2018年1月13日

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全学労連ニュース今号の内容

 「学校における働き方改革」中間まとめ  事務職員にやってくるのは業務増大と共同学校事務室?

 ついに出てきた東京における学校事務の民間委託!  東久留米市が共同実施の学校現場の非常勤支援員の廃止→民間委託化を提言

 12.1全国から東京へ  全学労組・全学労連 全国総決起集会とデモを実施!

 義務教育国庫負担金の政令市移管の初年度  「共同学校事務体制の強化」よりも定数法に基づいた安定した定数管理が先だ

 「つかさどる」改正=「自己啓発(洗脳)セミナー」

「学校における働き方改革」中間まとめ

事務職員にやってくるのは業務増大と共同学校事務室?

中教審「働き方改革」中間まとめ出る

 中教審は12月22日、「新しい学校の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」を取りまとめた。

 これは昨年6月に中教審初中教育分科会に設置された、「学校における働き方改革特別部会」での議論を受けたもの。同部会からは8月末に「緊急提言」が出されたが、その批判はNo.399に記したとおりである。

 そこで「「学校における働き方改革特別部会」に、寄せうる期待はまったくありません」と記したが、今回の中間まとめを読むに、「やはり」といわざるを得ない。

政府「働き方改革」は「長時間労働の是正」ではない

 そもそも「働き方改革」は学校に限らず、目下政府主導のもと全社会的に進められている。電通事件などを契機とした、長時間労働に対する問題意識の高まりもその背景にはあろう。しかし、政府の掲げる「働き方改革」は「長時間労働の是正」と同義ではない。

 今度の通常国会に提出が予定されている「働き方改革」一括法案の中身を見ると、長時間労働の解消策とされる時間外労働の上限規制については、過労死ラインギリギリまで働かせても合法とのお墨付きを与える内容である上、特定業種への適用猶予まで設けられた極めて問題のあるものだ。その上、そんな上限規制にさえ抜け道を用意するものとして、残業代ゼロで連日24時間連続勤務もさせることができる、働かせ放題の「高度プロフェッショナル制度」の創設も盛り込まれている。また、同じく「みなし労働時間」の考え方により労働時間規制が及ばず、これまでも脱法的に用いられ問題になってきた裁量労働制の拡大も盛り込まれている。

 この法案ひとつ見ても、政府の掲げる「働き方改革」が長時間労働の是正どころか、労働者をさらなる殺人的な長時間・過重労働に追い立てるものにほかならないことは明らかだ。

 「学校における働き方改革」も中間まとめで、そうした政府の働き方改革の「目指す理念」との「共有」を掲げている。さらに言えば、そうした社会を「前向きに受け止め」「自立的に生き」る「子どもの資質・能力の育成」を目指すのが、「学校における働き方改革」の背景とも見ることができる。

給特法は先送り 定数への言及もなし

 中間まとめからもそうした本質が見て取れる。

 まず現状について、児童生徒に対して生徒指導等を含む総合的な指導を担う「日本型学校教育」を礼賛し、さらに新学習指導要領による小学校中学年・高学年の授業時数増、あるいは地域連携拠点化や貧困対策のプラットフォーム化などによる学校の役割の拡大も、前提にしている。家庭や地域の「学校に対する過度な期待・依存」を批判的に指摘する一方で、こうした行政の学校に対する過度な期待・依存については反省がない。これでは入口からして、抜本的な学校業務縮減には到底つながらない。

 そうした中で示される教員の負担軽減はおのずと抜本的なものにはならず、弥縫策の域を出ない。方策をめぐる各論的な分析は丁寧ではあるが、現実味や実効性には疑問符がつく内容もある上、「今できることは直ちにやる」と謳うわりに直ちに変わる要素は少ない。地域差や学校規模等の違いをどれだけ加味できているかにも、疑問がある。

 また、これらの方策について実際に必要な作業に対して、文科省がどこまで当事者性を発揮できるのかが問われる。8月の緊急提言に対しても文科省の当事者性について指摘したが、教育委員会や学校現場へ事実上丸投げでは無責任極まりない。

