2019年7月13日

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全学労連ニュース今号の内容

 5.31全学労連 文科省交渉報告  「標準的職務内容」は出すけれど、「共同実施」も進めたい(文科省)

 マイナンバーカードによる保険証利用を強制させない取り組みを!

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5.31全学労連 文科省交渉報告
「標準的職務内容」は出すけれど、「共同実施」も進めたい(文科省)

 5月31日、全学労連は過日提出した要望書に基づき、文部科学省初等中等教育局と交渉した。「学校における働き方改革」が進む中、「東京型共同実施」や「学校事務職員定数充足」が学校事務職員制度解体への危険がはらんでいることを、当該の文科省に学校現場の実情とともに伝えた。
 以下、要望重点項目と回答、質問、やり取りを交えて報告する。

要求事項回答
1.学校事務職員の標準的職務内容の例示について
 文部科学省は、学校事務職員の資質・能力の向上を目指すため、事務職員の職務範囲の明確化と効果的な役割分担、さらには共同学校事務室における業務の在り方を明確にするため、学校事務職員の標準的職務内容の例示を作成するといっている。
・ 事務職員の標準職務例示作成にあたっての現状認識と方向性を明らかにすること。
○ 中教審の行程表で昨年度中に行われることになっていたが、現在作業中で今年度中には、と考えている。事務職員の標準職務、参考例を作成するが、事務職員が学校の基幹職員であり、総務・財務のスペシャリストであることを何らかの形で反映できるようにしていきたい。
2.学校事務職員制度・定数について
 政令指定都市への給与費移管に伴い、学校事務職員の定数充足が低い自治体がみられる。文部科学省は、標準定数法はあくまで標準であって、実際の配置は各自治体が適正に行っている、というが、その結果事務職員の定数割れを起こしている現状である。
 また、「働き方改革」「教員多忙化解消」の名目で外部人材の登用が盛んに言われ、文部科学省でもその充実のために予算化されている。
・ 学校事務職員の定数を著しく欠いている自治体に対し、適正に配置するように指導すること。特に欠員にさせながら、加配を求めるような不合理をやめさせること。
○ 義務標準法により定数の標準が定められるが、実際の配置については任命権者の裁量によることになっている。充足状況が100%のところもあれば、そうでないところもある。文科省としては100%充足できるようお願いする立場で、充足していないところに対してはどうして充足できないのかを聞く等のことをしている。しかし、充足できないところに対して、指導することまではできない。要求事項の「特に」について、充足状況を加味しつつ、充足状況が悪いところは加配の抑制をしている。
・ 外部人材登用の今後の方向性、安定的な運用について、文部科学省はどのように考えているか。運用実態を示すこと。また、国庫1/3補助金の決定過程を示すこと。 ○ 外部人材の業務として、教員がやっていることや事務職員がやっていること等色々とあるが、それだけでは困難がある、正規職員だけでやりきることは難しいということで外部人材の登用を行っている。チーム学校ということで、しっかりと制度としてやっていきたい
3.「共同実施」の方向性について
 東京都で推進されている共同実施は1校1人の事務職員が確保されておらず、7校あたり4人の割合となっていたが、7校あたり3人の割合となる人員削減が行われた。このため学校現場は非常勤職員のみとなっており、文科大臣答弁や国会の付帯決議にも反するものとなっている。 さらに東久留米市においては学校現場の非常勤職員をも民間委託化する検討がなされている。ただでさえ学校現場は非正規雇用者が増え、疲弊している中で、東京都は学校事務関連の「新たな財団」を創設し、外注化を図ろうとしている。
・ 東京都が共同実施によって学校現場の事務職員配置を非常勤職員化しないよう厳しく指導すること。学校現場の事務職員を民間委託、外注化をする施策を認めないこと。
○ 現在、全国の共同学校事務室の状況を勉強している。東京のことも午前中聞いてきたところ。東京の共同学校事務室は、法制度で行っているところの共同学校事務室とは異なるものではあるが、すなわち直ちに法律違反とまでは言えない。事務職員が校務運営に参画できるように、という趣旨を持っているので。
○ 財団について、事務職員関係は来年度から、都立学校で、と聞いている。これからもしっかりと話を聞いていきたい。

 以上のような当初回答を受けたのちに次のように意見交換をした。

1(標準職務)について

全: 昨年も同じ話をしていて、「遠くない時期に」と言っていた。状況としてはどうなっているのか。

文: 現在、作業中。教員の仕事との調整もある。
 元々、ベースのないところでやっていること。「つかさどる」規定ができたことによって、すでに標準職務を設けてやっているところもある。文科省が後追いで出して、それで齟齬が生じることがあるといけないので、そういう調整をしている。

