2017年1月14日

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全学労連ニュース今号の内容

 金を掛けずに済ませようとする「チーム学校」が始まるのか

 11.25全国から東京へ  全学労組・全学労連 全国総決起集会とデモを実施!

 2016年11月25日付要請書に関する趣旨説明

金を掛けずに済ませようとする「チーム学校」が始まるのか

 2017政府予算が発表された。文科省予算のうち定数に関して、特に最近文科省が力を入れていた「チーム学校」関係を見てみよう。

 概算要求の段階でも、「チーム学校」の実現に向けた次世代の学校指導体制の基盤整備 +300人、として近い将来の実現には遠い表現だったが、「次世代の学校・地域創世プランの」(+450人)の目玉であった。(その他は指導教諭+50人、事象研究+100人)

 今回の政府案で「チーム学校」は+70人(23%)に削られている。「次世代の学校・地域創世プランの」の表現も消えて、加配定数の改善(+395人)の一部になっており、かなり後退した様子が垣間見える。しかし、別の説明では「教師がより授業や生徒指導に専念できる環境を整備する観点から、学校の事務職員等(+70人)の拡充による学校マネジメント機能の強化等を実施」と「管理強化のためのチーム学校」路線は維持している。

 つまり、「チーム学校」のために定数改善という金の掛かる政策ができずとも、管理強化はやはり続けるということだ。

 

 今回の文科省予算の眼目は、2017年度から2026年度までの10年間で、64,000人の加配定数の3割(19429人)を基礎定数化するとしたところにある。詳しく見てみよう。

(単位 人)
項目10年間初年度
少人数指導9,500 -101
通級指導5,200 452
外国人指導1,270 47
初任研指導3,459 75
合計19,429473

 10年間で19429人なら、1年で1943人分の基礎定数化が必要だが、初年度はわずかその1/4である。

 2018年度以降の基礎定数化を進めるとすると、加配定数部分をマイナスにしていかねばならない。つまり加配の新たな項目を出すことはほとんど出来ないことになる。ひょっとすると今回の「加配定数の改善」が最後かもしれない。

 昨年、文科省は「チーム学校」関連法案の提出を検討していた。「標準法」もその一つだったが、今回の案から、標準法改正は「加配の基礎定数化」だけになっていくだろう。

 このことからも、「チーム学校」政策が、金を掛けずに労働強化をする手法に純化していくことが予想される。


11.25全国から東京へ

全学労組・全学労連 全国総決起集会とデモを実施!

 全学労連は、11月25日全学労組とともに「チーム学校」批判をキーワードに中央行動を展開した。

 午前中は各省庁、国会議員に対する要請行動に取り組み(要請事項は別掲)、午後は全学労組とともに総決起集会とデモ。「チーム学校」と共同実施の法制化が取りざたされる中、全学労連の考えを中央に響かせた。

総務省
「管轄外」の門前払いは許さない

 全国のお役所を束ねる“元締め”らしく、毎回要請内容を「管轄外」として門前払いしようとするお役所仕事の手本を示す総務省。この日の要請の事前折衝でも「学校の事は文科省」「政令市への権限移譲は内閣府」と、例によって我が省は無関係との対応をしてきた。そこを、非正規雇用問題は公務員全体の問題であり、来年度からの教職員人件費政令市移譲には地方交付税の予算措置を伴うもので総務省が無関係ではないだろうと巻き返して、何とか要請項目4と5に関して自治財政局と自治行政局の担当者を引っ張り出すことに成功した。

 要請の場では、政令市への移譲については、政令市の側が移譲に手を挙げたのが前提であるとしながらも、来年度予算編成で地方財政措置を検討中であり、財政中立の観点から現在県に出しているものをきちんと政令市にも出すと明言した。全学労連が、以前義務教育費国庫負担金が3分の1に減額された時、その減額分を補填するはずの地方交付税も削減されてしまった事実を指摘すると、あの時は交付税財源全体の削減があったためで、今回とは違うとの回答があった。さらに、移譲に伴う労働条件の切り下げは当該政令市の制度の問題で、移譲そのものによるものではない点を強調するなど、折衝段階では「内閣府の所管」と言いながら政令市移譲の立役者ぶりを発揮する発言もあった。