 その一方、まさに文科省が当事者として対応すべき課題として、給特法の問題がある。教員の長時間労働の根源は、時間外勤務手当の支払いを不要とし「定額働かせ放題」とする給特法にあると私たちは考える。同様の指摘は中教審の部会でも委員より出されたようだが、中間まとめでは結論を先送りしている。教育委員会や学校現場での取り組みを促す一方、国の責任は極めて薄い。身内に甘い内容だ。

 もうひとつ重大な問題として、「定数」に対する言及が事実上皆無であることが挙げられる。中間まとめ全42ページの中で「定数」の語はたったの2箇所しか登場せず、その2箇所にしても指摘された意見の列挙の中にあるだけだ。その一方で、サポートスタッフや補助員といった、非正規雇用が想定される要員については、配置促進が謳われている。「働き方改革」の名のもとで、さらに不安定・低賃金の雇用が増やされようとしているのだ。安上がり教育行政そのものだ。

 最後に。中間まとめでは一貫して「教員」ではなく「教師」という語を用いている。その意味するところは不明だが、いろいろ想像してみると面白い。

事務職員への業務押しつけの具体は

 「業務の役割分担・適正化」の名のもと、事務職員への業務押しつけは具体性を帯びてきた。

 中間まとめは事務職員について「主体的・積極的に、業務改善をはじめとする校務運営に参画することが必要」との考えのもと、「教師の事務負担の軽減や事務職員の学校運営への支援・参画の拡大等」を進めるべきと謳う。そうすると数々の業務増大が進められるわけで今度は事務職員の過重労働が問題になってくるのだが、それについては「共同学校事務室の活用や、庶務事務システムの導入」で対応を、としている。ご丁寧に「事務職員に過度に業務が集中することにならないよう」というおためごかしを付して。こういうのをマッチポンプと言うのではないだろうか。

 そもそも共同学校事務室や庶務事務システムが、どのように業務の軽減につながるのか説明はない。事務機能の外部化と学校運営への参画は整合しないし、庶務事務システムの導入自体が事務職員への業務増大につながっている実例もある。こうした矛盾は置き去りのままだ。

 具体的に事務職員に負わせようという業務や役割としては、未納金督促も含めた学校徴収金の徴収・管理、地域連携の連絡・調整窓口(地域連携担当教職員)、調査・統計への回答、学校行事等の準備・運営、進路指導にあたっての企業情報収集(高校)といったものが挙げられた。

 中間まとめが事務職員に提示したものは、広範囲・多量の業務増大と、それに非論理に継ぎ接ぎした共同学校事務室推進だ。

文科省「モデル案」提示へ

 中間まとめを受けて文科省は12月26日、「学校における働き方改革に関する緊急対策」を決定した。内容的には中間まとめに盛り込まれたものに沿ったもので、これに基づく具体的な動きが今後とられていくのであろう。取り組みの筆頭には、「学校や教師・事務職員等の標準職務を明確化し、各教育委員会の学校管理規則に適切に位置づけられるようモデル案を作成し、提示する」としており、これがどういったものになるか、そして現場にどう波及していくのか注視していかなければならない。



ついに出てきた東京における学校事務の民間委託!

東久留米市が共同実施の学校現場の非常勤支援員の廃止→民間委託化を提言

学校事務の民間委託を認めない!

 東久留米市の小中学校の学校サポート業務のあり方検討委員会は10月11日の会議において最終報告をまとめ、その中で共同実施の「業務委託方式」=民間委託を提言した。

 ついに東京型共同実施はその最終形態と目される「民間委託」にまで辿り着いた。これは学校現場における事務職員制度の明確な解体を意味する。「学校現場に事務職員はいらない」という最悪の構想であり、私たちは絶対に認めない!

東久留米市の提言内容は?

 東久留米市の民間委託構想の内容について見ていこう。

 報告書の「5.改善の基本的な考え方」のAには「教育指導に直接関わらない業務を委託化し、民間活力を活用してマネジメントの強化(業務の質向上と効率化)を図る。」にはある。直原教育長は元都教委勤労課長であり、まずは現業職の民間委託を提起したが、現業組合からの猛反発にあったために頓挫し、矛先を学校事務に転嫁したと言われている。迷惑な話だ。

 報告書は改善の方向性として都事務の共同実施を「業務委託方式」として位置づけ、以下のような方式を提言している。

 東久留米市は小中20校である。市内を4つのブロック(各ブロック小中5校)に分け、各ブロックに拠点校1校を置き、2人の都事務を集中配置し、都事務でなければできない業務を行う、としている。

