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学校教育の人的基盤整備と学校事務職員制度の充実に関する要請書

2010年11月26日付参議院文教科学委員・衆議院文部科学委員宛

 貴職の日ごろのご活躍に深く敬意を表しますと同時に、教育の充実発展にご尽力いただいていることに感謝申し上げます。

 私たちは全国の公立学校に勤務する学校事務職員の団体です。学校現場で日々働く私たちの声に耳を傾けていただきたく、下記の事項について要請いたします。私たちの訴えをご理解のうえ、是非、要請事項の実現に向けお力添えをいただけるようお願いいたします。

1. 教職員定数の抜本的な改善を図ること

 私たちは毎年関係省庁・団体の皆様に要請書を提出させていただいていますが、その中で教職員定数について、「加配方式ではなく学級数等客観的な基準による定数改善」と「学校事務職員の欠員の解消」を訴えてまいりました。

 今年7月26日に中央教育審議会初等中等教育分科会が出した「今後の学級編制及び教職員定数の改善について(提言)」は、「基礎定数の充実」や「正規教職員の配置促進」を謳い、「加配定数を基礎定数に組み入れることにより、都道府県が計画的・安定的に教職員の採用・配置を行いやすくなることを期待」としています。これを受けて文部科学省は「少人数学級推進」の「新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」(以下「新定数計画」と略記)を策定しました。

 その内容は、抜本改善にはまだ不充分なものがありますが、基本的には私たちが求めてきた「客観的な基準による定数改善」や加配方式の見直しによる欠員・非正規教職員の減少に繋がるものとして評価できます。改善計画の更なる充実と積極的推進をお願いします。

2. 学校事務職員定数の抜本的改善を図り、欠員を解消すること

(1) 「新定数計画」には、学校事務職員定数について8年間で1,570人の改善が盛られていますが、これは計画による学級数増に現行の複数配置基準を当てはめて割り出された数字で、学校事務職員の定数基準の改善はないということです。増大する事務量に対処しより円滑な学校運営をはかるために、学校事務職員の定数基準改善を求めます。

(2) 格差社会の進行に伴い就学援助児童・生徒が増加しています。標準定数法の就学援助加配の規定に基づく政令の基準では「受給児童・生徒数が100名以上で全体の児童生徒数の25%を超える」としています。これですと就学援助数101名で全校400名の学校は加配が有り、就学援助数150名全校700名の学校には加配が無いことになります。事務量は明らかに後者の方が多いはずです。この明らかに不合理な基準を改めることを求めます。

(3) 第7次教職員定数計画から、学校事務職員についても「加配」方式の定数配置が行なわれています。しかしその配置基準はあいまいで、全国的には60名の加配を受けた県もあれば、加配ゼロが10都県もある(2009年度)など格差が甚だしく、「教育の機会均等とその水準の維持向上とを図る」(義務教育費国庫負担法第一条)趣旨から外れているといえます。前述の就学援助のような事情を除けば、学校の事務量はほぼ学級数に比例することから、学級数等客観的基準に基づく定数改善こそが求められます。

(4) 数年来、標準定数法の学校事務職員定数を割り込んで欠員が多数生じている都道府県が増えています。今年度の欠員は全国で1,084名にのぼります。背景には2004年度からの「総額裁量制」の影響があるものと思われます。とりわけ東京都では定数の2割近い欠員を生じています。前述の就学援助加配も含め、標準定数法を守らない自治体が増えています。こうした欠員の解消と共に決められた定数が守られる教職員配置の制度を求めます。

