2023年2月25日

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全学労連ニュース今号の内容

 しんどいのは教員だけではない!  事務職員が仕事を引き受けるのではなく学校業務全体の負担軽減を目指す労働組合運動を

 職員配置実態から見える学校事務職員制度の危機 前編

 全学労連、公立学校共済組合本部に 現行保険証の発行継続を申し入れ!

 臨任学校事務職員の無期雇用転換を求め議会に陳情  当事者の実態と願いを広め、社会的要請として無期雇用転換の実現を

しんどいのは教員だけではない!

事務職員が仕事を引き受けるのではなく学校業務全体の負担軽減を目指す労働組合運動を

教員の精神疾患休職 過去最多

 学校現場の労働環境の悪化は、教職員の身体や生活ばかりではなく心をもむしばんでいる。
 昨年十二月、文科省は「令和三年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」を公表。調査結果概要の中で、教員の精神疾患による病気休職者数は五八九七人と前年度から六九四人増加し、過去最多にのぼったとした。報道各社もこの結果を大きく報じ、朝日新聞は翌一月に「教員の精神疾患 実質的な働き方改革を」とする社説も掲載するなど、反響を呼んだ。
 現に学校現場で働いている私たちからしても、教員のそうした状況はもはや身近なものではないだろうか。
 過重労働や長時間労働が精神疾患につながることは論をまたない。精神疾患による病気休職者の増加、そして休職を飛び越して退職に至る教員もいる中、そうした状況を生み出す要因となっている学校の労働環境の改善が、急務であることは疑いない。

教員より高い事務職員の精神疾患休職率

 しかしながら、「教員の負担軽減」「教員が子どもと向き合う時間の確保」といった言葉のもと、教員が担ってきた業務を学校事務職員に代替させ、その負担を転嫁する動きが広がっていることは問題だ。
 全学労連は学校事務職員のより良い労働条件・労働環境を求める立場から、事務職員の業務負担増につながる考え方や政策には強く反対する。教員の負担軽減は教職員基礎定数の改善をはじめとした人員増と学校業務そのものの縮減により解決すべきであり、学校内で別の職種に転嫁して解決すべきものでは断じてない。
 そもそも、今現在でも学校事務職員の労働環境は良好なものとは到底言えない。
 先の「人事行政状況調査」によれば同年度において、精神疾患による病気休職者が全体に占める割合は、教員が〇・六四%のところ学校事務職員は〇・九五%と教員より高いポイントとなっている。事務職員のポイントが教員を上回る状況は、両職種について調査が行われた二〇一二年度以降一貫しており、しかも一四年度以降その差は拡大の一途を辿っている。一六年度以降調査が行われている、休職者に加えて一か月以上の病気休暇取得者を加えた場合の割合についても同様だ。(※ただし一九・二〇年度は事務職員分の調査は行われていない)
 これを踏まえれば、事務職員の負担軽減も教員のそれと同様に急務であり、「実質的な働き方改革」が求められるべき状況にある。

中央・地方・御用組合・研究会の結託が事務職員を潰す

 しかし事態は逆を行っている。「必ずしも教師が担う必要のない業務」の受け皿に事務職員を名指しし、「学校以外が担うべき業務」とされた学校徴収金業務さえ学校事務職員の標準職務に盛り込み、さらには「校務運営への参画」の言葉のもと教育活動以外のありとあらゆる業務を事務職員に押し付けようとする文科省。現場を顧みることなく文科省の「働き方改革」に乗っかる教育委員会。そうした文科省・教委を批判するどころか肯定的に受け止めたうえで「主体的・積極的に学校事務をつかさどる」「自分たちから率先して学校運営に参画」などとその真の意図を糊塗隠蔽し、事務職員への業務転嫁=業務負担増を事務職員の内部から推進する日教組。同様の立場から「状況の変化、そして事務職員に対する様々な期待に対し、全国の事務職員が一丸となってより良い学校づくりに貢献していきたい」などと事務職員全体を巻き込む全事研。
 こうした中央・地方・御用組合・職能団体の結託の結果が、教員より深刻な休職状況というファクトを抱える事務職員に対して、にもかかわらずさらなる負荷をかけようとする政策の進行なのだ
。  かねて指摘しているが、「学校における働き方改革」や「標準職務」通知にあたり、事務職員の職務実態は顧みられていない。そのうえで、教員に過重に乗っている負担をただ事務職員に乗せ換えようとしているだけの話だ。事務職員がそれに耐えられるかどうかは考えることもなく。

