2017年10月28日

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全学労連ニュース今号の内容

 「働き方改革」で事務職員に業務押し付け?!  中教審部会 真に求められるのは抜本的な業務縮減と定数改善だ

 文科省来年度予算概算要求  学校事務労働者を「小役人」に変える働き方改革と「チーム学校」

 全学労連 文科省 秋季要望書提出

「働き方改革」で事務職員に業務押し付け?!

中教審部会 真に求められるのは抜本的な業務縮減と定数改善だ

「働き方改革」は文科省の免罪ありき?

 今年6月、中教審初中教育分科会に「学校における働き方改革特別部会」が設置され、7月以降6回開催されています。8月末には「緊急提言」も出されました。

 学校現場の常態的な長時間・過重労働の問題は近年、社会的にも徐々に知られるようになってきました。私たちも、学校事務職員に限らず学校で働くあらゆる人の過重労働は、解消されなければならない課題と考えます。

 しかし、「働き方改革」の名の下に進められている同部会の議論を見るに、その本気度ははなはだ疑問です。「緊急提言」にしても、内容的には昨年6月に文科省内タスクフォースで検討され出された「学校現場における業務の適正化」通知の域を大きく出るものではなく、なんのための有識者なのかと言いたくなるようなものでした。

「緊急提言」が大きく打ち出したのは次の3点です。

 要は現場(この場合、教育委員会も含む)が悪い、現場の意識が低い、現場の取り組みが足りない、と言っているようなものですが、文科省に責任はないのでしょうか。道徳教育、小学校英語教育、職業教育、全国学力学習状況調査、地域連携、教員免許更新制……。学校現場がやらなければならないことを増やし、過重労働に拍車をかけているのは、国であり文科省ではないでしょうか。そんな当事者性を無視して「支援の充実」とは、おためごかしもいいところです。

 そもそも教職員が長時間・過重労働を強いられている根源は、時間外勤務手当等の支払を不要とし教員を「定額働かせ放題」の立場に置く給特法にあることは明白です。際限なく増え続ける学校の業務や教育内容、求められる役割の膨大な山は、残業代を払わずにいくらでも働かせられる教員という存在にタダ乗りすることを前提としているとしか思えません。時間外勤務手当等の支払が必要ないからこそ、かえって学校になんでもやらせようという転倒した状況になっています。

 国・文科省はなによりもまず、給特法をこそ廃止すべきです。しかし部会は、そうした明白な結論に後ろ向きな姿勢を続けています。文科省の責任は問わない、という議論では学校の働き方を良くすることなど絶対にできません。

「活用」という名の過重労働に追い立てられる事務職員

 一方事務職員をめぐって「緊急提言」では、「学校教育法等が一部改正され、事務職員の職務規定が見直された趣旨を踏まえ、副校長・教頭、教員と事務職員との間での業務の連携や分担の在り方を見直す等、事務職員を活用すること」が謳われています。要は副校長・教頭・教員の業務を事務職員に押し付けようという、たいへんわかりやすい事務職員への労働強化です。粗雑な認識に基づき中身二の次で学教法改正をしておいて、それを理由に事務職員への際限なき労働強化を進めようという意図が見え見え。絶対に許せません。

 部会には、元愛知県学校事務職員で文科省出向という華々しい経歴を持つ風岡治氏、学校事務への理解者と一部でもてはやされる一方で「業務改善アドバイザー」として文科省の代弁者として各地を説教して回るコンサルタント・妹尾昌俊氏などが名を連ね、部会長は中教審チーム学校作業部会で主査を務めた小川正人氏が務めています。

 内容的にもメンバー的にも、まさに「チーム学校」路線を継承した一連の攻撃であり、双方を貫く批判・反対の声を上げていくことが重要です。

現場の望みを汲まない「学校における働き方改革」

 学校現場の長時間・過重労働の解消は、学校が負う業務・役割そのものの縮減という抜本的な形でなされるべきことです。部会での議論は「教員の多忙解消」が中心となっていますが、だからといって業務負担を単に学校内で、単に教員から事務職員に、付け替えるだけということになって良いはずがありません。現場の望みは、抜本的な業務縮減と教職員定数改善にこそあります。

 抜本的な学校の過重労働解消を骨抜きにし、少数職種に負担を付け替えて事足れりという姿勢の「学校における働き方改革特別部会」に、寄せうる期待はまったくありません。それどころか、「働き方改革」の推進のためとして管理職のマネジメント力向上=管理強化が語られる本末転倒っぷりです。

 そもそも学校に限らず、政府の進める「働き方改革」なるもの自体が、まったく労働者のためのものとして発想も設計もされていないということを直視する必要があります。そうした視点からも、「学校における働き方改革」なるものの動きを引き続き注視・批判していきます。

文科省来年度予算概算要求

学校事務労働者を「小役人」に変える働き方改革と「チーム学校」

相変わらずささやかな要求

 文科省の来年度教職員定数の概算要求の資料を右に掲げた。まず目に付くのは、概算要求の段階で要求額が対前年度▲60億円であることだ。「教職員定数の改善」が+3,415人、「基礎定数化に伴う当然増」+385人とあるが、その後に「教職員定数の自然減」▲3,000人とある。ここ何年か文科省は自然減をほぼ同数見積って概算要求するが、財務省の査定でだいたい▲4,000人前後に上乗せされて、実質定数減となるのを繰り返している。さらに「教職員の若返り等による給与減」も文科省の見積もり以上に減額されて、結果として予算額は前年度よりさらに減らされることになる。

基礎定数化は終わった?

