2016年10月16日

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全学労連ニュース今号の内容

 2016年度秋季中央行動はこれだ!  多くの皆さんの参加を!

 文科省来年度予算概算要求  「チーム学校」なんかで浮かれている場合ではない  教職員定数計画に関する文科省の“支離滅裂”を怒れ!

 9.29 全学労連 文科省折衝報告

 「チーム学校」の美辞麗句を真にうけるな

2016年度秋季中央行動はこれだ!

多くの皆さんの参加を!

 今年の秋季中央行動のテーマは「チーム学校」である。

 「チーム学校」構想の中に学校事務の共同実施も位置付けられている。まだ中身がはっきりしていないが、「チーム学校」関連の法制化が狙われている。「チーム学校」を学校事務職員の地位向上の絶好の機会だと捉えて利用しようとするもの、外部人材や学校事務職員活用による教員の多忙化解消を図っていこうとするもの、等々の様々な思惑・俗論・謬論が蠢く中、私たちは敢然と「チーム学校」反対!の旗を掲げて登場する。

 総決起集会においては全学労連・全学労組の「チーム学校」に対する問題意識をすり合わせた討論を行うことで「チーム学校」に対していかなる観点で反対するのか鮮明にしていきたい。  

○日程2016年11月25日(金)
○全学労連独自行動10:00〜13:00

全学労連・事務局による省庁・地方団体要請

各学労による国会議員要請

いずれも「チーム学校」法制化反対の要請行動を行う

○総決起集会13:30〜15:30

今さらなにが「チーム学校」だ!「協働」を阻害する教育改革反対!

11・25全学労組・全学労連 総決起集会・デモ

場所(予定)参議院議員会館 会議室

内容

@全学労組・全学労連 挨拶

Aパネル討論「今さら何がチーム学校だ」

全学労組・全学労連からパネラーが出て問題提起を行い、会場参加者も、交えて討論を行う

B闘争報告 全学労組・全学労連 各2人

C連帯挨拶・集会アピール採択・団結ガンバロー

○全学労連独自集会15:45〜16:30
○デモ17:15〜18:30

参議院議員会館⇒日比谷公園霞門⇒文科省⇒東電前⇒数寄屋橋⇒水谷橋公園



文科省来年度予算概算要求

「チーム学校」なんかで浮かれている場合ではない
 教職員定数計画に関する文科省の“支離滅裂”を怒れ!

はじめに

 文部科学省は「次世代の学校指導体制強化のため」「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のため」という二つの「タスクフォース」を立上げ今後の学校教育の在り方を模索しているようだ。

(註:「タスクフォース」とは軍事用語で、特定の任務のため編成された部隊を意味する。「プロジェクト」と言えば済むものを、わざわざ軍事用語を付けたことに非常に違和感を覚える。)

 「名は体を表す」という格言通り、この二者のキーワードは「次世代の学校指導体制」で、それを「強化」するための「教職員の在り方と業務」であり、学校指導体制強化に教職員を加担させていくことが課題となっているのが明らかだ。「戦争は教室から始まる」と言われているが、さては「戦争法」と呼ばれる安保法制が国会で強行可決された事態に対応して、文科省が動き出したかと勘繰りたくもなる。「勘繰り」ではないかも知れないが…。

 そうした背景の中で、例年の如く8月末に各省庁から来年度予算の概算要求が出されている。果たしてそこで文科省の“模索”はどう表れているのか、以下見てみよう。

☆文科省は「10ヶ年計画」がお好き?

 文科省の「平成29年度概算要求主要事項」の冒頭に、1.「次世代の学校」創世のための指導体制強化等という項目があり、その内容に【「次世代の学校」指導体制実現構想(義務教育費国庫負担金) 】として1,518,472百万円が計上されている。その説明の冒頭に次のようにある。

「経済・財政再生計画」を踏まえ、少子化の進展、学校の規模適正化の動向、学校の課題に関する客観的データ、実証研究の進展、地方自治体の政策ニーズ等を踏まえた予算の裏付けのある教職員定数の中期見通しを策定。(平成29〜38年度までの10ヶ年構想)

さすがは我等の文科省、客観的に根拠のある定数の計画を壮大にも10年後まで構想している…???ではない。もっともらしい文科省官僚の作文を有難く押し戴くのは愚かというべきだ。