チーム学校以来の事務職員「活用」論を葬ろう

 精神疾患による病気休職者の割合における事務職員と教員の差が、一四年度以降拡大を続けていることは先述した。これは教員の割合が基本的に横這いで推移してきたのに対して、事務職員のそれは同年度以降上昇し続けてきたためである。
 一四年度といえば「チーム学校」の名のもと、教員が教育活動に専念できる環境をつくるため事務職員を「活用」する…要するに教員が担っている業務を事務職員に転嫁する方向性が打ち出された年だ。以来、表看板は「チーム学校」から「働き方改革」に架け替えられつつもその方向性はますます強められてきた。一七年の「つかさどる」学教法改正や二〇年の「標準職務」通知もこれに連なる。
 これに対抗するとともに学校現場で具体的に業務転嫁や過重負担を跳ね返すべく取り組んでいるのは、全学労連=学労運動をおいてない。日教組や全事研は一連の動きを基本的に歓迎して遇してきた。のみならず組合員・会員に、これに沿った意識改革や業務負担受け入れを指導する態度を取り続けてきた。彼ら彼女らこそ多くの学校事務職員を休職に追い込む状況を作り出した、共犯者ではないだろうか。
 今般の学校現場、そこで働くすべての教職員にとって必要なのは学校業務全体の負担軽減であって、学校事務職員の献身や犠牲ではない。「参画」とか「期待」なんて表面的な言葉に喜んでいる場合ではない。事務職員への業務転嫁、事務職員による業務引き受け、そんなことはもうやめよう!

(事務局 伊藤拓也)



職員配置実態から見える学校事務職員制度の危機

前編

☆はじめに

 全学労連は毎年情報公開請求制度を活用して、文部科学省から「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(以下、定数標準法)に基づく定数と実際に学校に配置されている実数の資料を入手して独自に分析している。
 この作業は、二〇〇〇年度からの学校事務職員の定数加配の分析から始まった。その後小泉政権の三位一体改革の中で、義務教育費国庫負担制度廃止の議論があり、定数標準法が有名無実化し、特に教員以外の少数職種の削減への危機感から、定数充足率の分析に広がった。さらに社会的に非正規雇用労働者が増大し官製ワーキングプアも問題となる中で、もともと臨時的任用者が多かった学校現場への影響を探るべく、本採用職員比率の分析が加わった。
 こうした経過を経て蓄積されたデーターは凡そ二〇年分に及んでいる。これまでも何度か公表しては来たが、今回はデーターの示す変遷を年度順にまとめたグラフを使って解説をしてみたい。
 もちろん四七都道府県と二〇政令市の全てについて述べるのは至難の業であり、紙面の余裕も無いので、いくつかのパターンを特徴的に示しているところを抜粋して紹介する。それにより全体的な傾向も示すことが出来るのではないだろうか。

@ 定数充足率の変遷

 右のグラフ@学校事務職員定数充足率の変遷を見ていただきたい。
 これは加配職員数も含んだ定数標準法で定められた職員定数に対する、毎年五月一日付で行われている学校基本調査による教職員実数の比率を定数充足率として示したものだ。この場合の実数とは、教職員総数から充て指導主事や休職者、産育休代員等を差引いた差し引き実数に、短時間再任用と短時間非常勤講師の定数換算数を加えた数だ。
 したがって最近教員不足が問題となっている産育休や休職の代替職員の不補充分はカウントしていない。この分析の前提として、代替職員が補充されないことは想定外であり、定数内で満たされるものとして考えている。それが出来なくなっている現状は、新たな事態として別途違う分析が必要というしかない。
 新たな問題についてはひとまず置いて、定数充足率についての解説を続ける。
 このグラフは定数標準法で定められた数が百%のラインとなる。これより上なら標準定数以上の人員が配置されていて、下なら標準定数を満たしていないということになる。他職種との比較のため教員の全体をまとめたデーターも示してある。その教員全国と事務全国のラインに注目すると、教員は上で事務は下にある。すなわち全国的な傾向として教員は標準以上の人員が配置され、事務の配置は標準以下であるということが言える。それぞれの総数が違うから単純に金額の比較はできないが、定数標準法に基づいて配分されている義務教育費国庫負担金は、事務職員分が教員分に流用されているであろうことは想像に難くない。
 個別の都道府県政令市について見ると、グラフの開始の二〇〇三年度では百%のライン前後五%以内にほとんどの自治体が収まっている。例外は富山県と東京都でこれが下位二自治体となる。
 ところがその後時期的な差はあるものの、いくつかの自治体の定数充足率は下降を始めている。愛媛県、大分県、沖縄県などはグラフを見ての通り急降下ともいえる下降線を示している。東京都はもともと低かったがさらに急降下し乱高下を繰り返し二〇一四年度には七六・四%の最低記録となる。二〇一八年度の広島市もこれと同率となっている。広島市は上昇傾向ではあるが、政令市費化以来ずっと定数充足率最下位を維持している。三重県は当初よりは下降してきているが百%を下回ってはいない。宮崎県は一番高い充足率だったが二〇一〇年度以降は百%以下となり急降下というほどではないが、下降傾向には違いない。東京都の次に低かった富山県は下降しながらも九〇%を下回っていない。
 グラフではわからないが、今年度の数字で全体をまとめると、百%のライン前後五%以内に属するのが四十一道府県、十八政令市(うち百%超は九府県十政令市)。九十五%未満は六都県、二政令市となる。すなわちほとんどの自治体では定数充足率の著しい低下はしていないということだ。しかし問題なのは、少数であるとはいえ特定の自治体で定数充足率の低下が慢性化しており、なぜそれが可能となってしまうのかということだ。可能ということは定数標準が守る必要のない建前上の数字に過ぎないということになる。特に事務職員など学校における少数職種にとっては影響が大きい。
 全学労連は、この定数充足率の下降は、各自治体における「学校事務の共同実施」及び二〇〇四年度から導入された義務教育費国庫負担法の「総額裁量制」との因果関係があると考えているが、その影響が必ずしも定数充足率の下降だけに表れるという訳でもないので、もう少し別な面からも解説を加える必要がある。それは次回の課題とする。