全: 全学労連としては、標準職務を推進する立場ではない。全国色々とある中で文科省が一律の標準職務を示すことは無用な混乱を起こす。

文: 国としてはモデル例を示すことしかできない。全国色々ある中で現場に混乱の無いように、ということで調整をしている。

全: 中身はできているけれど調整が必要ということか。

文: こういうことは7〜8割が調整みたいなもの。なので、中教審の行程表では昨年度にできていることになっているので、早めに、ということだ。

全: 定数について、一人で業務をしている学校と、複数で業務をしている学校とその事務量は異なる。そういうことを踏まえて標準職務を想定しているのか。それとも、事務業務はこういうものという四角張った標準を示すのか。東京都は、昔は二人配置されていた。今は一人しかいない。昔と今とでは仕事に幅がある。そういう中で文科省が標準職務を出すと、無理な業務が押し付けられていきかねない。これは非常に深刻なことだ。地域でばらつきがあるので、創意工夫でうまくやってきたところがある。それに枠をはめることはやって欲しくない。
 文科省は標準職務のモデル案を、地教行法の共同学校事務室が設置されていることを想定するのか。それともそうではなく共同学校事務室が設置されていないことを想定するのか。

文: 共同学校事務室が設置されていることを想定した標準職務を出すが、最後は地域性による。実情に応じてやっていく他はない。一律強制というものではない。それぞれの自治体での配置状況に応じて職務は割り振られるべきものだ。

2(制度・定数)について

全: 外部人材ついて3分の1補助は一昨年度くらいからかと思うが、予算化しているというのは、義教金が標準法定数の三分の一国庫負担で積算されているというような基準が同じようにあるのか。

文: 外部人材の三分の一補助は平成25年度から行っている。基準について、一般論ではあるが、負担割合はこうあるべしというのはない。予算折衝の中で出てくる。例えば、部活指導者であれば、国三分の一、都道府県三分の一、市町村三分の一となっているが、これは市町村が噛むところが大きいので三分の一ずつということになっている。

全: 自治体ごとに単価や人数の積算があって全体の予算が決まってくるはずだが、それがどうなっているのか、またその予算がどう使われたのか、ということを知りたい。

文: 色々と参考にしているが、一人当たりいくら、何人分というのは積算している。具体的には文科省ホームページの「行政事業レビュー」の中の「交付決定」に入っている。で、実際にどのように配置されたのかということは確認している。

全: ホームページを見て、これではよくわからないということがあれば、改めて話をしたい。

3(東京の共同実施)について

全: 東京・狛江市の共同実施で、昨年度10校10名で行われていたのが今年度は10校5名で半減して事務が運営されるようになった。これまでは7校4人と6割だったが5割が出てきた。我々からすると人が大幅に減ってもOKということで、法改正時の「基幹職種云々」という国会決議は無視されたものとしか思えない。先ほどの回答で「法律違反ではない」とのことだったが、法の趣旨から外れているのではないか。また、財団が共同事務室の人員配置をするということも考えられている。東京では正規職員による事務処理をなくして、外部委託していくという流れさえあるようだ。こういうことに対して、文科省はどういう捉えをしているのか。

文: 昨年度は横浜市にいて今年度からこの席についた。東京都のことはそれほど詳しくはなく、いま勉強しているところ。人員が大きく減ったということだが、事務量が変わることなく人員が減ったのか、様々な要因が考えられる。また財団のことも「これから」という部分もあるので、実態を調べて注視していきたい。

全: 都教委だけでなく、現場の実情も見て欲しい。都教委は実施主体なのでいいことしか言わない。青梅とかは「(共同実施は)できない」と言っているし、そういう市教委の事情も聞いて欲しい。

全: 東京都では要準加配を一切やっていない。総額裁量性によって事務職員定数が教員に回っているのだが、これは文科省の基準を満たさないもの。共同事務室も同じ構図の中になる。調査もこういう実情を踏まえてのものとして行われるべきだ。


 今回、文科省担当者が変わったせいか、こちら具体的な言い分に注意深く耳を傾けている様子であった。これから担当者は各方面からの要望に応えていく立場になるのだが、私たち全学労連の意見も聞き入れるよう促した。

 現在各地で行われている学校事務職員制度の解体は様々な形で押し寄せてくる。全学労連はこれからも、学校事務労働への危険な側面へ注視し、臨時的任用者の労働環境改善に向けても、文科省や関係省庁へ要望し闘っていく。



マイナンバーカードによる保険証利用を強制させない取り組みを!