 ここで想起しなければならないのは、一昨年の文科省概算要求で「10年後の学校の姿を見据えた新たな教職員定数改善計画(案)」というものが策定されていたという事だ。さらに昨年度の概算要求は、その計画の2年目として位置付けられていたのであり、2年目があったのだから、文科省が単年度で失敗と考えて断念したという事ではないだろう。それでは「新たな教職員定数改善計画」はいったいどこへ消えてしまったのだろうか?二つの「タスクフォース」で方針が変わったとしても、何の説明も無くて良いというものではない。そんな今年の概算要求である。

 一昨年の計画に関しても1年目と2年目の矛盾と文科省の“本気度”への疑問を指摘したが(「全学労連」379参照)、こうなると計画内の矛盾や疑問どころではない。脈絡なく乱発される「10ヶ年計画」の前に、今年の文科省の壮大な「10ヶ年構想」は、茶番以上のモノではなくなる。

☆「法整備」などいらない

 概算要求の教職員定数改善について、要求や自然減や給与減がどうで、その実質は…という話はここ何年もやってきてあまり変わり映えしないので、添付の資料を見ていただくとして、今回は一点だけ、我々学校事務職員に関しての要求内容の問題点ついて指摘するにとどめる。

 文科省は学校事務職員の定数増(ただし加配での)も毎年要求している。問題はその要求の仕方なのだが、

 そしてこれらが皆「チーム学校」のためとされているわけで、年々の要求数の減少はさておき、毎年組み合わされる職種が変わっている。いったい文科省の言う「チーム学校」とは、学校事務職員を学校内の様々な職種の中でどのように位置付けているのだろうか?一昨年単独要求では無理だったから、その場しのぎの他職種との抱き合わせで「チーム」らしさを演出しようということなのか。「…強化」「…整備」などの理由付けは全く説得力に欠けると言わざるを得ない。

 ここ数年「チーム学校」をことさらに強調し学校現場を煽っている割には、その中身は“支離滅裂”で、財務省も総務省も反応は冷ややかではないか。このような状態で事務職員の職務内容や「共同実施」組織の「法整備」などやられてもロクなものにならないし、そのしわ寄せは学校現場が被ることになる。

☆基礎定数化要求の新局面が始まった

 昨年まであった「新たな教職員定数改善計画」では、基礎定数化すなわち「義務標準法」の改定はH32年度〜とされていた。今年からの「10ヶ年構想」には次のようにある。

特に、「一億総活躍社会」の実現に向けて、「通級による指導」や外国人児童生徒等に対する特別な指導に必要な教員について、対象児童生徒数に応じた基礎定数による措置へ転換し、指導体制を安定的に確保する。【義務標準法の改正】

 そして、「発達障害等の児童生徒への「通級による指導」の充実(890人)」「外国人児童生徒等教育の充実(190人)」をその対象としている。これまで漠然と加配定数の基礎定数化を求めることはあったが、今回は具体的な対象に絞っての要求である。

 財務省は昨年、今年度の予算編成の過程で文科省に対して教職員の加配定数の削減を求めている。さらに今年5月、財政審は「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」の中で、「基礎定数は少子化により放っておいても減少するが、加配定数は増え続けている」との認識を示し、「加配定数の適正性分析、現在の加配定数(64,733人)の再検証」を行い、「費用対効果による適正配置数」を求めている。そして「一部を基礎定数化し、学校数・クラス数・児童生徒数等に連動」させることと、「毎年の政策判断による加配措置」を行うことを表明している。

 すなわち、将来に渡り法的に定数を縛ることになるとして、基礎定数化にずっと難色を示してきた財務省が、その一方で増え続ける加配定数を減らすために路線転換をしたということだ。基礎定数化を一部容認し、児童生徒数の減少と共に自然減させていく。その他の加配定数も「適正性分析」「再検証」により「政策判断」で減らしていく。(さすがに露骨に「減らす」とは言っていないが、要するにそういうことだろう)

 長い間続いてきた加配による教職員定数「改善」の流れは、この財務省側の仕掛けにより大きな転換点に差し掛かっているようだ。既述した「10ヶ年構想」の迷走もこれが影響しているのかもしれない。文科省が先の二者を基礎定数化の対象に絞った真意は判らないが、それが来年度予算編成の攻防の中でどのように決着するかは、今後の教職員定数の流れに大きな影響を与えるに違いない。