 非正規雇用問題では、総務省は公務員全体を扱う立場であることを強調しつつ、労基法や国との均衡を踏まえて適正な労働条件確保を地方自治体に助言していく。学校についてはその中で文科省がやる事であると、上から目線の回答があった。全学労連からは定数や欠員数や臨採者数の資料を示して、公務員一般に広がる以前から学校では非正規雇用が常態化しており、それについては何度も総務省にも指摘してきたことを強調して、早急な対応を求めた。

財務省
「加配がブラックにつながるのはある種、悲しい・・・」

 「チーム学校」や定数をめぐる要請書をもって財務省へも行ってきた。要請書は事前に送付していたが、対応に出てきた係官はかなり読み込んでいた様子で、中身のある議論ができた。

 「チーム学校」について、従来からマネージメント強化ということで主幹教諭の配置をしてきているが、それは都会のことで地方にはほとんどいない、そうしたことを文科省は如何に総括して新たな議論をしてくるのはどうなのか、という問題がある。

 これについて「単に屋上屋になりかねないのはその通り。これまでの取り組みの十分な検証が求められる」とした。

 定数加配について、安定した雇用ではないため地方では臨時職員としての配置が圧倒的。40歳前後で賃金は頭打ちでしっかり担任業務が期待される実情がある。また事務職員は総額裁量の名のもとに定数が満たされない実情もある。しっかり基礎定数として措置すべきところだ。

 これについては「自治体にとって加配はパーマネント化しにくいということか。基礎定数と加配の違いはあれ、それが継続雇用に結びつかないというのはよくわからない。苦労して措置したのに、加配がブラックにつながるというのは、ある種悲しい。」と反応。

 しかし、本採用者を決めた後に加配定数を確定させるという一連の流れからすると、あらかじめ定数を読むことができない地方にとってみれば臨時職員にならざるを得ないという地方の事情もある。安定した雇用という観点からも基礎定数化が図られるべきだ。

 また、事務の共同実施について「学校事務広域化はうまくいっているという新聞を見かけるがその条件は何か」と、関心を示した。

 共同実施と言ってもその中身は千差万別だ。事務改善や若い人に業務を教えるというところから、事務決裁を共同化し現場は人減らしをするという東京や大分の例まである。現実の事務は現場にあるにもかかわらず、そこから離れたところで意思疎通はできなくなる。効率化と現場主義とは相当考えなければならない問題だ。そういう中で人減らしが行われて我に返ると仕事だけが残されるということになってしまう。

 これについて、「成功例がトピック止まり。業務がなくなるわけではない。地域の人数は最低限度は必要。その限界点よりも上のところは対応できても、それを既に割っているところは対応できないということか。」と感想を示した。

 地方では学校が相当減ってきている。また、集金の未納状況とか、就学援助の状況とか、学校毎に仕事が異なっている。そうしたことを「広域化」の名のもとに「共同」に飲み込ませることはできない。

 ・・・等々、かみ合った議論をした。かつて、国庫負担はずし阻止のとき、「大蔵の野望を打ち砕け」と真っ向から対決してきたが、隔世の感がある。

文科省
交渉後1か月の落穂拾いではあったのだけれど…

 要請書は担当の調査係に手渡した。その際、「チーム学校」関係法の情報を聞いたが前回の交渉時と同じで、未定、情報なしの一点張り。要請内容は他の省から「要請の一部は文部科学省にいうことで、こちらで受けることではない」と言われたことも伝えた。

 「事務職員定数は加配でなく基礎定数化を」や、給与費の政令市費化にともない「名古屋市の産休代替の非常勤化問題」や「川崎市では教育委員会が、義務制学校での服務問題などの労働環境が首長部局に押され気味で、教育委員会の独立性が危ぶまれている」点などを伝えた。

