2017年7月9日

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全学労連ニュース今号の内容

 定数削減型共同実施にNO!  東京都版「共同実施」と「チーム学校」を考える全都集会IN立川 参加記

 「共同実施」関連法の省令で明らかになったこと@

 <ブックレット紹介>教育に浸透する自衛隊―「安保法制」下の子どもたち

定数削減型共同実施にNO!

東京都版「共同実施」と「チーム学校」を考える全都集会IN立川 参加記

 7月1日、東京都立川市で、東京の学校系労働組合「7者協議会」が主催する共同実施等を考える集会に参加した。

 ―基調報告・・・これ以上の共同実施の拡散を許さない!―

 はじめに、学校事務ユニオン東京の宮崎さんから、東京でのこれまでの共同実施の推移が説明された。東京都教委はこれまで散々「共同実施は東京ではメリットないのでやらない」と繰り返してきたが、2012年突如として、定数削減・合理化型の共同実施を江東区、武蔵村山市に導入をし始め、その2年後には本格実施、さらに翌年清瀬市でも試行を始めた。清瀬市では共同実施のため学校事務職員が学校に不在になった代わりに配置された都費非常勤職員が、学校集金で100万円もの現金を扱っていることに関して校長会が疑義を呈していることが語られた。また都教委は、「副校長の負担軽減・校務改善に資する」を共同実施の目玉として進めてきたが、都費事務職員不在により、副校長は現場で多忙化を極めていることも報告された。さらに都教委が立ち上げた「東京都におけるチーム学校としての学校の在り方検討委員会」では、都費事務職員がいなくなった学校現場の弱体化を認めていて、経営支援部路線が破綻していることを半ば認めていることが報告された。これらの矛盾点を「学校事務の共同実施に対する解明要求書」という形で都教委に回答を求めるとともに、各地教委へも申し入れをしていくことが語られた。

 ―実施・計画地区からの報告・・・7校を4名が基本―

 立川市では2018年度試行で動きが出てきている。タブレットを導入したためPC教室が不要になった学校で、そのPC教室を改修して共同事務室にすることで進んでいる。7〜8校を4名、9〜10校を5名で共同実施していく。共同実施に関する話し合い、会議は比較的多く持たれているが、何にせよ「共同実施ありき」で話がなされていて試行とはいっても必ず導入するようだ。

 東村山市では2014年に検討委員会が設置されたが、市教委・指導室は年度計画も何もなしで一方的に3地区(ブロック)を示してきた。あまりに唐突で、実施内容も決まっていないため、事務職員で話し合い、2016年度から南部地区共同事務室で7校連携、4名で、一人2校を見る学校担当で共同実施を行なっている。学校へは支援員として都費非常勤が7名配置されたが、5名は都の選考で行政や学校経験者であるものの、東村山での経験はなく、経験があったとしても学校での職務内容が曖昧でマニュアルもなく、当初はとても困惑したようで、学校現場も混乱した。それでも「校務改善」を強く前面に押し出し、教員の理解を求めている。指導室も毎年人が変わり、一向に体制が出来ていないため、来年度全市へという市教委の意向はとても無理で、2019年度本格実施ということで進めている。

 墨田区は聞き取りによる報告であった。2018年9月に共同事務室を一ヶ所開設し試行する予定。区費事務はいなく、臨時職員がいる。財務会計はペーパーによる処理。7校を4名で見る予定。グループとしては4〜5つできそうである。現在の区内の事務職員を見ると、再任用者をはずせば、グループ内4名の体制が出来上がっているようである。

 小金井市は昨年5月、校長会の資料に始めて共同事務室設置の意向が示されていた。事務職員は誰も知らなかった。その年3月の7者協での申し入れ時には「考えていない」といっていたのに、どうやら武蔵村山市へ視察にもいっていたようだ。事務職員会にも何も知らされないので、市内の事務職員が教育委員会の定例会を手分けして傍聴し、情報収集した。現在4校を4名で見ているが、来年は7校を4名で見る予定。まだ共同事務室ではなく各学校で仕事をしている。共同実施検討委員会は、市教委と校長が担当。作業部会は副校長と事務が担当し、主に仕事内容の割り振りを決めていて、先週役割が決まった。補充の支援員は当初都職員のOBを公募していたが、OBは2名のみであった。