9.29 全学労連 文科省折衝報告

 全学労連は9月29日別掲の「学校労働者の労働条件等改善に関する秋季要望書」を提出した。この要望書をもとに10月17日に文科省との交渉を持つ。

 今回はその要望書提出の際、折衝を行った様子を報告する。


 要望書前段にあるとおり、昨年度の概算要求で“10年後の学校の姿を見据えた新たな教職員定数改善計画(案)”として策定され、昨年度その2年目として位置付けられていた要求はどこへ消えてしまったのか、を問うと、これには窓口担当も苦笑い。「担当課へコメントできるか聞いてみましょう。」との事。この間の文科省の思惑が、財政面でうまくいっていない様子がうかがい知れる。

 次年度の概算要求では、基礎定数増ではなく相変わらず加配定数で算定している点を指摘し、文部科学省の具体的な措置の説明を求めることを伝えた。担当者は「概算はあくまで概算で、財務省からあれもこれも削られていって予算になる。その過程で考えていくことになる。」と説明。学校現場での教職員配置の実態をあらためて強く訴えていく必要性を感じた。

 共同実施・チーム学校関連では“法制化”の2件についての具体的な説明を求めることを伝えると、「詳しく言えないが、今国会(第192回臨時)に法案審議をかけている。」との事。「どの法律をいじるとか、具体的な内容は・・・」と問い詰めると「今はまだ言えない。当日も慎重になるだろう。コメントはできないかもしれない」と説明。関連の法案を検索してみると、「チーム学校運営の推進等に関する法律案」というものが、5月の通常国会に5名の議員立法で提出されていて、現在衆議院「審議中」。この法律は今国会でも審議される見込みだ。関連した文科省サイドの見解は聞くところによると、川崎市の学校事務職員研修会で文科省係長が法制化について、「地域連携に関して学校教育法施行規則を、職務明確化と共同実施の明確化に関しては地教行法を、それぞれ16年度中に改正する方向で作業中」と語ったそうだ。また、同じ席上で「チーム学校には広義のものと狭義のものがあるとして、前者は議員立法で『地域の様々な人材の活用』を法制化し、後者は文科省や中教審答申から出されている校長のリーダーシップやマネジメントを考えていくもの」と説明したと聞く。今国会では、学校教育法関連や地教行法関連の提案がなされていないところを見ると、次期通常国会での法案提出も見込まれる。この件に関しても交渉で詰めていく。

 さらにチーム学校に関しては「市区町村費事務職員」の存在している自治体で、その活用について抜け落ちている点を指摘。担当は「自分も町にいたので、確かに町村によってまちまちである事は認識している。」と語り、文科省が推す「チーム学校」と各自治体で格差があることを指摘した。

 政令市費移管では労働条件の違いについて文科省では具体的な把握について追求。担当者は「具体的に違いが出ているのはどの市でどのようになっているのか?」と興味ありそうな反応であった。

 交渉当日、実質的に交渉時間が限られる中で、全学労連は文科相に対し、学校現場での教職員の実態を訴えるとともに、自治体レベルで押し寄せている教育格差を訴えていく。



2016年9月29日

 文部科学大臣 様

全国学校事務労働組合連絡会議  
議長 佐野 均  

学校労働者の労働条件等改善に関する秋季要望書

 文部科学省は「次世代の学校指導体制」のための「タスクフォース」を二つも立上げ、学校教育の今後の在り方を模索しているようです。そしてその反映として来年度予算概算要求における【「次世代の学校」指導体制実現構想(義務教育費国庫負担金) 】があるものと思います。そしてそれは来年度からの10ヶ年構想とされています。しかし一昨年度の概算要求で「10年後の学校の姿を見据えた新たな教職員定数改善計画(案)」として策定され、昨年度その2年目として位置付けられていた要求はどこへ消えてしまったのでしょうか。その要求内容も我々学校事務職員に関して言えば、一昨年は「事務機能強化」で事務職員単独500人、昨年は「マネジメント機能の強化」で副校長・主幹教諭・事務職員等410人、そして今年は「次世代の学校指導体制の基盤整備」で学校事務職員・養護教諭・栄養教諭等300人となっています。これらは皆「チーム学校」のためと位置付けられています。年々の要求数の減少はさておき、一体「チーム学校」とは学校内の様々な職種の中で学校事務職員をどのように位置付けているのでしょうか。残念ながらこの点において、最近の概算要求は支離滅裂と言わざるを得ません。