 現在東京型共同実施のモデルとなっているのは武蔵村山市の都事務7校4名体制であるが、5校2名体制というのはこれまでにない過激な合理化体制である。

 民間委託の部分をそのまま引用する。

「都の現在の手法では、各校に都事務に代えて東京都が直接任用する非常勤職員を配置することとしており、その指揮監督は副校長が行うことしている。本市の提案においては、非常勤職員にかわり委託による民間の事務従事者を各校に配置し、副校長・教員・都事務が担当してきた業務のうち委託可能な業務を市が委託する。委託会社の事務従事者は、拠点校に配置する委託会社の管理責任者(マネージャー)の指示の下で、委託仕様書に基づき、業務を実施する。  委託の原資は、都事務の業務を代替することから、都負担とする。」

学校事務職員制度の解体を許さない!

 報告書では、既存の共同実施において非常勤支援についてその指揮監督は副校長が行うことから、副校長の業務負担軽減を目指す上では、課題があるとまっとうな指摘がなされている。つまり都教委は共同実施は校務改善に資するという論理に転換してきたが、私たちは副校長は余計に多忙化すると批判し、報告書は同じ批判を行っている。ところが、だから民間委託にするという。

 しかし民間委託では現場において教職員が指示することはできず、拠点校にいるマネージャーからしか指示を仰ぐことができない。これではどこが「チーム」なのか?少なくとも私たちは教職員として学校現場で教員や他の職員と協業し、苦闘してきた。幸いなことにすぐにこの構想が実現することはなさそうだが、私たちはこの危険な兆候に対して早々とノーを唱える。

(学校事務ユニオン東京)



12.1全国から東京へ

全学労組・全学労連 全国総決起集会とデモを実施!

 全学労連は、12月1日、全学労組とともに「学校版『働き方改革』をぶっとばせ!憲法改悪を目指す教育改革反対!」をキーワードに中央行動を展開した。

 午前中は各省庁、国会議員に対する要請行動に取り組み(要請趣旨は全号掲載)、午後は全学労組とともに総決起集会とデモ。「働き方改革」議論で学校現場の劣悪な労働環境が明るみになる中、全学労連の考えを中央に響かせた。

総務省
「人的配置を基本」として、新たな職員配置の混乱を危惧

 「財政審」の議論の中でも話題に上がってきた、「市区町村費事務職員」。総務省の担当者は「学級数に応じて交付税措置をしている。ただ交付税は使途制限できず、配置の義務付けなどを強く言う事は出来ない。各自治体で判断してもらうしかない。交付税措置措置しているのに配置が少ないのはなぜかと疑問には思っている。財務省からは配置がないのに算定していることは、問題ではないかとの指摘もある。」と語った。

 全学労連は、「多忙解消に人的配置は基本」だとし、「全国的に『市区町村費事務職員』の必要性はある。配置実態の把握をしてもらいたい」と、算定の維持を要請した。

 「会計年度任用職員」について、総務省は「8月にマニュアルを作成した。給与・手当・休暇につき、常勤や国非常勤との均衡原則を適用した。各県に丁寧に説明しているところだ。補助的業務をやるのが会計年度任用、臨任は常勤の代わり、そうした違いを明確にした。非正規雇用は定数ではなく会計年度単位と言うのを建前とする一方で、フルタイム勤務も可能だし、必要な期間を確保すべきで、空白期間は不要。正規と非正規とで職務や責任等について差をつけるべきと考えている。」と述べた。

 全学労連は、「現実的には繰り返し雇用が常態化しており、その雇用について不安、危惧が広がっている。」と指摘し、今後の制度運用に各自治体間や学校間での格差が生じないように要請した。

財務省
根本的な定数改善で業務改善を要請

 財務省担当者は、「少子高齢化が進む中、人を育てるいわゆる『幼少中教育の充実』は、将来の日本を考えて大変重要なことであり、関係機関、学校におかれては大変よくやっていただいてくださる。」と前置きしたうえで、「働き方改革」について、「学校の業務が増えたのであれば、まず仕事量をコントロールすることから始めるべきである。例えば、部活動による超勤、学校の安全点検担当など、改善すべき業務があるように感じる。」とし、「その上で定数の話があるべきだ。安易な定数改善では、財政がひっ迫し、さらなる赤字国債の原因になる。また教育無償化の話もあり、トータルに考えなければならない。」との考えを示した。

