2018年6月2日

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全学労連ニュース今号の内容

 副校長補佐の配置で副校長はラクになるのか?  東京都大田区では小中87校全校に副校長補佐(非常勤)を配置!

 文科省、地方団体へ学校事務課題の要請書を提出

 晴れやかに次の一歩を!?  横浜新人学校事務職員解雇撤回闘争報告集会

副校長補佐の配置で副校長はラクになるのか?

東京都大田区では小中87校全校に副校長補佐(非常勤)を配置!

破綻する経営支援部

 東京都では校務改善として「経営支援部」という校務分掌組織を設置して副校長の仕事を組織的に主幹教諭や事務職員に割り振ろうという動きが進められていることは本紙でも報告してきた。これによって出勤簿整理などの副校長業務が事務職員に振られたケースも報告されている。

 経営支援部のメンバー(副校長、主幹教諭、主任教諭、事務職員、用務職員など)の中でも事務職員は必須だったが、共同実施を導入すると学校現場には非常勤の共同実施支援員しかいないため、私たちはその施策上の矛盾を指摘してきた。確かに数字だけを見れば、東京都の小中学校約1900校のうち開始年度の2012年は232校設置だったが、6年後の2018年度はなんと836校と4倍近くに増えている。しかし、まさに「名ばかり経営支援部」の割合はかなり多く、導入に対するプレゼントである講師時数3時間という人参に釣られて導入はしたが、当該事務職員でさえ自校の経営支援部の存在を認識していないという声を多数聞いている。絵に描いた餅でしかないのが経営支援部なのだ。

 この施策とは矛盾する直接支援人材配置策が東京では昨年度から唐突に開始された。それが学校マネジメント強化モデル事業である。

副校長を直接サポートする非常勤配置

 昨年度都教委は全都で12校について副校長を直接サポートする非常勤職員をモデル事業として配置する「学校マネジメント強化モデル事業」を開始した。そして今年度は10倍の120校分を配置した。2年間のモデル事業だが、成果が上がれば拡張していくという。

 副校長支援策としては2種類あり、経営支援部設置校は「副校長補佐」で週4日、1日5時間勤務で月額125,600円。経営支援部非設置校は「経営支援補佐」で週4日、1日7時間45分で月額194,400円と報酬額も異なる。そして教員事務の直接支援としては文科省の事業であるSSWもその中に位置付けている。

 絵に描いた餅でしかない経営支援部よりも直接支援する人材配置の方がマシだという考え方が私たちの中になかったと言えばウソになるだろう。しかし、実際には非常勤であることによって決して効果が上がっているとは言い難い実例が出てきている。直接人材支援といっても非正規職員の多用が横行しているが、これでは本質的問題解決につながらないことを肝に銘じるべきだ。学校職員の多忙化解消は正規職員の定数改善をもってしてしか抜本的解決にならないという大原則が置き去りにされているような気がする。

副校長補佐を全校配置した大田区

 大田区は今年4月から小中学校全校に副校長補佐を配置した。大田区という自治体は良くも悪しくも独自政策を先行して行うことが少なく、横並び主義であるために改悪政策の実行ペースも他に比して遅いのが利点だと思っている。

 ところが、今回は違った。副校長補佐については3月に行った区内4組合の合同申し入れに対して指導課長は「副校長の過労死を防ぐため、緊急かつ重要な施策だった」とその正当性を声高に主張した。都教委の事業があったから始めたわけではなく、区独自政策・独自財源として今年度から実施するつもりであったことを明らかにした。結果的には都教委の予算化した120校分のうち40校について大田区が採用されたのでその割合は大きい。それでも残りの47校には区費で配置したことになる。

 一挙に87人もの副校長補佐の人材を確保することの困難性を私たちは指摘した。効果的な人材確保ができるとは思えないと。しかも5時間という副校長の働く時間のごく一部しかサポートできないことでどれだけのサポートメリットが発生するというのか。

学校事務補助職員から多くの方が副校長補佐へ

 大田区の事務室は都費事務職員と区費非常勤事務補助員の2人体制となっている。区費非常勤事務補助員は月14〜15日勤務で年収は扶養範囲内の100万円というまさに官製ワーキングプアと言える労働者だ。私たちは長年その待遇改善を訴えてきたが、残念ながらほとんど改善されてきていない。

 突然出てきた副校長補佐は1日5時間月16日勤務で年収150万円と事務補助員に比べたらかなり報酬が高く設定されている。この労働条件の違いによって生じた現象は、事務補助員から副校長補佐への転身であった。私たちは事務職員会による研修設定も含めて事務補助員の方々を長年にわたって育ててきた。その方々を副校長補佐にかすめ取るような今回の手法については断じて許しがたい。区教委への申し入れの最大の眼目もこの点にあった。しかし、少なくとも事務補助員の報酬を副校長補佐と同等もしくはそれ以上とするという私たちの要求に対して指導課長がほとんど賛意を示さなかったことに対する怒りは抑え難いものだった。

 副校長補佐は全校で4月から配置されたが、事務補助員が副校長補佐に転身してその穴が埋まっていない学校が現在でも存在している。

 副校長補佐も基本的には学校現場が探して雇用することとなったが、探せなかった場合は区教委が公募した方の中から配置がなされた。私の勤務校もその一つだったが、採用された方は管理職OBの60代後半の方だった。これでは気軽に仕事を頼めるわけがない。こんな配置で成果が上がるわけもない。