 手渡した担当者は、「各担当に現場の声として伝えます」と語った。

都道府県教育委員会連合会
政令市移管で、教育委員会の全国規模での問題意識は・・・無くなってしまう(のかな)

 事務局長のOさんが対応してくれて30分弱話をすることができた。Oさんは東京都からの出向で、昨年に続き2年目。10年ほど前には都立高校にいた(たぶん採用されてすぐ?)ということで、若い人。学校事務についての知識を持っている。それにしても10年間の変化はそれなりに大きいようだ。

 私たちからは主に定数と政令市費化、共同実施(東京を中心にして)、「チーム学校」について要請書にそってもう少していねいに説明。「チーム学校」は学校の管理強化や非正規化、民営化につながるもので反対との立場を明確にして、他団体との違いを鮮明にした。

 東京の共同実施について、7人を4人に減員する等の定数崩しが平然と行われることに対しては「すべて同じなのか?誰が決めるのか?」などの質問もあり、都教委の施策という自らの責任(?)ということについては無自覚だったが、全国的にも突出した東京の状況については立場上それなりに受け止められたのではないかと思う。自分が学校現場にいた時とはすでに大きく変化している学校状況については感じているようで、わからないことについては積極的に質問してくれた。全国で進む非正規の増大についても基本は定数確保を国に要求するというスタンスではあった。

 ただ、政令市への権限移譲については既定方針であり、すでに自分たちの手を離れた問題という態度で問題意識は薄い。各市でバラバラになっている状況があり、全国で2割の教職員が県から市へ移行するということ、義務教育制度全体に関わるものであること、県域にも影響を与えるということなどについての感度は鈍いと言わざるを得ない。まあ、東京は全く関係ないということかな?または、そもそもそれが政令市移管ということだからなのかな。ちょっとむなしかったです。

 事務局長は、東京都が担うことが多くてたいていの場合は任期2年間ということだ。Oさんも帰れば都教委の施策を推進する立場になる。要請にはていねいに対応してもらえた。全学労連の立場や考え方を伝えるという意味もあるので、今後も続けていければと思う。

「チーム学校批判」を教職員全体の課題として深化させた集会・デモ

 午後1時30分からは、参議院議員会館内にて総決起集会が開催された。

 はじめに全学労組・吉田代表の挨拶があり、続いて全学労連・佐野議長から挨拶があった。1984年に義務教育費国庫負担制度から事務職員を除外しようとする動きに対して、予算編成期に自分たちの足でデモをしたことがこの中央行動となったこと。その後紆余曲折を経て、現在は同じ学校労働者である全学労組と共催出来ていることが紹介され、まだ課題は多いが、我々の力で世間に訴えていく取り組みを今後も続けていきたいとの決意が表明された。

 開会行事に続き、『チーム学校をいかに批判するか』というテーマで、全学労組・横校労と全学労連・福事労から一人ずつ問題提起を行った後、集中討議が行われた。

 この中で、長時間労働解消と言いながら具体策を出すことなく、低賃金で長時間勤務を押しつける文科省の姿勢を携帯電話会社のCMに例え「定額(低額)・働かせ放題」と痛烈な批判がされた。参加者からも、教組や他の職員団体がチーム学校で事務職員がクローズアップされてきたと歓迎する動きを見せている事への疑問が出され、定数を増やすことなく仕事を誰かに押しつける事で多忙化解消を図るのが『チーム学校』であると指摘された。

 

 次に各県からの闘争報告。

 はじめに北九州学校ユニオンから、北九州市教委との政令指定都市化をめぐる交渉について。北九州では他市より遅れて2016年6月に組合へ提案されたために、短期間に交渉を繰り返すことになった事や、給与制度についての予備知識がないために難しい交渉となった事が報告された。

 次に沖学労から東村・高江でのヘリパッド建設反対の取り組みについて報告。ペリパッド完成後は北部訓練場の半分が返還されるとしているが、老朽化した基地を手放すかわりに、新機能を備えた基地を作ることが本当の目的であることが報告された。また、沖縄以外では正しく報道がされていないために、間違った情報が国民に流れていることは私たち全員で取り組んでいかなければならない課題であろう。