 全学労連は、「単に人の挿げ替えで、特定の職種の業務が減ったでは困る。根本的な定数改善が必要。財政審の『市町村費事務職員』ついても、各自治体で積極的に配置をするべき」と立場を表明した。

 「市町村費事務職員」に対してはそれほどの反応もなく、財務省から情報はあまり出る事はなかったが、学校現場での臨時的任用教員などの状況について、詳しく知りたい様子であった。

文科省
中教審「働き方改革」中間まとめ(案)に対し…

 要請書は担当の調査係に手渡した。その際、「働き方改革」中間まとめ(案)の「学校事務職員が担うべき」業務がたくさん盛り込まれたことの関して問うと、「文科省のイメージとは違う。(案)のとおりだと、伝わり方に不安がある」と語った。

 今まで、職務標準などで「こうあるべき」と括られるのではなく、学校内で旧来からある「チーム学校」で業務は振り分けられてきた。しかし、旧来以上に学校へ求めるニーズが地域、保護者から多くなっている今、文科省が根本的な業務見直しをするべきなのか、設置者である市区町村が見直すべきなのか、先が見えていないのが現状である。

都道府県教育委員会連合会
政令市移管後「中核市移管へは慎重」

 要請文に対し担当者は、給与費移管に関し、「中核市については慎重にすべきで、文科省へのそのように要請している」。また、働き方改革については「議論には注目している。まず業務を減らす、その上で『チーム学校』という形での整理が必要」との認識を示した。

 財政審の「市費事務職員配置」については“個人的見解”と断った上で「文科省の加配要求を削るために出した議論か。市町村もやるべき事をやれと言う事だろう。地財単価と交付税単価との乖離があり、それも市町村費事務を置かない理由になっているのかもしれない。まずは国庫負担で」と語った。

「働き方改革」を教職員全体の課題として深化させた集会・デモ

 午後2時30分からは、参議院議員会館内にて総決起集会が開催された。

 はじめに全学労組・吉田代表の挨拶があり、続いて全学労連・佐野議長から挨拶があった。今夏の集会が学校労働者である全学労組と一部共催出来たことが紹介され、今集会と合わせ、まだ課題は多いが、我々の力で世間に訴えていく取り組みを今後も続けていきたいとの決意が表明された。

 開会行事に続き、全学労組・全学労連から闘争報告を行った。横校労から「霧が丘中事件の公開口頭審理結集」の依頼、がくろう神奈川から「Sさんの解雇撤回裁判、不当判決」、兵庫自教労から「神戸市の学校事務職員のブロック・グループ制導入阻止の闘い」、ユニオン東京から「東京型共同実施を食い止める闘い」、大阪教育合同から「長時間勤務との闘い」がそれぞれ報告された。また、埼玉から特別報告として「沖縄、辺野古の現地状況」が報告された。


 この後、集会宣言採択、団結ガンバローと続き、デモ行進へ。


 デモは日比谷公園霞門を出発し、財務省前、文科省前そして人通りの多い銀座外堀通りを巡るコースで学校現場が抱える問題を市民に訴えた。途中、経産省前では同じく反原発を訴える市民と共にシュプレヒコールを挙げ、東電本社前では原発の廃止を声高々に訴えた。反原発を唱える一般の方も飛び入り参加し、長時間にわたるデモが終了したころにはすっかり日が暮れ、2017年の中央行動は成功に終わった。



義務教育国庫負担金の政令市移管の初年度

「共同学校事務体制の強化」よりも定数法に基づいた安定した定数管理が先だ

はじめに

 学校事務職員の定数割れと臨時的任用の増加が全国的傾向として年々進行していること、そしてそれが学校事務の「共同実施」と無関係ではないこと。むしろ人員削減や不安定雇用職員の増加に積極的に利用されている例があり、今後それが広がっていく危険すらあるということは、これまで何度も指摘してきた。