 今国会ではマイナンバー制度を適用拡大する法案があいついで3つも成立してしまった。
 マイナンバーカードを保険証として利用できるようにする健康保険法等改「正」案、戸籍にマイナンバー付けして情報連携可能とする戸籍法改「正」案、最後は行政手続をデジタルオンラインで行うことを強制させるデジタルファースト法案である。
 この3法案は衆参委員会において1〜2回の審議で可決成立してしまった。マスコミも取り上げず内容についてほとんど知らされていないので次回本紙において取り上げたい。
 今回はこの法律成立に伴って政府が打ち出したマイナンバーカード最後の普及策を紹介し、特に公立学校共済組合各支部への申し入れを強く要請したい。

1.なぜいまマイナンバーカードの普及なのか?

 6月4日に政府のIT総合戦略本部第4回デジタルガバメント閣僚会議で「2022年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有することを想定する」方針が決定された。
 ご存知のようにマイナンバーカードの取得はあくまで任意の申請による。昨年末現在約1500万枚、交付率12%と住基カードとさして変わらない低迷ぶりだ。もともと政府の描いたロードマップでは2019年末には8,700万枚という数字が踊っていた。
 このままいったら住基カードの二の舞いになると恐怖した推進派は「最後の普及策」に打って出たと私はとらえている。ということは裏返せば、この状況が続いたらマイナンバーカードは廃止できるということだ。私たちにとってもここが正念場となる。

2.具体的普及策は?

 6月4日に打ち出された具体的な普及策は以下の3点である。

@ 消費税対策として打ち出している自治体ポイントの活用
A マイナンバーカードの健康保険証利用
B マイナンバーカードの円滑な取得・更新の推進体制づくり
 @はかなり手ごわい。どのくらいのポイント還元がなされるかは不明だが、一説には20%という数字も飛び交っているようだ。ただし消費税10%対策がどうなるのかわからないため、現時点では何とも言えない。
 Bの推進体制づくりでは自治体職員が学校の行事に出向いてマイナンバーカード特設会場を設定して申請を受け付けるなどが例示されている。今どきどこにそんな人員が存在するのだろうか。運動会を見に来ている保護者がこぞってマイナンバーカード申請を行うとも思えないが。
 そうするとAの保険証利用が特効薬と目されているのだろう。先ほどの政府が掲げた8,700万枚という数字は保険証交付枚数なのだから。

3.マイナンバーカードの保険証利用の問題点

 政府の宣伝する保険証利用のメリットは保険者が変わっても中のデータを書き換えるだけで保険証を取り換える必要がないため、タイムラグが発生しないという点。しかしそんなに保険者がころころ切り替わる人も多くないと思うのだが。
 逆に小さな医療機関にとってはマイナンバーカードをオンラインで資格確認しなければならない手間と環境設定が重荷となる。患者にとっても月に1回でよかった保険証の確認が受診のたびにマイナンバーカードを提示確認されることとなる。特に高齢者が紛失する危険性が格段に高まることに対して頭が痛いとある医療機関関係者はこぼしていた。
 そして隠された問題は、単に保険証利用だけではなく、マイナンバーによる私たちが生まれてから死ぬまでの医療情報をデータベース化することにある。今のところマイナンバーを直接使って串刺しにするということにはならないが、その方向性が今回示されたということだ。医療情報という最もセンシティブな情報の扱い方についてあまりにぞんざいではないか。

4.マイナンバーカードの保険証利用強制に反対しよう!

 マイナンバーカードを保険証として利用することが法成立によって可能となったが、強調しておきたいのは、従来の保険証を利用し続けることも可能であることである。
 ところが政府はほぼ強制の状況を創出したいので、従来の保険証を「有料化」する方向性を保険者に示したりしていると聞く。こうした施策が出てくると誘導策を通じた「半強制」とも呼べる状況が出来する危険性も大いにあるのだ。
 総務省は6月28日付で「地方公務員等のマイナンバーカードの一斉取得の推進について」という文書を各地方公務員共済組合に対して流した。この文書の最初の項目である「マイナンバーカードの取得勧奨」には「個人番号カード交付申請書」に各組合員の氏名・住所・生年月日・性別を印字した上で、被扶養者分も併せて8月下旬から9月下旬を目途に各組合員に配布しろ、というとんでもない「勧奨策」が記されている。
 さらに総務省は6月28日付「マイナンバーカードの申請・取得状況に把握について」という文書で6月30日時点の組合員の取得数と10月31日時点の申請・取得数を照会すると各地方公共団体あてに恫喝をかけている(なぜかこの照会からは教育と警察は外されているが)。
 医療機関の職能団体である東京保険医協会のある方は、「なんで保険者がマイナンバーカード普及にお先棒を担がなければならないのか」と憤慨していた。
 私たち全学労連は8月上旬に公立学校共済組合本部にマイナンバーカードの保険証利用強制反対の申し入れを行う予定である。
 本紙読者にも地元共済組合支部に対してマイナンバーカード利用を強制するような手法を決して採らないよう是非とも申し入れをしていただきたい。
 マイナンバーカードには今後様々な自己情報が蓄積されていき、そんなカードを盗難にあったりや紛失したら機微情報漏洩の危険性は計り知れない。
 読者の皆さん、従来の共済組合員証を使い続けてほしい、そして周りの仲間にもそのことを伝えてほしい。

宮崎俊郎(全学労連 事務局)



全学労連・全学労組 学校労働者全国集会 にご参加を!