 埼教労からは独裁的な校長との職場闘争が紹介された。勤務時間外に実質的に勤務が強要されていることを問題視し、取り組んだこと。一旦は校長から反省文がでたものの、現実にむけ今後も取り組む必要があることが報告された。

 最後に、がくろう神奈川からSさん解雇問題についても報告された。この日はSさん自身が集会に参加し、支援に対する感謝と、責任の所在を明らかにしたいという決意が表明された。

 

 続いて共闘団体からの連帯の挨拶があった。

 はじめに神奈川県共闘から挨拶があり、がくろう神奈川から3人が労働相談の担当者となっていることと、小内委員長が事務局長を担っていることが紹介された。また地域の取り組みとして最低賃金の引き上げに取り組んでいることが報告された。また、全国一般神奈川から、横浜市のパワハラに悩む教員が加入したことや、アウトソーシング化によって解雇された2人の組合員が職場復帰を勝ち取ったことなどが報告された。

 

 この後、集会宣言採択、団結ガンバローと続き、デモ行進へ。

 デモは日比谷公園霞門を出発し、財務省前、文科省前そして人通りの多い銀座外堀通りを巡るコースで学校現場が抱える問題を市民に訴えた。途中、東電本社前を経由するなど原発の廃止も訴え、経産省前では同じく反原発を訴える市民と共にシュプレヒコールを挙げた。長時間にわたるデモが終了したころはすっかり日が暮れてしまっていたが、2016年の中央行動は成功に終わった。


【別掲】

2016年11月25日付要請書に関する趣旨説明

 日頃より、学校事務職員の労働条件改善及び義務教育諸学校の教育条件整備にご尽力いただいていることに感謝申し上げます。私たちは、全国の公立学校に働く学校事務職員で作る労働団体です。学校事務職員の労働条件を維持改善するとともに、学校並びに行政の民主化を推し進めるための活動に取り組んでいます。

 学校事務職員を取り巻く環境については、文部科学省の打ち出す「チーム学校」施策の具体化が焦点となっておりますが、現場当事者の私たちとしては、教員の「多忙化解消」を掲げつつ更なる多忙を学校職員全体に及ぼすものではないかと危惧しています。また、来年4月に実施予定の教職員給与費の政令市費化では、学校事務職員の任用や労働条件等の面で新たな差が生じようとしており、大きな問題と考えています。

 こうした状況も踏まえ、私たち「全学労連」では毎年、文部科学・財務・総務の3省と地方団体、国会議員の皆様に向けた要請書を作成し、要請行動に取り組んでおります。本要請の趣旨にご理解をいただき、それぞれの立場から実現に向けた取り組みや働きかけを行ってくださいますよう、要請いたします。

1.学校長の権限強化や学校職員の階層化を進め、職場・職員管理を強化し「学校職員の協働」を破壊する「チーム学校」に反対します。また、学校事務職員の業務環境を悪化させる、職務規定や学校事務共同実施組織の法制化に反対します。

 この2年ほど、「チーム学校」を巡る議論が進められています。昨年12月には中央教育審議会より「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」という答申が出され、これに基づく具体的な施策が進められようとしています。その内容は、教員だけでなく心理や福祉等の多様な専門スタッフを学校に配置し、校長のリーダーシップのもと様々な業務を連携・分担して、チームとして職務を担う体制を整備すると謳うものです。学校事務職員についても、学校運営に関わる専門職員と位置づけるとともに、標準的な職務内容を国が示すことや定数措置を図ることなどが検討されています。