 ―7者協の取り組み・・・交渉・全国の状況と東京―

 7者協の交渉報告では、まず地教委と接点を持つことの重要性が語られた。どんな形でも良いので話し合いの場を持ち、こちらの要請を聞いてもらう。ある市では「教員の多忙化解消が重要だ」と語るが共同実施については何もわかっていない。都教委の言うがままに導入しようとする。武蔵村山市では「副校長は楽になっていない」と現に語られているし、青梅市では「共同実施を導入するなら『副校長の負担軽減』を題目からはずしてくれ」と叫ばれているという。

 また集会では今般の法律等の改正が説明された。今回の地教行法に盛り込まれた「共同学校事務室」については、必ずしも、東京や大分などの学校事務センター方式を排除するものではないと指摘し、今後も警戒していかなければならないことが語られた。

 「チームとしての学校」では、東学の片山さんが中教審版と都版の「チーム学校」の違いを「中教審版では『共同実施で事務処理を効率化し(空いた時間で)事務職員が副校長・教頭の補佐』の体制ですが、都版では都が進めて来た共同実施で『副校長の支援』は『事務職員等』、事務職員については『共同実施』で事務の集中処理を行なうことで定数を削減し『事務職員等』の人件費をひねり出すものと整理しているようだ」と語った。

 ―討論・まとめ・・・「都教委のあせり」―

 東村山の具体的な職務内容について「共同事務で行なう仕事は、やはり都事務である給与・旅費が主になっている。予算・物品管理は現場でないとできないので支援員が行なっている。手当認定事務などは共同事務室で処理するが、不明な点は支援員に間に入ってもらって現場の教員などにも確認し、最終的に処理が終わるのは、また現場で学校長に認定印をもらうという、かなり非効率的で時間と手間がかかっている。現場と共同事務室の間を書類が行き来している」という。

 また、「チーム学校の実現には優秀な事務職員が現場に必要といっているのに、東京都は週4日の非常勤職員でそれを行おうとしている。それも公募で・・・。優秀な非常勤の方は、職務や能力と賃金が見合わないので職を離れていく事が多い。」「共同事務室も今は学校事務経験者が行なっているが、この先は未経験者が配属されることになる。そうなると任用一本化により、共同事務室はますます異動の中継地としかならない。行く行くは業務委託などの民間の集中管理へと進むことも警戒したい。」「多摩地区は市費職員が配置されているところが多いが、区は区費職員のいないところもある。墨田はいないところなので、ここで共同実施ができるとなると全都へ広がる可能性がある」などの意見が出された。

 全学労連佐野議長は「省令改正により共同実施が職階制導入への糸口となる可能性がある。また、文科省の言う共同学校事務室は枠だけ見ると東京型の共同事務室によく似ている。これは文科省が全国へ共同実施の定型を示したことに受け取られる。付帯決議により『一校一名』とはいうものの注視していかなければならないことに変わりはない」と述べた。

 まとめでは、定数削減目的で始めた共同実施に、ほころびが出始めて「都教委のあせり」。管理職、特に副校長から不安の声が出されて「都教委のあせり」。文科省の路線と逆行している「都教委のあせり」。多摩地区から23区へとターゲットが動いたのは「都教委のあせり」なのではないかと語られた。そして、「共同実施を都が断念するか、私たちがあきらめるか・・・私たちはあきらめない」と決意が語られた。


 今回、実際の現場の声を聞けたことはとても良かった。以前、江東区に導入された後、視察にいったことがあったが、視察参加者からは「とてもかわいそう」という言葉が聞こえた。およそ学校事務でなくても良い体制で事務を行なっているからだ。強いて言えば「教育事務所」。淡々と事務を行なって処理していく。都職との任用一本化では、教員との関係が疎ましい事務職員もいるだろう。校内に仕事の解るもの、聞けるものがいないのも不安であろう。しかし、数年たてばほぼベテランとなる学校事務、経験年数でそこに深みや幅は違ってくるであろうが、プロフェッショナル意識も出てくる。

