2017年5月20日

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全学労連ニュース今号の内容

 疲れ切った政令市の事務職員  移管後1か月を経た各地の状況

 全学労連 文科省重点要望書 提出

 横浜新人学校事務職員解雇撤回裁判  不当判決糾弾!直ちに控訴

疲れ切った政令市の事務職員

移管後1か月を経た各地の状況

 例年3月から4月にかけての年度替わりの時期は、人事異動や文書の置き換え、諸会計の締め等、何かと忙しい時期で、学校事務の年間の超過勤務もこのあたりに集中しがちだ。それでも工夫次第で「過労」というほどのこともなかった。

 しかし、今年の政令市はいささか様相が違う。給与・旅費といった県費会計が移管されたわけだが、それにまつわる庶務事務も大きく変わり、しかも年度をまたいだ4月になっても制度が確定せず、具体的な指示も満足に出てこない・・・。現場の工夫では何も解決できず、いたずらに超過勤務だけが積み重なっていく・・・。

 事務局会議で顔を合わせても疲れ切った表情を見せる政令市の仲間。それに鞭打つ形で「移管後1か月を経た状況」をレポートしてもらった。想像以上の悲惨さだ。


政令市移管後の横浜状況

トラブル続きの庶務事務システム すべての事務は遅れに遅れ…

 何はともあれ一番に挙げなければならないのは、教職員庶務事務システムのことだろう。事務職員や、副校長が集まると、話題は教職員庶務事務システムのこととなる。真っ当な試行期間も無くぶっつけ本番で始まったためトラブルが多く、そのトラブルの解決がなかなか為されない。オンラインの操作マニュアルはあるものの、標準的な操作マニュアルでしかなく、操作に困った時に覗いてみても対応策は一切書いてない。庶務事務センターに問い合わせしようにも電話はちっとも通じない。そもそも庶務事務センターの電話がヘルプデスクの電話となっているため、操作の問い合わせでない、ただの連絡さえもが通じないのだ。偶に通じても、回答の保留や、あとで回答、更には回答の修正も。

 横浜市本体に勤めていた方によれば、市の庶務事務システムの劣化版、とのこと。慣れればもう少し何とかなるのかもしれないが。

 また、市教委本体も、庶務事務センターも、矢張り準備不足のつけでトラブル続き。手当認定などは遅れに遅れるし、出張の経路認定も進まず。兼務者の通勤届は漸く5月になって申請できることになるも、臨時的任用職員の健康保険は5月下旬までには何とか、という有様です。


政令市移管後一月の相模原

怒涛のような3月から4月。 トラブルは現在進行中

 怒涛のような3月から4月。県費事務の締めくくりと新たな仕事に追われた。加えて、2月にスタートした県の新給与システムがトラブル続きで最後の最後にまともな給与支給がなされないという始末、トラブルは現在も進行中だ。で、相模原は・・・。

給与事務

 ぎりぎりまで確定せず、日々メールで新たな報告様式や諸注意が送られてくる。学校から報告を市教委に送り、教委で市の職員情報システムに入力するが準備が間に合わず報告の提示が締め切り直前で余裕がない。報告はメールで送り、校長印を押した原本は学校に残す。諸手当認定は校長だが、入力のため認定簿のコピーを教委に送るから、それなら教委で認定をやれよと言う感じだ。旅費は請求金額を教委に報告。今までは教育事務所のチェックがあったから不安だ。教委から事務職員間の相互チェックを打診されたが組合は認めず。しかし事務研の中で自主的な相互チェックの動きもあり共同実施導入に繋がりかねない。共同実施的な相互チェックではなく、いかに市教委に責任を持たせるかが課題だ。

給料日

 給料日。振込が間に合わず何とかその日中に振り込まれた。管理職手当に誤りも。教員は県と同じ給料表を作成、同一金額保障だが、諸手当は市の方が低く数千円減額になった職員も。県の給与構造改革で現給保障の最後の一年が移管と同時に無くなり、50代の職員がほぼ1万円弱の減額。明細を見て初めて驚く人も。

 再任用事務職員は県より5万円ほど減額。県は5級、政令3市は軒並み3級だが、同じ3級でも市によって金額が違う(地域手当も横浜・川崎は16%で相模原は12%)。時間外手当は県のような時間配当(168時間)ではないが、文科省の1957年通達の趣旨など学校事務職員の時間外手当の経過などについては確認できていない。