 下記に私たちの疑問と要望を提示いたしますので、回答をよろしくお願いします。

1 2017年度概算要求に関して

 来年度概算要求では、定数増の数字が並んでいます。勿論、年末の予算案としてそれらが実現するのが望ましいですが、今年度予算においても「定数が配置されていない」現実を放置したままではせっかくの予算が無効になります。

 特に学校事務職員は、東京都における「就援加配の未配置」「共同実施による定数削減」、西日本の「共同実施による配置縮小」「事務職員の非正規化」などが見受けられます。これらは「教育の機会均等」を目指す「義務教育国庫負担法」「市町村立学校職員給与負担法」「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」などの趣旨を形骸化させ、「教育の格差拡大」を一層大きいものにしています。

@  現行の「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の趣旨を遵守させるための具体的措置を求めます。

A  上記のような定数未配置をもたらす「義務教育国庫負担法」の総額裁量制度を廃止することを求めます。

B  文科省も「加配定数は安定的・計画的な採用・配置につながりにくい」と認めているように、定数内「非正規事務職員」が増加しています。このことに歯止めをかける具体的措置を求めます。

2 「学校事務の共同実施」に関して

 「学校事務の共同実施」が始まって久しい時間が過ぎ、また全国各地で実施されています。現状の各自治体の共同実施の実態は千差万別で、学校から事務職員を引き離し「共同実施室で事務処理」をしているところもあれば、「月に一回程度集まって研修」程度のところもあります。また、「共同実施」の実施が露骨に「人員削減」や「非正規事務職員増」に結びついていることも判明しています。

 この間、文科省は「「学校現場における業務適正化に向けて」「次世代の学校指導体制の在り方について」などのタスクフォースまとめで、盛んに「学校事務の共同実施を行うための組織の法律上明確化」を提言しています。

@  「学校事務の共同実施を行うための組織の法律上明確化」とは何かを、「どの法律をどのように改正するの」など具体的に説明してください。

A  上記法改正について「28年度を目途に」とされていますが、進捗状況を教えてください。

3 「チーム学校」について

 昨年度から文科省は「チーム学校」構想を様々なところで提起しています。私たちが「チーム」というときは「協働・協力」をイメージしますが、文科省の「チーム」は「学校マネジメント機能強化」「サポートスタッフとの協力」などが中心かなと読み取っています。

 ところで、市区町村立学校には市区町村費事務職員が配置されています(市区町村による差は大きい)が、文科省の「チーム学校」には彼らがイメージされていない様子がうかがわれます。

@  事務職員の「職務規定の見直し」を提案していますが、どのようなことを目指しているのか説明してください。また、「28年度を目途に」とされていますが、進捗状況を教えてください。

A  市区町村費事務職員の配置状況を把握しているならば、公表してください。

4 政令指定都市の義務教育国庫負担金に関して

 いよいよ来年度から「義務教育費国庫負担金の政令市費化」が始まります。学校職員の労働条件については細部の詰めが行われています。多くの政令市では学校事務職員の賃金等の労働条件が引き下げられる状況が判明しています。その結果一つの県内で事務職員の賃金体系が複数になってしまうなど、これまでには想定しなかった状況が生まれてきます。これらは、1でも示した「義務教育の機会均等」を目指した制度の根幹にふれることです。

 また、事務職員制度自体が揺れ、「市費職員任用一本化」を示唆している自治体もあります。

@  義務教育費国庫負担金の政令市費化に伴う学校事務職員の労働条件の引き下げ等に関し て、文科省独自の歯止め策はありますか。

A  2で指摘した市区町村費事務職員の交付税措置と国庫負担対象事務職員に関して総務省と協議したことはありますか。

以上



「チーム学校」の美辞麗句を真にうけるな

 9月13日、川崎市教育委員会が市立小中特別支援学校事務職員を対象として行った学校事務職員研修会で、“「チーム学校」〜これから求められる学校事務職員の役割〜”と題する講演が行われた。講師は文科省初中局参事官(学校運営支援担当)付運営支援推進係長の阿久津充氏。このかん「チーム学校」の文脈のもと、学校運営における「業務改善」や「業務の適正化」を打ち出している文科省の、直接の担当者といった役どころといえよう。元は新潟の学校事務職員だったところ、文科省に派遣されている人物だという。

