横浜で目論まれる任用一本化への道筋と、3級止まりー「選考」による一部4級職への格付けという露骨な競争主義の導入・・・、横浜で実現すれば、それは川崎、相模原、さらに言えば県域や全国状況へ・・・、その影響は必至である。厳しい状況ではあるけれども、これまで培ってきた学校事務職員間の平等性を最大限確保するために闘っていきたい。横浜の闘いに注目を!そして、政令市移管による学校事務職員制度の解体と事務職員間の分断を阻止するために、全国の闘いを強化しよう!

京極紀子(学校事務職員労働組合神奈川)

学校事務職員はマイナンバー収集の手先となるな!

―全学労連による調査の結果から見えてくるもの―

 共通番号(マイナンバー)制度は今年1月から運用が開始された。民間会社によってはかなり強引に個人番号の提供が強要されている例が見られている。しかし、基本的に番号法においては番号の提供側にも収集側にも義務化はされていない。政府も個人番号の記載や提供がなくても従前のサービスが受けられなくなることはない、と基本的姿勢を説明している。ところが、金融機関の対応を中心として個人番号がないとマル優枠が利用できなかったり、海外送金ができないという事例が出てきている。また郵貯銀行においても簡易保険の満期返戻金の受領に個人番号記載を拒否したために、最終的には番号なしで受領できたが、かなりしつこく番号提供が促された例もある。

 企業や金融機関は個人番号を収集して自分たちが利用するのではなく、スルーして税務署や市役所に提出するいわゆる「中間団体」でしかないのに、利用機関より強硬に番号提供を強要しようとしている。なぜなのか?

 その構図はこうだ。国は決して番号提供を強制するものではなく、「善良な国民」が自発的に番号提供を献身的に行うということにしたいのだ。だから中間団体に隠然たる圧力をかけて自らは手を汚さない。最終的には何の疑問も感じることなく、申告書類にはマイナンバーを自分の名前に代わりに自然と記入するような空気を醸成したいのだ。カードについてはもう少し露骨だ。先代の住基カードが約5%しか保有しなかったという苦い経験から、個人番号カードは2019年には8700万枚という目標が語られている。そのために国家公務員は有無を言わせず職員証としての利用が強行されようとしており、何年か後には保険証として利用しようと検討されている。先日電車に乗っていたら、その電車の車内広告すべてが個人番号カード申請のススメだった。上戸彩などの女優を使い、湯水のごとく広告費を投入できるのはさすが国家だと感心してしまう。逆に言えば住基カードの二の舞だけは避けたいという強迫観念に追い込まれているということなのか。

 さて本題の学校における個人番号収集はどうなっているのだろうか?全学労連は参加11単組に調査を行ったのでその結果に基づいて傾向を分析してみたい。

1 収集時期

 昨年から始めている北海道(15.12.20〜16.1.15)から7月以降の埼玉県、2015年末調整時に収集する大阪府などかなり収集時期はばらついている。

2 収集方法

 県教委が収集者となっているケースが多数を占めた。特異な例としては、兵庫県は県教委が市町村立学校長と業務委託契約(諾成契約)を結んだ件、そして東京都は都教委が日本郵政スタッフに収集から管理まで委託した件があげられる。

 また個人番号だけを目的を明示して収集した県が圧倒的に多く、扶養控除申告書に記載させて収集した愛知県のようなケースは少数にとどまった。

3 収集担当者

 個人番号を職場においては誰でも取り扱えるわけではない。通常の個人情報以上に個人番号付個人情報は厳密に使わなければならないため、事務取扱担当者を選任しなければならない。

 全国的に個人番号の収集実務は事務職員が行っている県が多数を占めた。しかし事務取扱担当者として指定されているのは愛知県と群馬県にとどまった。神奈川県は管理職を指定した。他の県では事務取扱担当者を指定しない曖昧なまま事務職員にやらせているケースが圧倒的に多かった。こういう状況だからきちっとした研修が行われた県は少数にとどまった。

 事務取扱担当者を選任せずに個人番号事務をやらせるのは脱法行為に近い。選任されずに事務職員が実務を担当するのは問題だ。

4 教職員の反応と事務職員の対応

 教職員の反応と事務職員の対応についてはデータ不足で判断ができない。一部提供を拒否した教職員もいたようだが、事務職員がどういう対応をしたのかはっきりしない。ただし他の調査と何ら変わらず、淡々と提出するという反応が大多数を占めたようだ。特に管理職の問題意識も低く、無関心な管理職も多かった。

5 組合の取り組み

 全学労連においても取り組めたところと取り組めなかったところに分かれた。協議の申し入れを行えば、それに応じた県教委が多かったようだ。しかし、実務的対応を変えさせるほどの変更を実現できたケースはなかった。

 東京では組合からの開示請求により、3月末日まで契約期間、非常勤講師も含めて小中高で約83,000人対象において5,400万円で業務委託していたことが判明した。1人当たり約650円。しかしこうした「丸投げ方式」だと毎年新規職員や退職などをデータ反映させねばならず、業務委託契約は継続せざるをえない宿命にあるのだ。

6 総じて

 税と社会保障を職務として扱う事務職員が個人番号収集事務に従事していた割合が圧倒的であることは本調査において分かった。しかし、事務取扱担当者に指定されていないまま実務を遂行している姿も浮かび上がった。事務職員が教職員に対して個人番号提供をどれだけ強要していたのか、不明であるため今後も情報収集に努めていきたい。

 さらに各自治体において個人番号カードが職員証として利用されていかないよう美見守っていきたい。マイナンバー制度を巡って「おかしいな」と思われるような実例が学校現場においてあったら是非とも全学労連にお寄せいただきたい。 

宮崎俊郎(事務局 マイナンバー担当)

文科省資料から読み取る 事務職員加配と義務教育費国庫負担金について

 全学労連は情報公開請求により、文科省から教職員定数や義務教育費国庫負担金に関する資料を入手し、その動向を分析して独自の表にまとめている。最近入手の資料で作った表から2件を紹介しよう。

事務職員加配の目的は「共同実施」だけ?