 墨田区では都教委の人事部長が教育長となって導入が決められたようだ。また、以前の江東区、武蔵村山市いずれも都教委のそれなりのポジションが教育委員会内に入ることにより共同実施の導入を決めているようである。

 共同実施は一度レールが敷かれてしまうと、あとは動かざるを得ない。レールさえ敷かない東村山市の無茶振りには呆れるが、それでも無理に動け動けと圧をかけてくるのであろう。この間の「事務をつかさどる」「共同学校事務室長」などに惑わされることなく、地に足の着いた学校事務労働者でいなければならないと強く思った。

(事務局 吉田)



「共同実施」関連法の省令で明らかになったこと@

 国会では教職員定数の一部基礎定数化という一見改善とも見える方策のどさくさに紛れて、基礎定数化とは全く関係のない学校事務職員の職務規定見直しや、多種多様な「共同実施」に一定のモデルを提示する「共同実施」関連法が成立してしまった。法改訂を受けて、すぐにそれを具体化するための省令が改訂され、各都道府県や政令市に通知されている。国会では、現場のリアリティーを全く感じられぬいい加減な政府答弁しか無かったが、省令を見ると無理やりの法改訂で何を目論んでいたのかが明らかになる。何回かに分けて関連法の省令改定について報告する。

「事務をつかさどる」の意味するものは 「共同実施」による事務職員の差別分断ということだ

 学校教育法第37条第14項の学校事務職員の職務規定が「事務に従事する」から「事務をつかさどる」に改められた。国会での論議では、このことの意義について複数の議員から何度も質問がされている。それに対して政府参考人は、「学校の事務を事務職員が一定の責任を持って処理することになる」とか「従前は…例えば各種の調査対応、あるいは学校予算の編成、執行などの事務につきまして、校内のとりまとめ、確認作業等の細かな対応まで校長や教頭などの管理職が対応してきたものを、今後は事務職員が対応することができる」と判で押したように同じことを繰り返し答弁している。これについては既に「全学労連」394で、学校事務職員は怒るべきで、「錯誤した現場認識」と批判した。

 関連法成立後の今年3月31日に「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」という通知が、各都道府県と政令市の教育委員会と知事・市長宛に出されている。通知を出したのは、文部科学省初等中等教育局長の藤原 誠という人物である。念のため指摘しておくが、これは国会での答弁をした政府参考人と同一人物だ。

 通知文の中で何を言っているか、(アンダーラインは引用者)

1 改正の概要では、

(1)事務長等の職務規定の整備

 改正法により、学校教育法第37条第14項に定める事務職員の職務規定を「事務をつかさどる」に改めることに伴い、事務長及び事務主任の職務について、それぞれ「事務職員その他の職員が行う事務を総括する」、「事務に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる」と改めること

2 留意事項では、

(1)事務長等の職務規定の整備について

…略…改正法の趣旨を踏まえ、事務職員がより主体的・積極的に校務運営に参画することに資するよう、事務長及び事務主任を活用することなどにより事務体制の強化に努めること。その際、資質、能力と意欲のある事務職員の採用、研修等を通じた育成に一層努めること。

 事務主任が行う「連絡調整及び指導、助言」は、学校の事務の処理に当たり、事務主任がその経験等を基に、教論やその他の職員に対して行うことを想定していること。

 国会答弁では事務職員一般について語っているように装い、一言も触れなかった「事務長」「事務主任」の役割が、ここでは明確に示されている。この狙いを糊塗するためにあいまいな答弁を繰り返し、国会議員を欺いていたことになる。安倍政権の国会軽視はここにも表れているのか。