 文科省は「学校における働き方改革」の検討を進め、教員の負担軽減のために学校運営体制の強化を図り、「共同学校事務体制」を強化するという。昨年末に閣議決定された来年度予算案では、事務職員40人の追加加配が計上されている。こうした動きを「学校事務職員への期待」とか「新たな役割」とか歓迎する向きもあるようだが、昨年度と今年度の予算上はそれぞれ50人ずつの追加加配でありそれよりも減っていることを考えると、自称「期待」や「新たな役割」は、それほど予算には反映されていないようだ。(来年度予算については次号で改めて述べる予定)

 別紙の表やグラフを参照していただきたい。毎年文科省から入手した資料を基に独自に作成しているもので、すでに何度か紹介しているので記憶にあるかもしれない。資料のある2006年度と2017年度の比較を基本にしてあるが、今年度は政令市へ義務教育費国庫負担金が移管され、教職員定数管理を都道府県と並んで各政令市もやることになった初年度であるので、地域的な特徴を見るために各政令市を属する道府県と並べて表示し、さらにグラフでは移管前との比較のために政令市のある道府県は2016年度の状況も示してある。

※ 別紙の表やグラフ

@ 校長教諭等と事務職員の定数充足率比較について

 定数ライン100%に対して実際の教職員配置数が、教員はラインを上回り事務は下回るという傾向、それも2006年度から見ると全国的に甚だしさを増している状況は変わらない。総額裁量制により職種別定数枠が無くされたことで、事務職員分が教員分に転用されている結果であるが、職務規定が「つかさどる」とされても「共同学校事務室」が法制化されても、この傾向に歯止めがかかる様子は見られない。

 今年度注目すべき点は、東京都の事務職員の定数充足率(今年度82.9%)の低さは相変わらずであるが、広島市(77.0%)や福岡市(81.9%)のように政令市に東京都よりも低い率を示すところがあることだ。その逆に浜松市(106.0%)のように高い率のところもあるので、これが自治体としての傾向を示すのか、移管初年の混乱によるものかは、今後の変化を見極める必要がある。

 ただし、政令市はその他の市区町村と違って、学校設置者と給与負担者が各市長に一本化しており、教職員の任命権も市教委にある。このため特に事務部門では、制度的に行政合理化への歯止めがきかない危険性を持っている。東京都のような定数法無視の「共同実施」や事務職員配置が、文科省の言うように「直ちに違法とは言えない」のならば、政令市においては東京都よりも容易に学校事務職員を削減できるということを忘れてはならない。

 政令市だけの問題ではなく、たとえば沖縄県が2006年度の99.0%から11年後には83.3%まで下がっていることだ。沖縄県では、給料の6%相当分が国庫負担されているはずの時間外勤務手当も削減され、他で使われているという。

 定数充足率比較の表とグラフからは、事務職員に対する定数法や義務教育費国庫負担制度の空洞化=人員削減が進んでいる実態を読み取るべきである。

A 実数に対する本採用と臨任構成について

 実際の教職員配置数の中で臨時的任用者数(産休・育休・休職の代員は含まず、フルタイムの期限付職員数と短時間勤務の定数換算数を合算した数)は、教員も事務職員も臨任の増加傾向にあることには違いない。その要因の一つは、学級数や児童生徒数の客観的な数字に基づく基礎定数の改善ではなく、加配方式の定数「改善」がごく当たり前になったことにある。加配定数は加配理由が無くなれば引き上げられるものであるため、本採用者を配置しづらく必然的に臨任が増加する。言うまでもないが、臨時的任用者は給与面でも身分(雇用)保障の面でも本採用者よりもはるかに条件が悪い。

 しかしそれより注目すべきは増加のペースで、地域的な差異はあるが、2006年度の臨任率は教員と事務でさほどの差は無かったが、2017年度にはずいぶん差がついている。今年度事務職員の臨任率が20%以上の高い順で、熊本市(33.1%)、宮崎県(31.5%)、京都市(28.9%)、岩手県(28.6%)、相模原市(28.6%)、奈良県(27.3%)、熊本県(27.0%)、京都府(26.7%)、神奈川県(25.3%)、三重県(24.8%)、さいたま市(24.6%)、富山県(24.3%)てあるが、教員は臨任率が一番高い福岡県ですら20.3%である。先述したように、政令市に関しての判断は今後の変化を見極める必要があるとしても、やはり事務職員の臨任の増加が著しいということは否定できないだろう。このことは加配だからでは説明がつかない。学校事務職員への低賃金化・不安定雇用化の流れをそこに見るべきだろう。