相模原ファースト?!市職員としての意識付け強化

 一番大きな変化は相模原市教職員としての意識付けなのではないかと思う。職員カードなど県費にはなかった書類に違和感満載だ。趣味や地域の消防団などの記載欄がある。組合の反対で記入は強制されないが欄は残った。出張命令票に自家用車(自転車も!)運転の際、安全運転を確認する欄があり出張のたび押印する。市の公用車運転のやり方踏襲だが管理強化だ。防災訓練や選挙事務など県費故なかった事柄にも今後動員される可能性も。

 県との間で確認されてきたことが無化され、一から積み上げていかなければならない。検証しながら組合の取り組みを考えていきたい。


名古屋市の移管状況

学校は一人で、教えてくれる上司も同僚もいない… 欠員代替に辞退者続出

 「当局は学校事務職員の仕事が分かっているのか」と産休等代替制度について以前レポートしました(全学労連ニュース390号)。残念ながらそこで危惧したように年度当初に実際に欠員が生じてしまいました。

 募集案内では「嘱託二人で分担する」ということでしたが、実際には横で仕事を指示する人もおらず、同じ時間にいっしょに仕事をする人もいない、同じ職場で相談できる人もいないという状況です。3月の職場へのあいさつのときにそうした実情を初めて知らされ、「とてもできない」と辞退する人が続出したそうです。再任用から嘱託に替わった学校事務センター勤務の退職者嘱託[*1]の人を学校に派遣して充てても足りずに数校で欠員[*2]となったのでした。

[*1]退職者嘱託:再任用がフルタイムだけとなったため、ハーフタイムで働く希望の人は、再任用をやめ嘱託をしています。

[*2]欠員について:学校間連携の連携長と副連携長を集めた説明会で、教育委員会は「役所と違って学校はひとりで、教えてくれる上司も同僚もいない特殊性で辞退が出た」ことを認めました。

 二人のうち一人だけが配置された学校では、週2.5日の勤務時間で全ての仕事をすることなりました。初めての人は右も左も全くわからないままに、次々と迫る締切りを追いかける仕事をしなければなりませんでした。

 教育委員会は、急遽、5月からの任用の追加募集[*3]をし、当面する4月中の業務については、学校間連携の連携長と係長学校事務職員にフォローを頼み込みました。係長事務職員は各区に一人配置の計算ですので、事実上フォローするのは連携長だけです。頼まれた方は、自分の仕事だけで精一杯のなか、何度も足を運び電話をすることとなったのです。

[*3]5月任用:欠員が出ないように多く採用し、学校配属せず当面学校事務センターで仕事をしています。また、関係団体からの勧誘で、再任用が終わった人が数人応募し、学校に配属されています。

 産休代替については臨時的任用をもって充てると法定されています。この臨時的任用は地公法22条に基づくものでフルタイムの職員です。しかし、名古屋市の制度にはフルタイムの臨時的任用という制度は存在していません。苦肉の策として民間嘱託と退職嘱託というハーフタイムを組み合わせて、「形だけのフルタイム」ということで代替措置をすることにしたのです。

 名古屋市の制度が間違っているのです。フルタイムの臨時的任用でなければ、そして経験者が引き続き働ける制度でなければならないのです。それを正面から人事当局に要求できない教育委員会の情けなさ。そして、その矛盾を学校現場に押し付ける無責任さ。当局は学校事務がわかっていないのです。


 ところで、出張にかかわる諸制度が整備された、という通知が学校にきたのが4月中旬のことでした。それまでは旅行命令はなしえない状況でした。しかし、移管に関わる様々な説明会はその通知文が出る前に開かれていました。

 そこに参加していないと仕事ができない、でも、旅行命令は出すことができない。結果、その説明会に参加した人も参加できなかった人もいろいろとあったようです。参加した人は休暇だったのでしょうか。後付けの(不法な)旅行命令だったのでしょうか。ブラックです。



全学労連 文科省重点要望書 提出

 全学労連は5月1日付けで、別添の「学校労働者の労働条件等改善に関する春季要望書」を提出した。また、併せて2017年度方針大綱に基づく「申し入れ書」も提出した。

 今年度は、拡大している臨時的任用や非常勤講師の問題処遇に関し、@学校現場の臨時的任用職員の労働条件改善や、「共同学校事務室」法制化に伴い危惧されている「東京型共同実施」に歯止めをかけるべく、A東京都の「共同事務室」に関してと、B自治体への「共同学校事務室」強制を行なわないことの3点を重点項目として挙げ、7月に交渉を行なう。