 講演ではまず、「困難な時代」「社会の変化」を強調する中で「次世代の学校」の創生を地域創生との両輪のもと推進し、「一億総活躍社会」「地方創生」の実現を目指すとする、今年1月に文科省が出した“「次世代の学校・地域」創生プラン”を紹介。次いで、学校や教員の役割の拡大・多様化と教員の残業時間の増加等を示し、それを解決する方策として「チーム学校」を提示した。

 その上で、中教審チーム学校答申において事務職員に関係する内容、すなわち職務標準の策定や事務長設置、「これからの事務職員に求められる資質・能力」論、そして共同実施、地域連携といったトピックスについて駆け足で紹介。次に時系列をさかのぼり15年7月に文科省が出した「学校現場における業務改善のためのガイドライン」にも触れ、ここでは主に教員と事務職員の役割分担の見直しについての文科省の考えが紹介された。さらに来年度概算要求も示し、チーム学校や業務改善に向けた予算の手厚さを誇り、聴衆の期待感を引き出そうとする。

 最後に「事務職員の皆さんへのメッセージ」と題して、チームとして機能するかはチームをマネジメントできているかであり、事務職員がマネジメントの要の役割を担うことが出来るという価値観へ転換を、と打ち出した。複雑化多様化の状況の中、学校は変わらなければならない状況であり、そこにおいて事務職員が変わることは必然、とも。講演はそうした内容で幕を閉じた。


 さて、上記は研修会で配布された資料(A4紙にパワーポイント8枚を詰め込んだもの12ページ)をなぞりつつ再現したものだが、実態に忠実とは言いがたい。というのも実態は、話の一貫性や展開が見えず、小さく縮小されところどころ文字が潰れている資料のあちらこちらを拾い拾い読みつつ、時折自身の文科省での仕事ぶりを挟むというもので、再現は難しかった。ちなみに、本来パワーポイントはスクリーンに映すつもりだったらしいが、データの入ったメディアを忘れてきたのだと言う。

 内容自体は、この数年の「チーム学校」をキーワードとした諸施策や答申、方針をなぞったもので、目新しさはない。とはいえ、時代の変化や社会の要請といった外因要素を挙げつつ、学校現場はもっともっと「なんでも屋」をやれ、と平然と言う文科省の姿勢にははなはだ疑問を感じる。学校や教員の役割の拡大・多様化とはそういう意味に他ならない。事務職員の職務明確化を言うが、そんなことより学校の役割の明確化の方がよっぽど先んじてなされるべき課題なのではないか。今回、地方創生まで学校に乗っけられてしまった。社会が求めているからと言って、ラーメン屋に寿司も握れ、ピザも焼け、スマホの修理もしろと迫るような状況だ。そうした意味ではチーム学校は、事務職員にとってだけでなく教員にとっても「拡大・多様化」=新たな・更なる多忙化を予告するものと言えるかもしれない。

 マネジメント云々も同じこと。何かにつけて学校に責や役割を負わせるこの社会こそ、適切にマネジメントすべき対象ではないか。向こうの言を借りるならば、「チームとしての社会」において「子どもに関わることはすべて学校」という文化を見直してみてはどうなのか。講演の中では、文科省の言うところのチーム学校の肝は「校長のリーダーシップ(=マネジメント)重視」であると明言していたが、階層化を進めた先の体制が果たして掲げられている「多職種による協働の文化」につながるのかどうか、現場の感覚からすれば大いに疑問だ。

 そして、最たる問題は予算的裏づけだろう。講演では定数改善と業務改善を両輪で進めると強調し、概算要求を示してそれを既に取れたものであるかのように誇り、加配をどんどん取りに行くべきと煽っていたが、実際の予算案がどうなっていくのか。過去の経過を振り返れば、楽観視は出来ない。そして両輪のうちの片方が欠けたとき、文科省はチーム学校をどうするつもりなのか。わざわざ文科省の担当者が出てきたときだからこそ、美辞麗句ではなくあらゆる可能性を踏まえた見通しを語って欲しかった。





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