学校行革対策部・佐野均



全学労連、公立学校共済組合本部に
現行保険証の発行継続を申し入れ!

 昨年一〇月一三日に河野デジタル大臣は突然二〇二四年秋から現行保険証を廃止してマイナンバーカード保険証(以下「マイナ保険証」と略)に一本化すると記者会見で発表した。
 この突然の発表には各所から反発の声が一斉にあがった。当たり前である。マイナンバーカードの所持は番号法上任意であり、マイナ保険証しか使えなくするということは実質的にマイナンバーカードの所持を「強制」することに他ならないからだ。
 こうした矛盾した施策を実行しようとすると様々な「おかしな」事態が発生する。マイナンバーカードを「持てない」「持たない」人に対してどう対処するのかを無理矢理「編み出さなければ」ならなくなる。
 現在出てきている有力な案は、様々な理由で現行保険証を持てない期間への措置として発行している「資格確認書」を発行しようというものだ。しかし資格確認書での医療機関受診は基本的には医療費を十割負担して、あとで請求によって保険者負担分が戻ってくるというものすごく手間のかかるものである。しかも発行に伴って「手数料」を取ろうという案まで浮上したが、最新の報道では自民党の一部からですら「懲罰的」だと批判が出て、現実化はしないようだ。
 これまでの路線であればマイナ保険証と従来の保険証との併在を認めたものとなるはずだが、マイナ保険証の「強制」に舵を切った背景には、一兆八千億円という五輪経費を上回る税金を投入して二万円分のポイント付与を行ったのにカードの所持率が思うように上がらなかったということが存在している。
 そこで「任意」を認める柔軟路線から「強制」へと転じたことについては、推進する政権もかなり追い詰められていると見た方がいい。一月末ですらカード所持率は六割であり、四割は持っていないのである。政府は今年三月末には対象者全員に所持させるという計画を公表しており、その目標からすると失敗として評価されなければならない政策なのだ。
 マイナ保険証強制策は、マイナ保険証が強制されるのであれば「もうあきらめてマイナンバーカードを申請するしかない」という「あきらめムード」を蔓延させることに意味があったのだ。
 私たちはそういう「空気」を跳ねのけて「マイナ保険証の強制はできない」「マイナンバーカードを持っていなくても大丈夫」というアピールをいたるところで行っていくことで「反転攻勢」に出よう!
 私たちの健康保険に責任を持つのは保険者であり、保険資格の確認に保険証の使用を認める権限を持つべきなのは保険者だ。法律や命令で規制するのは邪道なのだ。
 全学労連は二月六日に公立学校共済組合本部に対して左記のような共済組合員証発行継続を求める要請書を送付した。
 二月一七日に公立学校共済組合から以下のような回答があった。確かに国の法律や施策に左右され、単独での判断は困難であるかもしれないが、ここで是非とも保険者としての矜持を持ってほしいものだ。私たち被保険者が立ち上がることで、国に屈せず保険証発行を継続することを支援していこう!