 今まで省令に規定はあっても十分に学校現場で機能してこなかった、と言うより大半の学校現場ではその必要もない無用の長物でしかなかったと言うべきだろうが、「事務長」「事務主任」を共同学校事務室の中で室長とその補佐に位置付けることにより、実態を持たせるという文科省の構想が見えてくる。これを「業務改善」とか「主体的な公務運営への参画」とか言うらしい。「事務長」でも「事務主任」でもない大多数の事務職員にとっては「改善」でもなく「主体的」にもなれず、指示命令への服従と労働強化がもたらされる。

 「事務につかさどる」に変わったことの意味は、単なる言い回しの変更や他職種との表現上の統一などではなく、共同実施と結びついた学校事務職員の分断であり格差拡大である。それは共同実施とともに学校間の格差、教育の格差拡大にもつながっていく。



<ブックレット紹介>

教育に浸透する自衛隊―「安保法制」下の子どもたち

がくろう神奈川 京極 紀子


★今、様々な形で自衛隊が学校現場と結びつき、子どもたちが違和感なく接している状況がある。この状況に警鐘を鳴らすためにブックレット「教育に浸透する自衛隊-安保法制下の子どもたち」が出版された。都立高校の自衛隊宿泊防災訓練を問題化して2014年11月に出した「高校生をリクルートする自衛隊・自衛隊の手法を取り入れる教育行政」の続編でもある。

 この中では、東京・群馬・神奈川・大阪・愛知など全国で起こっている自衛隊の学校現場への浸透状況、ミニスカ女子のアニメキャラや漫画を使った動画・ポスターetc. また「自衛官募集」と刷り込んだトイレットペーパーを中学校に配布した事例(滋賀)など、あの手この手の必死さで自衛官獲得を目指す自衛隊や学校現場の状況がレポートされている。

 安保法成立を受け、自衛隊を志願する若者の数は激減、2015年の応募者はそれ以前9年間で最も少なく前年度より20%も減ったと言う(2015.10.24東京新聞)。戦争法の影響が敏感に反映されたと言うことではないだろうか?自衛隊の側の必死度は防衛省の戦略の一環である。大学研究費と軍事研究や、経済的徴兵制とも言える子どもたちの志願動機など、政治的・社会的な問題としての側面も大きな課題である。


★一昨年の夏休み、横浜では市立中学校の社会科教員が一年生に、「夏季学習」として陸上自衛隊東富士演習場で行われる「総合火力演習」の見学会参加を呼びかけたことが地元紙で大きく報道された。その教員が予備自衛官の身分を持ち、職権を利用しての宣伝活動とも言える行為が学校現場で堂々と行われていたことにも衝撃を受けた(批判が殺到して翌年は中止!)が、裾野にはやはり「教育」の名目で行われる自衛隊の学校への浸透がある。多くの学校で「職場体験学習」として自衛隊への見学が日常的に行われている。自衛官の募集や広報活動を行う地本のwebサイトには「総合的な学習の時間(職場体験)」のコーナーがあり、未来の自衛官獲得のために積極的な活動を行なっている。そこではベッドメーキングから戦車や徒手格闘技訓練の見学等、多彩なメニューで子どもたちが自衛隊の活動に参加しており、将来的な募集に繋げていくと言う自衛隊の決意満載で愕然とするのだ。


★ブックレットの中では、女性自衛官が民間人校長として府立高校の校長に転身、学校HPに自衛官の制服のまま登場したり(大阪)、自衛隊だけでなく横田基地の米兵が中学校の地域交流行事に参加して「ミニ・ブートキャンプ(新兵訓練)」を行うなど、軍隊と教育の深刻な繋がりを知ることができるだろう。

 教育勅語を授業で行なうことを良しとする閣議決定、戦前は軍事教練、今的にはほぼ自衛隊でしか行われていない銃剣道を体育の授業に取り入れた指導要領の改訂、2020年東京五輪に向けてのオリパラ教育の強制等―「戦争」や「軍隊」、「愛国心」の中に子どもたちが動員されていく。この連鎖を断ち切る手立てとしてブックレットを利用したい。

*ブックレット 教育に浸透する自衛隊―「安保法制」下の子どもたち

 「教育に浸透する自衛隊」編集委員会/編 同時代社 800円+税



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