まとめ

 以上具体的な数字に基づいて学校事務職員の定数と雇用の実態を見てきた。一部に喧伝されている「共同実施を推進すれば加配がついて定数が増える」とか「学校における働き方改革で学校事務職員への期待は高まっている」などという議論は、加配の累積の数字しか見ようとしないか、文科省官僚の言質を鵜呑みにしたまま現実に進行している事態から目をそらす妄想の類と断言していいだろう。文科省が「学校における働き方改革」で学校事務職員の「活用」に期待するのは勝手だが、数字で明らかなのは「活用」どころか削減・合理化の傾向だけである。

 「働き方改革」が言われるずっと前から、学校事務職員の定数充足率の低下や臨時的任用職員比率の増加は始まっており、それに歯止めをかける方策をとることもなく定数法や義務教育費国庫負担制度の空洞化が進んだ。学校の多忙化解消を言いながら、期待の学校事務職員を「共同学校事務室」で学校現場から引き剥がそうとする。事務職員削減の手法としての「共同実施」を推進する動きに対しても、「直ちに違法とは言えない」と黙認してそれが拡散する可能性に無策を貫く。文科省は本気で学校事務職員制度を守ろうとしているのではなく、事務職員分の国庫負担金を省益として守ろうとしているのではないかと勘繰りたくもなる。



「つかさどる」改正=「自己啓発(洗脳)セミナー」

 4月、文科省は事務職員の職務内容を改正し、「事務に従事する」から「事務をつかさどる」に変えた。その理由を「学校組織における唯一の総務・財務等に通じる専門職である事務職員がその専門性を生かして、より主体的・積極的に組む運営に参画することをめざすものです。」(佐賀事務研 文科省行政説明)

 「マネジメントの強化が必要。期待されたのが事務職員。事務職員の役割がもっと評価できないかということで法改正された。」「事務職員が実務系事務職員から企画系事務職員となるために法改正された。」「自分たちは何のために雇われたのだろう、何のためにいるのかと考えながら勤めてきた。」「皆さんはどうしますか、これから2〜3年が定着するかどうか大事な時期になる。」(つくば研修 H講師)

 つまり「法改正したから、事務職員自らが自らの責任で、仕事の仕方を変えろ。」と責めている。「悪いのはこれまでのあなた方。自己の能力・資質を伸ばさなければなりません。」と言い張っている。

 労働者の業務を変えるならば、待遇・労働条件・執務環境など体制制度の見直しが当然のことだが、それらを全く抜きに、全て事務職員に押しつけている。

 まるで「自己啓発(洗脳)セミナー」だ。

 事務職員「加配」の実態

 文科省は今回の法改正時に、教職員加配事由に「共同学校事務室」を明示したとしている。しかし、それは事務職員加配の実態を無視したものである。

 2017年度の事務職員加配数、割合を文科省の資料を基に作成した。

 東京周辺を眺めてみると・・・

2017年度  加配教職員の割合 東京周辺比較

@ 2017年度各県教職員定数に占める加配教職員の割合


定数合計加配合計加配/全体
千葉県24,8181,9367.80%
東京都46,0893,3197.20%
神奈川県14,3981,1237.80%
さいたま市5,2763506.60%
千葉市4,2722977.00%
川崎市5,7383456.00%
横浜市14,8239456.40%
相模原市3,0862106.80%

A 2017年度 教職員加配合計数に占める事務職員加配数の割合


合計事務強化研修事務事務合計事務/全体
埼玉県2,201231241.10%
千葉県1,936340341.80%
東京都3,3190000.00%
神奈川県1,123170171.50%
さいたま市3500000.00%
千葉市2977072.40%
川崎市3457072.00%
横浜市945160161.70%
相模原市2100000.00%


 教職員全体ではおおむね6〜7%の加配職員があるが、事務職員の割合は全く少なく、最大でも千葉市の2.4%。東京都、さいたま市、相模原市に至ってはゼロである。このような実情でいかに文科省が「共同実施加配」を叫んでも伝わらない。

 これも文科省の政策が現実を直視していない証拠である。



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