(全学労連事務局)

公立学校共済組合からの回答

 貴会議からの「現行共済組合員証発行継続を求める要請書」に記載の事項つきましては、現在、国において議論が進められていると承知しており、議論の結果などを踏まえて、当共済組合としても適切に対応して参ります。

(ご参考)デジタル庁「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会(第2回)」

現行共済組合員証発行継続を求める要請書
2023年2月6日付公立学校共済組合宛

 昨年10月13日に河野太郎デジタル担当大臣が記者会見で2024年秋をめどに現行保険証を廃止してマイナンバーカード保険証に一本化することを公表しました。昨年6月7日に閣議決定された「骨太方針2022」においては保険者による保険証発行の選択制の導入とオンライン資格確認の導入状況を踏まえて保険証の原則廃止を目指すとされていました。河野大臣の現行保険証廃止表明は、この閣議決定さえ反故にする看過できない内容です。
 そもそも「国民皆保険」制度下の保険診療では、被保険者は差別なく保険診療を受診することができなければなりません。その資格者証の形式をもって保険診療から排除されるような事態は制度そのものを否定することにつながりかねません。
 唐突に出てきた現行保険証の廃止は、低迷するマイナンバーカードの交付率をより政府の設定した数字に近づけるための強硬策であり、マイナンバーカードを持てない、持たない人に対する恫喝にも等しい愚策です。マイナンバーカードは番号法上、本人の申請に基づいて取得するものとなっており、義務化や強制は明らかな脱法行為です。
 現在マイナ保険証を持てない、持たない人に対する保険診療の受診の在り方を政府の検討会が検討しているようですが、金も手間もかけて新たな保険診療受診策を講ずるよりも現行保険証利用を継続すればよいのです。
 さらにマイナンバーカード保険証は医療機関等にオンライン資格確認を強制しますが、中小の医療機関では環境整備もままならず、ついに廃業をせざるをえないところも出てきていると聞いています。受診者のみならず医療機関にとっても問題の多いマイナンバーカード保険証の強制は一体誰のために実施されるのでしょうか。
 マイナンバーカード保険証は保険医療を受診する際のオンライン資格確認に利用することが目的であると言われていますが、真の狙いはそこだけにとどまりません。カルテが電子化され、病歴や投薬歴がマイナンバーに紐づけられ、人の生涯にわたる健康情報が一元的に管理される危険性が高まっていると言えるでしょう。当初三医師会でさえ医療情報をマイナンバーに紐付けることには反対していましたが、最近では政府の圧力に屈し、賛成してしまっています。
 私たちは最もセンシティブな個人情報である医療情報をマイナンバーに紐づけて管理することに反対し、マイナ保険証そのものに反対しますが、当面私たちの保険者として私たちの保険医療の権利を保障するために現行共済組合員証を継続使用できる制度の存続を強く希望します。
 なお、この要請書には2月17日(金)までに文書にて回答してください。

1.今後ともマイナンバーカード保険証の利用を強制することなく、現行の共済組合員証発行を継続すること



臨任学校事務職員の無期雇用転換を求め議会に陳情

当事者の実態と願いを広め、社会的要請として無期雇用転換の実現を

 学校事務職員労働組合神奈川川崎支部(学労川崎)は、臨時的任用職員の労働条件改善と無期雇用転換の実現に力を入れている。臨時的任用職員の組合員もおり、組合員の雇用継続・確保の問題としても非常に重要な課題だ。毎年雇用継続を求め当局と交渉を持ち、結果としてこれまで任用が続いているが、臨時的任用の立場のままでは安心して働き続けられる立場とは言えない。
 社会的に見ると、臨時的任用職員は臨時・非常勤地方公務員のうち一割程度で、かつその八五%以上が学校教職員だ。このためか、臨時的任用職員の存在やその抱える課題が、広く意識される機会は多くないと感じている。会計年度任用職員をめぐる課題では、はむねっとをはじめとする当事者・関係者の精力的な運動によって社会的な注目を集め、ついには総務省がマニュアルQ&Aの改訂をせざるを得ない状況を生み出した。私たちもこれに学び、臨時的任用職員をめぐる課題についても社会的課題に押し上げる必要を感じている。そして臨時的任用職員の職場割合を踏まえれば、学校関係組合がその先鞭をつけなければ始まらないと考える。
 このことを踏まえ、学労川崎は二月十三日、川崎市議会に「市立学校で長年にわたり正規職員同様に働き続けている『非正規学校事務職員』(臨時的任用職員)の無期雇用転換を求める陳情」を提出した。
 川崎市臨時的任用職員のうち学校教職員の割合は九割を超える。学校事務職でも二〇人、これに同じく一年任期の任期付職員も含めると職種全体の一割以上を占め、中にはもう十年以上も正規職員同様に勤続し中堅・ベテランというべき職員が何人もいる。しかしそうした人たちも、有期雇用であるがゆえに毎年この時期、雇用不安にさいなまれている。正規採用の道である採用試験は、年齢制限により受けることさえできない。
 民間職場では労働契約法により、有期雇用労働者の雇用期間が5年を超えた場合の無期雇用転換ルールがある。同法は公務員は適用除外としているが、有期雇用の広がりと固定化による雇用の不安定化が引き起こす当事者の困難と社会への影響には、民間も公務も違いはないはずだ。
 私たちは今回の陳情を通して、臨時的任用職員の雇用問題についても広く知ってもらい、無期雇用転換実現への歩みを進めたいと考えている。