 しかし、そもそも「チーム学校」で言われている「チーム」とはどういったものなのか。言葉だけ聞けば「チームワーク」や「協力・共同」といったイメージも浮かびますが、「チーム学校」の本質はそうした牧歌的なものではありません。中教審答申やその後の施策化の中で強調されているのは、様々な専門スタッフをチームにまとめるため、学校マネジメント機能を強化しこれまで以上に校長がリーダーシップを発揮する体制をつくることです。答申に明記された「『チームとしての学校』像」においては「校長のリーダーシップ」を大前提として、その下での一体的なマネジメントが本旨となっています。「チーム学校」の本質は、上意下達式の学校管理・職員管理強化の新しい論法に他なりません。そうした方向性はむしろ学校職員同士の風通しを悪くし、「協働」の文化を壊すものと考えます。

 学校事務職員について答申では、まさにこのマネジメント機能強化の文脈から、「その専門性等も生かしつつ、より広い視点に立って、副校長・教頭とともに校長を学校経営面から補佐する学校運営チームの一員」と挙げられていますが、その具体についても問題があります。

 答申はまず、副校長・教頭がよりリーダーシップを発揮していくための改善方策として、「教頭と事務職員の分担の見直し」を謳っています。さらに「事務体制の一層の充実」と銘打った項目では、教員・教頭の事務業務が負担となっているとして、「副校長・教頭や教員が行っている管理的業務や事務的業務に関して事務職員が更に役割を担う」ことなどを謳っています。つまり、専門職だ、学校運営チームの一員だと耳ざわりの良い言葉とは裏腹に、その中身は単に副校長・教頭や教員の仕事を引き受ける役割でしかありません。

 文部科学省は、「チーム学校」答申の具体化に向けて6月に公表した報告書「学校現場における業務の適正化に向けて」の中で、国の取るべき方策として「事務職員の職務内容を見直し、法律上明確化」すること、「共同実施を行うための組織を法律上明確化し、事務機能の強化を推進する」ことを挙げています。これらの意味するところは、前段落で述べた答申の発想を踏まえた事務職員への業務付け替えであり、事務職員からすれば単なる業務負担増大・労働強化に他なりません。事務職員の配置充実も謳ってはいますが、このかんの定数をめぐる状況を見るに、労働強化に対応する抜本的な定数措置は望めません。

 答申全体を見ると、副校長・教頭や教員の負担・多忙を解消すると銘打ちつつ、学校現場に課される負担自体は減らすのではなくむしろ「学校に求められる役割が拡大」と謳うようにさらに増やす方向を示しています。「チーム学校」は事務職員にとっても教員など他の学校職員にとっても、新たな・更なる多忙化と労働強化、業務環境の悪化を招くものとなりかねず、容認できません。

 また、「チーム学校」の目玉である各種専門スタッフの配置、特にスクールカウンセラー・ソーシャルワーカーについて中教審答申は、教職員標準定数として位置づけ国庫負担の対象にすることを検討するとしています。しかし、現行の教職員定数さえ財務省から圧縮圧力を受け定数改善も頓挫を重ねている状況を見るに、新たな職の標準定数化は本当に可能なのか大いに疑問です。標準定数化出来ず加配など不安定な定数枠にとどまった場合、そこには常勤ではなく臨時職員が充てられるのは、いまある加配の実態からも明白です。「チーム学校」の名のもとに不安定雇用の学校職員が増えるとなれば、「チーム」の名が泣くというものです。ただでさえ非正規雇用学校職員が増え「官製ワーキングプア」として問題になっている中、そうした労働者をさらに多く生み出す施策になってはならないと考えます。

2.義務標準法に定める学校事務職員定数を遵守し、欠員を生じさせないよう求めます。また、児童生徒数や学級数等客観的基準に基づき、複数配置基準の改善と定数増を求めます。

 学校事務職員の定数は義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)により定められています。この法律は教職員配置の適正化と義務教育水準の維持向上を目的としており、これに基づく職員定数は、全国的な教育の機会均等を保障するためのものとして、自治体の財政的事情や政策にかかわらず当然に遵守されるべきものです。

