労働者は共同してお互いの労働条件を改善する取り組みを

1 国庫負担金三分の一時代を見抜く

(1) 「ポスト国庫」状況の進行

 全学労連は数年前から、全国小中学校の学校事務職員配置状況を調査し、義務教育諸学校職員配置標準法で定めた定数と実際の配置数を調べ分析してきた。03年、04年、0 5年と進むにつれ、実配置数が定数法の数を下回る傾向が強まり、正に「ポスト国庫状況」と言うべきものの進行が明白になった。(資料)

 義務教育費国庫負担金問題は、国家財政問題(財政再建)を「補助金削減、交付税改革、税源移譲の三位一体改革」と言葉巧みに幻惑させられ、金額の大きさから補助金問題の主役になってしまったのだったが、大騒動の結果補助金率は三分の一になり、全額一般財源化派も断固堅持派も拍子抜けの究極の数字合わせに終わった。

 したがって義務教育費国庫負担制度は残り、そのため標準法を前提にした小中学校教職員配置の法的な構造は変化しないことになった。しかし、現実にはすでに学校事務職員の実配置は「ポスト国庫状況」が一層進行し、定数を下回る配置数の県が増え、大都市圏を中心に大幅な定数割れの状況が一気に進んでいるのである。

 これまで小中学校教職員の配置は、標準法をしっかり守って配置されていた。したがって毎年の標準法定数と配置実数の差は非常に少なく、プラスマイナスはあるが差は各県とも数人の範囲に収まっていた。そして「〇〇教育」で教員の加配が行われる場合は、県単独負担措置することもあった。それが、「三位一体改革の義教金問題」が起こると、学校事務職員の配置実数が標準法定数を下回るようになったのである。多くの県では標準法に近い数の配置ではあるが、プラスは少なくなり大方マイナスになる傾向になり、東京の50 0人マイナスなど大都市圏を中心に定数を大幅に下回る配置になってきている。

 この傾向は「義教金総額裁量制」の本格運用の前から起こっており、今年度が総額裁量制の実質的運用初年であって、また国庫負担金補助率三分の一とあいまって、これらが学校事務職員の配置に及ぼす影響はどのようなものになるのかが分かるのはこれからなのである。

 つまり、「三位一体改革義教金問題」は問題がはじまると同時に、学校事務職員の定数削減が起きており、義教金が三分の一に決着しても決して配置数削減の歯止めにならず、まさに事務職員大幅削減はこれから始ることを見抜かねばならない。

(2) 業務量増大か定数削減か

 文科省は今年度の「教職員配置に関する調査研究委託事業」で「事務の共同実施による職員配置の実践的調査研究事業」を実施することにした。その内容は、「これまで教員の事務仕事といわれる業務を事務職員が担うことにより、教員が教授活動に専念でき、教育力の向上が図れる学校モデルの創造」としてある。そして新たな学校事務の業務内容として例示された仕事の中身は見事に「教員の事務仕事」を網羅してある。

 7月10日に行われた全学労連との交渉に出席した担当の文科省定数企画係長は「事務職員はあまり仕事をしていないと回りから思われています。今後は仕事を奪い取って欲しいですし、例示した内容が現在の配置数でこなしきれない業務量だったら、共同実施の拡大にはずみが付くでしょう。」と発言し、反対を表明したわたしたちに、廊下に移動しても「学校事務職員の定数確保のために必要なこと」と執拗に今回の提案を言い募っていた。文科省キャリア官僚もかつて「片山知事が、学校事務職員は仕事が少ないから、数を減らし、教員を増やすべきだと発言している。だから事務職員の業務を拡大する必要がある。」と言っていた。また、定数割れを起こしている学校事務職員配置状況に対して、わたしたちが文科省の責任を追及すると、「定数については、各県個別の対応はしない。」と何もしないと言い放った。

 これらの文科省官僚の発言は、今後進行する定数割れ学校事務職員配置への責任を回避するためのものであり、さらには義教金三分の一決着と公務員削減圧力が高まる中で、学校事務職員数の減少を黙認する姿勢をあらわにしたものであろう。

(3) 月給上限30万円

 昨年の「給与構造改革」は給料の切り下げ(都市部は地域手当が付いたが)で、ほとんどの公務員の生涯賃金が数千万円の削減の目にあったが、学校事務職員にとってはさらに大きな賃金危機が迫っている。それは「職務給の徹底」であり、ワタリ改悪がとんでもないことになっているのだ。(資料「各地の給与構造改革状況 全国調査集計」)

 行(一)給料表の等級統合に合わせてワタリの改悪が進められた。全国調査は十分ではないが、いくつかの県では、学校事務職員の到達等級が抑えられ、だれでも到達する生涯最高月給が40万円(新4級391,200円、新5級403,700円)から30万円(新2級309,900円)に切り下げられてしまうのである。(ちなみに新3級は357,200円)

 この影響は極めて大きい。今のところ「現状維持」もあり、昨年度までの到達級を維持しているところもあるが、公務員賃金削減圧力の高まりの中で、ワタリへの攻撃が弱まることはないだろう。

 学校事務職員のままでは上位等級に上がれないとされれば、他部局への異動希望が出てくることも予想される。これでは「安心して長く働き続けることのできる学校事務」が解体され、「学校事務職員で生きていくことへ覚悟」が必要な時代が近づいている。

2 労働者は共同してお互いの労働条件を改善する取り組みを(の議論を)