 全学労連は、全国の学校事務、学校労働者諸課題改善へ向け、全力で闘っていく。



横浜新人学校事務職員解雇撤回裁判

不当判決糾弾!直ちに控訴

 「不当判決だ!」裁判長が「原告の請求を棄却する」と判決文を読み上げた途端に満杯の傍聴席から怒りの声が上がった。裁判長は一瞬キョトンとした顔つきをしてそそくさと法廷から逃げ去る。

 横浜市の新採用学校事務職員Sさんに仕事が遅い、ミスが多い等の難癖をつけ、市教委の課員や係長らがパワハラ行為を重ね(「ポケットに手を入れているのはお前を殴りたいのを我慢しているのだ」「お前はトロい」等々)、条件附き採用期間を延長した上退職を強要、挙句の果て「分限免職」処分にしたのは2013年3月。Sさんは裁判に訴え、全学労連、神奈川県共闘や学校事務職員を中心とする「Sさんの職場復帰を支える会」等多くの支援を背に4年間闘ってきた。これに対し横浜地裁は3月23日処分有効の許しがたい不当判決を下した。当日は遠く愛知、山梨からも支援の仲間が駆け付けた。予想外の敗訴に落胆の色は隠せない。

怒りの声相次ぐ

 判決後波止場会館に場所を移して報告集会を行う。支援の方々からの発言。「裁判所は行政寄りの判断に傾きがちとは思っていたが、ひどすぎる。Sさんの失われた青春を返せ!」(県共闘)、「敗北感で全身の力が抜けた。」(最初にSさんからの訴えを受けた労働相談センター)、「勝利判決以外にないと思っていた。一番つらいのは本人、最後まで支援していく。」(裁判で職場復帰を果たしたゆうメイト)、「労働災害をまともに扱ってもらえず、後遺症を残したまま雇い止めになり裁判をしている。判決はショックだった、涙が出てくる。」(神奈川県を相手に損害賠償請求をしている元林業臨職)、「全国の学校事務職員にかけられた攻撃と捉えている。不当処分・不当判決をはねかえす闘いを継続していく」(全学労連・佐野議長)「今の日本に正義はないのか!と思った。これを許したら市教委はもっと事務職員をイジメてもいいんだ、日本全体で労働者をイジメてもいいんだ、となってしまう。」(市教委職員でありながら裁判で原告側証人に立った方)。他にJAL争議団、横校労、全学労組から次々と怒りと支援継続の発言があった。

 3人の弁護士が判決文について批判、実に雑駁な認定に基づく判決だ、被告側の主張べったり、最初に結論ありきのつまみ食いとしか言いようがない、事実認定と結論に明らかな齟齬がある、控訴審では細かな点についてもきちんと認めさせたい、と。

 判決は、事前研修も職場のOJTも一切なく、慌ただしい新学期の学校に放り込まれ、山ほどある仕事をこなすよう求められる単数配置新採用学校事務職員の困難な状況には目もくれず、現場ではできっこない(だから大半の事務職員はやっていない)「要綱」「規則」通りの仕事を盾に取りSさんを翻弄した市教委の悪辣さに目をつぶるものだ。Sさんと他の新採用学校事務職員とを切り離し、仕事の遅れやミスをSさん固有の問題であるかのように言っている。支払遅延理由書の件数や就学援助追加申請の処理状況などわずかな数字をもとに、他の新採用者は問題なく、Sさんだけが特異であるかのように断定している。現場での財務処理の実態についても、証人尋問で丁寧に説いたにもかかわらず、通常のやり方について『例外的』とする形式的な判断。行政は間違わないという先入見に立った全く不当な判決だ。

Sさん闘い継続の決意

「控訴状に署名捺印を済ませた。4年間積み上げてきたものを『棄却』の一言で否定されて悔しい。最後まで闘うのでこれからも一緒に闘ってほしい」と決意表明、大きな拍手と激励の言葉に包まれた。4月6日、控訴手続きを行った。闘いの場は東京高裁に移る。


(学校事務職員労働組合神奈川)



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