 表1は昨年度と今年度の学校事務職員定数の加配予定数を、目的別、都道府県別にまとめたものだ。あくまでも予算上の予定数であるし研修等の加配数は含まれていないので、実際の配置数はこの数字とは違ってくる(実数に関しては後日別な資料で明らかにする予定)。予算上の予定数にしては2015年度よりも全国合計で64人増加している。この表にはないが、昨年の実数(937人)と比べると231人増となる。本誌382で述べたように今年度予算での事務職員の加配定数は50人増のはずだったのだが、よく解らないのでこの差はとりあえず気にしないことにする。

 それよりも気になるのは、加配目的の表記だ。2015年度は「専門人材」と「共同実施」だが、2016年度は「専門人材(共同実施)」と「共同実施(左記以外)」に変わっている。ちなみにこの表を作る元資料になっているのは、文科省の「公立義務教育諸学校研修等定数等配置予定数集計表(予算案)」というものなのだが、事務職員の加配目的をこういう形で示すようになったのは昨年からで、それ以前は単に「事務職員」というだけだった。財務省あたりから細かく根拠を示すように言われたのかもしれないが、何でもかんでも「共同実施」というのは逆に説得力が無くなってしまうのではないだろうか?「図書館事務担当」と「共同実施」の関連をどう説明するのか、賛否は別にして是非聞いてみたい。その昔この名目の加配が始まった時、文科省の勝山とかいう人が「ウソも方便」と全国の事務職員に説いて回っていたが、所詮この「共同実施」もその程度のものなのだろうか。さて実際の配置数がどうなるか、また名目で無く配置された実態がどうなっていくのかはさらに調べていくこととする。

義務教育費国庫負担制度の空洞化は更に進む?

 2004年の総額裁量制導入による義務教育費国庫負担制度の大幅な規制緩和で、標準定数法は単なる算出基礎に過ぎないものになり、各都道府県の裁量で教職員数や非正規職員の割合を決められるようになった。このため定数法に満たない教職員配置をしているところで、義務教育費国庫負担法で規定された最高限度額と実際の国庫負担の額との差が生じることとなった。2006年に小泉内閣の三位一体改革の結果、国庫負担率がそれまでの1/2から1/3に下げられると、そういうところはさらに増え、2009年度には半分に近い21道府県にまでなった。当たり前だが、国庫負担率が下がればその分地方の負担は増える。単なる算出基礎なら律儀に守らなくても削減したり非正規化したり給与カットをして、人件費を圧縮すれば国庫負担金を上回る経費削減ができると考えるのは当然の流れだろう。定数加配方式や「共同実施」がさらにこれを促進する。そして全国で教職員の定数割れと非正規職員の増大が進行している。義務教育費国庫負担制度と標準定数法の空洞化である。

 と、ここまでは全学労連がこれまで何度も指摘してきたことである。

 表2はその後の2010年から2014年度の状況をまとめたものだ。しだいに実額が少ない自治体数が減ってきて2013年度には奈良1県のみとなっている。だがこのまま終わるのかというとそうではない。備考欄に書いたが、この年には、国が国家公務員の給与減額に合わせて地方公務員も同様にさせるために、それまでに地方で進行していた給与カットなどの事態を一切無視して、地方交付税や義務教育費国庫負担金を予算編成の段階から切り下げて計上したため地方は給与特例減額を強いられたという事があった。全くそれまで吹聴していた「地方自治」や「地方分権」など何処へ消えたのか。

 すなわち地方が不本意に減額された義務教育費国庫負担金のために、この年は結果として実額が少ない自治体数が減ったのだ。案の定というべきだろうが、2014年度には9道府県に増えている。今後さらに増えていくと予想するのだが、残念ながら今入手している文科省の資料はここまでなので、その後の動きは別の機会に報告することにする。

 全学労連学校行革対策部 佐野 均

後記
▼ 政令市費化のタイムスケジュールが1年を切った。当初は「義教金の行き先が道府県から政令市に移るだけ」と国は言っていたが、とんでもない話だ。今号では横浜の話を紹介したが、賃金引き下げをはじめ、労働条件改悪の方向に向かっている。

▼ 任用一本化の動きは全国的に「様子見」の自治体が多いが、各地では「一般行政との違い」を如何に説明するかに躍起になる。「チーム学校」や共同実施の圧力がそれに回答を与え、教員の多忙化解消の受け皿として事務職員が使われ、事務職員の業務は増やされる。

▼ こういう中で、人事情報、給与情報を道府県から政令市に移すという作業が待っている。政令市の仲間は踏んだり蹴ったりだ。

▼ 全学労連は、現在、次の事務局メンバーを中心に文科省交渉と全交流の準備をしている。今後とも、よろしくお願いします。

▼2016年度全学労連事務局体制

議長 佐野均(埼玉) 副議長 菅原孝(福島) 事務局長 船橋享(愛知)
事務局員 伊藤拓也(神奈川) 大森由紀子(神奈川) 京極紀子(神奈川) 工藤雅人(青森) 長谷川百合子(福島) 宮崎俊郎(東京) 吉田泰(埼玉)



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