 しかし目下、学校事務職員の定数を割り込む「欠員」が全国で多数生じています。その数は今年度実に1,021人で、定数の3.2%にのぼります。内訳を見ると、最悪の東京都では実に約19%が、次いで愛媛県でも約12%が欠員となっています。その上、義務標準法に定める複数配置基準について公然と無視し、学級数や就学援助児童生徒数に基づく補正定数を廃止した独自基準を定める自治体まで現れました。法に定める標準定数が公然・常態的に無視されている現状は是正されるべきあり、欠員解消は当然なされるべき課題と考えます。

 また、現在の学校事務職員複数配置基準は小学校27、中学校21学級以上となっています。しかし学校現場の事務量は増大の一途をたどり、特に複数配置にわずかに達しない学校でひとり働く事務職員の多くが、重い負担を強いられています。加えて、就学援助児童生徒数に基づく複数配置基準は「受給児童生徒数が100人以上かつ25%以上の学校」となっていますが、大規模校では率がネックとなり、業務全体として見れば莫大な量になるにもかかわらず補正定数が受けられない不合理があります。複数配置等定数増は、一定の線引きをせざるを得ないにしてもそれは合理的であるべきです。まして後述する「共同実施」加配のような、客観的基準に基づかない職員配置は定数改善と見ることはできません。「客観的基準に基づく定数増」という、真の定数改善の実現こそが求められています。

 目下、文部科学省を先頭に政府・与党ぐるみで進められようとしている「チーム学校」施策においては、事務職員について様々な形での「充実」や「役割」、「機能強化」といった麗句が聞かれています。しかし学校事務職員が現に直面している状況は、法定定数さえ遵守されないなかでの過重労働です。目新しい施策よりも、法定定数の遵守・確保こそが何よりもまず最低限なされるべきであると、現場当事者として強く考えます。

3.学校事務職員を学校から引き剥がし、人員削減や廃職につながる「学校事務の共同実施」の施策に反対します。また、「共同実施」を目的とした定数加配の廃止を求めます。

 「学校事務の共同実施」は数校の学校事務職員を定期的に1ヶ所に集め、事務の共同処理を進めるものですが、学校現場を離れることで校内業務への対応の遅れや個人情報の校外持ち出しが生じるなど、事務職員・勤務校双方の業務に支障が出ます。また、「共同実施」は学校事務合理化の施策の面が強く、「共同実施」推進の先には義務教育費国庫負担制度からの事務職員はずしや事務センター化、人員削減、そして廃職まで想定されます。

 こうした想定は現実に、「共同実施」先行県において非正規雇用事務職員の増大が顕著であることや、明確に人員削減を目的に掲げ導入を進めようとしている自治体まであることからも、明らかです。これらは学校事務職員の労働条件と雇用を破壊するものに他ならず、私たちとしては到底受け入れられるものではありません。

 また、「共同実施」は事務職員を学校組織から切り離し、大きくは学校事務機能を学校の外部に置く方向性を持つものであり、現在文部科学省が前面に掲げる「チーム学校」施策の方向性とは、相矛盾する性質が見て取れます。その矛盾はさておくとしても、学校事務機能の外部化は学校運営に不安定・不均衡をもたらすものと、強く危惧されます。現に先行県では、事務職員不在となった学校における運営上の支障を訴える声が現場から挙げられています。

 あわせて、2001年以来事務職員定数加配として「きめ細かな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部門の強化対応を行う学校への加配」が設けられていますが、その内容は「共同実施」の推進を目的としています。加配方式のため毎年受けられる安定したものとはなりえず、定数改善とはまったく無縁です。

 学校運営と学校事務職員制度を守るため、「共同実施」とそれにつながる施策はとりやめるべきです。

4.教職員給与費の政令指定都市への移管に伴い、教育環境や学校職員の労働条件、事務職員の任用のあり方について地域間格差が生じないよう求めます。また、給与費・人事権等の市町村へのさらなる「権限委譲」に反対します。

 来年4月より、現在都道府県が負担している義務教育諸学校教職員給与費のうち、政令指定都市の教職員について給与負担を政令市に移管することとなっています。私たちは従来よりこの教職員給与費の政令市費化について、教育に地域間格差をもたらすものであるとして反対してきました。