 このような漫画的な「働き方改革」が横行している現実と私たちはいつまで対峙していかねばならないのだろうか。

宮崎俊郎(学校事務ユニオン東京)



文科省、地方団体へ学校事務課題の要請書を提出

 全学労連は別添「学校労働者の労働条件等改善に関する春季要望書」を提出した。また、併せて2018年度方針大綱に基づく「申し入れ書」も提出した。

 今年の大きな項目は、拡大している臨時的任用や非常勤講師の問題処遇に関し、公務員法改正による「会計年度職員」制度が導入されていく中、各任命権者まちまちの制度とならぬよう、学校現場は文部科学省が調査し、一定水準を守るよう労働条件改善を求める。また、政令市費移管後の学校事務職員制度に関して、一般行政職との任用一本化や定数削減、給与削減など、制度崩壊につながらぬように文科省が指導していくことを求める。「学校における働き方改革」に関しては、文科省が考えている現状を確認する。「共同実施」については、特に東京での学校現場の事務職員非常勤化や、民間委託配置など現状を訴え、拡大・推進反対を訴える。

 上記4点を重点項目として挙げ、7月に交渉を行なう。


 また、地方団体(知事会、都道府県議長会、市長会、市議会議長会、町村会、町村議長会、指定都市市長会、中核市市長会)に向けても8項目からなる要請書を提出した。

 現在進行している「学校における働き方改革」の方向性に対して懸念を表明したうえで、事務職員への業務移行・負担増に反対し、定数改善や学校業務縮減等の抜本的・具体的施策を求めている。また、「チーム学校」や「共同学校事務室」の本質にある問題性を指摘し、これへの反対を表明。他にも、全学労連として訴える教育・学校施策について要請した。

 地方団体が国への要望の検討に入る時期を見た今回の要請。今後も継続して、学校現場の状況や制度的な問題点、全学労連の考えを知らせる機会として、活用していきたいと考えている。


 全学労連は、全国の学校事務、学校労働者諸課題改善へ向け、全力で闘っていく。



晴れやかに次の一歩を!?

横浜新人学校事務職員解雇撤回闘争報告集会

 東京高裁の控訴棄却の不当判決から半年。闘いの報告集会が4月17日、横浜市開港記念会館で行われた。5年間に亙って物心両面で闘いを支えた支援の方々、粘り強く裁判をリードした3名の弁護士が参加。長い闘いを振り返り、成果を確認しつつ労働者に対する不当な仕打ちを許さない決意を新たにする場となった。

 初めに、闘いの経過と判決が見過ごした免職処分の問題点が報告された。当該Sさんへの退職強要が繰り返された時期、周辺の学校事務職員が浜教組本部に救済を要請するなど、現場には「仲間を思いやり、共に助け合う」労働組合の原点というべき精神が生きていた。それは闘いを担うこととなったがくろう神奈川、そして「Sさんの職場復帰を支える会」に引き継がれた。闘争費用はすべてカンパと非正規労働者支援基金で賄われた。法廷は毎回支援による傍聴で埋まり、定例街頭宣伝にも駆け付けていただいた。判決は学校事務職員の特異な労働環境を見ず、初めに処分ありきの市教委の作為を免罪し、のちに市教委が撤回に追い込まれた時間外勤務手当「不正受給」を記載した「処分案」による免職処分への誘導について問題にもしなかった。全くの不当判決というしかない。

 続いて弁護士の3名それぞれから発言を受ける。「保身・無責任の役人根性が蔓延している。免職処分は将来にわたって改善の見込みがない場合なのに、Sさんの将来について判決は触れていない」。「裁判を支えた運動体は強かった。新採用者複数校配置、時間外勤務手当の問題の2つは闘いの成果だ。仲間を思いやり助け合い、いざとなったら闘うという構えがなければ組合は空洞化する」。「裁判の中でSさんも鍛えられた。東大で1年生対象のゼミを担当している。その中でも労働者の権利の問題を扱っていく」。

 支援の方々からは、闘いに立ち上がったSさんへのねぎらいと感謝、政令市移管により非正規雇用事務職員の労働条件が大幅にダウンし、1年間に次々4人が辞めていった学校もある名古屋市の状況、不当処分で人事委員会提訴している横浜の教員の闘い等が語られた。

 当該Sさんは、「やるとこまでやった。何故免職なのかが解明されなかったのは心残りだが、横浜の学校事務職員に何か残せたと思う。今は契約社員だが7月から正社員になる約束で働いている。力をつけて何らかお返ししたい」と力強く語った。

 最後に小内委員長から支援に対する感謝の挨拶があり、集会は幕を閉じた。

当該Sさんの発言(抜粋)

 組合を始め県共闘や全学労連、支援をしてくださった皆様、この5年間本当にありがとうございました。敗けはしましたが自分の中では納得のいくところまでやれたと思っており、今後の人生にきっと役立てられると思います。

 私は労働組合を全く知らなくて、がくろう神奈川に入り闘いの中で労働組合というもの、ちゃんと活動し会社と向き合っている姿を学ばせてもらったのは、すごく大きいです。

 裁判で本当に悔しかったのは、敗けたということよりも最後までどうして自分が首になったのか、本質的なところが見えなかったことです。

 同期の人たちに、横浜市の学校事務の職場自体は裁判をやることで良くなったと言ってもらえたので、そういう意味では自分は何か残せたのかな、そういう事は自信につながったかな、と。

 今後仕事をしていく中でもう一度皆さんに何かお返しできるように頑張っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

(学校事務職員労働組合神奈川「連帯」No.282より)



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