(1) 原則的基本的労働条件をめぐるたたかい

 定数が削減され、業務量の増した学校事務職員は賃金が大幅に引き下げられ、まさに新自由主義が標榜する激烈な競争社会の中に放り出されていく。そこでは仕事の「数値目標」を掲げることを強要され、「業績評価」が将来を決めていく。日常の仕事はコンピューターにコントロールされていく。その上「評価」をするのは、共同実施の「上司」だったりする。

 そこには正に原則的な基本的な労働条件の課題がある。わたし達「ガクロウ」はまさに原則的基本的労働条件課題への取り組みを愚直に行ってきた。その経験を生かす場面が今あると思う。

 まず定数のたたかいがある。もともと現状の標準学級程度の学校で事務職員が一人配置であることが変なのである。元の国立大学付属小中学校では最低でも事務職員は二人だし、地方の小規模県立高校(6学級、生徒数200人以下)でも事務職員は複数なのだ。だからこそ、標準法の他に市町村費事務職員が交付税算定基礎にカウントされている。わたし達は、学校事務職員の数で我慢しすぎてきたのではなかろうか。国、県、市町村への定数改善要求を強化しよう。

 共同実施拡大の動きにも定数闘争が重要である。文科省官僚が言うような「業務増で共同実施を求めざるを得なくなる。」ではなく、定数拡大を対置しよう。

 賃金をめぐる取り組みでは、当面ワタリ改悪への対抗闘争が必要である。わたし達はもともと慎ましい賃金で生きてきた。これまでも大それた賃金要求はせず、管理職手当を寄こせなんて言っていない。ただ、安心して長く働き続けることができる賃金体系を欲してきただけだ。「給与構造改革」がこれ以上学校事務職員で生きていくことができない賃金体系につながることをくいとめていこう。

 また臨時職員化が進む学校職員の賃金改善も重要である。「同一労働同一賃金」の原則を職場で一歩一歩実現させる取り組みは急務であり、あらゆる場面と機会に、臨時職員の賃金改善を獲得しよう。

 超過勤務手当の取り組みも必要だ。これまでの「超勤手当予算の学校配分」が見直され、削減(実績主義)が広まろうとしている。それが始ったところで起こったのは、驚くほどの「サービス残業」の蔓延である。組合員が異動していくと前任の事務職員の年間超勤時間がゼロであったことに驚き、校長は当たり前のように超勤手当削減を強要する。この実態はわたし達が思うよりずっと大きく広がっているだろう。サービス残業は悪質な犯罪であり、絶対に許さないことを思い知らせていこう。また、法律上では学校事務職員に時間外労働を命ずるためには労働基準法36条の協定が必要と定められている。これまでは法律を無視してきたが、協定の締結がわたしたち労働者に役に立つ利用方法を追及しよう。

 勤務時間もたたかいが必要になってきた。文科省が教員の「勤務時間調査」をはじめたが、人確法対策ための調査研究からなのか事務職員は調査から漏れた。また、4月には文科省4課長名で「労働安全法対策、勤務時刻の現認」を通知した。しかし、教員の無制限超勤体制に引きずられて学校事務職員の超勤も以前より増えている状況であるし、勤務時間の確認はどこ吹く風である。

 一日8時間、週40時間労働は守って当たり前であり、恒常的な超勤体制はまったく不当なことである。一日8時間週40時間以上の労働を強いる業務を排除する取り組みを職場で組織しよう。

 以上のように、学校事務職員の課題は正に原則的基本的労働条件の課題である。これらの定数、賃金、労働時間、業務内容の課題に『ガクロウ』はこれまできちんと取り組んできた経験がある。だからこそ今その経験と知恵を生かすことを考えていこう。

(2) 学校事務職員労働運動の再生産を

 4月から、身近な学校の事務職員を対象にした『学校事務の学校』という名の学習会(QC運動+組織宣伝)を支部主催で行っている。そこにこれまで組合に近づこうしてこなかった事務職員が毎回参加している。もうひとつ事務研の活動もやっていて、数年前から市事務研の出す「情報交換紙」(月一発行)にたずさわっている。(これも立派なQC運動)

 それらを通してあらためて感じたことは、多くの学校事務職員は上昇志向が強いわけではないし、まじめに学校事務を職業として日々働く人々であることだ。そして、一般的に労働組合の重要性を理解しているが、やはり、労働組合の活動の中身や具体的な振る舞いは理解していない。同席した若い組合員が「交渉は組合活動の中で一番面白い。一回見てみる価値はある。」と言っていたが、そういうことはなかなか伝わらない。

 わたしたらはこういう人々に労働組合の活動を、手法を、成果を十分伝えていないのではなかろうか。原則的基本的な労働条件をめぐる取り組みが本当に必要な今、まさにガクロウの宣伝をし、共感を得ていきたいと思う。

 ガクロウは、自立した学校事務労働者として労働組合を組織し、自らの要求を国、都道府県、市町村、校長に突きつけ、要求実現のために交渉を行ってきた。また、不当なことを許さない態度をとり続けた。そのことをまず伝えていこう。

 また、伝える手法ももっと開拓していこう。全学労連もついにwebサイトを開設した。いろんな場面での組織化の行動が求められている。

 さらに言えば、組織のありようの変換もあってもいいだろう。「専従」をおかないでやってこれたが、そろそろ第二の職場にするのも考えて欲しい。

 是非『ガクロウ文化』を伝えていって欲しい。

 

2007.7.30

(議長 菅原)


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