 現行の「県費負担教職員制度」は、市町村の財政力の強弱により教職員の給与水準や定数に格差が生じることを防ぎ、教育の機会均等を保障するためのものとしてありますが、政令市費化はその制度を改変するものとなります。それにより、各市の財政力が教育に直接的に影響してきます。具体的には、政令市費化にあたっては道府県から政令市への一定の税源移譲が予定されていますが、試算によればほとんどの政令市が税源移譲分だけでは給与費がまかないきれないとされています。政令市間の不足額の差も目に付きます。そうした問題についてはもとより当該道府県・政令市の側でも認識されており、地方の財政運営への悪影響を避けるため、国が適切な地方財政措置を講じることが移管の前提とされていました。

 こうした課題は、賃金をはじめとする労働条件や定数にも強く影響してきます。財政力のない自治体は教職員給与の引き下げや定数減に、いやおうなしに踏み切らざるをえなくなるかもしれません。加えて、学校業務の外注化・非正規雇用への転換など「教育の民営化」も加速させます。とりわけ少数職種である学校事務職員については、全市的合理化の対象に組み込まれ、一般行政職との任用一本化や定数の大幅削減、センター化、そして外注化・非常勤化といった、学校事務職員制度の解体が強く懸念されます。こうしたことはひいて、教育全体に悪影響を及ぼすものと考えます。

 中でも任用一本化については、すでにいくつかの政令市が実施に前向きと映る姿勢を見せています。しかし、学校事務として働くことを希望しその職として採用された職員の士気や意欲を損ねるものであり、学校運営や教育行政全体に照らしても実施すべきではないと、特に指摘します。

 政令市への移管により義務教育費国庫負担金も直接政令市に渡ることとなりますが、その裏負担である地方財源分の確保については地方交付税交付金が大事な役割を担うこととなります。政令市移管による教職員給与費の負担の増加が、教育の機会均等を崩すことにつながってはなりません。財政面で課題を抱えつつ移管を控えた今、こうした面についても改めて予算確保を強く求めます。

 政令市に次いで、中核市やその他市町村への人事権を含めた移譲についても、実施の方向に舵を切っています。しかし、こうした「権限移譲」は「地方分権」の美名とは裏腹に、地域間格差をよりいっそう拡大・全体化していくことになるのではないかと危惧しています。

5.非正規雇用学校職員の労働条件の改善を求めます。

 学校現場には臨時的任用や非常勤といった非正規雇用職員が多数配置されており、その数は年々増え続けています。学校において臨時的任用職員の職務は正規となんら変わらず、事務職員の場合単数配置校への配属、教員の場合学級担任の担当も珍しくありません。非正規雇用職員も学校運営に不可欠の存在であり、特に事務職員の場合定数内職員に該当することも多くあります。

 にもかかわらず非正規雇用職員は、賃金・休暇等のあらゆる労働条件について正規職員より著しく低く抑えられています。賃金については、何年何十年と繰り返し任用されていても、昇給に上限が設けられており低い水準にとどめられています。具体的には、どれだけ繰り返し任用され経験と年齢を重ねていても、給与の上限を正規採用3年目と同じ水準としている自治体があります。休暇制度でも、正規職員なら有給なのに非正規雇用だと無給であったり、期間等が制限されていたり、そもそも制度が設けられていなかったりするものがいくつも見られます。また、社会保険の面でも不合理な取り扱いがあります。

 国は「労働条件は各都道府県の裁量」としており、事実、各都道府県の責任も大きいところです。しかし同時に、教育を支える学校職員の労働条件はすなわち教育にかかわる問題であり、全国的に同様の状況がある以上、教育に対する責任の一環として国も主体性を持って取り組むべき課題であると考えます。

6.義務教育費国庫負担制度の改善と総額裁量制の廃止を求めます。

 教育の機会均等を図るための義務教育費国庫負担制度ですが、1984年以降、国庫負担から教材費・旅費・退職金等が次々に外されてきました。さらに三位一体改革で実施された給与費国負担率の1/2から1/3への切り下げは、地方への負担転嫁を一段ともたらしました。