 「教職員定数の改善」の中身は、「教員の働き方改革」3,200人と「複雑化・困難化する教育課題への対応」715人(再掲を含むので実質215人)で合計3,415人だ。説明の中に新たな基礎定数化の項目は無い。すなわちすべて加配による措置で、基礎定数化は要求すらされていないということだ。どうやら基礎定数化の流れは、どさくさ紛れの「共同実施」法制化と「つかさどる」への事務職員の職務規定見直しで終わったようだ。

事務職員の位置付けは「明確」になった?、が…

 もう少し詳しく見てみると、「教員の働き方改革」の中の「2.学校の運営体制の強化」に「@学校総務・財務業務の軽減のための共同学校事務体制強化(事務職員) 400人」その次に「A主幹教諭の配置充実による学校マネジメント機能強化100人」とある。「共同学校事務体制」を強化されても迷惑なだけだし、昨年まで副校長・主幹教諭や養護教諭・栄養教諭と組み合わせが脈絡もなく変わったことを“支離滅裂”と批判されて反省した訳でもなかろうが、「学校の運営体制の強化」の中に単独で位置付けられ、しかも主幹教諭より先に登場し、より多くの人数を要求されている。ちなみに昨年度組み合わされていた養護教諭・栄養教諭は、その後の「複雑化・困難化する教育課題への対応」の中の「『チーム学校』の実現に向けた学校の指導体制の基盤整備40人」とされている。こうした「破格の」扱いは「つかさどる」に職務規定が変わった効果であると有り難がる輩もいるかもしれないが、それは勘違いというものである。

 「学校の運営体制の強化」に続いて「校長、副校長・教頭等の事務関係業務の軽減による学校の運営体制の強化」とわざわざアンダーライン付きで書かれている。要するに、事務職員や主幹教諭は校長、副校長・教頭等の下請けとして一生懸命働けと言われているに過ぎない。「学校事務の新たな役割」というフレーズはこれまで何度も事あるごとに聞かされてきたが、以前はまだ学校事務職としての自主性なり主体性が有っただろうに、これほど明確に管理職の手先として位置付けられたのは初めてではないだろうか。


 基礎定数化の流れも失速し、きわめてささやかな要求でしかないが、来年度予算案決定まで、財務省の査定との攻防がある。概算要求で描いた文科省の「働き方改革」「チーム学校」への構想が、「教壇に立たないものは国庫負担しない」と言った財務省(当時は大蔵省)にどう評価されるかは注目しなければならない。

そのほか気になったこと

 今回の概算要求で、「専門スタッフ・外部人材の拡充」や「学校給食費徴収・管理業務の改善・充実」等の項目が目につく。学校の多忙化解消で教員の働き過ぎを抑制するのは良いとしても、それが非常勤による非正規職員の増加(加配による定数配置もそれをもたらす)や教員以外の少数職種の過重労働をもたらすものであってはなるまい。

全学労連 文科省 秋季要望書提出

 全学労連は別掲「学校労働者の労働条件等改善に関する秋季要望書」を文部科学省へ提出した。

 学校教育法や地教行法改定を受けて、各地で学校事務職員に関する職務規定や、共同実施に関する規定が整備される中、全学労連は現有の職員のみで「働き方改革」は有り得ないことを訴える。「教員の多忙化」は職員増のみならず、業務の見直しを含めて考えなくてはならない問題だ、日本の学校教育制度がしつけや生活指導、多様化する保護者ニーズに答えるべく、超過勤務を引き起こし、教員ひいては学校職員への労働強化になっている昨今、全学労連は、学校現場の真の訴えを文部科学省に伝えていく。

2017年10月27日

文部科学大臣 様

全国学校事務労働組合連絡会議
議 長   佐 野  均

学校労働者の労働条件等改善に関する秋季要望書

 今年3月に学校教育法が改正され、学校事務職員について「事務に従事する」から「事務をつかさどる」と改められました。しかし国会審議での答弁等を見ると、かねて学校事務職員が担ってきた業務実態に対する認識に、基本的な誤りがあるのではと疑わずにいられません。

 また、地教行法、義務標準法の改正により、「学校事務の共同実施」の法制化である「共同学校事務室」設置と「室長」配置が定められるとともに、加配事由として明文化がされました。しかしかねて私たちが指摘してきた通り、「共同」の名の下に学校事務業務をいたずらに学校外に持ち出すのはかえって非効率です。そして何より、「共同実施」は学校事務職員の人員削減合理化をもたらすものであり、その法制化は義務標準法の定める定数を崩す道を文部科学省自ら開くもので、理解に苦しみます。