3. 「学校事務の共同実施」を推進しないこと

 第7次定数計画の事務職員部分の加配は、その多くがいわゆる「学校事務の共同実施」に使われています。数校の事務職員を定期的に一ヶ所に集め、事務の共同処理を進めることが効率化・迅速化・適正化につながるという理屈ですが、第1になぜ効率化・迅速化・適正化を図れるのか具体的根拠に乏しく、第2に個人情報等の扱いで極めて問題があり、第3に何よりも学校の実態に即した事務処理を難しくし、将来的に学校事務センター等の形で学校から事務職員を引き剥がすことにつながりかねません。現に広島市のようにセンター化によって正規事務職員を臨時職員に置き換えて不安定な雇用を増大させているところも出てきています。学校現場の事務処理能力を低下させる「学校事務の共同実施」に反対します。

4. 非正規教職員の労働条件を改善すること

 全国の自治体で非正規職員が急増しています。中でも学校現場には臨時的任用や常勤・非常勤講師等様々な形で非正規教職員が配置されています。しかも年々この比率は上がり、私たちの集計によると、今年度の公立小中学校の教員に占める非正規教員の割合は全国平均で12.3%となっています。非正規教職員の増加の背景には「総額裁量制」による定数崩し、都道府県の人件費抑制策、文部科学省による定数「加配」方式の配置があります。

 学校の場合非正規教職員でも学級の担任や、事務職員ならば単数配置校に配属されるなど、正規教職員と全く変わらない仕事をしています。しかし正規職員に比べ給与・休暇等の労働条件は劣悪な状態にあり、また身分も不安定です。このような状態を放置すれば教育の劣化を招くこと必至です。学校を支える不可欠な存在となっている非正規教職員の正規職員への登用や労働条件の改善が強く求められます。

5. 義務教育費国庫負担金給与費の国負担率を1/2に復元すること

 1984年大蔵省(当時)が国の財政支出削減のために学校事務・栄養職員人件費の国庫負担適用除外を提起して以降、義務教育費国庫負担金から教材費、旅費、退職金等が次々に外されてきました。2006年「三位一体改革」による国負担率1/3への切り下げは、一段と地方の負担増をもたらしました。厳しい地方の財政事情を反映して、これまでもあった教育条件の自治体間格差の一層の拡大が現実化しています。

 また、義務教育費国庫負担金を最高限度額まで使い切らない県が年々増加し、昨年度は22道府県と全国の半分近くに達しています。教職員人件費は2/3部分が地方交付税で措置されているわけですから、該当道府県では義務教育費国庫負担金の最高限度額に満たない金額の倍額が教職員人件費でない支出に充てられていることになり、これは制度の根幹に関わる問題です。一括交付金化、義務標準法の廃止という動きもあり、公教育の水準と機会均等が維持できるのか大きな懸念をもたざるを得ません。教育に対する国の安定した財源の保証を求めます。

6. 教育の完全な無料化を図ること

 憲法第26条に義務教育無償の原則が謳われていますが、実態として義務教育にかかる保護者負担は給食費、教材費、校外活動費等少なからぬものがあります。この負担に耐えられない世帯が増えているにもかかわらず、これを救済するための就学援助制度も地方自治体の財政難により、充実するどころか却って後退している現実があります。子どもの教育を受ける権利が危機に瀕しているといっても過言ではありません。子ども手当等様々な対策が考えられていますが、何よりもまず義務教育の完全無料化こそが求められます。すべての子どもに、親の所得水準や自治体財政事情に関わりなく等しく無料の義務教育を保障すること。自余の政策はこれを実現した上で検討されるべきものと考えます。当然のことながら、高校・大学についても同じ観点のもとに整備が図られるべきです。

7. 教職員の階層化を進めないこと

 教育三法の成立で、新たに学校に副校長、主幹教諭、指導教諭を置くことが可能になりました。また、昨年4月には「事務長」を置くことができるよう省令改正が行われました。私たちはこうした新たな職の導入による教職員階層化に反対します。校長の権限強化、中間管理職層の配置、人事評価制度による成績主義賃金導入は教職員の萎縮を招き、現場を支える職員の協働性を損ない、活気ある職員集団を不可能にし、様々な困難を抱える学校が教職員集団の力でこれを解決していく上ではマイナスにしかなりません。

 
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