 また国庫負担制度をめぐっては2004年度より「総額裁量制」が導入されました。国庫負担金の総額の範囲内で、給与額や教職員配置について各自治体が自主的に決めることができるとする制度で、国はこれにより義務標準法定数を超えて教職員数を増やし、少人数学級・少人数指導などの工夫ができるようになるとしています。しかしこの制度の導入により、職種別定数の弾力的運用が可能になったことから事務職員定数分を教員に回し、事務職員定数が崩されるという事態が進行しています。また、低賃金で多数の教職員を雇うという方向性を助長する制度であり、非正規雇用学校職員の増加の要因にもなっています。

 前述した、義務標準法に基づく学校事務職員定数が全国的に遵守されていない状況は、国庫負担率の切り下げや総額裁量制も大きく影響しています。こうした動きは私たちの労働条件の悪化に明白につながっており、またこれまでもあった教育格差の一層の拡大を進めるものです。

 教育の機会均等は国の義務であり、その観点に基づく義務教育費国庫負担制度の改善を求めます。

7.義務教育の完全な無償化を求めます。

 憲法第26条において義務教育無償の原則が謳われています。しかし義務教育にかかる保護者負担の実態は、給食費・教材費・校外活動費等少なくありません。過去最悪の貧困率を記録する中、負担に耐えられない世帯が増えています。これを救済するための就学援助制度も、2005年度より国庫補助の対象から外され、地方自治体の財政難や生活保護基準の引き下げにより充実するどころか逆に後退している現実があります。

 2014年8月に政府は「子どもの貧困対策に関する大綱」を閣議決定し問題は認識されていますが、一度は後退させた生活保護・就学援助などの既成制度の復元・拡充なども積極的に行い、取り組みを進めるべきです。親の所得水準や自治体の財政事情に関わりなく、すべての子どもに等しく義務教育を保障するよう求めます。

8.収束しない原発事故から、子どもたちをはじめ被災者を守り支援するための対策・施策をとるよう求めます。また、原発の再稼働に反対します。

 福島第一原発事故は6年近く経つ今も、まったく収束していません。福島の住宅の庭には除染で出た土が埋められています。放射性物質を集めたフレコンパックはそこここに野ざらしにされているのが目に入ります。メルトダウンした福島第一はいつ何時に起こるかわからない地震で倒壊し、大量の放射性物質をまき散らす装置として、身近にあり続けます。放射線被曝によるとみられる健康被害の発生が、すでに研究者・専門家により指摘されています。これまでの、現在の、そして将来の被曝が子どもたちにどんな影響を及ぼすのか、不安だけがのしかかります。

 被災者のそんな思いとは裏腹に、国と福島県は自主避難者の住宅無償提供打ち切り、避難区域指定の一部解除といった、被災者支援政策を打ち切り、「帰還」推進の姿勢を露わにしています。まだまだ放射線量が高い地域であっても住民の生活や健康を顧みず「帰還」を無理強いし、実際の被害を覆い隠し事故収束が進んでいると印象づけるための施策と映ります。

 原発災害の被災地の現実を直視し、被災者の実態とその声に基づいて、子どもたちをはじめ被災者への将来に渡る具体的な支援を求めます。

 原発の非経済性は、収束の見込みの立たない大事故により誰の目にも明らかとなりました。地震・火山大国の日本で、絶対安全な原発稼働というのは非現実的です。事故後初めて再稼働した九州・川内原発の火山対策をめぐっても、周辺に点在する活火山の大爆発があればまったくの無力です。そうした現実を直視した結果が7月の鹿児島県知事選挙、そして10月の、再稼働が目論まれて柏崎刈羽原発を抱える潟県知事選挙における、原発稼働反対派の勝利に表れています。福島原発事故の充分な原因究明も責任追及もないまま、事故の教訓も無視して進められている、全国の原発の再稼働に反対します。

以上



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