 これらの法改正は、教職員加配定数の一部基礎定数化を目玉とする法整備と併せた関連法として、「日切れ扱い」で国会に提出されました。定数の改善・安定化という学校現場の切実な願いに乗じて潜り込ませたものであり、該当部分削除の修正案も提出されたように、国会においても広い合意を得たものではないことを指摘します。

 今年7月には中教審「学校における働き方改革特別部会」が始動し、8月末には緊急提言が出されました。学校現場の常態的な長時間・過重労働の問題は目下、社会的にも広く関心を集めていますが、私たちとしてもその動向を注視しています。

 ひとつ強調しておかなければならないのは、学校現場の長時間・過重労働の解消は、学校が負う業務・役割そのものの縮減という抜本的な形でなされるべきだということです。議論は「教員の多忙解消」が中心となっていますが、だからといって業務負担を単に学校内で、単に教員から学校事務職員に、付け替えるだけということになってはなりません。

 しかし、緊急提言では労働強化につながる事務職員の「活用」が謳われるなど、全体を通して「チーム学校」「業務改善」の焼き直し・推進の色合いが濃く、警戒せずにはいられません。現場の切なる願いは、抜本的な業務縮減と教職員定数改善にこそあると、強く訴えます。

 以下、私たちの疑問と要望を提示いたします。ご回答くださいますようお願い申し上げます。

1.「事務職員は事務をつかさどる」についての質問

 文科省は今年3月、「事務職員は事務に従事する」を「事務をつかさどる」と学校教育法を改正し、学校教育法施行規則の一部を改正する省令を発出しました。しかし、各自治体の学校管理規則では事務職員の職について、様々な表現があります。

 ある県では、以前から全ての市町村で主事の職務を「上司の命を受け、学校の事務をつかさどる」としています。一方である政令市は、今年4月から規則上の事務職員に関する規定を無くしてしまいました。このように、管理規則上の事務職員の職務の取り決めは様々です。

 今回の改正で、各自治体の管理規則、職務規程及び各学校での職務実態が変化することは、私たちとしてはあまり想定できないところです。ついては、以下について質問します。

@ 「つかさどる」への改正以前に、各自治体が学校管理規則等で学校事務職員の職務についてどう規定しているのかにつき、文科省はどのように把握していたか。

A 「つかさどる」への改正が、今後各自治体の管理規則や職務規程にどのような影響を及ぼすか、想定しているか。

B 学校事務職員の職務の明示や見直しに向けて、文科省は今後さらに具体的政策を発出する予定であるか。

2 学校事務職員等の定数改善に関しての要望

 文科省は学校教育法改正について、管理職が学校マネジメント機能を発揮できるようにするために、学校で唯一総務・財務等に通じる職である事務職員の職務を見直し、学校の事務を責任をもって処理し、より主体的・積極的に校務運営に参画することを目指す、としています。

 しかし、学校の業務全体を縮減することも新たな定数措置もなく、ただ学校内で管理職・教員の業務を事務職員に付け替えるというのであれば、事務職員にとっては業務負担増・労働強化策に過ぎず、容認できません。

 教員の長時間労働が話題になっていますが、事務職員の時間外労働も確実に増加しています。にもかかわらず、時間外勤務手当が「配当予算」とされているため「サービス残業」が日常的になっている自治体もあります。求められているのは、事務職員にとっても教員にとっても抜本的な改善です。

 また、「チーム学校」には全く登場してこない市区町村費学校事務職員は、学校基本調査によれば昨年度、全国の公立小中学校に3,436人が配置されています(実際は更に多いのではないと推察される)。しかし、こうした市区町村費事務職員の拡充について文科省の立場が見えてきません。参考に、特別支援教育支援員については昨年度、小中学校に46,800人が配置されています。交付税措置でこれが実現できているのであれば、市区町村費事務職員の配置拡大も可能と考えます。ついては、以下の通り要望します。

@学校事務職員の抜本的な定数改善を行うこと。

 ア:大規模学校複数配置基準を改善すること。

 イ:就学援助加配基準を改善すること。

 ウ:東京都に代表される配置基準違反、定数崩しに厳しく対処すること。

A市町村費事務職員の配置拡大に向け、具体的政策を講ずること。

3 長時間・過重労働についての要望

 学校教職員が長時間・過重労働を強いられている根源は、時間外・休日勤務手当の支払を不要とし教員を「定額働かせ放題」の立場に置く給特法にあります。際限なく増え続ける学校の業務や教育内容、求められる役割の膨大な山は、残業代を払わずにいくらでも働かせられる教員という存在にタダ乗りすることを前提としていると捉えずにはいられません。時間外勤務手当等の支払が必要ないからこそ、かえって学校になんでもやらせようという転倒した状況になっています。

 給特法体制は、個々人の心身とともに学校現場を荒廃させます。そうした体制に引きずられ、学校事務職員等の教員以外の職種にも「サービス残業」が及ぶ事例さえあります。学校の多数を占める職員の働き方は、学校全体に影響を及ぼします。ついては、以下の通り要望します。

@ 給特法を速やかに廃止すること。

以上



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