(学労川崎書記長 伊藤拓也)

○陳情の要旨

 川崎市立小・中・特別支援学校で長年にわたり正規職員同様に働き続けている「非正規学校事務職員」(臨時的任用職員)について、無期雇用への転換を実現するよう陳情いたします。

○陳情の理由

 近年、公立学校における長時間労働や病気休職・退職者の増加、教員志望者の減少、「教員不足」等による教職員未充足といった問題が明らかになっています。こうした中、学校で働く「臨時的任用職員」の存在にも注目が集まっています。
 臨時的任用職員は《フルタイム勤務》で《任用(雇用)期間の定めのある》の公務員のことです。有期雇用ではありますが、「常勤職員(いわゆる「正規職員」)が行うべき業務に従事する」職員と位置づけられており、補助業務ではなく無期雇用の職員と同じ業務を担います。
 この臨時的任用職員が行政機関全体の中で飛びぬけて多く働いているのが学校です。正規職員で定数を埋めきれない「欠員」や、産休・育休・病気休職・中途退職等で正規職員が欠けた際に、補充や代替として任用されています。教員(教育職)だけではなく学校事務職においても「臨時学校事務職員」という名称で、多数が任用されています。
「学校事務職員」は教職員の一員として学校に勤務し、教職員の給与・旅費(出張経費)・人事・福利厚生に関する事務や学校運営に関する公費予算管理と物品調達事務、既存物品・施設の管理・営修繕事務をはじめとして、学校における総務・経理・庶務事務全般にあたる職員です。ほとんどの学校で1人ないし2人配置ですが、それでいて多岐にわたる業務を一手に担っています。「臨時学校事務職員」ももちろん同様で、配属によってはその学校でたったひとりの事務職員として、幅広くかつ重要な業務を担い川崎市の学校運営=公教育を支えています。
 しかし、有期雇用であるため雇用不安=生活不安が付きまといます。任用(雇用)期間が最長で1年と定められているため、当事者はとりわけ12月から3月ごろにかけて毎年、翌年度の任用があるか、なかった場合生活はどうするのか。不安にさいなまれています。
 採用試験を受験し正規採用を目指す臨時的任用職員もいますが、学校事務職の採用試験受験資格は29歳までで、これを超えた非正規学校事務職員には正規採用への道さえ開かれていないということになります。
 川崎市には、毎年度の繰り返し任用によってすでに10年以上勤続している臨時学校事務職員が何人もいます。蓄積された経験と発揮してきた業務遂行、そして長年学校運営に支えてきたその能力・意欲は、重ねてきた年数によりすでに充分に実証済みであり、本来は有期雇用の繰り返しではなく希望に応じて正規採用すべきです。  民間職場では労働契約法により、有期雇用労働者の雇用期間が5年を超えた場合に、本人が申し込めば無期雇用に転換しなければならないと定められています。同法は公務員は適用除外とされていますが、有期雇用の広がりと固定化による雇用の不安定化は、当事者の社会生活に困難を生じさせることはもちろんのこと、社会全体の雇用環境の切下げ、消費抑制による国内経済の冷え込み、結婚生活や子育てに対する経済的不安に起因する少子化の進行等も招くもので、社会的にも大きな問題です。有期雇用が広がり固定化することによる、当事者の困難と社会への影響について、民間も公務も違いはありません。
 非正規学校事務職員の多くは同時に「川崎市民」でもあります。
 私たち正規・非正規の学校事務職員は一体となって、本件の実現について陳情いたします。





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