 私たちは今年の全交流を8月3日(土)〜4日(日)の日程で東京・池尻大橋にある大橋会館にて開催する。今年も全学労組と共同開催でトータルな視点から学校で生起している様々な事象をとらえて、闘う視座を徹底的に討論してきたい。
 文科省を中心として推進されている働き方改革は私たちにとって焦眉の課題だ。教員と事務職員では視点がかなり異なるが、互いの視点をぶつけあいながら、現在の学校において何について最も重点的に取り組むべきなのかを鮮明にしていきたい。

1.共同全体集会(シンポジウム)  8月3日(土)13:00〜17:00

 今回の共同討論のテーマは2つ。働き方改革と会計年度任用職員制度だ。

@ 働き方改革をめぐって

 今年2月の中教審答申においては、教員の超過勤務規制や学期中と休業中における変形労働時間制の導入など議論の中心は教員の多忙化解消の具体策になっている。
 教員の働き過ぎ問題はもはや文科省も看過できず、具体的な解決策に踏み込まざるをえないほど事態は深刻だ。ところがその具体策は弥縫策でしかなく、給特法体制そのものの抜本的変革は隠蔽されたままだ。しかし、給特法体制を支えている教員聖職論・専門職論はいまだに根強い。私たちは給特法・人確法体制打破をスローガンとして叫び続けるだけでは体制変革につながらなかったことを直視し、何を論点として提起すべきなのかを議論したい。
 昨年度もこのテーマで討論したが、そこではタイムカードによる超勤実態把握という点からの賛成論と管理強化につながるという反対論が交錯した。今年は、教員の抱えている教授労働以外の労働の事務職員などへの他職種・外部人材への転嫁の持っている問題点を検討し、それが一挙に教員以外のあらゆる分野の「業務委託=民営化」につながってきつつある実態にいかに向き合うかを議論してみたい。
 あいかわらず学校という場所は「不審者」を排除するために監視カメラや電子錠を導入して「監視する」手間を新たに創出している。そんな不要な業務をこそ減らしていくべきではないのか。学警連携と称して日常的な警察との情報交換は何の疑問もなく行われている。地域との連携と称して様々な連絡会に教員が時間外に動員されている。夜のお祭りの見回りにも教員全員が動員されている。これらの地域との「連携」は今後は教員だけでなく事務職員にもコーディネーター役が期待されている。
 こうした「学校風景」に対して私たちは何を対置していけるのだろうか、議論していきたい。

A 会計年度任用職員制度について

 いよいよ会計年度任用職員制度が来年度からスタートする。公務労働における非正規労働者の状況があまりに劣悪であることから近年「官製ワーキングプア問題」という言葉が出現した。その解決策として登場したのが会計年度任用職員制度だった。現在その労働形態が多様化した公務非正規労働者を基本的に@技能や資格の高い「特別職非常勤」職員A正規職員の欠員に対応する臨時的任用職員B会計年度任用職員 の3つに厳密に分類し、これまでの大多数の非常勤職員を新たな会計年度任用職員に転換させようというものだ。6月以上の会計年度任用職員にはボーナスも支給するので一見すると待遇改善が行われたかに見えるのだが、実はそう簡単ではない。総務省は会計年度ごとの任用を盾にとって「公募」を原則として「更新」や「継続」という捉え方を否定している。ここが大きな攻防であり、各自治体では現在労使交渉等が行われ、かなり解釈にばらつきも出てきている。学校現場における様々な非正規労働者がいかに処遇されるのか、これまで働き続けてきた方々が安心して働き続けることができるのか、劣悪な労働条件は改善されるのか。未知数はいまだ多い。
 学校現場における非正規労働の具体的変容を問題提起していただき、何を確保していかなければならないのか、明確にできるよう議論を深めたい。

2.独自集会  8月4日(日)8:00〜11:40

 前日の2つテーマに関する共同討論を踏まえて、参加者の地域の状況について報告していただき、今後の闘いの方向性を模索していきたい。特に共同実施と会計年度任用職員問題についての各地域での状況の突き合せを行う予定である。全学労組は3つの分科会に分かれて討論を行う。

3.全体集約  8月4日(日)11:40〜12:00

 2日間を通して得られた討論の成果を確認し、今後の運動展開につなげられるよう全体的な視点からの集約を最後に行って解散となる。





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